藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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全て、
全てを否定されたのです。
己が骨子は脆い幻想だと、
君の献身に意味など無いのだと。
護るべき彼等の恐怖で歪んだ口が、
まるで自分達を嘲笑っているようで。
感情の昂りでは無い、
解析の上で『致命的に間違えている』と判断した。
故に、迷いは持たず。
指先に焦がす為の錬鉄の焔を。

人理への裏切りなど知るものか!
彼女に仇なす者達に救いなど与えてやるものか!

                  『ある少年』


星を信じて

 

「いいねぇ見直したよ!闘い方は小賢しい癖して、飲みっぷりは野郎共にも劣らない豪快さじゃないか!ほらほらどんどん食いな!」

「ハッハッハ、一言余計だな姐さん!理知的と言ってくれ、理知的と!いただきます!」

 

 

 陽もとうに沈みきった夜の森。そこに訪れる筈の静寂はなく、喧騒が煩いほどに響き渡る。飲めや歌えの大騒ぎ。漢達の品の欠けた笑い声の中心で、二人の女性が肩を組みながら酒を交わしている。

一方は木樽のジョッキを掲げ、もう一方は黄金の盃を。

 

 そんな光景を少し離れた場所から藤丸立香は眺めている。

 

「マスター、具合はいかがでしょうか。水を貰ってきたのでよければどうぞ」

「……あー、ありがとーマシュ……へへ。……うん、だいじょーぶ!」

 

 どこが大丈夫なのか。ふわふわとしたマスターの受け答えにマシュは苦笑を浮かべる。彼女は木にもたれ掛かるフジマルの隣に並んで座り、レイシフト後から現在に至るまでを振りかえるように語る。

 

「それにしてもアテーノさんの突飛な行動には肝が冷やされました。まさか交渉を試みると言った直後に光線を放つとは……」

「あはは、突然なのはいつもだよ。それに今回もなんやかんやで何とかしてくれたしね」

 

 大海へと放り出された後に、英雄アテーノが海賊船へと放った禍々しい魔力の奔流。

 

 その正体はいつも通りの魔術だった。要は人を惑わす幻術。術式の対象を自分たちではなく、海賊船の乗員全員へと向けた結果があの特大ブレス……らしい。他にも手段はあったらしいが「一番カッコいいから」と選んだとか。

流石我等がアテーノ、思考回路が男子中学生だ。

 

「更に回収済みの本来の聖杯。海神を生来の人間が討ち果たしてしまったとは……」

 

 マシュが向けた目線の先には肉や魚を貪る海賊達、ではなく。彼等に貪られている無限に湧き出る食糧。無から有を生成する有り得ない願望の実現。つまり。

 

 

 

 既にカルデアは聖杯を観測している。

 

 

 

 現在進行形で喧しい酒宴に掲げられている黄金。それこそが正しく聖杯である。酒を注がれる聖遺物とはこれ如何に。然し杯なのだからこれはある意味正しい使い方なのかもしれない、とマシュは現実逃避気味に己に言い聞かせる。

 

 そしてそんな傍若無人振りを見せる人物、ラム酒で満たされた聖杯を掲げている女性こそが回収した張本人。

 

 太陽を沈めた海の悪魔、フランシス・ドレイク。

 

 既にこの時代を生きる人間が崩壊寸前の人理定礎を正し、異変の核たる聖杯を回収していた。但し彼女が手中に収めた聖杯はカルデアの求めるソレとは少し異なる。ドレイクが沈没都市を堕とし海神から略奪したのはこの時代に元より存在した聖杯であり、レフ・ライノールが配置したモノは別に存在している。

 

 故にカルデアに与えられたミッションは依然として変わらず、時代を歪めるもう一つの聖杯の回収。

 

 

「おいおいマシュ、なーにしけた面してんだい!折角の宴なんだ、考え事は置いといてアンタも一緒に馬鹿騒ぎしようじゃないか!よいしょっと」

 

 件の人物はいつの間にか二人のすぐ側へと迫っていた。ガハハと豪快に笑いながらマシュを担ぐ。

 

「うわ細ッ。ちゃんと食ってるのかいアンタ?よぉーし野郎ども肉だ!!肉をたんまり持ってきな!!」

「マ、マスター!助けてください!」

「あはは、がんばれーー」

 

 藤丸立香はそんな後輩の様子をフワフワとした頭で、ヒラヒラと手を振って見送る。「まさか無理矢理酒を飲まされることはないだろう」と何故かアルコールに充てられている少年は考える。とっくに冷静な思考は跳んでいるのだ。まぁ、仮にそんな事があれば管制室の保護者達が黙っていないから杞憂であろう。

 

「や、楽しんでるか立香。肉食う?」

「アテーノ」

 

 普段より若干頬を赤らめる英雄アテーノが隣に座る。酒を口元へ運び喉を鳴らした後、同じく紅潮した藤丸の顔を興味深そうに覗き込む。

 

「ほー、毒は効かないのにアルコールは効くんだなぁ」

「……ホントに顔は良いよね」

「ははは。私もお前の顔好きだぜ」

 

 大袈裟なウインクが嘘臭さに拍車をかける。

 

「酔ってるよね?」

「そりゃ飲んでるからな!───プハッ」

「……そういえばアテーノって何歳だっけ。あんまり俺と変わらないと思うんだけど」

 

 じっと眺める。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この特異点へレイシフトした時点では確かに第二再臨だったのだが、いつの間にか馴染みのある外見へと戻っている。第一再臨、おそらく一番若いであろうその容姿はどう見ても未成年にしか見えない。

 

「そうだな、この再臨段階だと大体……17?18?ぐらいじゃね」

「やっぱ未成年じゃん!!駄目じゃん!!」

「良いんですーー!!神代ギリシャじゃそんなの関係ありませーーーーん!!それにお前だって飲んでまーす!!」

 

 此処は現代日本でもなければ神代ギリシャでもない。二人を咎める法がない以上、是非の判断はカルデアの大人に委ねられるのだろう。だが彼等はマシュが海賊達の毒牙にかからないかハラハラしておりそれどころではない。

 

「んー、でも確かに。折角の機会なのに酔ったままなのはちょっと勿体無いかもな。……おい、私の指何本に見える?」

 

 考え込む素振りを見せ数秒の間、 フジマルの眼前に人差し指と中指を突き立てる。

 

「6!!むぐぅ!?」

 

 これは駄目だな、と確信を得るやいなや、出したままの指でフジマルの頬をむにゅりと挟む。突然の行動に動揺しながらも、フジマルは答えを求めてアテーノの目を見る。然し何も言わず、無駄に整った顔が間近に迫る。何時にない真面目な表情に少しだけ動揺する。

 

「ア、アテーノ?ちょっと急にどうし」

 

 そんな藤丸立香の困惑と僅かな期待を遮って、眉間にささやかな衝撃が走る。

 

 

「いったァっっ!?!?」

 

 

 中指を軽く引き絞り、放つ。

 軽快な音と共にデコピンが放たれた。

 

「うぅ~……!急に何だよ!?」

「酔い、マシになったろ」

「いやそんなわけが……あれ、本当だ。何かさっきよりスッキリしてる」

「酔いが覚めたわけじゃない、まだ座っとけよ。私はそうだな……楽しいからこのままでいーや!」

 

 彼女が行使する魔術はどこまで行っても‘’幻術‘’なのだ。治癒だなんだは全くの専門外。たった今施したのも「自分を素面だと思い込ませる幻」であり、実際に身体からアルコールが取り除かれたわけではない。

 

「ありがとうアテーノ。でも君がはしゃいでるのちょっと意外かも。こういうお祭りみたいな雰囲気好きじゃないのかと思ってたよ」

「ほっほーう、その心は?」

「うーん。何て言えばいいんだろ。いや、俺の勘違いだったら悪いんだけどさ。アテーノはふざけてる空気出してる割に、いつも周りと一線引いてるような感じがして」

 

 言われた当人は否定もせずあんぐりと口を開く。そして暫し無言。普段から饒舌故、肯定と捉えるに十分な反応だった。

困ったように眉を下げ、英雄アテーノは言葉を紡ぐ。

 

「───そうだな。そこまで鋭いと流石にキショいけどお前の言う通り。でもね、こういうのが嫌いなわけじゃないよ。寧ろ大好きだとも。……なんだよその顔」

「……いや、改めて俺もマシュも全然君のこと知らないんだなって」

「はぁ?なんだよ急に……ヒック」

 

 驚いた。穏やかに笑う表情があまりにも優しく平凡だったから。彼女の視線の先を辿る。ドレイクは足をテーブルへ置き高らかに唄い、マシュは困惑しながらもどこか楽しそうで、野郎どもは相も変わらず馬鹿騒ぎ。

それだけだ。何の変哲もない騒がしい宴だ。

 

 然し【英雄アテーノ】にとっては違うのだろう。

 

「好きなら混ざればいいのに。今日に限らずさ」

「ま、こっちにも色々とあるんだよ。それに私如き居なくたって何も変わらないさ」

「俺は君が居てくれた方が嬉しいけど」

 

 ノータイムで帰ってきた返答に唖然とした表情で固まる。こいつ正気か?とでも言わんばかりの顔を浮かべ、その反応を見たフジマルは何だか気恥しくなり自分の発言を悔いる。

 

「……驚いた。まだ魔術が効いてなかったか。よしかけ直そう今すぐかけ直そう」

「いたたたたたた!?効いてる!バッチリ効いてるから!」

「あっ、そう。……ありがとう、努力するよ。……いや待て脱線してるな。こんなクサい話する為に態々抜けて来たんじゃなかった」

 

 何かを思い出したアテーノは尻を引き摺ったままフジマルの向かい側へと移動し、胡座をかいて座り直す。そして握ったジョッキを地面に軽く叩きつけて一言。

 

 

 

「話をしようか立香」

 

 

 

 それだけ言ってにかりと笑った。フジマルはその物言いに「説教か?」と一瞬身構えるが、心当たりもなければ険悪な雰囲気もないので大人しく次の言葉を待つことにした。少しだけ間を置いた後に、ヒックと肩を震わせながらアテーノは口を開いた。

 

「海賊共の話も良いけど……流石に武勇伝ばかりじゃ胃もたれする。やれ姉御はスゲェ、俺等はヤベェだのね。適当に理由をつけて抜けれないかと考えてたらあらまビックリ、我がマスターが輪の外で潰れているではありませんか!」

「つまり纏めると?」

「はい!話に飽きた!だからこっち来た!以上。……それに、ほらさ?不公平とは思わんかね藤丸くん」

 

 成程、言葉にすれば単純明快。然しどうやらそれだけではなさそうだ。彼女は珍しくジトりと湿度を含んだ目でフジマルを見つめるが、彼に思い当たる節はなく首を傾げるだけ。その反応を受けたアテーノは拳を握り締めながら唸る。

 

「だってよぉ……!おかしいだろ……!そっちはこれから私の一生を知るくせに、私はお前のこと何も知らないんだぞ?!狡い!もどかしい!やっと会えたのに!」

 

 そこまで言われて漸く、顔を赤らめながら何を言わんとしているのか気づく。

 

 サーヴァント・英雄アテーノが所有する宝具の一つ。先日、オルレアン修復後に藤丸立香が内側へと招かれた、夜を写し続ける劇場……を象った固有結界。

彼がそこで目にしたものは英雄アテーノのプロローグであった。大衆が知る物語と乖離していたが、ソレは紛れもなく彼女自身の過去そのものだった。

 

 ──まぁ、なんだ。

 要するに、ただ純粋に自分のことだけ知られているのが恥ずかしいのだ。

 

「俺の話……」

 

 アテーノ曰く、藤丸立香は極度の人たらしであり、聞き上手らしい。

善であれ悪であれ力を貸す者を拒まない、それどころか英雄達が描いた物語を知ろうとする。少年は何時だって聴いて識る側の人間だ。

故に、己を知りたがる彼女に少しだけ驚いた。

 

「でも別に面白いものじゃないよ?ただの男子高校生だし、サーヴァントの皆があまりに濃すぎるっていうか」

「英雄譚なんて期待してないから大丈夫。そうだな、カルデアに来る前の話が良いな。家族構成に入ってた部活、好きな漫画とかね」

「そんなどうでもいい話でいいんだ」

「十分だよ、十分すぎるさ。お前に力を貸してる英霊の中にはその〝どうでもいい〟を守る為に戦った奴らだっている。マスターであるお前の日常に価値がないわけない。……特に私には尚更ね」

「それってどういう」

「と!まぁ建前は置いといて私が聞きたいだけだから気にしないでくれ……ヒック」

 

 しまったと思いつつ、少々強引に言葉を遮る。

 

 今の藤丸立香が知る由もない。

 かの映画館は心象の具現化ではあれど、投影された人物達の心情までを視る事は適わないのだから。然し、大英雄を偽り続けた彼女の原点は、彼への憧れに他ならない。

 

「んー、じゃあ俺の初恋から……」

「いきなりフルスロットルかよ。通信切っといて正解だな、聖杯戦争に発展しかねん」

 

 でも最高だ、と笑いながら更に酒をあおる。

 

 

 

 

 こうして皆が知らぬ間に密かな宴が始まった。

幼稚園の先生に奪われた初恋、お年玉全てをつぎ込んだ少年誌やホビーのまとめ買い。そして可愛い後輩には決して話せない低俗な猥談まで。どこにでも有り触れていて下らない話に花を咲かせる二人は心底楽しそうだ。

 

「アレ本当に腹立つんだよ!たまに真下に付いてるのかってくらい溢れてるんだよね。もはや収める気がないでしょ!何をする場所なんだって話」

「あーそれわかる。でも混んでると避けれないんだよな」

「いやアテーノがわかっちゃ駄目でしょ。それで一回床に気づかず滑っちゃった事があってね。しかも学校。いやぁ、人が居なかったのが唯一の救いだった」

「ははは、一生弄られるやつだな!是非現場で見てみたか………あれ。立香さん、もしかして丸出しっすか?」

「丸出し」

「最高だなお前」

 

 その姿はサーヴァントとマスターではなく少年と少女……と言うよりかは、放課後の男子高校生さながらであった。

 

 藤丸立香は使命を忘れ、アテーノもまた遥か遠くに喪った時を噛み締めるように。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 あぁ、やはり同伴して正解だった。内容は最低だが。

 

 滑稽であるが故に美しい光景、彼等を眺める己の頬も緩むというものだ。あれ程無邪気にアテーノが笑っているのは生前以来だろうか。

 

「その目、気持ち悪いですお爺さん。不快です」

「ワギャウ」

「俺の許可無く彼女を見るな貴様ら」

 

 歓談する二人を眺める六匹の異形達。

 

 …………藤丸立香含めアテーノ以外には見えていないが、使い魔である儂ら六匹もまたこの場で彼等同様食事を囲んでいる。

流石の隠蔽魔術だが如何せん儂らには相性が悪い、宴のツマミにさせてもらおう。もっともあちらと違い、宴と呼べる程和やかな空気では無いのだが。

 

 本特異点では第一特異点から連れ添っていた犬と蛙に加えて魚、蛇、羊、鳥が同行している。カルデアによる霊基再臨により内側に住む全員が現界可能となったためである。やはり興味深いシステムだな、彼女の力は確実に最盛期である死に際へと近づいている。

 

「君らが儂を嫌うのは別に構わんがね。だが今は同じ主に仕える身なのだ。無駄な私怨を挟んでいては返ってアテーノの不利益になると思わんかね。君らだってそれは本意では無いだろう?」

 

 儂の言葉に人ならざるもの達が唸る。効果覿面のようだな。よくもまぁここまで好かれたものよ。

 

「……仕方ないか。なぁそれはそれとして結局あの男は何なんだ?死んで漸くあの男が居なくなったというのに何故また新しい男が隣に座っているのか説明を頼む爺。普通に考えればあの場に居るのは焦がれ待ち続けた俺であるべきでは。別に彼女のセンスを否定したいわけじゃないが男を選ぶ眼が無いと言わざるを得ない。それにあの顔を見てみろ不細工という程では無いが平凡が過ぎるだろうここで比べて横に座るアテーノの顔を見てみろ超絶的に整っているワケでは無いがかなりの美形、切れ長の瞳に高い鼻に妖しく微笑む口!そして何より外せないがカッコイイからと適当な理由をこじ付けて強がって消していない傷跡だ、いじらしくて最高。実際にはあの駄神に同情した憐憫の果てだというのに!それを態々口にもしない寡黙さよ、英霊達には誤解されがちだが寡黙かつ思慮深い女!此処まで聞いてどうだ釣り合っていないのは明白だろう。そこで俺だ、人外ではあるが人としての理性を持ち尚且つ人間離れした美しさ。更に彼女の事をよーーーーく理解し苛烈な生き様を愛しているんだ、勿論彼女が俺に抱いている気持ちも同様だろう。なればこそ度し難い何故二度目の生でもあのような男を選ぶのだ……ァ!?」

 

 流石に煩わしい。

妄言を吐き散らかす魚の口を削ぐ。

 

「……ありがとうございます」

「構わん。彼女の言の葉を一片たりとも聴き逃したくないだけなのでな」

「キモいです」

 

 再び彼らの会話へ耳を澄ます。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「……名残惜しいけどここいらでお開きかな。楽しかったよ、ありがとう」

 

 アテーノの言葉を聞いて藤丸立香は辺りを見渡す。騒がしさは残っているものの、少し前に比べれば随分と落ち着いており、いつの間にかかなりの時間が経過していたことに驚く。

 談笑の終わりに寂しさを覚えるのも無理は無い。藤丸立香は年端も行かぬ少年であり、加えてカルデアという施設に来てから続いた忙しない日々、そういった時間も人も無かった。

 

 立ち上がろうとする彼女の右腕を掴んだ。

 

「待って」

 

 動揺をいつものように揶揄って誤魔化さないのは、縋るような表情が嘗ての自分と重なったからだろうか。何も言わずに微笑み、ただその手を握ってもう一度座り直す。少々の沈黙の後、意を決したように口を開く。

 

「アテーノはさ、怖くなかった?」

 

 この問答の終わりに相応しい陳腐な質問だ。事実、現状のカルデアに彼女以上の適任は居ない。そうで在れと生まれた英雄とは異なる、藤丸立香と同じく偶々その場に居合わせただけで、世界の命運を担ってしまった悪運持ち。故に己と重ねて問う。

 言葉を交わすことで確信したか。彼女に宿っている精神性は英雄英傑のソレではなく、自分と同じ凡人なのだと。

藤丸立香が何を想って彼女の右手に触れているのか、想像に難くないだろう。

 

 故に、与えられる回答も理解している筈なのに。

 

「何を今更、そりゃあ怖かったに決まってるよ」

 

 普段の英雄アテーノであれば決して口にはしない台詞、それをさも当然のように言ってしまう。

……妬ましいな少年、我々には決して向けられることない表情と言葉だ。

 

「だって本当はただのパンピーだし!精々そこらへんの鹿とか猪しか殺したことなかったのに、それが急に邪神だの眷属だの……なぁ?いや、改めて考えるとほんとろくでもない!」

「でもやり遂げたんだよね」

「……まぁね」

 

 藤丸立香が知っているのは序章に過ぎず、全容を知るのはこれからだ。

使命をやり遂げたのか、道半ばで倒れたのか、

或いは……全て放棄し逃げ出したのか。

何であれ確かなのは、あの夜聖剣を手にした年も離れていない少女が英霊に至っている事実。

 

「俺も怖いんだ。誰かが死ぬのも、英霊の皆が傷つくのも。皆は『サーヴァントだから』って言うけどさ、俺から見ると何も変わらないよ」

 

 サーヴァントは今を生きない。

 人に似通ってはいるが、あくまで過去を生きた人間の現身に過ぎず、その肉体を構築しているのは魔力の塊だ。

故にこそ、藤丸立香と命の価値は比べるべくもない。

 

 ───然し彼の認識がそうであるとは限らない。

真っ当な魔術師の冷酷さであれば数居る使い魔の一騎を失ったとて心は靡かない。戦力を惜しむ心こそ在れど、生命の終わりと捉え嘆く者はごく稀である。

だが藤丸立香は魔術と縁のない世界で生きてきたた人間だ、そも死というものに慣れていない。人間であれ影法師であれ、自身の眼前で誰かが死ぬことに動揺してしまうのは当然と言える。

 

「マスターの俺がこんなんじゃ皆に申し訳なくて。……ごめん急に、君にしか言えないから」

 

 俯き、吐露した想いは大いなる使命への不安と焦燥、そして罪悪感。

 

 少しばかりの静寂。

弱音を吐くマスターに失望してしまったか?

不甲斐なさに怒っているのか?

 

 意味の無い逡巡の後、顔を上げると再び眉間に鋭い痛みが走る。本日二度目のデコピンが藤丸立香を襲った。

 

「~~~~~ッキめぇ!!!!」

 

 少女は辛辣に言い放った。

諭すわけでもなく叱咤するわけでもなく、純粋な軽蔑の言葉が端的に飛んできた。

当然、唐突の罵倒に彼は困惑。

当然、理不尽だと憤る。

 

「き、きもいって何だよ!俺だって真剣に悩んでるんだって」

「だからそれが気持ち悪ぃってんだ!……はぁ、全く。ん、そっち詰めろ」

 

 溜息をつきながら向かいから右隣へ座る。

 

「あのなぁ……お前はいつの間に英雄になったんだよ。高校生が人の死に慣れててたまるかってんだ。怖いのが当たり前、目の前で殺人なんて見せられたら一生引き摺って傷になるのが人間だろ」

「でも皆は命を懸けて……!」

「アイツらは時代の傑物!!お前が生きてるのは2016年で育ったのは日本の平凡な家庭!!勘違いすんな自惚れるな!!」

 

 人類史を築いた英傑達と比べるなぞ烏滸がましいと、強く言い放つのは彼女の自戒であり自嘲でもあるから。

決して癇癪などではなくアテーノの言うことは最もだ。

そも育った土壌が違い過ぎるのだ。

闘争は日常に有り触れていない。

加護も神秘も残されていない───現代にはそういった奇跡を保存する為動く連中も居るようだが彼の周囲とは無縁だったろう。

 

「弱音上等、貧弱上等。雑魚で当たり前だよ私達」

 

 嘯かず、驕らず、強がらない彼女に相対する彼は少しだけ面食らう。諭す……というよりは、自分自身への諦観を含んだ独り言のように感じた。

数秒の間が空いて今度は困ったように笑う。彼はその表情の真意が分からない。

夢の無い話をするよ、と前置きした彼女は再び口を開く。

 

「悲しいけどね、この旅に意志や勇気なんて関係ないんだ。喚いて立ち止まったって人理焼却は終わらないし、何よりお前は人類史の楔だ。……未来は分からないけど少なくとも今はサーヴァントやカルデアがそれを許さない。だから泣いたって良い、どうせ意味無いから。強がっても疲れるだけ」

 

 尊大な態度は何処へやら、言葉も表情も弱々しい。呆然とする彼の目を見て続ける。

 

「なぁ、立香。『何をもって英雄と呼ぶ』と思う?」

「……何を成したか?」

「うん、私も同じ意見だ。じゃあ次、『何をすれば成せる』と思う?英雄に至る為に必要なものは何だ?」

 

 矢継ぎ早の質問に困惑しつつも数秒思案する。藤丸立香の旅路は半ばなれど、その瞳には既に多くの英霊達が焼き付いている。

そんな彼等に共通するモノ。

カルデアのサーヴァントで例えるのならば、聖剣の騎士王と白百合の王妃。両名とも強大な力を有しているが彼女らの持つ、若しくは生前持っていた『強さ』は同一ではないだろう。では何を用いて国を統べ、英霊と呼ばれるに至ったのか。

 

「心の強s「違う!!」早くない!?」

「違うね、それだと私は此処に居ないだろ」

 

 己の弱さを隠す事もせず、微笑んで答える。

 

「唯の自論でしかないけどさ。英雄に成れる人間ってのは『強がれる』んだよ。泣きもする、折れる事もある。だけど恐怖をそれ以上の理由で誤魔化して進むんだ。……例えばあの人」

 

 アテーノがすっと刺した指の先を視線で辿る。

そこには豪快に眠る女海賊の姿。

 

「え、ドレイク船長が?」

「上手いよな、全く強がりに見えねぇんだもん。何がそこまで駆り立てるんだろうな。好奇心か?探究心か?……まぁ、そういう諸々の理由が命を張るに足るんだろうさ。だから笑って突き進んでるんだよ」

 

 一呼吸おいて、

 

「本質は……多分一緒だと思う。彼女みたいな英雄と私達みたいな凡人、どっちも何かを犠牲にして虚勢を張るんだ。でも、でもね?越えちゃいけない壁みたいなのがあってさ。紙一重、だけど一度でも自分の命を秤に載せちゃったらもう取り返しがつかない」

 

 定まらない口調に貴方は違和感を覚えているといつの間にか彼女と視線が交わっていた。

 

 

 

 

 

 狂ってんだよ、英雄なんて。

 

 

 

 

 

 何故か、泣きそうな顔で呟く。

皮肉なものだ。嘘偽りなく彼女の本心である筈なのに、然し大衆が望む“アテーノ”の姿とは乖離している。

 

「我慢して、強がって、恐怖を忘れて突き進む。お前が目指そうとしてるのは英雄の在り方だ。そこまでする必要どこにあんのさ」

 

 己の生き様をなぞるように問う。

静寂のみが返ってくる。藤丸の表情に気づいた彼女はばつが悪そうに眉を下げる。

 

「あ〜……ごめん、困らせたかったわけじゃないんだ。説得力ないけどほんと。け、結局何が言いたいかっていうとほら、あれだ!私は今のお前が好きってことさ!」

 

 いつにも増してわざとらしいウインクが飛ぶ。

 

「なにそれ……ごめん、アテーノ。やっぱりちょっとだけ頑張ってカッコつけたいよ」

「謝るなよ、私がフラれたみたいだろ」

「いつもやられてるからね、たまには俺が揶揄ってみてもいいでしょ」

「違いねぇな。ま、フラれるのは二度目だし分かってたけどさ。『カッコつけたい』ってのはどういう……成る程ね、本当に振られてんじゃん」

 

 藤丸の視線を追って呆れて笑う。

 

 

 

「先輩として後輩に頼もしいとこ見せたいからさ」

 

 

 

 分かりきっていた答えだろう。

既に得ていた回答を再び求め、再びの撃沈。二度振られたのだ。

往生際の悪い自分自身に乾いた笑いをあげ、彼女は深く息を吸って叫ぶ。

 

「あ"ぁ"〜〜もう知ってたよ馬鹿!羨ましい妬ましいッッ!私だって可愛い女の子とも旅したかった!!女の子の為に命貼り続けたかったなぁ〜〜〜!!」

「へへへ、あげないからねって痛い痛い!?」

 

 背中をバシバシと叩きながら半ばヤケ気味に酒を呷る。

開宴からかなりの時間が経過していた。夜もとっくに更けてしまっている。これ以上は明日の活動にも響くだろうと、立ち上がったアテーノが再び引き止められる。

 

「……最後に一つだけ聞いていい?」

「え〜〜、もう寝ようぜぇ〜〜……。これ以上大英雄様に恥掻かせるなって……」

「これでラスト!ラストだから!」

 

 渋々ながらも頷いた彼女に最後の問いを。

 

「君はどうやって使命をやり遂げたの?」

 

 あのプロローグを鑑賞した者なら至極当然の疑問だ。

英雄を引き継いだどこにでもいる少女、しかもその普遍性の尺度も神代のものではなく、藤丸立香が生きた時代に近いのだ。あの時代において『魔術』が使えないことは平凡どころか欠落していると言っていい。

それほど才に恵まれなかった彼女が英霊に至っているという事実。

『そこまでする必要がどこにある』だなんてあまりにも説得力が無さすぎる。

君はそこまでしたんだろう?

 

 

 

「お前と一緒だ」

 迷い無く胸を張って答えた。

 

「一人じゃなかったから」

 頑張れてしまった。

 

「藤丸立香にとってのマシュ・キリエライト、ロマニ・アーキマン、レオナルド・ダ・ヴィンチ。そういう人が私にもいたんだ」

 

 人類史に名が刻まれなかった片割れがいた。

神代の終わり、人の時代の始まり。歪んだ人理を修復すべく、抑止力より遣わされたのは機体は二つだった。

 

 を すアテーノ・エクスマキナ。

そして  を錬鉄する為のもう一騎。

 罪深き男の名をイスト。

神の息吹残るギリシャを彼女と共に駆けた男である。

 

 

 

 

「私達はね、

 ハッピーエンドを目指したんだ!」

 

 天へと指を差して大袈裟にポーズを取る。

 

 

 

 

 

「世界を救うほどの献身なんだ。それ相応の結末じゃないと割に合わないだろ?」

 

 芝居がかった動作で肩をすくめる。

 

「おおっと勘違いするなよ。ハッピーエンドって言っても私が望んだ結末ってのは救世の成功じゃないぜ?」

「え、世界を救うために戦ったんじゃないの?」

「確かにアテーノに課せられた使命はそうだな。でも駄目、自分の支えにするんだから。もっと自己中で独善的なものがいい。立場とか使命とかクソ喰らえ!」

「じゃあ君にとってのハッピーエンドっていうのは……」

 

 問いに対し、当然のように言い放った。

 

「『()()()()()()()()』に決まってる」

 

 フジマルは、

 微笑む彼女の誇らしげな表情に目を奪われた。

 

「アテーノの回答としては0点なんだろうさ。でも今でもそう思ってるよ。ここで言っても分からないだろうけど……抱えた罪だのは関係ない。自分が救われたいって思うのは当然のことだ」 

 

 あまりにも人間臭い答えだ。

大英雄、ましてやアテーノは多くの人々が描いた英雄の理想像だ。「世界の幸せなんて願っていません笑」だなんて誰が考えるであろうか。

 

「来たるべき幸せのために戦ったんだ。私の幸せを願ってくれる人達もいたから。そりゃ苦労の割には合わないけどさ。それでも人間、案外頑張れちゃうんだ。実は今もね、あまり変わってない。私は私のために戦ってるよ」

「自分自身の……人理修復じゃなくて?」

「うん。聖女でも王様でもないんだ。これくらい自己中でもいいでしょ」 

「だから、お前も自分の幸せを諦めないで欲しい。どれだけ罪を抱えようが関係ない、幸せを願う権利くらい誰にでもあるのさ」

「罪……?いやいや、俺そんな無欲じゃないから。なれるなら幸せになりたいよ」

「良かった。それならそれが一番なんだけどね、私が言えるのはこれだけだから」

 

 彼がこの言葉の意味を真に理解出来るのはもう少し先の話だろう。「そんな時来なくていい」と彼女は言っていたが、やはり何処かでそんな時を確信しているから態々言葉にするのだ。

 熟、英雄アテーノは酷く中途半端な存在である。正義の代名詞とも言える名を持ちながら、人理修復には固執してしない。サーヴァントでありながら、仕えるマスターの救われる未来を願いはすれど信じていない。

 

 今の彼女には英雄としての芯が無い、

 故に只人である彼に最も近い存在と言える。

 

「ハッピーエンドを目指そう。世界を救う自分に、納得出来る結末を与えるために進むんだ」

 

 

 

 

 

おい、君ら何をして……。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「フジマルは寝たか」

「見てたのかよ爺さん。もしかして結界漏れてる?」

「文句の付けようも無く完璧だったさ。生憎と儂らには相性が悪いのでね。それにしても……ふふ、この光景をカルデアが認識していないのが残念だよ」

「やめろやめろ。消し炭まったなしだぞ」

 

 座る彼女の膝の上、藤丸は頭を乗せて寝息を立てている。魔術がよく効いている、随分と安らかな表情だ。そしてそれを見護っている彼女も。当然だが我々に向けていた顔とは大違いだな。

 

「然しね、前にも言ったがあまりに燃費が悪い。この調子で展開を続けていれば魔力の消耗も馬鹿にならない。君より強力なサーヴァントなぞ山程いるのだから、もう少し力を抜くべきだ」

 

 現在、拠点には大規模な結界が張られている。単純な認識阻害の魔術、消費する魔力も少量ではあるのだが、如何せん使用者のスペックが低すぎる。接敵次第迎撃したほうが幾分マシだろう。この特異点の修復まで闘い抜くことを考えれば飛ばし過ぎだ。

 

「馬鹿言え、だから頑張るべきは戦闘外の今だ。私が戦闘に出たところでゴリ押しにしかなんねぇよ。傷付かない程度に死にかけとかないとこの先で死ぬ……あー、でも奇襲が0ってのもマズいのか?」

「ふむ。君がそこまで見据えていたとは」

 

 非力な彼女ではあるが、現在に限ってはカルデア内で最強だ。カルデア式による最終再臨によって戦力はアテーノに偏っている。だがあくまでも一時的。いずれは全てのサーヴァントが受ける恩恵に過ぎない。戦闘面で彼女に頼り過ぎていれば、いつか取り返しのつかない事態に陥る。

 

 これも君なりの優しさか。

 

「成長を促すか。意外だな、君はフジマルがマスターとして成長するのを疎んでいると思っていたが。普通の人間であって欲しいのではなかったかね」

「漂流物如きに止められるものじゃないよ。それだとこの先生き残れないからな……てかお前らも休んどいてくれよ。漸く本領発揮したんだ。今回から存分に酷使させてもらうからな」

 

 悪戯に嗤う彼女を見て、意図せず汗が噴き出す。

さて、どう説明したものか。

 

「そ、それなのだがね、アテーノ」

「なんやかんやお前らを信頼してるからね。諜報に戦闘、兎に角使い勝手がいい」

「は、はは。君の指示が良いのではないか……?」

「うっへへへ。条件付きとは言え不可視の6匹、いやぁ低い勝率が上がる上がる!初出勤、期待してるぜ爺さん」

 

 不味い、非常に不味い。

広がる戦術の幅に目を輝かせるアテーノを直視出来ない。

 

「おーい、なんで目を逸らすんだ。……あれ?そういえば後の奴らは?さっきから反応が消えてるんだけど」

「あ!?いっ、いやそれはだね……」

「わかった。私に気を遣ってるんだな?まー、確かにこの膝枕見たら勘違いするかもなー。そこまで色ボケてねぇし、似合ってもねぇっての。おーい、お前らももう休んでいいぞー!」

 

 流石に居た堪れない、限界だ。

 

「アテーノ、実に言い難いのだが……」

「どうした珍しく焦って」

 

 報連相。フジマルの時代で重宝される集団内の三箇条らしい。

報告、連絡、相談。

簡単なことである筈のこれらが何故正しく行われない場合があるのか。今ならよく分かる。怖い、失望されるのがどうしようもなく怖いのだ!

ええい行け老耄!

第二魔法を収めた儂に怖いものなどあるものか!

 

 

 

 

 

 

「死んだ」

 

 

 

 

 

 

 大英雄の目が点になった。無理もない。

 

「……………なんて?」

「だから、儂以外、死にました」

「え、いや、何を言ってんの」

 

 そりゃそういう反応するわ!

 だってまだ一度しか戦闘してないもん!

 

「いやいやいやさっきまで全員居たよな!?」

「居た」

「まだ一日も経ってないんだけど?!」

「もう少し声を……!フジマル起きちゃう……!」

 

 ハッとして自身の膝に眠る彼を見下ろす。まだ起きてはいないあたり、幻術の効きが良いのだろうが、僅かに眉を顰めている。ぐぎぎと歯噛みしながら、何とか言葉を飲み込んてこちらを見上げる彼女の表情はあまりに復讐者。

 

「羊。説明」

「は、はい」

 

 きっかけは使い魔のうち一匹、魚である。正しくは魚っぽ なのだが、そこはどうでもいい。アテーノに心酔している彼がこの密談を好ましく思わないのは必然だった。

「彼女が望むなら」と奇跡的に我慢していたのだが、最後の最後、膝枕が引金となった。

削いだ口から怨嗟の呻きを上げながらフジマルへ突撃した、然し当然他の者達がそれを許さない。

元より野蛮で醜悪な我等だ。言葉を交わすことによる和解など不可能。

 

 とならば行われるのは殺し合いである。

 

「その結果がこれと」

「面目ない……」

 

 儂が幻術を解くと七色の血溜まり、そしてバリエーションに富んだ肉片の群れが現れる。彼女以外が見れば発狂モノである。長い長い溜息がとても辛い。

 

「はは、やっぱり私お前ら嫌いだわー……」

「儂の方からしっかり言い聞かせておくので……」

「……でも隠してくれたのは助かった、ありがと」

 

 我が女神が慈悲深すぎる。

 なんて暖かい眼差しを……!

 

「アテーノ……!!」

「じゃ私寝るから、お前警護しとけよ」

 

 なんて冷たい瞳なのだ。

「休んどいてくれ」って言ったじゃないか。

 アテーノは触手を使って藤丸を抱え上げ、彼等の残骸に背を向けこの場から立ち去った。

 

 しかし、心することだアテーノ。

この特異点かなりきな臭い。具体的に言葉にするとそうさな、場所は違えど君が戦い抜いた彼の地に極めて近いのだ。

 10年の旅路、巡れど巡れど出会わなかった生粋の英傑。幾度も君を殺した影の原典達が此処に居る。

 

 神話に語られる彼等と君は対峙するだろう。

 そして君にとっての最大の屈辱が訪れる。

 

 とうに擦り切れた運命力だ。

 あまりにも条件が整い過ぎている。

 

 

 

 

 この特異点で君は、

藤丸立香に消せぬトラウマを植え付けるだろう。

嘗ての旅路であの男にそうしたように。

 

 

 

 




死んでました、すまなんだー

藤丸立香の曇らせなんだなも
次『貴方と私とオケアノス』です。
早めに投稿します、今度は嘘じゃないっす。
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