藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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御身がこの刃に怯える必要はない。
然し、問わねばなるまい。
その身は朽ち果てながらも、
己が使命を全て遂げた証である。
何を望み、何を抱き、契約者の傍らに立つのか。
我々に見えぬ先を知り、消えた楔を縋り、
再び演じ続けるのであれば、
それは堕落に他ならぬ。
故に、足掻くがいい。
案ずるな。
目指した末に、異なる道を選ぶのならば、
その時にこそ、首を落とそう。

                 『死告天使』


ανατολή ηλίου

「怪物が英雄の振りをしているなんてね、見苦しいにも程がある。それに、何だっけ?アテーノと言ったかい?.....確か仮にもコイツと同格に語られる大英雄の名だ。水底に沈んだゴミには不相応じゃないかね?」

 

 格の違いを知らしめる威圧感、そして純なる殺気。

 カルデア一行の前に立ち塞がる敵性サーヴァントの名をヘラクレス。主神ゼウスの子であり、敗北を知らぬ半神。紛い物の彼女とは異なる、本来の人類史から出典を持つ正真正銘の大英雄だ。

 対峙する藤丸立香が竦むのも当然、彼が最も信頼を寄せる存在は一撃で呆気なく水底へ沈んだのだから。恐怖、動揺による吐き気を必死に抑え込んで前を向く。

 

「─────マシュ!」

 

 圧倒的な膂力はマシュ・キリエライトを容易に吹き飛ばし、その余波は盾の護りをもってしても藤丸を切り裂いた。人理修復は半ばなれど、既に常人ではあり得ない数の戦場に立った。それら全て生温かったと思わざるを得ない濃密な死の予感。怪物の斧を、女神の矢を、皇帝の剣を、ヘラクレスは総て打ち砕きながらこちらへ歩んで来る。

 

 一歩、また一歩。徐々にその姿が大きくなる。

 足掻く。怖気づきながら、それでも己を奮い立たせ魔力を回す。

 当人に自覚は無いが、藤丸立香にとってアテーノは精神的支柱だ。窮地の呼び声に応えた初めてのサーヴァントであり、これ迄召喚された特異点では一切の敗北を許さなかった。圧倒的な強さはないものの、最後には必ず笑って戻ってくると、異分子たる存在に依存していた。この窮地は必然ではあれど、その代償だ。

 

「おぉおおおおおぉぉおおぉ!!」

「ローーーマ!!」

 

 混沌とした戦場の中で、雷光の斧と建祖の槍がヘラクレスの生命に届いた。確実に絶命へ至る攻撃を受けて尚、彼は歩みを止めず影法師を打破する。事実、両者の獲物は確実に命を奪った。何もおかしくない、単純だ。

 ヘラクレスは二度殺された程度で死ぬ英雄ではない。

 

「思ったよりも粘るじゃないか。ま、せいぜいあと十回頑張ってくれ」

 

 男の尊大で余裕綽々とした態度が、その言葉がハッタリでないことを表している。

 生前、彼が神から与えられし十二の試練。それらを踏破し、英霊と成った彼にはそれだけの生命が報酬として与えられている。つまり、退去させるにはあと十回殺す必要がある。

 

 それでも、立ち上がる英雄が一騎。

 

「おれが…!!やら、ないと…っ!」

 

 神牛と人の間に生まれた少年だった。

 英雄とは、人々の願いに応えた存在。

 彼もまたそんな一人。化け物であれと父に願われた。

 ただそう望まれたから、贈られる贄を喰らい続けた無垢なる存在。怪物の根本にあったものは、彼を殺した英雄と何ら変わりないのだろう。

 

「なんにんも、こどもをころした。なんにんも、なんにんも、なんにんも、なんにんも……!だから、おれが、いい……!」

 

 人理を護るため召喚され、人々の営みに触れた。

 嘗て奪い続けた命を、何度も救った。

 贖罪ではないが、生前の行いが何たるか知るには十分過ぎる旅路だった筈だ。

 そんな一時の短過ぎる時間で、大き過ぎるものを見つけてしまったのだ。

 女神を握り潰さんとする腕を少年が受け止める。

 

「なまえを、よんでくれた。みんな、わすれた、ぼくのなまえ……!なら、もどらなくちゃ。ゆるされなくても、ぼくは、にんげんに……!」

 

 エウリュアレも、藤丸立香も、マシュも、アテーノも、ドレイクも。そして船を共にした海賊員も誰も怪物の名を呼ばなかった。だって、守る為戦う姿に、その名があまりにも似合わなかったから。彼自身そう思っていなくとも、黄金の鹿号に乗る狂戦士はただ一人の人間だった。

 

「やろう、アステリオス」

「うん、ありがとう、ますたー」

 

 マスターとサーヴァントが共に戦意を滾らせる。

 抱く想いは違えども、両者の心の内には同じ友人の姿がある。

 しかし決意を灯したとして、依然として劣勢なのは変わりない。他のサーヴァントは押し寄せる竜牙兵の対処に追われており、何より藤丸の魔力が尽きる寸前でありこれ以上の簡易召喚は望めない。

 

 ────渡すのは本意じゃないんだ。

 

 何か思い出したのか、藤丸立香が僅かな逡巡の後、懐から取り出したのは小さな箱だった。

 グランドオーダー発令直後、第一特異点オルレアンを前に渡された緊急手段。

 『()()()()()()』。注射器の中で揺らめく液体は即時的に魔力を回復させる代物だ。

 

 当然、代償は付き纏う。

 身体に大きく負担を掛ける命の前借り。

 死地に赴く魔術師であれば安い代償かもしれない。

 だが彼の中身はどうだ。

 一般家庭で生まれたただの凡人。その躊躇いを誰が咎めようか。

 

 得体の知れぬ物を取り込む為、針を腕に押し当てる。

 震える指でキャップを押し込み───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ、その時じゃないさ」

 

 

 

 

 

 

 

 白い腕が注射器を取り上げた。

 

 再び偽りの大英雄は戦場に立つ。

 

 これも、当然の話だ。

 ヘラクレスと共に最強と謳われる彼女がたった一度で死ぬものか。

 彼に越えた死地の数だけストックがあるように、アテーノにもまた有限の残機がある。

 

「いや、にしたって……ひでぇ顔だな!ははは!」

「……っ!誰のせい、だ、と」

 

 安堵の表情は直ぐに曇る。

 揶揄うその姿があまりにも普段通りだったから。

 そう、何時ものように。

 角も翼もなく見慣れた姿。金の髪を靡かせて、白磁の如き肌は一切の傷が無く。ヘクトールの槍を受けて砕けた筈の鎧すら眩しく煌めいている。

 

(有り得ない、だってアテーノは)

 

 先程の光景がフラッシュバックする。

 羽ごと真っ二つに切られて、堕ちて、水面に滲む赤。

 再度吐き気で揺れる身体が抱き止められる。

 

「そうだな、ごめん。確かに私のせいだ。だから今から挽回してみせる。ちょっとだけ魔力もらってくぜ。令呪はいらないから、あんなやつ油断しなけりゃ素面でけちょんけちょんよ!……あ、ドクターは後でお茶会にこい」

 

 藤丸の額に流れる血を拭い舐めとったアテーノは、サムズアップしてアステリオスの方へと歩みを進める。死地と感じさせない、普段通りの足取りで。

 その背を見て漸く藤丸は思い出す。

 ああ、全ては強がりなのだと。

 彼女が得意とする『まやかし』の魔術。人の目を欺き騙すだけの秘匿に特化した技術。幾度と気づく機会はあった筈なのに、どうしても結び付かなかったのは、英雄アテーノの特性故か、将又、その強さを信じて疑わなかったからか。

 どうあれ藤丸は彼女の奥底を閲覧した。

 彼女の飾らぬ言葉を聞いた。

 故に、嘘だらけで立ち向かう姿は酷く寂しく思えた。

 

 最も信頼を寄せる相手が、自分に弱さを見せる気がないのは、存外堪えるものだ。

 

「令呪を以て命ずる……!」

「おいおいおい!?鼓膜イッちまったか?!温存しておけって」

「うっさい馬鹿!!受け取れよ負けたんだから!」

「はぁ〜〜??本気出しそびれただけだわ!!馬鹿って言った方が馬鹿だこの馬鹿!!」

 

 腹が立つ。

 一度やられたくせに余裕ぶってまた立ち上がって、自分の手を借りようともしない。

 

「随分と余裕ですね………は?」

 

 戦場にも構わず声を荒げて揉める半泣きのマスターとサーヴァント。相対する困惑気味のキャスター、メディアは当然隙を突かんと竜牙兵を差し向ける。

 だが届かない。軽く遇らうように切り払われた。先程のヘラクレスによる痛恨の一撃は不意打ちによるものだ。メディアによる気配遮断とトラウマから生まれた偶然。そもそもアテーノは彼女らを識り過ぎている。

 巫山戯ながらも警戒は全く解かれていない。

 

「……わかったよ。だけど一画だぞ、ほら早よ」

「うん、───アテーノ、令呪を以て命ずる」

 

 呆れながら渋々了承する彼女に右手を翳す。

 

 

 

 

 

 その嘘を貫き通せ

 

 

 

 

 

 

 無茶に苦言を呈するのも、怒って質すのも、全てはこの戦いに勝利してからだ。ありのまま晒す気が無いのなら、せめていつものように笑って帰って来い。

 ヘラクレスは最強。敵の言う事は揺るがぬ至極当然の事実。英霊の中でも最上位に君臨する無二の存在。

 だが、それがどうした。藤丸立香の最強は誰がなんと言おうとアテーノである。その身に魔力を滾らせ、再び歩み出す。

 

「……!あぁ、任せとけ。ってことで悪いなアステリオス、美味しいところは貰ってくぜ!」

 

 虚空より現れる触手がヘラクレスを引き剥がし拘束する。呪いを孕んでいるとは言え、数秒保たせるのが堰の山だろう。

 

「あてーの……」

「お前が命を張るべきはここじゃない。生を謳うのも、愛を叫ぶのも彼女の隣が良い」

 

 既に微かになろうとも、アテーノは知っている。

 藤丸立香は必ず辿り着く。己は異分子であり、何もせずとも凡ゆる境地を乗り越えていく。故にこの行動に意味は無く、ただ衝動に突き動かされているだけだ。

 藤丸の表情が見るに堪えない。

 アステリオスには全て見届けて欲しい。

 あまりに我儘な私欲を満たす為、再び剣を握る。

 

「その離別、私が請け負う」

 

 いずれ来たる最終決戦。

 そこに立つ人類最後のマスター。

 彼の形成に傷が必要であるのなら、余分はそこに当て嵌めればいい。

 

「───繰り返すは忘れじの夜。即ち、私が神を殺す夜」

 

 触手を引き千切った大英雄が彼女の元へ肉薄する。

 狂気に呑まれ、尚も本能で理解する。

 それだけは許してはならないと。

 

「させ、ない!」

 

 雷光が阻む。

 

「いざ再び舞い戻ろう。

 崇めろ!

 讃えろ!

 昏き此処こそが─────」

 

 

 

 英雄譚の幕開け(プロローグ)だ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 ヘラクレスの視界を埋め尽くす黒。

 

 暗く、黒い、森だ。

 鳥の囀りも、獣の唸りもない。

 鬱蒼と茂る木々、葉を揺らす風の音だけが鳴る。

 遥か先で、焔に似た赤色が揺らめく。

 純然たる力に小細工は必要ない。木々を薙ぎ倒し一秒とかからず光へ到達、そこにあったのは先程引き裂いた女の姿。立ち上がるのならば再び殺すまでのこと。

 

「最高で、最悪の気分だよ」

 

 大地が沈む。

 たった一度の衝突、

 爆発に似た衝撃が周囲を更地に変える。

 

 差し込む月光が照らす。

 歪に巻かれた片角、千切れた翼、

 真っ赤な剣を握るのは血に塗れた異形。

 

 ここに彼はいない。

 だから、もう、英雄の振りはやめだ。

 英雄と倒される怪物が居るだけ。

 死体を前に何故取り繕うのか。

 

「望まれて、繋がった。どんな姿だろうと既に本物だ」

 

 譫言のように英雄は呟く。

 

 

 

 

 

 

序章 忘れじの夜(プロローグ)

 サーヴァント・英雄アテーノが所有する対人宝具にして、心象の具現たる固有結界。嘗て彼女が剣を握った始まりの夜の再現。特筆すべきは、発動によるステータスの大幅な向上。

 

 この世界においてのみ、アテーノの知名度はヘラクレスに並ぶ。内容は様々、世界各地、有史以来語り継がれている無数の物語の内容はそれぞれ異なる。民間伝承、時代ごとの病魔、そういったものによって多くのバリエーションが存在する。

 

 藤丸立香の喚び声に応じたアテーノは、誰も知らぬそれらの原典。人々が讃える物語と彼女が実際に歩んだ道筋は大きく異なる。故にこの英霊は知名度補正による影響を受けない。

 

 然し、一つだけ共通点がある。

 それが夜の森という舞台。

 世界に点在するアテーノ伝説の終章、災厄を打ち滅ぼした彼女は夜明けを齎す……と全て共通の終わりを迎える。

 

 原点たる彼女の心象風景と酷似したせいか、

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 つまり、この宝具下において初めて知名度補正による恩恵を受けられる。Bランクとなった全ステータスに加えて、『アテーノは理想の英雄である』という大衆認知による因果の歪みが発生する。それは幸運EXという形で反映されており、宝具内における偶然は全て彼女にとって有利に働く。

 冬木以来、二度目のフルパワーである。

 

 またとない好機、これ以上ない御膳立て。にも関わらずアテーノは苛立っている。不快感を隠すこともせず、怒りに震えながら瞳を血走らせる。

 

「気持ち悪ぃな……!!ここまでやって漸く互角……にもなってねぇ。強く生まれて、たった十二回乗り越えただけだろ?……あぁ、嫌いだよ、ほんっとにお前は……!何千回私を殺せば気が済むんだァァ……?!」

 

 剣を交えながら、英雄とは思えぬ形相で癇癪に任せた言葉を吐き散らかす。同じギリシャの英雄ではあるが、ヘラクレスとの間に面識は無かった。混乱しているわけではない。

 

 彼女が生きたギリシャには

 シャドウサーヴァントがいた。

 

 最もヘラクレスの影と因縁があったとして、サーヴァントは過去の召喚の記憶を持ち越さない。それにシャドウサーヴァントは、そんな影法師より更に朧気な断片のようなもの。憤るのも八つ当たりでしかない。

 

「半分だぞ?死にながらひたすら戦いまくって六つ。そんで当の馬鹿共は…っ!勝手に殺し合って、最後の一ストックもさっき死んだ!てめぇがぶった斬ったからなぁ!?」

 

 アテーノが保有する命のストックは六つ。

 何故かそのうち五つは戦闘以前に消滅しており、残りの一つも先程ヘラクレスに奪われている。だがヘラクレスにはあと十回試練が残っている。漸くステータスが並んだとはいえ、優位がどちらにあるかは明白だ。

 哀しきかな、彼女はヘラクレスの下位互換である。

 

 激情を飛ばす姿から一変、何か糸が切れたかのように虚ろな表情を浮かべる。何も危ない薬をキめているわけではない。幾万もの霊基がごちゃ混ぜになった第二再臨、それらが蠢き言動となって表出しているだけのこと。

 

「でも、もういい。どうでもいいんだ。それより、今は、お腹が空いてたんだった」

 

 数回の剣戟、獲物の胸には大きな穴が空いていた。

 ぱかりと、顔を大きく裂くように獣の口が開かれていた。円環状にびっしりと敷き詰められた牙から血が滴る。

 天に剣を翳せば、応えるように暴風が吹き荒れる。

 己の身体が切り刻まれようと、この腕ならば決して離さない。炎のように輝く真紅のそれは、人類史に埋もれた聖剣である。

 これまでの戦場で出し惜しみしていたわけではない。

 もっと単純な話。

 彼女が聖剣を握ったのは、この空の下だけだったのだから。

 

「無垢なる仔、無知なる獣達。例え世界に愛されずとも、私の下に集うがいい。

────さぁ、晩餐の席に付け。今こそ本能のままに貪る時だ!この聖剣が貴様を喰らう牙と知れ」

 

 嘯きこそ高らかに、

 貴方がどれだけ正しく清廉であろうとも、

 私とこの舞台に上がるのならば、

 貴方が悪で、

 私が正義だ。

 

 

「お楽しみはこれからだ」

 

 

 

 

 

 要約すると

 英雄アテーノが所有する宝具は

 『ヒーローショー』である。




「なぁ、私あの骸骨剣士に何かしたか?
 いや……、別にこっちも何かされたわけじゃないけどさ。
 一挙手一投足に文字通り目を光らせてくる!正直怖い!」
(山の翁所持)





没サブタイ
女神の食卓〜あーあ、剣がとまらねぇや〜
さすがにやめた
本当にFGO終わりが見えてきてつらいお
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