お腹がすきました。
喉がかわきました。
だから進みます。
食べても食べても、
飲んでも飲んでも、
満たされません。
他のやり方はわかりません。
そのように名前は付けられたから。
考えるほどの脳はないので、
後付けの本能に従います。
行進を続けましょう。
何れ終わる。
英雄が僕たちを殺しにやってくる。
空を埋めるだけの旅路は辛いけど、
それでも死にたくはないのです。
生まれたのですから、
幸福を望むくらいはいいでしょう。
女がいた。
英雄ではない。
足が震えている、
瞳が恐怖で染まっている。
だから何時も通りの、ただの食事。
右腕は不味そうだけれど、他は上等。
左腕を食べれば、甲高い声で泣き叫ぶ。
いやだ、助けて、聞き慣れた何時もの音。
顔を噛みちぎればようやく静かになった。
食事を終えて、行進を再開する。
女がいた。
英雄ではない。
足が震えている、
瞳が恐怖で染まっている。
だからさっきと同じ、ただの食事。
右腕は不味そうだけれど、他は上等。
左腕を食べれば、甲高い声で泣き叫ぶ。
いたい、いたい、聞き慣れた何時もの音。
顔を噛みちぎればようやく静かになった。
食事を終えて、行進を再開する。
女がいた。
英雄ではない。
足が震えている、
瞳だけは決意に染まっている。
だけどさっきと同じ、ただの食事。
右腕は不味そうだけれど、他は上等。
左腕を食べれば、甲高い声で泣き叫ぶ。
ちくしょう、まただ、怨嗟に塗れた音。
顔を噛みちぎればようやく静かになった。
食事を終えて、行進を再開する。
女がいた。
英雄ではない。
ただそこに突っ立って、
瞳は虚ろに揺らいでいる。
だけどさっきと同じ、ただの食事。
右腕は不味そうだけれど、他は上等。
左腕を食べれば、歯を食いしばって涙を流す。
今度こそ、今度こそ。何度だってやってやる。
気味が悪い。
顔を噛みちぎったのに不安は拭えない。
食事を終えて、行進を再開する。
女がいた。
ヒトではない。
全身がぐじゅぐじゅに波打って、
肉塊のような頭部が肥大化している。
だからきっと、恐れていた僕たちの運命。
右腕だけは美しく、異形とあまりに不釣り合い。
首の座らない赤子のようにぶらぶらと揺れている。
いすと、いすと、誰かの名を呟きながら。
瘤に噛み付いた誰かは英雄に取り込まれた。
行進を終える食事が始まった。
逃げる、生き延びないと。
だってまだ、お腹が空いているのだから。
ずるい。
ずるいずるいずるいずるいずるいずるい。
僕たちより醜いくせに、
僕たちは満たされたいだけなのに、
僕たちだって幸せになりたいのに、
君と僕たちの何が違うのか。
取り込まれる。
温かい。
胎内を彷彿とさせる空間。
母のように、彼女は全てを受け入れてくる。
僕たちを排斥しない。
同じだと言ってくれた。
忘れないと言ってくれた。
全部抱えて共に進んでくれると言ってくれた。
最期は一緒だと手を握ってくれた。
僕たちは飽和して彼女の内側へ解けていく。不快感は無い、寧ろ心地好い。初めから僕たちはこうあるべきだったのだ。
共に足掻きましょう。
共に幸せを目指しましょう。
共に全て食べてしまいましょう。
君が好きです。
君に尽くします。
だから、どうか、
お願いだから、
僕たちを見捨てないで。
わぎゃう