藤丸立香の聖杯鯖になるTSオリ主   作:生き恥マラミュート

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あらゆる御伽噺の祖とも言える存在。絶対的な勧善懲悪、それが「アテーノ」だ。
だが見てみろ?アレが読者達が望んだ偶像であるのならば、皮肉を通り越してもはや滑稽だ!
マスター、貴様にとって奴がどんな存在かは俺には知ったことではない。
ただ……兵器としてでなく、人間として見るのならば真実を知るべきだろう。

少年がいかに、少女となったのか。
少女がいかに、英雄となったのか。

アテーノを羽織る、人理に名が残らなかった大根役者。彼女のマスターであるのならそれを暴く責任がある。

             『とある童話作家の戒告』


貴方と私とオルレアン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくもうキリがないなぁ!!」

 

 際限なく無尽蔵に押し寄せる杭を精密に、それでいて荒々しく。狂いの無いよう切り払う。

それは決して騎士のように洗練された剣技ではなく、女が生きる為に身につけた獣の如く猛然たる剣技である。

 

 もし一手でも間違えようものならその瞬間、灼熱の杭は女を貫き風穴を開けるだろう。土俵際の状況ではあるのだが女は依然冷静さを保ち、導いた最善択を危なげなく実行する。

一閃、跳躍、また一閃。

アテーノの剣がランサーに届かないのと同様、ランサーの握る槍もまた剣技によって相殺され彼女には届かない。

 

 実力は互角。

 

 拮抗する戦闘は何方かの魔力が尽きるせまで終わらない

……かのように思われた。

 

 

「あーあ、血塗れじゃないか串刺し公。いやぁイケメンは流血すら似合っちゃうんだねぇ羨ましい」

「……随分と達者な口だ、それも道化であるなら当然か」

 

 防戦一方だった筈のアテーノを見れば軽く息こそ切らしているものの五体満足、それどころか傷一つついてない。

対するランサーは満身創痍。多量の血を流す彼の肉体はまるで何かに"噛みちぎられた”かのように抉れている。

 

 一度も攻撃に被弾していないにも関わらずランサーは消耗していた。

 

 また、剣と槍を交える中でアテーノは相対する槍兵、若しくは狂戦士の真名に辿り着いた。

ヴラド三世。ルーマニア最大の英雄、そして悪魔と謳われ、吸血鬼として歪められた無辜の怪物であり反英雄。

 

 やがて均衡が崩れ始める。

 

 敵の負傷を機としたアテーノが攻勢へ出る。

宙に描かれる剣閃は苛烈さを増し、大地を埋めつくさんばかりの杭が一斉に砕かれる。さぁ、道は拓かれた。

 

「その首今度こそ獲ったぞォォッ!」

 

 風のような速度で駆け抜けたアテーノはヴラド三世の目前へと迫る。決着はもはや着いたも同然。片や自分の勝利を、片や自分の敗北を、この時確信した。

振るわれた剣が宝具である槍を弾き、主である槍兵の元から離れ空に舞う。ヴラド三世の体制が崩れる。

 

 

 その瞬間を見逃す筈もなく、

 アテーノがとどめの一閃を放たんとしたその刹那。

 

 

 

 「あっづ………!?」

 

 渦巻く竜炎が彼女を焼いた。

 

 

 

 

 「……どういうことだ竜の魔女よ」

 寸前まで自身を追い詰めていた存在が、突如として火に包まれたことにヴラドの思考は一瞬停止する、が直ぐに思い当たり炎を放ったであろう自身のマスターに向く。

 

「どうもこうも、まだ貴重な戦力は失いたくはありませんので。武人としての誇りは捨て置き、今は大人しく退くことです。

 ……アサシン、ライダー、セイバー。三騎全員であの女を殺しなさい」

 

 バーサーカーらを統べる竜の魔女、ジャンヌ・オルタが淡々と告げる。彼女の恐ろしい程に冷酷な視線の先には、全身を業火に包まれ尚も凝然と立つアテーノの姿。膝を折ることはなく、それどころか殺意を迸らせる怪物のような有り様に警戒を強める。

 

(これではどちらが魔女か分かりませんね)

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 (……あ~…きっつい、不味いなぁこれ。あと3分…いや2分持たなそうだけど、まぁ。ここが踏ん張りどころだな)

 

 さて。この戦いには一つ、大きなすれ違いがあった。

 

 

 彼女に対しての認識が甘く、偽者だと侮っていたことは間違いではない。寧ろその逆。

 

 そもそもの話。

 カルデア召喚式を用いて召喚される英霊は全盛期の姿であれど生前、史実と比べ大幅に弱体化した状態。反乱の制圧を可能にするため、或いは召喚のコストを引き下げるため。正式に魔力リソースを受け取り霊基の拡張が行われていない以上、彼らが持つ力が存分に振るわれることはない。

本ミッションではその霊基を強化する時間が十分に無かった。

 

 

 つまるところ

 

 Lv.1の状態。

 

 

 

 それに対して立ち塞がる敵は特異点を生んだ聖杯からのバックアップを受けている。

 

 当然、苦戦は必至。

単純な力だけでなく、技量も不完全。曲りなりに勝利を収められたとしても、無傷で圧倒出来るかと言ったらほぼ不可能に近い。

 

(……あー…死ぬ、いや死なないけど)

 

 

 アテーノは深手を負っていた。

満身創痍のヴラド三世同様、英雄アテーノもまた、風前の灯火であった。

ジャンヌ・オルタが放った炎は呪いを孕み、大英雄というにはあまりに華奢な身体を蝕んでいる。

 

 では何故竜の魔女の瞳に映る彼女は五体満足で地を踏みしめ、竜炎に包まれながらも怯むことなく威風堂々と立っているのか。

 

 

 否。

 そう見せているだけである。

 

 

 炎の中で燃える彼女は敵に悟られぬよう、威圧感を強めながらも小さく口を動かし詠唱を唱える。

 

 唱えたるは幻術。凡庸で魔術の才が一切無かった少女が、唯一行使出来たごくごく低レベルな"人を惑わせるだけの魔術”。ソレは羽織る者に成るにあたって幻術として昇華された。

 

 爛れた皮膚が

 切り裂かれた肉が

 剥き出しになった鋼の腕が

 少女の顔が

 一切合切、夢であったかのように消え失せる。

 

 無論、実際に傷が癒えたわけでは無いし、絶体絶命の状況は覆ること無く続いている。

幻術をかけ終え再びアテーノを羽織った彼女が、右手に握った直剣を振ると纏わりついた炎は消え、再び相対する敵の前に姿を現す。目を見開き、口角を上げ、不敵に笑い、虚勢はいつだって大声で。

 

「さぁかかってこいよ有象無象……、我が名はアテーノ、女神の生まれ変わりにして絶対なる善の大英雄だ!!人理の敵何するもの、お前達が悪であるならば私に敵わぬ定めと知れ!」

 

「ちっ…!」

 

 放たれる威圧感にその場の大気が軋む。尋常で無い殺気にアサシン、ライダー、セイバーは恐怖に足がすくみ、まるでその場に縫い止められたかのように静止する。

 

(……まぁ嘘だけど、今かかってこられたら私普通に負けるけど!……帰れ!早くビビって帰れ!)

 

 もちろん唯のブラフだ。これ以上戦う体力なんて残っていない。追撃が来るのであれば容易く致命傷を受けてカルデアへの退去は免れないだろう。この女、「退いてくれたらラッキーだなぁ!」位しか考えていないのだ。

 

 

 

 しかし、嘯きは無駄では無かった。

 稼いだ時間。たかが数秒、されど数秒。

アテーノと三騎を隔てるようにガラスの薔薇が咲き誇る。

 

 

 

(……やっと援軍、まぁ、うん。白星ってことでいいよな。いやぁ初戦がこれじゃあ先が思いやられる!…とりあえずカルデアに戻ったらちゃんとした魔力リソース……貰わ…なくちゃ…)

 

 簡易召喚による役目は終わった。

 人々に愛された王妃、偉大なる音楽家。そんな頼もしい彼らの背中を見ながら、立香とマシュの無事を願い、アテーノは力尽きる寸前で粒子へと還っていった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「まぁ、まぁまぁまぁ!わたし幼少の頃から貴女の物語が大好きなの!手を握ってもよろしくて!?……見て見てアマデウス、あのアテーノと握手を交わしているのよ!」

 

 顔が近い。

 

「それにしてもビックリ、物語に登場する貴女よりもずっと可憐なのね!ねぇ、もしかしてわたしと同い年くらいじゃないかしら!」

 

 顔が近い。

 

 

 こちら英雄アテーノ、少し時を遡る。

 敵性サーヴァントとの戦闘で見事大勝利(?)を収めた私はカルデアへと帰還。

敵を圧倒して見せた私にカルデアの面々からは賞賛の嵐、正式な魔力リソースを無事に貰い次の出撃までアーチャーの淹れたコーヒーでブレイクタイム…

 ……という事は無く。

 

『スタッフたちが寝ず食べずの働き詰めだと知ったエミヤくんが全員の朝食を用意してくれるらしくてね!

彼は手を離せない状態なんだ。騎士王はどうなのかって?あー……、アーサー王は試食を申し出て、今厨房でエミヤくんと攻防を繰り広げているよ!』

 

 との事。

 人理の危機とは一体……???

 

 そんなことを聞かされているうちに。オルレアンでははぐれサーヴァントの助けを得て、死線を潜り抜けたカルデア一行が森の中で霊脈を確保。

拠点の護衛のため再び私が喚ばれたのだ。

 

 まぁ、うん、はい。

カルデアに戻った際、戦闘時受けた傷は全て回復している。なので任務自体は問題無く行えるのだけど、うん。

なんか腹が立つな。とりあえず帰ったら全員殴ってやろう。

 

 

 

「そこまでにしようマリア。彼女が固まっている」

「り、立香。助けて、凄いグイグイ来るこの子!」

「マリーさん一旦解放してあげて……」

 

 さて、時は戻り。

 目の前にはまるで人形のような美少女。

近い、とにかく近い。澄んだ瞳をキラキラとこちらへ向け見上げてくる。眩しい、眩しすぎる。

もしや私が疎いだけで女性同士のスキンシップというものはこのくらいの距離感が普通なのだろうか。駄目だ、相手から来られるとどう振る舞うのが正解なのか全く持って分からん。

 

「……皆さん、敵襲です!マスター、指示を!」

 ナイスタイミング…!よし、やろう」

 

 マシュの声でふと我に返る。

 同時に全員が警戒態勢をとるため自然と彼女も私から離れる。助かった。可愛い子は好きだけど慣れているかといったら別なのさ。ほら、私って純新無垢だし?

 

 話は変わるが霊脈は魔力の通り道、あてられた魔獣が集まってくるのは当然。

個人的には対サーヴァントよりこっちの方が全然得意なので有難い。慣れというヤツだ。

 

 

 

……

 

………

 

 

「君は随分と不思議な音がするな」

「音?」

 

 魔獣の掃討は恙無く終了した。

 

 その後行われた話し合いの結果、夜が明けてから行動することになった。

立香は休息のため短い時間ではあるが睡眠。

護衛のため3人を残し、残りの2人で見回り。

私は護衛側だったのだけど何やらマリーさんとジャンヌが良さげな雰囲気だったので見回りへと移った。

 

 大英雄は女の子の幸せゾーンに割り込むような野暮な真似はしない、空気が読めるのだ。

 

 というわけで今はキャスターのサーヴァントと共に森周辺の見回りを行っている。

彼の名をヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。世界屈指の音楽家、神に愛された子。

 てか、顔が強いなこの人も。

 

「チグハグで噛み合っていない。歯車、鳥の羽ばたき、仔犬の足音。とても人間の体躯から奏でられる音とは思えない。ちぐはぐ過ぎないかい?」

「すっご、そこまで分かるのか」

「ははは。天才だからね、音楽家ってだけでサーヴァントになってるんだぜ?常人には不可能でも僕には聞き取れる」

 

 森の中を歩きながら彼と言葉を交わす。

中々確信に迫る発言をされた。明かす必要も無いしとりあえず適当に暈しておくとしよう。……隠す意味も無いかもしれないけど不安要素は少ない方がいいからね。

 

「そりゃあアテーノの物語は多種多様だからな、星の数……とまでは流石にいかなくても沢山。そういう私が居たってなにも不思議じゃないさ」

 

 カルデアで調べた時に知ったのだけどアテーノを題材とした物語は世界中、様々な時代に存在する、らしい。ザッと目を通したところ真実の物語は一つとして無かったが、バリエーションが多いのは何かと便利で良い。誤魔化しやすいからな。

 

「へぇ、まぁどちらいいか。個人としてはかの大英雄から発せられる生体音が聞けて満足だ。例え君が偽者でも、かの勇者を騙るほど酔狂なヤツの音色ってことでそれはそれで」

「うわ気持ち悪」

「ハハハ、音楽家なんて全員変人さ」

 

 これセクハラじゃないのか。音…音……オトハラだ。

私は別に構わないが純粋無垢マシュが心配だ。……いやセクハラされるマシュの反応は唆られるかもしれない。

 

「ロクでもないこと考えてないかい?僕もアレだが君も大概じゃないか?」

「失礼な、大英雄様だぞ。セクハラされる女の子に興味があるわけないだろ……と、念の為ここらへんに……」

 

 どれほど効果はあるか分からないが認識阻害の魔術をかけておく。無いよりはマシだろう。

うん、第一霊基にしては中々精度が高い。生前この姿だった時はもう少し拙かった筈。これもプリテンダーとして登録された影響だろうか。他の英霊、特に武芸に秀でた英霊の多くはサーヴァントに至る際に規格に収めるため弱体してしまうらしい、が私は違うようだ。伝承により強化されている点では隣の彼に近いのかも。

 

「器用だな、どれ。僕も遮音の魔術を少し」

「ヴェッ、魔術使えるのお前」

「音楽の為に嗜んだだけさ。……そうそう、魔術で思い出したが周りには君の召喚に一生を賭けた人間もいたな」

「馬鹿じゃんそいつ?」

「だろう?だけどそれ程アテーノという主役は憧れだったのさ。当時のマリアだって例外じゃない、君とジャンヌの話を僕が何度聞かされたか!」

 

 どうやら、自分が思っている以上に私という英雄は歪曲されてしてしまっているらしい。

民衆のイメージにより、過去や姿がねじ曲がってしまった英霊を"無辜の怪物”と呼ぶ。ならば勇ましき英雄として崇められるアテーノはさしずめ"無辜の英雄”と言ったところか。

 

「そんなの知ったこっちゃない……ん…?なぁ、アマデウス。何か聞こえないか」

「しまった、君の異音で少しばかり耳がズレてた。魔術の発動前に侵入されていたかなコレ」

「私のせいかよ!?」

「急いで戻ろう、昼間に居たサーヴァントだ」

 

 耳が良い彼にとって私の中身はさぞうるさいだろう。反射的につっこんでしまったが十中八九自分のせいで間違いない。でも大目に見て欲しい、彼らがいて私は初めて万全なのだから。

 

 さて、敵襲だ。

苛烈に、華々しく勝利を収めて立香にかっこいいところでも見せてやりましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 あーーー。

 

 

 あーーーテステス。

 

 ……うん、よし。

 

 

 紡ぎましょう少年の物語を。

 語りましょう人類最後のマスターの物語を。

 オルレアンにて彼ら、カルデアの描いた軌跡を。

 

 偽りなく、ありのままの記録として、自分は旅路を謳うのです。

 

 

 霊脈を確保し、彼女が喚ばれたその後の話。

一行は人理奪還を果たす為、特異点そのものに呼ばれた英雄と合流した。

はぐれサーヴァント。

 

ジークフリート、ゲオルギオス、エリザベート、清姫。

 

 国も時代も異なる者達。民に応え続けた竜殺し、人々に恐れられ畏怖の対象であった反英雄。

在り方は違えど、等しく人理を取り戻す為集った彼らは藤丸立香と共に、オルレアンという大地を駆け抜けた。

 

 ……自分はこの特異点を"運命との戦い” だったと思います。

 

 エリザベートとカーミラ

 サンソンとマリーアントワネット、アマデウス

 ジークフリートとファヴニール

 

 聖女ジャンヌと竜の魔女ジャンヌ。

 

 誰もが己が運命を乗り越え、少年の道を切り開かんとその仮初の命を賭した。そしてその願いが確かに届いた。

 

 

 カルデアは見事、敵を打ち倒して聖杯を回収しました。

 果てしない旅路のごくごく一部。それでも確かに彼は人の営みを、世界を救ったのです。

 

 ………本特異点における聖杯は竜の魔女自身だった。

 彼女の死を嘆き、世界を恨んだ一人の男が聖杯から創り上げた幻想。

 愚かな愛、醜い愛だ。エゴイズムに他ならない。

 

 それでも、それでも。恥ずかしながら気持ちは分かるのです。

 

 彼と自分は似ている、悍ましい程に。

愛した者の死を受け入れず聖杯に新たな生を託した。

 

 ……………はぁ。

 ……脱線していましたね。

 

 

 

 ともかく、七つのうち一つ、第一特異点。

 

 邪竜百年戦争 オルレアン。

 

 これにて定礎復元。

 

 

 

 

 




嫌いなもの
「もちろん、平和を脅かす悪性。そして人理の敵!
というのは大前提だから置いておいて、
天才で努力家のくせに、やたらと卑屈な奴かな」


 ◇◇◇◇


【挿絵表示】
 
【挿絵表示】


 めちゃくちゃ早いですがオルレアンはこれで終わりです。オリ主が特異点に同行していない以上原作の流れと変わらないので大幅に割愛しました。
ロンドンから全ての特異点に同行させたいと思っています。
次の話がようやくTS要素になります。ずっと書きたかったやつ~!
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