救いの無い話は好きですか?
救いのある話は好きですか?
このお話はオリジナルであり二次創作であり■次創作です
彼の名前には貴方が思っている最高のヒーローをつけて上げてください。
私が初めて聞いた声は舌足らずの、常人であれば聞き返す程に小さな....そんな声だった。
下半身は血煙となり、残った上半身は『ナニか』と混ぜられ辛うじて人であったかもしれない名残がわかる程度....怪物の様にしか見えない誰かは恐らく微笑みながら眠っていった。
私の自我は、誰かの
物語にはどうしようも無いBADENDが存在する。
主人公の死、ヒロインの死、人類絶滅、世界崩壊....多くの作者によって書かれるソレ等は世界中に幾らでも存在し見たことがある人間は多い筈だ。
視点を変え、設定を変え、媒体を変え、ありとあらゆる世界で描かれる無限の物語はこれからも無限に増え続けていく事だろう....そしてそれは世界も変わらない。
創作物の世界は存在する。
作者が描いた世界が新たに創られるのか、既にある世界から何かを受け取った作者が世界を描くのかは解らないが人間が創作物だと思っている世界は全てが存在する世界だ。....それがどんなに救いの無い世界であっても。
「また........!」
また、そんな世界に呼び出される。
赤黒い血のようなモノが地面全てを埋め着くし、肉の塊の様な人間だったものが這いずる異形な世界。
───助けて
そんな思念ばかりが渦巻く手遅れな場所ばかりに私は呼び出される。
『
それが私という事象の名前だ。
悲劇を見た誰かが、悲劇にあった誰かが、悲劇を記した誰かが、無限に広がる世界の無限の誰かが願ったせめてもの救いを実行する事象。
何処までも都合の良い、誰かが可哀想だと思った悲劇に最後の救いを与える自己満足の化身が私だった。
「すまない....」
右の腕に力を込め振るう。それだけで周囲にあった人だった彼らは形を失い消し飛んだ。
「すまない....!」
変異、増殖、永遠、不滅、不死....彼等をこんな姿にしていたモノが全てを彼等ごと消し飛ばす。
痛かっただろう、苦しかっただろう、悲劇などでは到底表せない彼等の状態を私は殺す事でしか救えない...。
そんな彼等は死ぬ瞬間に、死んで還るその時にすら恨み言すらなく皆揃って私に礼を言うのだ。
こんな事になるまで手が出せない所詮誰かの自己満足の化身でしかない私に....ありがとう....ありがとうと。
「........これ....か」
私はソレを見上げる。
脈動し赤黒い液体を産みだし続ける血管で出来た枝を世界に張り巡らせ、幹を巨大な心臓で造り上げた上が見えない程の血の大木........それがこの悲劇の始まりだったのだろう。
そして私をこの世界に呼んだのも『彼女』の筈だ。
───ころして
巨大な心臓の中心部辺りから発せられる思念は樹木と融けきり最早私でさえ聞き取る事が難しくなってきている。
「........ッ!!」
右腕力を込め振るう。 八つ当たりでしかないであろうが全力で。
あらゆる汚染が一瞬で蒸発し、大木が悲鳴の様な音をたてながら消し飛ぶ。
───ありがとう
大木がもたらした全てが消え去り荒野とすら呼べない真っ平らな世界に光が降り注ぐ。
光輝く雪の様にすら見えるそれは汚染された部分が消え去り、形を維持出来なくなった魂の欠片であり世界の破片であった。
何度も見た光景だ、一つの世界が余りにも修復が難しく破壊され次に進めなくなった場合に起きる世界の再創造。
それは世界全てを材料にしたモノでありこの世界のモノたちからすれば世界の消滅と何も変わらないモノだ。
「また私は........何も....ッ! 何もォオ!!」
両腕を地面に叩きつけ叫ぶ。
こんな手遅れになって全てを消す事の何が救いだ。
殺す事で一体何が救えるのか、消す事で一体何が救えるのか....こんな結末になって良い理由なんて何処にもありはしないのに。
私は次の世界に呼ばれるその時まで、己の無力を嘆き続けていた。
ありがとうやさしいひと
ありがとうやさしいひと
わたしたちはあなたにすくわれた
だれもすくってくれないわたしたちをあなたはすくってくれた
ひげきあれとねがわれたわたしたちをなんどもすくってくれた
なみだをながしなんどもすくってくれた
だからこんどはあなたがすくわれるばん
あなたがすくわれるようにねがいつづける
だからわらってわたしたちのひーろー
私はあれから何度も同じことを繰り返した。
悲劇が起こってからしか動けず、何かを消す事でしか介入出来ない。 割り切る事も出来ず、かと言って出来る事が変わった訳でもない。
ただ、繰り返す内に口数は減った様な気がした。
視界が切り替わる、世界が切り替わる。
何度目か数えた事のすらなかった慣れた感覚が私を次の世界へと連れていく。
「........?」
森の中に私は呼ばれた。
緑生い茂る普通の........燃えている訳でも変異している訳でも無い普通の森だ。
突然現れた私から逃げた小動物も襲って来る様子は無く私が害にならないと感じたのか興味を失った様子だった。
今までに比べれば....そう、余りにも平和だった。
───助けて
飛べ....なかった。
何時もの様に身体を動かそうとして身体が妙に重い事に気づく。
初めての経験だった。 上限無く速く動ける肉体は何時もと比べれば余りにも遅く、ゆっくりとしか動いてくれない。
明らかな異常事態に驚きこそしたが進めない訳ではないのだ、重い身体を引き摺りながら進む。
どうせ手遅れなのだから....という考えは私には無かった。
「一体....どうなって........」
聞こえた思念を頼りに全力で進むが重さが増していくのを感じ息が上がる。 私の速度が既に猪や鹿でも追い抜かせる程に遅くなっているのが自分でも解ったが止まるわけにはいかない。
更に力を入れ踏み出そうとしたその時だ。
声が聞こえた
下がっていた頭を上げ前方を見る。
有り得ないと思っていたソレに心臓がうるさい位に鼓動していた。
巨大な大男、異形の向こう側に....小さな少女。
生きている、走っている、思念ではなく声が聞こえる、手や足から出血こそあれど手遅れと呼べる様な怪我は何一つとして無い!
助けなければならない、絶対に!
激情のままに身体を動かそうとして初めて気付いた。
力が入らない、足が動かない。
腕も、指すら動かせなくなっていた。
思い付いた原因は一つだけ、『
誰かが願った救いは誰かが悲劇を観測しなければ成立しえない。
「ふざ....けるな........」
誰かが望んだ救いは誰かが望んだ悲劇が起きなければ望まれない。
「ふざけるな........!!!」
誰かが可哀想だと思った悲劇に最後の救いを与える自己満足の化身は悲劇が起きる前には存在出来ない。
「ふざけるなァァア!!!」
身体に力が戻る、自分の中の何かが変わっていくのを感じるが....今までとは比較ならない程の何かが私を縛り付けているのを感じる。
私が手間取っている間にも状況は悪化する。
逃げていた少女が躓き、転んでしまう。
元々縮む一方だった異形と少女の距離はすぐさま無くなり、 異形は転んでしまった少女に向かって既に拳を振り下ろそうとしている。
引き延ばされた時間で彼女の声は私に届く。
「誰か....助けてよぉ....!」
動きを止めた世界。
何かが引き裂ける感覚。
多くの手が、確かに、私の背を押した。
───行って私達のヒーロー
それから無限に増え続ける数多の世界で、描かれる創作物に都合の良いヒーローが登場するようになった。
誰かが襲われたり絶望したり死んだりしそうな話になると必ず本当に手遅れになる前に現れてどんな悪でも倒してくれる....そんなヒーローだ。
どの地域どの国どの世界であっても必ず似通った姿で描かれるそのヒーローに、いろんな人が首を捻っていたが結局解らないまま浸透していき....やがては昔の作品にも登場させるようになっていった。
数多の世界を救い続ける誰にも負けない皆のヒーローその名前は───
最後のセリフは貴方が思っている最高のヒーローのセリフを言わせて上げてください。