ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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ぷろろーぐ
序章 俺の彼女はジャンヌ・ダルク


「──ボク、ヒーローなんだ!」

「・・・・・・は?」

 

 小学校入学から八年とちょっとの間、常に行動を共にしてきた相棒兼幼馴染み兼初恋のボーイッシュ女子に、ある日突然こんなことを言われればどんな人間だって、俺の様な反応をするだろう。

 

 親兄妹を目の前で事故によって亡くし、弱冠四歳で施設入りした俺は、自分でもかなり肝が据わっている方の人間だと自負している。──そんな俺は今、家代わりの施設の近所の公園で、そんな衝撃的なカミングアウトをされて驚いて・・・・・・いや、呆気にとられている。

 

「だから・・・・・・ボク、ヒーローなんだ! ──何回も言わせないでよ。これ実は言っちゃいけないことなんだからね?」

 

 そんな俺に、目の前のこいつ──もとい、有馬望愛(ありまのあ)は再度カミングアウトする。瞬間、俺の中で一つの結論が出た。

 

「エイプリルフールなら一ヶ月も前に終わったろ?」

「え、もう五月だっけ! ボクちまき好きなんだよねぇ・・・・・・じゃなくて! ウソじゃないんだってば! 正真正銘、ボクはヒーローなんだって!」

 

 マジか。確かに望愛はウソついたりするのは苦手なタイプだ。それに、たとえウソをついていたにしても、この八年間寝食を共にした俺が見破れない訳がない。望愛は嘘をつくとき、決まって頭の後ろを掻くのだ。俺は多分、この世の誰よりも望愛のことを知っている。無論、何ら他意はない。ただ、第三者目線でみたときの話だ。もっとも、ここ最近は話す機会が減ってしまったが。

 話を戻そう。・・・・・・ならばこれは夢か?

 

「・・・・・・望愛、ちょっとほっぺつねってくれ」

「? わかった。えいっ!」

 

 ・・・・・・やだ、普通に痛いわ。泣いちゃう。この子こんなに強くなったのね。つまりこれは、夢でも何でもない。現実なのだ。そう、これは現実なのだ。つまりこの世に、ヒーローは実在していたのだ。

 そう考えると、ここ一年の望愛の奇妙な行動も全て合点がいく。俺を置いて突然黒服とどっかに外出してニ、三日帰らなかったりだとか、帰ってきてもアザだらけ傷だらけになってくるとか、ずっと暗い顔してるとか・・・・・・何か隠し事をしてるとか。

 

「って、なげぇよ! ほっぺもげるわ!」

「わっ! ごめん。・・・・・・でもこれでわかった? ボクが本物のヒーローだって!」

「・・・・・・もしかして誰にも、そのこと言ってなかったのか?」

「うーん。でも、先生達は知ってたみたいだよ?」

 

 ここで言う先生とは、俺達の親代わりの施設職員の事だ。

 

「先生達と、俺以外には?」

「言ってないよ? ナオには特別に教えても良いって言われたから!」

 

 ・・・・・・つまり今まで、たった一人で望愛は戦ってきたと言うことか・・・・・・? 孤独の中で、傷つきながら、たった一人で。そうとは知らずに俺は外出のことや、傷のことを隠す望愛に辛く当たってしまった。距離を取ってしまった。──正直今は、目も合わせられない。なにが相棒だ、幼馴染みだ、なにが誰よりも望愛のことを知っているだ。俺は何にも、知らなかったのだ。

 

「・・・・・・ごめんな。俺、お前の事何にも考えてやれなかった」

 

 視界がぼやける。涙の奴が込み上げてきやがる。

 みっともないことこの上ない。泣きたいのはきっと、一人で戦う望愛の方なのだろうに。情けなくてしょうがない。

 

 

 そのとき。さっきまで正面にいた望愛が、俺を優しく包み込む様に抱き締めてきた。俺は驚いて、涙が引っ込んでしまった。・・・・・・そして、そんな俺に望愛は、優しくこう言った。

 

「ナオは悪くないよ。何にも言わなかったボクが悪いんだ。・・・・・・ねぇ、ナオ。また、前みたいに一緒にいてくれる?」

 

 ――この瞬間、俺は心に誓った。ヒーローとして人々を守る彼女(望愛)を、なにがなんでも俺が絶対に守りきることを。そして今、俺達は・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナオ~。暑い~」

「暑いならくっつくなよ・・・・・・」

 

 

 交際をしている。

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