ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第九話 事情聴取と書いて、ファッションショーと読む

「おぉ~。お二人さんよく来たなぁ~。上がってけぇ」

 

 インターホンを鳴らすと、ヤスは朗らかにそう言って登場した。

 

「よく来たなじゃねぇよ! ありゃなん

だ!」

「ヤスん家久しぶりに来たぁ~。お邪魔しま~す!」

 

 翌日、俺達は突然超ド級爆弾を投下した犯人の家に押し掛けた。・・・・・・望愛さん、あんたちゃんと目的覚えてる?

 

「ポテチ何が良いぃ?」

「コンソメっ!!」

「望愛は相変わらずだなぁ~。ジュースはぁ?」

「サイダーっ!!」

「俺コーラ」

 

 ポテチにはやっぱりコーラだろ?

 

「あいよぉ~」

 

 ヤスはサイダーとコーラの二リットルペットボトルを冷蔵庫から取り出し、コップと共に俺達に手渡す。

 当の本人はコンソメ味のポテチの袋と取り皿をもって、俺達を自室へと先導した。

 

「ほら、上がってけぇ」

 

 ヤスはそう言って扉を開ける。そこには・・・・・・

 

「おぉー! この部屋懐かしいねー!」

 

 大量のスカートや女性モノのTシャツ。果ては全く知らない学校のセーラー服や女子生徒用のブレザーなんかがところ狭しと壁に掛けられた、おおよそ男の部屋とは思えない光景があった。

 ・・・・・・相変わらずヤスの部屋は縮小版婦人服専門店みたいだなぁ。

 望愛はそんな部屋を目をキラキラさせながら見渡す。

 

「・・・・・・お前も相変わらずだなぁ」

 

 人の趣味にとやかく言うつもりはない。無いが、なんと言うか、目のやり場に困る。思春期男子には心臓に悪い部屋だ。

 

「ファッションと恋愛に性別は関係ないってのが俺のポリシーだからなぁ。ほら、そこ座ってぇ」

 

 俺達は促されるままに用意されたクッションの上に腰掛ける。

 にしてもこれだけ大量の服が集められているのだ。やはり、気になってしまうだろう。

 

「・・・・・・これ、いくらかかった?」

「・・・・・・家が金持ちで良かった、とだけ言っとくわぁ。そもそも、値段見て買わねぇなぁ」

 

 俺の問いに、ヤスは悪代官さながらの笑みで答えた。だが、不思議と小汚なさのようなものは無い。

 

「ヤスん家って凄いねぇ・・・・・・」

 

 望愛はやっぱり目をキラキラさせて、ぽかーんと口を開けながらキョロキョロ見渡している。

 流石は一流企業、赤穂商事の御曹司。言葉の重みが違う・・・・・・。

 

 俺達は部屋の壁一面に掛かる服を見回・・・・・・って、マイクロビキニって本当に実在したのか。これを望愛に・・・・・・あぁ、余裕で死ねるわ。

 

「望愛、これ着てみ?」

 

 俺はビキニを指差して望愛に提案する。

 それを見た望愛は一瞬頬を赤くすると、ジト目でこっちを睨んできた。

 

「・・・・・・えっち」

 

 デスヨネー。

 

「ねぇナオ、あれってもしかして・・・・・・」

 

 すると次は望愛がちょいちょいっと、俺の服の裾を引っ張り、別の服を指差す。

 ん? どれどれ・・・・・・

 

「おぉぉ・・・・・・」

 

 いかん。思わず声が出てしまった。

 望愛の目線の先には、メイド服があった。白いフリフリやエプロンなんかがついてるステレオタイプのメイド服。現代の男ならば誰でも夢に見たであろうそのコスチューム!

 ・・・・・・絶対可愛い。命に関わるレベルで。

 

「・・・・・・死ぬなぁ」

「え!? なんで!?」

 

 俺の呟きに望愛がビクッと驚き、反応する。当たり前だろう。

 

「だって、望愛が着たら可愛すぎるだろ?」

「なんでボクが着る流れになってるの!?」

 

 え? 着ないの?

 そんなとき、鶴の一声。否、ヤスの一声がかかった。

 

「そりゃ望愛が着ないとなぁ。一回着てみぃ?」

 

 ニコッと微笑み子首をかしげるヤス。男も女も悩殺するその笑みに、勝てるものはいないのだ。

 

「ヤス!? ・・・・・・もぉー、分かったよぉー。バカ」

 

 結局望愛は、押しきられる形で渋々メイドコスを認めた。我らの勝ちだ!

 

「ヤス、ありがとう・・・・・・」

 

 ヤスと俺はニヤッと笑ってグッジョブする。持つべきものは趣味嗜好に理解のある友だと今、確信した。

 

「普通に着れると思うけど、難しかったらこのメモに従ってなぁ。あ、あとこれはオマケ」

 

 そう言ってヤスは何処からともなく取り出した小さなメモと小包を渡した。

 

「うん・・・・・・。っ!? ほ、ほんとにこれ付けるの?」

 

 望愛はその包みの中を見て赤くなる。・・・・・・なんだ? 何が入ってる?

 

「おう」

「えぇー・・・・・・」

「ほらほらナオ、レディーの着替えを邪魔しちゃ悪いから退散するぞぉー」

「おいヤス、今なに渡した?」

「秘密ぅー」

 

 俺は押しやられる様に、部屋を後にしたのだった。

 

 

 

「てか、ヤスが手伝ってやったら良かったんじゃねぇのか?」

 

 ヤスなら着替え云々は手馴れているだろうし、どうせなら手伝ってやったら良かったのに。

 

 部屋から退散した俺達は、ヤスの家のリビングにいた。一流企業の家だと言うのに、かなり庶民的だ。

 

「いや、俺男だぞぉ?」

 

 え? あ、

 

「あ、そっか忘れてた」

「地獄と天国、どっちが好みだぁ?」

 

 瞬間、部屋にほとばしる静かな怒気。但しそんなに怖くない。ちっこいペンギンが怒ってても誰も怖がらないのと一緒だ。

 

「望愛と一緒ならどこでも天国だ」

「リア充がよぉ・・・・・・」

 

 ヤスはそう、恨めしげな声でそう言った。

 

 ヤスはいわゆる男の娘と呼ばれる人種だ。可愛いもの好きが高じてそうなったらしいが、元々の線の細さと色白肌かつ、その端正な顔立ちのお陰もあり、コスチュームをまとっていると本当に女性にしか見えない。

 ・・・・・・望愛が居なければワンチャン恋してたレベルだ。

 ちなみに今のこいつの服装はブカブカのペンギンさんパーカー。全身丸々すっぽり覆うタイプのあれだ。歩きづらくねぇの?

 

「んで、突然あんなメッセ送ってきた理由を今のうちに聞かせてもらおうか?」

 

 一段落ついたところで、俺は本題に入る。

 今のうちに本題に入っておこう。・・・・・・望愛のメイドコスを堪能するために、後顧の憂いは絶っておきたいとかそう言うわけじゃないからな?

 

「あー、あれなぁ。俺の趣味だなぁ」

 

 俺の言葉に、ヤスはあっさりとそう答えた。

 

 は?

 

「は?」

「いや、だって考えてもみろ? てぇてぇ高校生イチャラブ同棲幼馴染みカップルが目の前に居るんだぞ? そのラブラブっぷりをこの目に焼き付けたいと思うのが普通ってもんだろ?」

 

 ヤスは早口でそう解説し、自分の正当性を訴える。

 忘れてた。こいつも兄貴と同類だった。

 

「その気持ち悪い名称を今すぐやめろ。・・・・・・てかついてくるつもりだったのか!?」

「いや、後をつけるつもりだったぞぉ? 邪魔しちゃ悪いからこっそりなぁ・・・・・・」

 

 そう言いながらヤスは懐から小さなカメラを取り出して見せる。

 

「・・・・・・俺は今とんでもないぐらいお前が怖いわ」

「壁に耳あり障子に目あり、だぞぉ?」

「ちょっと距離置こ」

「逃がさないぞぉ?」

 

 やだこの子、怖いわっ! 誰かー、へるぷみー!

 

 

 そんなとき、俺に救世主(ヒーロー)が現れた。・・・・・・文字通り。

 

「ナオ~、ヤス~! 着替え終わったよぉ~!」

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