ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第十四話 海の底だって覗けるんだ

「ぷか~」

「楽しいか?」

「楽しー」

「そりゃよかった」

 

 緊張の一幕を何とかくぐり抜け、ようやく海に入った俺達は今、浮かんでいる。もう少し的確に言うと、浮き輪を使って浮かんでいる望愛を、俺が流されないように摑んで立ち泳ぎしている。漂流している、という言い方でも良いかもしれない。

 望愛は海水に浸かりながらのへ~っと腑抜けた顔をして、海を楽しんでいる。・・・・・・まぁ、こういう楽しみ方もありっちゃありか。

 

「一回海の中覗いてみ? 魚いっぱいいるぞ?」

「・・・・・・ナオ、ボクが水の中に顔つけるの嫌いってこと知ってて言ってるでしょ?」

 

 望愛はムスーッとした顔をして、ジト目で俺を見る。ならなんで海に来た! まぁ、誘ったのはこっちからなのだが。

 だがしかし、こちらにはとある秘密兵器があるのだ! ふっふっふ、さぁ! 驚くが良い!

 

「てってれー、箱メガネ~!」

 

 そう言って俺は、海面にそれを持ち上げてくる。望愛にばれないように、こっそり隠し持ってきていたのだ。聞いて驚け! こいつはなんと、顔を水に浸けなくても水中を自在に覗けるのだ!

 

「へぇー! こんなのあるんだ!」

「この前買い物行ったときにたまたま見つけたんだ。これなら顔も濡れないだろ? ほら、覗いてみな?」

 

 俺は箱メガネから水を抜いて、それを望愛に渡した。

 

「うんっ!」

 

 望愛は少し前に乗り出して、箱メガネに顔をつけて覗いた。すると、

 

「うわぁー・・・・・・! すごい! ねーナオ! 凄いよこれ! お魚いっぱいいる!」

 

 まるで初めて海を知った人間のように、大興奮してこっちを見てくる。そんなに喜んでくれるとは、持ってきた甲斐があったなぁ。──よし、少しイタズラをしてやろう。

 

「ちょっとそのまま覗いててみな! 面白いもの見せてやる」

「えー! なになに!?」

 

 それはもちろん、

 

「ひ・み・つ」

 

 だ。

 俺はそう言うとゴーグルを目に装着した。望愛は既に箱メガネにかぶりついていて周りが見えていない。ぐへへ・・・・・・望愛の驚く顔が目に浮かぶわ! 俺は望愛からほんの少し離れて息を大きく吸うと、静かに海に潜った。

 

 海中は、都市近郊の海だと言うのにも関わらずかなり美しい。これなら毎年ウミガメが産卵しに来るのも頷ける。

 小魚達も元気に海を泳ぎ回っている。いかん、腹が減ってきた。

 

(さて、それじゃ早速望愛を驚かせに行くか)

 

 俺はさらに少し潜り、徐々に望愛のすぐ下へと接近する。どうやら望愛はまだ気付いていないようだ。能天気に海中を眺めているのだろう。可愛い奴め。

 俺は徐々に徐々に近づいていく。もうそろそろ望愛の視界に入る頃か? ・・・・・・よし、作戦決行だ! 俺は一気に水を掻き、望愛の覗く箱メガネの底面に潜り込んだ。

 

「うわぁぁぁぁ!?!?」

 

 突然視界の外から、隣に居るはずの俺が現れたことで、望愛は目を丸くして、海中にも響き渡るほどの大声をあげて驚いた。その顔、レンズ越しに丸見えだぜ?

 

「──ぷはっ! どうだ、ビックリしたか?」

 

 俺は海面に顔を出して、ポカンとしている望愛にそう聞く。あー愉快愉快! にやにやが止まらんなぁ!

 

「そりゃビックリするよ!! ずっと隣に居ると思ってたらいきなりレンズの向こうに飛び出してきたんだよ!? いつの間に潜ったの?」

「望愛が箱メガネつけて覗いたちょっと後にこっそり潜ったんだ。どうだ、上手かったろ?」

 

 中学の時は陸上部だったが、泳ぎは案外得意な方だ。少なくとも望愛には遅れを取らない自信がある!

 

「ナオってほんとに泳ぐの上手だよねぇー」

「逆にこれ以外で望愛に勝てるもん無いからなぁ」

 

 望愛、水泳以外は完璧なのにどうしてこれだけは出来ないんだろうか・・・・・・。永遠の謎だ。

 

「・・・・・・今度また、泳ぎ方教えてくれる?」

「なんなら今からでも良いぞ?」

「えー、今からはちょっと・・・・・・」

「えー」

 

 そう言って俺達は顔を見合わせ、笑いあった。

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