ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第十五話 いっぱい食べる君が好き

 それからしばらく漂流、もとい海水浴をした俺達は、望愛が飽きてきた頃合いを見て砂浜に引き上げた。

 

「ねーナオ、次何する?」

 

 パラソルの下で小休止をしていると、望愛が仔犬の如く目をキラキラさせながらこっちを見てきた。尻尾が生えてたら後ろの人は大変だろう。砂と風で凄いことになってしまう。

 

「次か、何したい?」

 

 お昼寝なんてどうですかお嬢様? 俺はもう付かれ申した。・・・・・・真夏の海で泳ぐのがこんなに疲れるとは思っても見なかった。

 

「んー、ご飯!」

「お腹空いたの?」

「うん! お腹空いたー!」

 

 何故ちょっとドヤ顔? ドヤれる要素一ミリも無いからな? 可愛いけど。

 

「もう十二時過ぎか。こんなこともあろうかと、実は作ってきてたりするんだな!」

 

 そう言って俺は荷物の中からそこそこ大きな弁当箱を三箱取り出す。プラスチック製の、使い捨ての奴。その様相はまるで運動会さながらだ。

 

「おおー! 美味しそう!」

「腕によりをかけて作ってみました! これが焼きそばで、こっちが唐揚げ。そこは卵焼きと、ポテサラにコロッケ。ソーセージもあるぞー」

 

 今回弁当に選抜したこの料理達は、全部望愛の好物だったりする。望愛は食いしん坊なのだ

 この俺、実はこれでも案外料理は得意だったりする。望愛も全くしないわけじゃないんだが、同棲始めてからは朝昼晩三食ほとんど俺が作っているかもしれない。

 ・・・・・・余談だが、洗濯掃除も俺の仕事だ。率先して俺がやってることとは言え、徐々に主夫になっていくのが肌でわかるのは、なんか言い表せないものがある。まぁ、生きていくのに困らないからそれで良いんだが。

 

「ジュースはこっち。はい、コップ」

 

 俺はクーラーボックスから望愛の大好きなサイダーを取り出し、コップと一緒に手渡す。我ながら用意周到さが恐ろしいぜ(ドヤッ)。

 

「ありがと! それじゃ、いっただっきまーす!!」

 

 コップにサイダーをなみなみ注いだ望愛は、ウェットティッシュできちんと手を拭くと、そう言って手をあわせて食事を始めた。

 

「んー!! これすっごい美味しいよ!」

 

 最初に唐揚げを口に頬張った望愛は、そう言って目をキラキラ輝かせる。じゃんじゃん食べてけー。まだまだいっぱいあるからな。

 

「お、ほんと? んじゃ俺も、いただきます」

 

 そう言って俺も唐揚げを食べてみる。うん、かなり上手く出来た。百点に近いのでは無いだろうか。

 

「──!! 卵焼きもおいしー!! え、どうやって作ったの?」

 

 おっと望愛さん、良いところに目をつけたな。

 

「望愛さん卵焼きは甘いのが好きだろ? だからいつもよりちょっと多めに砂糖を入れてみた」

「最高だよー! ナオってやっぱり天才!?」

「ばれてしまったか」

「ばらしてしまった」

「いつの間に!? ってか誰に!?」

 

 そう言いながらも、望愛は次々と口の中に頬張っていく。まるでリスかモルモットみたいになってる。可愛い。こう言うのを、いっぱい食べる君が好き、と言うんだろうな。こんなに旨そうに食べられると、つい多く作っちゃうからなぁ。しかもペロッと平らげるし。望愛の胃袋は無限に物が詰められるのではないか?

 

「ほいひー!(訳・おいしー!)」

「そりゃよかった。ほら、まだまだあるからなー」

「うん!」

 

 望愛は大きく頷いた。食べ物達がみるみるうちに吸い込まれていく。省エネ人間の俺と違って、望愛は代謝がすこぶる良いのもあるんだろうなぁ。常にお腹空かせてるし。「ボクは一食抜いたら餓死するからね!」とは、望愛の談だ。それが満更嘘でもないのが恐ろしいんだが・・・・・・。そう言うこともあって、望愛の食事はかなり高カロリーに作ってたりする。他のヒーロー達も同じなのだろうか?

 

「焼きそばうまぁー・・・・・・」

 

 今は何も考えないことにしよう。可愛い彼女の可愛いお食事シーンだ。楽しまねば、損と言う物だろう。あ、そうそう。あれを出すの忘れてた。

 

「デザートもあるぞー」

 

 俺は弁当と同じ荷物から、シフォンケーキと、ホイップクリームを取り出した。

 

 

 

 ──このまま何事も起こらなければ、ただの楽しいデートだった。波乱の足音は、すぐそこまで迫っていた。

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