ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第十六話 波乱は突然訪れる

 ──突如、砂浜に叫び声が響き渡った。

 

「うっ・・・・・・!」

 

 耳をつんざくほどの大きな金切り声に、俺は耳を塞いだ。

 金切り声は一分以上に渡って砂浜に鳴り響き、そして突然止んだ。

 

「ナオ・・・・・・」

 

 望愛が俺の方を振り返る。直感的にわかったのだろう。きっとここには、怪物がいる。──そんな寂しそうな顔すんな。また今度、一緒に来ればいい。まだ夏休みは、半分残ってる。

 

「夏休み終わるまでにもう一回来よう。兄貴には俺から連絡入れとくから。はい、これ」

 

 俺はここに来るときに来ていたパーカーを望愛に渡す。顔バレ防止と言う奴だ。効果は薄いだろうが、無いよりかはよっぽどマシだろう。

 

「そんな顔すんな。ほら、シャキッとしろ! 大丈夫、ここ片付けたら俺もすぐ行くから」

「ナオ、ごめんね」

「謝んな。望愛が悪いわけじゃないだろ?」

 

 そうだ。悪いのは、望愛にヒーローと言う重荷を背負わせたこの国であり、世界だ。

 

「それに、たまにはこんなドキドキなデートも悪くないだろ?」

 

 俺がそう言って笑顔を作ると、望愛の表情も少し緩んだ。そうそうその顔。固い顔より、柔らかい方が望愛には似合ってる。

 

「ナオ、ドキドキってそう言う意味じゃないと思うんだけど?」

 

 ありゃ? まぁ良いや。

 

「こまけぇこたぁ良いんだよ。・・・・・・行ってらっしゃい。まずは人混みに隠れて偵察、だぞ?」

「うんっ! 行ってきます!」

 

 俺達はそう言ってハグをする。水着同士、肌が触れ合う。なんかちょっと恥ずかしい・・・・・・。

 望愛は俺から手を離すと、パーカーを羽織り、フードを被って颯爽と砂浜を駆け抜けていった。

 良いところで邪魔が入るのはいつもの事だ。もちろん、良い気はしない。するわけ無い。俺はすぐにスマホを取り出し、兄貴にかけた。電話は、驚くほど早く繋がった。

 

「兄貴」

『わかってる。今機動隊を向かわせた。俺もすぐそっちに行く』

 

 どうやら兄貴も移動中らしい。かなり焦っている様子だ。

 

「りょーかい。望愛のマチェットとスーツも頼む。それと、後で一発殴らせろ」

『顔は止めてくれよ?』

「考えとく」

 

 俺は言い終えるとすぐに電話を切った。これ以上話すことは無い。俺は荷物を片付けて始めた。

 

 今までこう言うことが無かったわけではない。デート中に突然呼び出されることはしょっちゅうだったし、そこからいきなり三つ県をまたいだこともある。それでも、まさかこんなすぐ近くで現れるとは思ってもみなかった。

 

 

 ──怪物の正体は、人間だ。

 

 

 ある日突然、先程まで普通だった人間が異形のものと成り果てる。それを機関は、『怪物』や、『災害源生命体』と呼称する。

 都市部の人間は、市民に紛れた機関の監視員によって常に観測され、怪物になりうる予備軍が随時リストアップされていく。場合によっては、殺害してでもその被害を防ぐこともあるのだそうだ。しかし、都市人口の過密化に伴いそんなリストにも抜けが生じるようになってきた。その為突如大都市のど真ん中で怪物化することだって、ゼロでは無くなってきたのだ。

 大都市で怪物化すればどうなるか、言わずともわかるだろう。その姿は一気にネットで拡散され、世界中に広がる。たった一発のその投稿で、世界は混乱の渦に巻き込まれるのだ。

 

 さて、荷物も片付け終わった。俺が後出来ることと言えば・・・・・・

 

「──ナイフを持った奴がいるぞぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 人を一人でも多くこの場から逃がすことだ。勘違いしないで欲しい。一般人を助けたいとかそう言うんじゃない。人払いした方が、望愛や機動隊が動きやすいからだ。

 俺はそう叫びながら人混みを掻き分けて進む。これで少しは何とかなれば良いんだが・・・・・・。

 

 あぁそうだ、一つ大事なことを忘れていた。

 

 

 怪物予備軍のリストには、俺の名前もしっかり載っている。俺のリストは、特別らしい。

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