ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第二十四話 醜かろうが、非力だろうが

 俺は望愛の手を握る。夏だと言うのにかなり冷たい。それは望愛が末端冷え症だから、と言うのとはきっと別の理由だ。

 幸いガラスの破片は体に刺さってはいないようだった。とは言え、頭からの出血が少し多い。早く救助が来てくれれば良いのだが。

 

 

 ──プルルルル、プルルルル

 

 

 俺のスマホに電話がかかる。相手は・・・・・・洲本のおっちゃんだ。

 

「もしもし」

『ナオ、状況は?』

「頭から出血してる。早く来てくれ。場所は・・・・・・おっちゃんからならわかるか」

『グレーなお前と違って俺達は一般人だ。外のあいつに見つかったらどうしようもない。司令部内でも反対派が多いんだよ』

 

 なるほど、確かにそれもそうだ。でも、でもな、

 

「こいつは、望愛は俺やあんた達一般人のために命を懸けて戦ってる。あんたらが命を懸けないでどうすんだよ」

 

 俺は静かにそう言った。今の望愛の横で、あんまり声を荒らげたくはない。望愛は今、少し落ち着いたのか眠っている。

 

「あんたら機関が動けねぇなら、俺は自力で望愛を背負って病院に連れてく。それがどれだけリスキーか、わかるだろ?」

 

 なんの医療知識もない高校生の俺が、全身打撲と頭部出血を起こした患者をおぶって何キロも歩くのだ。危険極まりないことは、おっちゃんにもわかるだろう。

 

『お前にそんなことが出来るのか?』

「やらなきゃならない状況になったら仕方ないだろ? もしそれでこいつに何かあったら・・・・・・」

 

 こんなことは調子乗ってるとか厨二病乙とか言われそうであまり言いたくないのだが、

 

『何かあったら?』

 

 仕方ない。

 

「聖女《ジャンヌ・ダルク》を失った怪物(ジル・ド・レー)が、何をするかわからんぞ?」

 

 俺は一般人としてはあまりに多くのことを知っている。情報を隠したい機関としては、俺の存在は邪魔でしかない。望愛がこの世を去れば、或いはもしかしたら望愛が結婚して俺のもとを離れたら、俺は消されるかもしれない。なら、そうなる前に俺は自分が持つ全ての情報を公開する。つまりどう喝だ。俺は今、国を相手に脅しを懸けたのだ。

 

「俺は望愛のために今まであんたらに協力してきた。大人しくあんたらの勝手な都合に合わせてやってたのは、他でもない望愛のためだ」

『あまり大人を甘く見ない方がいい。特に、俺達みたいなのはな。それはお前もわかってるだろう?』

「あんたらも、あんまり子どもをなめんなよ? 追い詰められた俺は、猫だってジャッカルだって噛み殺すぞ」

 

 守りたいもの(望愛)のいない世界に、未練はない。どうせ死ぬなら醜かろうが、非力だろうが、足掻いてやるさ。

 

「おっちゃん。もっかい言うぞ? 覚悟を決めて、とっとと助けにこい」

 

 高校生なめんな。ペンは剣よりも強いぞ。

 しばらく沈黙が流れた。次に聞こえてきたのは、深いため息だった。

 

『・・・・・・わかった、今から俺の独断で機動隊を派遣する。救急救命士の資格持ちの隊員もいる。そっから動くなよ?』

「よっしゃ! 流石おっちゃん。話がわかる大人で助かった!」

『お前ほんと調子の良い奴だな・・・・・・』

 

 俺達はそう言って、通話を終了した。

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