ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第二十五話 ギブミー救助隊

 ──ゴオォォォ

 

 建物が音を立てて揺らぐ。外の怪物のせいだろう。

 そんな状況でも、望愛は眠っている。規則的な呼吸も、安定した鼓動もしているから、まだ大丈夫・・・・・・だと信じたい。

 

「望愛、死ぬな・・・・・・生きてくれ・・・・・・」

 

 俺は望愛の手を強く握る。今までも、傷を作ってきたり、アザを作ってきたりしたことはあった。でも、こんなにひどい怪我をしたことはなかった。命の危機に陥るような事態に発展したことはなかった。結局俺には、覚悟がなかった。望愛を失うかもなんて考えたこともなかった。想定なんて、しちゃい無かった。俺は、何にもこいつの事をわかっていなかったのかも知れない。

 

 

 ──チュー、チュー・・・・・・

 

 

 そのときだった、外からそんな声が聞こえてきた。ネズミの声なんてまともに聞いたことはないが、多分こんな声なんだろう。それが今、扉を挟んだ向こう側で大量に鳴いている。

 

 ──外にいたあのデカイ怪物関係なことは多分間違いない。俺はすぐにその辺にあるもので扉を塞いだ。・・・・・・これで俺達は部屋から出られなくなった。

 その後俺はスマホをミュートにした。ネズミの耳はかなり良いらしい。スマホのバイブ音で気づかれたら堪ったもんじゃない。第一、ネズミに食い殺されるなんて願い下げだ!

 

 直後、洲本のおっちゃんからメッセージが届く。状況を判断して電話じゃなくメッセージにした辺りは流石副司令だ。

 

『絶対に外に出るなよ!』

 

 俺はそれにこう返信した。

 

「あのネズミの子分か? どれぐらいいるんだ?」

『子分じゃない、分裂したんだ。それがうじゃうじゃビルの中に浸透していってる』

 

 分裂・・・・・・? あのデカイのが分裂? 言ってる意味がわからん。でも、そう言うことなんだろう。そんなのがうじゃうじゃ、気持ち悪いことこの上ない。

 

「来れそうか?」

『行くしかないだろ。お前にバラされちゃ堪ったもんじゃないからな』

「嫌味か!」

『もちろん』

 

 オーケー洲本のおっちゃん、あんたは後で一発ぶん殴ってやる。

 

「兄貴は?」

『まだ県警に来てない。車も置き去りのまま動かない。そもそもネズミの群れがこっちにも押し寄せてきてる』

 

 あの車にはGPSがついているらしく、司令部から位置を監視できるらしい。って、マジか・・・・・・そんなに多いのか。

 

「大丈夫なのか?」

『大丈夫だと思うか? すまん、ちょっと行ってくる』

「了解」

『 ️』

 

 俺はスマホをポッケに仕舞うと、音を立てないよう慎重にリュックの中から荷物を取り出す。この中に何か使えるものがあると良いんだが──

 

「ん? これは」

 

 なんだこりゃ。って、ジッポライター? いつの間に入って・・・・・・!

 

「兄貴、そういや押し付けてきてたなぁ」

 

 でも、ここで火器は少し嬉しいかも知れない。動物は火が怖いってのは有名だ。こんなショボい火でも無いよりマシだろう。

 

「後は・・・・・・あ、制汗スプレー」

 

 ──先に断っておこう。今から俺がやろうとすることは絶対に真似しちゃ駄目だからな?

 制汗スプレーの中のガスに、ライターの火を引火させて簡易火炎放射器を作る。これなら何とかしのげるかもしれない。あとは、

 

「頼むから、絶対に入ってこないでくれ・・・・・・!」

 

 神様に真摯にお祈りをするだけだ。だが、

 

 ──ガンッ! ガンッ!

 

 どうやら祈りは届かなかったようだな。くそが。見捨てるとか、ちょっと神様ひどくないか?

 

 俺は望愛をゆっくり背負うと、ライターとスプレーを構えた。

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