ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~   作:さと かんひこ

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第二十七話 ロバート・ブルース

 ロバートは傷口に手をかざす。淡い緑色の光が部屋全体に広がる。

 

「レー少年、彼女の手を握ってあげてください」

 

 ロバートは優しく微笑む。俺は小さくうなずいて、望愛の手をしっかりと握る。

 心なしか、暖かさが戻ってきているように思えた。脈動が感じられる。望愛が生きている、確かな証だ。

 

「レー少年。少しここを見てみて下さい。面白いデスよ?」

 

 そう言ってロバートは手をかざしている傷口を目で示す。俺は言われるままそこを覗く。すると、

 

「・・・・・・! これは、」

 

 壊れた組織が、皮膚が、まるで早送りのようにみるみる内に回復し、傷口を塞いでいくのだ。

 遠巻きに見ていた兄貴も、「ほぅ」と驚いている。

 

「私の能力は正しく言えば回復ではありません。私の能力は、細胞分裂の促進デス。この光で細胞を刺激し、分裂を促すのデスよ。使い方によっては、武器にもなります」

 

 よし、と、ロバートは手を離す。望愛の傷口は、多少の血の跡を遺して、綺麗に治ってしまった。

 

「じきに意識も取り戻すはずデス。今のところは、大丈夫デス」

 

「・・・・・・ありがとう、ございます」

 

 俺は深々と頭を下げる。彼に思うところが無いかと言われれば嘘になる。実際、思うところの方が大きい。

 それでも彼は、望愛を助けてくれた。礼は、しなくてはならないだろう。

 

 そんな俺にロバートは優しくはにかんで、肩に手をおいた。

 

「レー少年。いえ、レー卿。あなたは本当に、ジャンヌ嬢がお好きなんデスね」

 

 ロバートは一呼吸おいて、続けた。

 

「好きであるなら、その様になさるべきデス。思うままに、貫くべきデスよ」

 

 まるで敵に塩を送られた気分だ。これが大人なのかと、知らしめられた気分になる。優しいその眼差しは、俺をまっすぐに突き刺した。

 

 

 ──ガンッ! ガンッ!

 

 

「おっと、もうお目覚めデスか」

 

 直後、激しく扉を叩く音が聞こえた。チューチューと言う声。間違いない、奴らだ。

 

「ミスターユムラ、ガンの弾数は?」

 

 ロバートは立ち上がり、真剣な表情で兄貴を見つめる。

 

「まだなんとか」

 

「オーケー。レー卿」

 

 ロバートはスッと振り返る。

 

「ジャンヌ嬢をよろしくお願いします。道は私が開きます」

 

 有無を言わさぬ強い眼差し。歴戦の猛者なだけはある。

 

 俺は無言でうなずくと、携帯できる最低限の荷物をポーチに詰め、望愛を背負った。

 

「いつでも行けるぞ」

 

 俺は二人を交互に見渡す。兄貴とロバートはうなずくと、扉に向き直った。

 

 ロバートはミニガンを扉に向ける。

 

「カウントダウンは要りませんね。では・・・・・・!」

 

 直後、轟音が部屋に響き渡った。

 

「私の後ろに着いてきてください!」

 

 蜂の巣になった扉を蹴破り、ロバートはそう言った。

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