ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~ 作:さと かんひこ
気付いたらボクは、ナオの胸の中で眠っていた。
ナオの匂いが、鼻を突く。心が落ち着く。
昨日の夜は、随分泣いてしまった。泣かないつもりで、ちゃんと心の準備をしていたはずだったんだけど・・・・・・。
ふと気付く。ボクの腕は、ナオのを抱き締めるように、彼の背中に回っている。そしてナオの腕は──
「──!!」
まってまってまってまって!?!? これって、エッチなことをした後みたいになってない!?
ボク達って昨日、そんなことしてないよね!?
全身がカーッと熱くなる。心臓がドキドキする。
ボクはすぐに手を引っ込めた。
・・・・・・待って。ボク、ひょっとしなくても、ナオの足に自分の足絡めてる・・・・・・?
気付いてしまったらもう止まらない。体温がどんどん上がっていく。心臓が破裂しそうなほどドクドクと脈打つ。
まだまだ暑さの残る夏終盤。しっとりと汗が肌を濡らす。ただでさえそうなのに、こんな状況だから、今のボクは汗ダラダラだ。ヤバイヤバイヤバイ・・・・・・
目の前にはナオの胸がある。目のやり場に困る。一刻も早くこの状況から脱出しないと、ボクの心臓が持たない!
まずは足を抜いて、それから顔も離して、距離をとっ・・・・・・ってムリ! ナオが手回してるからムリ!!
背中をツーっと汗が流れていく。
マズイマズイマズイ、どうしたらどうしたらどうしたら──あっ、
考えている最中、ふと目に入ってしまった。眠るナオの顔が。ボクの頭の、少し上に。
規則的な寝息をたて、目蓋を閉じた無防備な寝顔。・・・・・・ボクには到底、耐えられなかった。
心臓がさらにドクドクバクバク脈を打つ。
今、ボクの目線の先には、ナオの顔がある。ちょっと伸びをすれば、唇くらいなら届くかもしれない。
ナオは今、眠っている。ボクが眠ってしまう寸前まで背中をさすってくれていたから、多分今頃はぐっすり夢の中だろう。完全に無防備だ。
今なら、今なら行ける──ってダメダメ! 寝込みを襲うなんて絶対ダメ! でもこんなチャンスもう一回あるかないか・・・・・・あぁー!! ボクはどうすれば!!
大好きな人の胸の中で、大好きな人の匂いに包まれ、大好きな人の寝顔を見てボクは悶々として下を向く。
そんなときだった。ナオが少しみじろいだ。そして・・・・・・
──ちゅっ
「!?!?!?!?」
なにか暖かい、柔らかいものがボクのおでこに当たった。これは、もしや・・・・・・!?
ボクは恐る恐る上目遣いで確認する。
そこにはやっぱり、ナオの顔があった。つまり、これは──
「────!!!!!!!!!」
ボクも案外、ナオのこと言えないのかもしれない。
「ん、望愛。もう起きてたのか。おはよー」
「・・・・・・・・・・・・うん。おはよ」
数十分後、ようやくナオが目を覚ました。一瞬のような、永遠のような、ボクの幸福な禁固刑が、幕を閉じたのである。
ボクは、ナオと掛け布団の狭間で小さく縮こまっている。
「望愛、大丈夫か?」
何を勘違いしたか、ナオが心配してそう聞く。昨日あんな話をしたからかもしれない。
ちゃんと意識してくれているのが嬉しかったりするけど、でも、ちょっと今のボクには耐えられない。
「だ、大丈夫っ! それより、手・・・・・・」
「手?」
ナオはそう聞き返し、自分の手を見て、赤面した。
「すっ、すまん!」
ナオはサッと手をのけて、勢い良くボクから距離を取る。でも、
──ガンッ!
「いってぇ!」
後ろの壁におもいっきり頭をぶつけ、悶絶する。
そんなてんてこ舞いな、朝が来た。終わりが始まる、朝が来た。