ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~ 作:さと かんひこ
望愛の姿は、自動追尾するドローンカメラ君が撮影してくれる。
それを俺たちは少し離れたテントの中の巨大モニターからモニタリングする。
ドローンカメラは望愛を撮影しているものを含めて計四台。他の三台は例の怪物や、一般人が戦闘区域に侵入していないか等、周辺の景色を随時監視している。
このドローンお陰で、状況に合わせて洲本のおっちゃん達が望愛に的確な指示を出せるのだ。
「このテント相変わらず蒸し暑いなぁ・・・・・・」
「今日は例年より早い熱帯夜らしいぞ?」
熱気の籠ったテント内部はまるでサウナのようだ。扇風機とかねぇのかよ。
洲本のおっちゃんは、テントに入った俺達にそう言ってうちわを渡してくれる。・・・・・・まぁ、無いよりはマシか。
うちわは真っ白な紙に『特災対』の文字と、支部のエンブレムでもあるコウノトリがプリントされている特注品だ。そこそこ格好いいのがなんか腹が立つが。
「望愛は?」
「接敵まであと五百メートル強ってとこだな」
五百か・・・・・・望愛ならすぐに戦闘に入るだろう。あいつの運動神経は、地上最強だ。
あ、望愛に虫除け渡すの忘れてた。汗っかきのあいつのことだ、きっと蚊に刺されまくるぞ・・・・・・可哀想に。
俺達は用意されていたパイプ椅子に腰掛け、モニターを眺める。
かなりの速さが出るドローンだが、それが追い付けない程のスピードで望愛は山道を駆け上がっていく。
カメラはただ、前を走る望愛によってえぐられた様に残る足跡を映し続けていた。
「流石、最強のヒーローだな」
洲本のおっちゃんがそう呟く。俺はこくりとうなずいた。
そんなこんな話していると、望愛は目的地に到着した。わずか三十秒後の事だった。
カメラも望愛に遅れること数秒、その地点に到着し、ようやく姿を捉える。あれだけ走って疲れた様子一つ見せないあたり、やはり規格外なんだなと思い知らされた。
つまりはギャップ萌えと言うわけだ。
『こちら《ジャンヌ・ダルク》。見つけたよ』
おっちゃんの持つデカイ無線機から、そんな望愛の声が聞こえる。普段より少し低い声。真面目モードだ。
その無線により、テント内の全員に緊張が走る。開戦は間近・・・・・・きっと今回も大丈夫。あいつは地上最強のヒーローだ。
俺は祈るように、指を絡めて左右の手を組んだ。
「こちら本部。こっちからも確認した。・・・・・・状況を開始せよ」
おっちゃんも、真面目な声で望愛にそう返す。戦闘開始の合図だ。
カメラが、怪物の姿を映す。
ジジジジジと、大きな音を立てて五メートルほどの空中をホバリングするそれは、大きな顎と鋭い毒針を持ち、人間のような六本の筋肉質な腕を生やしている。
捕まれば、命はないだろう。
『了解。状況を開始する』
望愛は短くそう返事をした。その瞬間、モニターの向こうに変化が訪れた。
カメラは今、望愛と怪物を同時に映し出している。望愛はマチェットを持ち、クラウチングスタートするかのように地面に手を当てて構える。それに合わせて、スーツのラインが光輝く。淡いピンクの光は徐々に光度を上げ、そして収束していく。
望愛が能力を解放した証だ。
・・・・・・もし帰ってこなかったら、なんて心配は、その瞬間杞憂に変わった。
望愛は突如天高く飛躍する。空中で悠々と羽ばたく怪物と並ぶ。虚を突かれた怪物は動揺しその場から動かない。
・・・・・・即座に望愛は、首を刎ねた。
その首は胴と分かれ、コトリと地面に吸い込まれるように墜ちる。
噴水のように噴き出す血飛沫は、少し離れたところを飛ぶドローンカメラのレンズにまで跳ね、画面を暗転させた。
俺の彼女は、やっぱり地上最強だった。