ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の恋の唄~ 作:さと かんひこ
恋煩い
美しい夕日が、どこまでも続く海原の向こうへ沈んでいく。
最初は全く話せなかったフランス語も、なんとか日常会話レベルには話せるようになったし、こちらの暮らしにもずいぶんとなれた。
それもこれも、全て望愛のお陰だ。
「ねぇ、ナオ」
「ん? どした?」
縁側に腰掛け、俺は望愛を膝枕して、夕日を見ている。そろそろ夕飯の時間かな?
「海、綺麗だね」
「・・・・・・だな」
夕日を浴びてきらめく海は、涙が出そうなほど、憎たらしいほど、美しかった。
「もー、ちょっと。そこは『君の方が』とか言うところなんじゃないの?」
おっと、そうだったか?
「お前が可愛いのはわかりきってることだろ?」
「・・・・・・そう言うことじゃ無いんだよねぇ」
わかってないなぁ、と望愛は拗ねる。
悪かった。お詫びに明日なんか買ってやるから、許してくれ。
「ねぇ、ナオ」
「どした?」
「本当に、良かったの?」
「何が?」
「ボクと一緒に、こんな遠くまで来ちゃって」
望愛は少し声を潜めてそう聞く。
まったく。それこそ、わかりきってることじゃねぇか。
「良かったに決まってるだろ。日本じゃやっぱりこう、窮屈だしな。色々」
俺は望愛の手をしっかりと握る。
夕日は、もう半分以上沈んでしまった。
「なぁ望愛」
「なーに?」
「お前の方こそ、良かったのか?」
こんな俺なんかで、と付け足した。
望愛は笑って、答えた。
「良かったに決まってるでしょ? もっと自信もってよ。ボクのたった一人の、旦那さま」
えへへーと、ふにゃふにゃの笑みを浮かべて望愛は仰向けになり、空いている方の手を俺の顔に伸ばした。
「ねぇ、ちゅーしよ?」
「・・・・・・なんだ、頭クラクラするのか? 水持ってきてやるよ」
「もぉー、違うー! ちゅーだよぉ! キースー!」
「冗談だって、ごめんごめん」
ブーと怒る望愛をなんとかなだめて、俺達は顔を近づけ、唇を合わせる。
柔らかく、優しく、温かく・・・・・・。
今まで色々なことがあった。
嬉しいこと、楽しいこと、幸せなこと、素晴らしいこと。
悲しいこと、嫌なこと、辛いこと、不幸なこと。
それら全てがあって、今俺と望愛はここにいる。
今がある。
「ねぇ、ナオ」
望愛が言う。
「どうした、望愛」
俺が聞く。
「大好きだよ。ずっと、ずぅーーっと。何があっても」
望愛は、そう言って笑った。
「俺も、大好きだ。ずっと、ずっと。何年、何十年、何百年・・・・・・永遠に、いつまでも。俺は、お前を──────」
夕日が沈んでいく。
恋煩いが、終わりを告げる。
俺は、望愛をぎゅっと抱き締めた。
Fin…?
【あとがき】
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました! 作者のかんひこと申します。
これを持ちまして、「ジャンヌ・ダルクに恋煩い~幼馴染みの彼女と紡ぐ、千夜一夜の愛の唄~」堂々完結となります!
……と言いたいところなのですが、直人はまだ、やり残したことがあるそうです。
彼の「恋煩い」は終わりました。しかし、まだ彼には煩ったものがあるのです。それは──またの機会に。
改めまして、ここまでお読み下さった読者の皆様、本当にありがとうございました! また、続編や他作品にてお会いしましょう!