アクセル・ワールド~死神の一幕   作:真ん丸太った骸骨男

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どうも、真ん丸骸骨です。
この作品は三人称練習と、息抜きで書いたものでこれ以上の先の展開は考えておりません。
それでもよろしければどうぞ。


アクセル・ワールド~死神の一幕

加速世界で今、ある噂が流れていた。

死なないアバター。

そのアバターは薄黒い装束に身を包み、髑髏の面をして鎌を片手に対戦を申し込んでくる。その姿は死神そのもの。

死なないアバターと言う噂は、ただ単に強過ぎる為に死なないと言う比喩ではなく、真の意味で死なないのだ。強すぎる訳ではない、むしろ彼は通常のアバターよりも戦闘は弱い部類に入るだろう。移動速度は歩くようで、攻撃も鎌による大ぶりな攻撃が殆ど、極めつけに防御に関しても本当に薄いと言われるアバターよりも少しある程度。お世辞にも優秀であるとは言えない。

 

だが死なない――――

 

曰く、体力ゲージが無くなるのを確認した瞬間、首を落とされていた。曰く、火力の雨を完全に無視して歩いてくる。

故に、バースト・リンカーの間では、彼は本当に死神なのではないか。等と言う失笑してしまいそうな噂が流れている。だが、彼に対戦を申し込むことは誰でもできるし、対戦の観戦予約も入れられる。バースト・リンカーである事は疑いようがない。

これは、そんな彼を中心とした一幕――――

 

 

 

 

 

グレー・デス、それが死神のアバター名である。

不吉な名前が付いているアバターは今日も池袋を中心に活動する。今日の対戦相手はレベル8の高レベルリンカー、ブレードの名を冠する正統派と言える近接を得意とするかなり彩度の高い青系統だ。対する彼のレベルは6、彼はもっぱら自分よりもレベルの高いアバターばかりを狙って対戦する。

 

「初めて見たが、ホントに気味悪いな……」

 

正面に立ち尽くす死神アバターにブレードは正眼に自身の武器を構えて警戒を濃くする。デスはそれをただ見つめるだけで何も語らず、巨大な鎌を地面すれすれに垂らして少しずつ歩いて距離を縮めようと迫ってくる。

 

「何も言わねぇか、なら行かせてもらうッ!」

 

ブレードは小さく息を吐くとその構えのまま一瞬で距離を詰める。一応の警戒をしていたが、デスが今までの戦いで行っているのはただ近づいて首を刈り取る、ただそれだけ、ブレードはならばとあの鎌だけは視線に収め続けるように動気ながら戦う事を選んだ。

一方的、その言葉が当てはまるだろう戦いが繰り広げられる。デスはブレードの剣を数発鎌の柄で防ぐが防いだのと倍する剣戟が彼の体を襲い、体力ゲージをあっという間に減らす。

これはブレードが特別強いからではない、確かにブレードは強いのだろうが、デスにとってはこれは何時もの事だ。彼が正面から戦って勝てるのは精々レベル3から下の格下のみ、だから焦る事無く防げる攻撃は防ぎ、防げない攻撃は無視して自分からも数発の攻撃を当てる。

 

「これで終いだ!」

 

デスの体力が半分を切るとブレードの剣から自分と同色の輝きが宿る、それは必殺技の発動予備動作。ブレードは彼の能力を身代わりを作る事なのではないかと当たりを付けていた。それだけの高い能力があるならば、発動条件も厳しい筈、例えば体力が何割かを切ってから。

ならば、最後に作る暇など与えずに叩き伏せる、と言う意気込みで全力で剣を振るう。

 

「……ッ!」

 

攻撃に反応したデスは、鎌の柄を上に構えてその技に対抗しようとする。その構えを取ったデスを見て、ブレードは勝利を確信した、必殺技の発動も見られない。ブレードの必殺技は切断能力に特化した防御ごと叩き斬る事が可能な技だ。

デスの鎌は一瞬拮抗したと思ったが、次の瞬間に柄ごと真っ二つに切り捨てられた。

 

「やったか……?」

 

だが、彼も高レベルに上がるほどのプレイヤー、今までの事を考えると体力が無くなった事を確認しても油断は解かない。自身の攻撃で起こった土煙を睨みつけ、数歩後ろに引き、剣をまたいつもと同じ正眼に構える。

 

「……ふぅ、勝ったか」

 

土煙が晴れるとそこには何もなかった。敵の姿も、彼の武器の影も何もかも。

 

「よっしゃっ!死神なんて大した事ねぇなッ!!」

「【デス・サイズ】」

「はっ?――――」

 

ブレードの目の前には鎌の刃が見える。相手の体力ゲージを見ると、いつの間にか全回復している。突然の事に剣を首と鎌の刃の間に挟むことも間に合わない、そしてそれはブレードの首に添えられ、必殺技の発音と共に、彼の首をあっさりと切り落とし、意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ん、終わりッと。楽勝だったな」

 

小さな喫茶店で一人お茶を楽しんでいた彼は、瞑っていた眼を開けると、先ほどの対戦に一言感想を述べた。

一度死んだくらいでは、彼にとっては楽勝の部類に入る。何故なのか、それは彼のアバターの高い特異性が答えだ。彼のアバターの特性は自動蘇生。

ブレードが考えた身代わりではなく、彼には複数の命があるのだ。その高すぎる能力に比例し、元々のアバターの能力は本当に悲し過ぎるが、彼はこれしか知らないのであまり悲観もしていない。

 

「さて、次のレベルはどうするかな」

 

先程の対戦でレベルを上げるだけの安全圏まで確保できた彼は、次にどんな能力を獲得するべきかを考えていた。彼の能力はレベル一で自動蘇生のライフのストックがデフォルトで付いていて、レベル二で鎌の必殺技、【デス・サイズ】を獲得、三でさらにもう一つのライフストック、四で影移動を習得し、五でさらにまた一つストック、六で痛覚遮断と言う技の状況になっている。

 

「ここまでの技の習得なんかを考えると、またストックが安定しそうだが……」

 

だが、彼にはどうしても気になる技情報があった。

一つはストックで間違いないが、もう一つは銃弾透過のアビリティ。今まで彼は、少しずつ近づき首を一撃で刈り取る事でどうにか射撃型に勝ってきたが、移動速度が遅い彼は今でも遠距離射撃型は苦手としていた。

さらに言うならば、そう言った手合いとの戦いは、敵が遠くにいる為蘇生の瞬間を見られる可能性が非常に高く、彼としては技のカラクリがばれる事はあまり嬉しくない状況と言える。

 

「よし、決めた!これで行こうッ!」

 

悩んだ末に銃弾透過アビリティを習得、それによって数日後には彼の名はまた怪しい方向に修正される。

それもそうだろう、射撃攻撃が彼の体を通り抜けるのだ。

正真正銘対戦相手からは幽霊など、それに類するもののように感じるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人さびしく対戦を繰り広げる彼は親も居なければプレイスタイルから加速世界の中でも友人はいない。

元はと言えば彼がこの世界に入った原因は、PKの対象に選ばれたからだ。

不良と呼ばれる人間に呼び出され、直結で無理やりインストールを行わされて彼はバースト・リンカーとなった。何が何だか理解できない内にその翌日また同じ人物に直結対戦を無理やり行わされ、何度も殴られ、何度も殺され、数回の死を経験して、ようやくこれが対戦ゲームである事を理解して、ボロボロになりながら一度返り討ちにする事が出来た。

対戦相手であった敵が支援職であった事が勝てた最大の理由だろうが、その一度でその敵はポイントの全損、記憶の抹消を受けた。

 

その時は意味が解らなかったが、それからも定期的に違う形の敵に襲われる内にゲームの挑み方、この世界が如何言う物かを少しずつ理解していった。

そして最近、また新しい情報を得るに至った。無制限中立フィールドへの入り方。

アキハバラ・バトル・グラウンドと言う秋葉原にあるバースト・リンカー対戦の聖地に辿り着いて何度か利用する事で話の中で得られたのだ。初めてそう言った場所があると聞いた、と彼が言った時、グラウンドのマッチメイカーをしていたドワーフ顔のプレイヤーは驚いていた。

 

そして今日、彼は初めて無制限フィールドに入る。

そこは通常対戦の三十分と言う縛りは無く無制限、そして歩いている敵は無差別に狙える場所。さらに徘徊するモンスターまでいると言う事で興奮を隠せないでいる様だ。

 

「行くぜ。≪アンリミッテッド・バースト≫!」

 

フィールドに入って最初に彼が見たのは煉獄ステージに良く似た酷く冷たい雰囲気、一昔前のゲームに良く出て来る魔王の城の様な物と表現すればいいだろうか。

ワクワクした気持ちを抑えきれず、彼は周りのオブジェクトを破壊しゲージを溜めて行く。これで最初に会った敵をすかさず首を刈り取るつもりのようだ。

 

「ん?アレは……」

 

破壊していると、はるか遠くの空に気になる物体を見つけた。

銀色の翼に、黒と赤が体の縦半分を二分して、足には青色が見える。

 

「面白いアバターも居るんだな。空飛んで色も無茶苦茶。面白うそう!」

 

遠くにいる所為で僅かに色が判別できるだけの為彼はそれを一人のアバターと判断し、興味本位でその翼を目指して歩き始めた。

スキップしそうな彼のテンションは一度死ななければ収まりそうになかった。

しばらく進んで行くと、空を飛んでいた銀の翼は何者かによって撃ち落された。それを見た彼は、急がなければならないと少しだけ足早に進んで行く。

 

「おい、貴様ッ!ここから先は≪クリプト・コズミック・サーカス≫が占有している。進む事は控えて貰おうか」

 

目の前に現れたのは黄色系統のアバター、そのアバターが言うにはここから先は黄のレギオンが独り占めしていると言う事だ。

彼はその声に答えず、無言のまま動きを止めた。彼はブレイン・バーストをする時、一言も喋らない事を信条としている。ロールプレイの一種で、勿論先程の様に一人でいる時は別だが、他のプレイヤーがいる所では喋った事は無い。バトル・グラウンドは偽装アバターでいるのが当たり前なので、それはカウントには入れない。

 

(なにか希少品があるのか?それをレギオン総出で獲得に動いてるのかもしれない。まぁ、どっちにしても乱入はゲームの醍醐味でしょ)

 

そう結論づけた彼は、目の前の敵を倒す為に動き出す。

まず影に沈み、突然目の前から姿を消したことで慌てる敵の背後の影から浮き上がり、技を唱える。

 

「【デス・サイズ】」

 

それによって首が切り落とされ、敵はその場で復活待ちとなる。彼の使用する必殺技【デス・サイズ】は首に入れる事で確実に敵を狩る事が出来るぶっ壊れ性能を有していた。当たり判定が首にしか無い為、その他の部位に当たるとダメージ無しで機能しないピーキーな物だが、彼のプレイスタイルにはマッチしている。

 

(少し騒がしいな。走るか)

 

遠くで戦闘音が激しくなる。レアドロップでもする敵がいるのだろうとその争奪戦に加わるべく、彼は走り始めた。髑髏仮面で鎌を両手に走る様は、見る者に恐怖を与えそうである。実際に彼と対戦をした人間の中には、その姿に恐怖し、足が竦んだ者もいた。

 

しばらく進むと、クレータが出来ており、それを取り囲むように結構な数のプレイヤーがいた。

やはり奇襲が王道だろうと、またしても敵の背後に音も無く進むと、その首に鎌をかける。

静かにそのアバターが消滅すると、異変を感じた人間が、声を上げて注目を集める。そして、その集まっている中で、一人が前に進みで出来た。鮮やかな純色の黄色、あまりにも有名なその色は周りとコミュニティが無い彼でも知っていた。

いつも笑っている仮面、頭から延びる二本の角のようなシルエット、細い体は全体的にピエロのようだった。

 

「『イエロー・レディオ』か……」

「おや、あなたでも私の名前を知っていてくださるとは、光栄ですよ『灰の死神』」

 

王と呼ばれる純色の色を持つ七人のレベル九のバースト・リンカーの一人、初めて王と呼ばれる人種を目にした為、自分のロールプレイも忘れて、彼は独白してしまった。

芝居がかった調子で腰を折って首を垂れる姿はまさにサーカスで見返るようなピエロその物、シルエットに負けず彼も胡散臭さが際立っている。

 

「ですが、これは私たちレギオンの問題、手を引いて頂けますか?」

 

レディオの後ろで赤い大きな物体が複数名のアバターに集られていた。大きな砲門などを備えた姿でも、あれだけ接近されればその猛威は振るえない。

 

(なるほど、レアアイテムの争奪権を競っているのか。なら参加するしかないだろう)

 

少しずれた結論を導き出した彼は、その戦闘に割って入る事にした。

 

「(アイテムは)取らせてもらう……」

「チッ、問答無用ですか、流石は死神。しょうがないですね。あなたも一緒に消すとしましょう」

 

レディオは小さなバトン状の武器を取り出し構える。

それに合わせて彼も鎌を垂らし、いつも通りの構えを取った。この時、完全に意思の疎通不足であるのだが、レディオは彼が命、つまり対戦を吹っ掛けて来たと勘違いしていた。

 

この後、災禍の鎧が現れて、事態が複雑化しながらも解決した後、まったくの勘違いだと教えられた彼は愕然としたが、間接的にだが助かったと、黒の王からいらないアイテムを頂き、そのまま勧誘を受けて了承、黒のレギオンに加入したのだが、またそれは別の話。



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