レストラン"オケアノス"は歴史書にもその名前が記されている非常に歴史が長いお店です。
その起源は魔神戦争よりもさらに昔にまで遡り、飢饉が起きた際に行われた食料配給がルーツであるととされています。
近代に発行された多くの書籍は"オケアノス"の歴史を栄光に包まれたものとして囃し立ていますが、実際は多くの苦難に直面し何度も閉店の危機に瀕していました。
戦争、飢饉、その他多くの困難に直面しながらも閉店することがなかったのは、ひとえに多くの常連様のおかげでしょう。
創業時の常連様の多くはすでにこの世を去ってしまっていますが、今でも店に立ち寄る方々がいます。
今日は創業時から通っていただいている大常連にして店主の親友、そしてテイワットで最も優れた見識と味覚を持つ方が来店されたようです。
「店主、いつもの席は空いているか」
「いらっしゃいませ。鍾離様、このような時間にお見えになるのは珍しいですね。」
常連のお客様には毎週決まった曜日、決まった時間に決まった席でお食事される方がいます。
そのような常連である鍾離が決まった時間ではなく、バーの色が強くなる時間にお越しになったことに内心驚きながら席へと案内する。
「お食事はいつもと同じコースでよろしいでしょうか」
「いや、今日はお前のカクテルを飲みに来た。何か適当なものを頼む」
鍾離の言葉にまたも店主は驚かされ、瞳に闘志にも似た光が灯る。
鍾離はここ数百年ほどは決まったお食事(旬の食材を使ったコース料理とペアリングのお酒)を注文されています。
数百年ぶりの新しい注文、そしてカクテルをお出しするのは初めて。嫌でも気合が入ります。
「驚きました、鍾離様からカクテルのオーダーを頂くとは。最高のカクテルをご用意いたします」
店主は少し考えたのち、4本のボトルを取り出す。
~アンバードリーム~
アンバードリームは4種のお酒で作ります。
1つ目はドライジン。
ジンは、大麦やトウモロコシなどの穀物を原料とした蒸留酒に香草・薬草を加えて再蒸留したお酒。
ハーブのような豊かな香りとドライな味わいが特徴です。
今回は『ビーフィーター』というお酒を選択しました。
これはジンの中でもクセがなくシャープな味わいで、香りもよいためカクテルのベースとしてポピュラーな一品です。
2つ目はスイートベルモット。
ベルモットは、白ワインをベースに香草・薬草、スパイスを加えたフレーバードワインで、甘口のスイートと辛口のドライがあります。
アンバードリームではスイートベルモットを使用します。
使用するのは『チンザノ ベルモット ロッソ』。
バニラとブラックチェリーからなる芳醇な香りが特徴で、スイートベルモットらしく甘口ですがほのかな苦みもあります。
3つ目はシャルトリュ-ズヴェール。
これはブレンデーベースの薬草リキュールで、砂糖や100種類以上のハーブを配合して作成されています。
そのため、ミント系の爽やかな香りと、パワフルなスパイシーさを感じる独特な味わいが楽しめます。
4つ目はオレンジビター。
柑橘類の果皮を中心に配合されたリキュールで、柑橘系の強い風味を持ち香りづけに使用します。
アンバードリームの材料をまとめると
・ビーフィーター(ドライジン) 20ml
・チンザノ ベルモット ロッソ(スイートベルモット) 20ml
・シャルトリュ-ズヴェール 20ml
・リーマ―シュミット オレンジビター 1dash*1
・マラスキーノチェリー*2
作り方はいたってシンプルで、お酒をすべてミキシンググラスに注いでステア。
ステアしたものをグラスに移して、最後にチェリーを沈めれば完成です。
「どうぞ、アンバードリームです」
「アンバードリーム。…琥珀の夢か。なるほど確かに琥珀のように美しいな」
鍾離は静かにグラスを手に取り傾ける。
「面白い味だな。甘みとハーブ系の苦みが混ざり合ってクセになる独特の味わいを作っている。紹興酒に近いものを感じるな」
「鍾離様はカクテルをお飲みにならないので、いつも飲まれている紹興酒に近い味わいのものであれば飲みやすいかと思いました」
「なるほど。だがそれだけではないだろう?カクテルを作っているとき、瞳に宿っていたものは有力者たちとの会食を任せた時と同じだったぞ」
「はい。アンバー…琥珀と璃月はよく似ています。
琥珀はただの松脂の化石です。宝石のような華やかな輝きはありません。しかし長きときを経て宝石とは違う美しさを持っています。
璃月も最初は小さな市に過ぎませんでした。でも貴方をはじめ魔神も仙人も凡人も、多くの人々が長い時を掛けて美しい国へと成りました。
悠久の時は『摩耗』を生みます。それと同時に悠久の時は美しさも生む。」
店主の言葉を受けて鍾離はグラスを見下ろす。
「琥珀は時間だけでは作られない。高温高圧という環境、そして松脂自体の成分変化があってこそだ」
「…申し訳ありません。浅慮でした」
「構わない。さて、もう一杯貰えるか。次はさっぱりとしたものが良いな」
「承知しました。次は桜のリキュールを使ったカクテルなどいかがでしょうか」
店主がボトルを見せながら次のカクテルを提案し、鍾離はそれをゆっくりと味わう。
静かで心地よい雰囲気に包まれた店内でゆっくりと時間が過ぎていく。
※この後、ウェンティ(すでに酔っている)が来店されたことで一波乱ありましたがそれはまた別のお話。
牡蠣にあたって寝込んでいたら新年度になっていました。
経験から学ぶ加熱調理の重要性。。まあ、生食は辞めませんが。
今回はカクテルメインで書きましたが成人している方ってどの程度の割合なんでしょう。
お酒の特徴の説明とかあったほうがいいですかね?
小説の視点について、どちらの方式が良いでしょうか
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1,2と同じ(第三者)
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3と同じ(各キャラ)