オケアノス 七神の料理人   作:黒いの☮

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3. 刻晴と甘雨とピニャータサラダ

Side:店主

 

「マスター、二人なんだけど空いてるかしら」

「いらっしゃいませ、刻晴様、甘雨様。お好きな席をご利用ください」

 

開店からしばらく経った頃、璃月七星の一人である刻晴と、璃月七星の秘書を務める甘雨が来店されました。

璃月七星は璃月の統治を行う7人の統治者のことで、その一角を担う刻晴と七星全員の秘書を務める甘雨の業務は非常に多忙です。

実際、二人がプライベートな時間に揃って来店したのは半年ぶり。

 

「お二人ともお久しぶりですね。先の海灯祭*1は大変素晴らしかったです。特に花火はとても綺麗で感動しました」

「ありがとう、楽しんで貰えたなら嬉しいわ。実はあの花火は稲妻の有名な職人のもので、鎖国令とかの都合で璃月港にしか配備できないところだったの。でも甘雨が諸々の手続きや根回しをしてくれたおかげで璃月全体に配備できるだけの花火が用意できたの」

「いえ、私がやったことは書類手続きくらいで大したことはありません。数ある稲妻の業者の中から高品質かつ必要量を用意できる業者を見つけ出した刻晴さんの選定があってこそです」

「なるほど、お二人の尽力があってこその素晴らしい祭典だったのですね」

 

刻晴のストレートな賞賛の言葉に甘雨は照れたように謙遜する。刻晴はそんな甘雨を見てさらに賞賛を重ねる。

以前まで、甘雨は刻晴に思うところがあったのか少しぎこちない部分があり、刻晴も職務に影響がないからか距離を埋めようとしていませんでした。

しかし、送仙儀式や渦の魔神との戦いを経て二人は戦友のような互いに尊敬し合う気の置けない関係になったようで、プライベートな時間でもお二人で来店されるようになりました。

 

「店主様、私はいつものサラダをお願いします。」

「甘雨はいつも同じサラダを食べているわよね。そんなに美味しいの?」

「はい、旬の果物も入っていますしとても美味しいですよ。何度食べても飽きません!」

「うーん。私もそれでお願い。ただし清心は抜いてちょうだい」

「あれ、エビのポテト包み揚げはいいんですか? いつもお代わりまでしているのに」

「口惜しいんだけど、海灯祭が終わってから会食の回数が増えてあんまり野菜が食べれてないの。だから包み揚げは我慢するわ。本当に口惜しいけどね」

「ピニャータサラダが2点、かしこまりました。」

 

 

 

~ピニャータサラダ~

 

 

 

ピニャータとは、ある地域で子供の祝い事に使われるお菓子や玩具が入ったくす玉のことです。

ピニャータサラダは一見ふつうのサラダのように見えますが、内側に様々なフルーツが隠れているサラダです。

 

サラダに使う食材は、定番のベビーリーフとトマト、ブッラータチーズ*2。旬を迎えたオレンジといちご、アクセントとしてカクテルにも使うマラスキーノチェリー。インパクトを出すためのオリジナルキャビアの材料にキャビア、いくら、パッションフルーツ、フィンガーライム。

あと、刻晴のサラダにはスイートフラワーの花びら、甘雨のサラダには清心の花びらを使います。

ドレッシングはシンプルにオリーブオイルとバニラビーンズ、酢を使って作ります。

 

まずはドレッシングから……といっても、オリーブオイルと酢、刻んだバニラビーンズをまとめてかき混ぜるだけです。

ドレッシングは激しくかき混ぜることで滑らかになりますので、手ではなく法術を使い攪拌を行います。

 

サラダ本体の準備に取り掛かります。

パッションフルーツは種をキャビアと並べてサラダに添えます。種を取り出すときはザルを使ってある程度果汁を取り除いておきます。

フィンガーライムは果肉だけ使うので、半分に切ってから軽くつまんで果肉を押し出します。

あとは野菜を切って盛り付けていきます。

ベビーリーフはサラダの土台として一番最に盛り付けます。その上に細かく刻んだトマトとオレンジ、いちごを満遍なくのせ、トマトとフルーツを隠すようにもう一度ベビーリーフをのせます。

ここでブッラータチーズとオリジナルキャビアの盛り付けます。チーズはオリジナルキャビアの土台になるので崩さないよう慎重に盛り付け、その上にオリジナルキャビアをそっと盛り付けます。

最後にベビーリーフの上にアクセント兼いろどりとしてチェリーを少しと、スイートフラワーもしくは清心の花びらを散らします。今回はせっかくなのでただ散らせるのではなく、話題に上がったので花火状に盛り付けましょう。

これでピニャータサラダの完成です。

 

「ピニャータサラダです。お好みでこちらのドレッシングをお掛け下さい。刻晴様のサラダは清心ではなくスイートフラワーを使っております。子房*3を使っていないので糖分も控えめです。仄かな甘みをお楽しみください」

 

 

 

 

Side:刻晴

 

海灯祭から時間が経ってしまったけどようやく甘雨と打ち上げの都合をつけることができたわ。

オケアノスに来るのも久しぶりだし思いっきり食べて楽しむわよ!

……と、言いたいところだけど、海灯祭とその直前に起きたアクシデント*4から事務作業ばかりでただでさえ運動不足なのに、昼食・夕食は会食続きで体重がほんのちょっと増えてきたのよね……。

少し悩んだけどこれもいい機会と思って前々から興味があったサラダにしたわ。

甘雨はここのサラダを食べているとき、いつも幸せそうな顔をしているのよね。

 

少し待つと、いつもと違って花火のように花びらが盛り付けられたサラダが来たわ。

チーズの上にあるオリジナルキャビアも宝石みたいで綺麗ね。

早速頂くわ。チーズとキャビア、野菜をバランスよく取って……、美味しい!

野菜の旨味、スイートフラワーの甘味、そしてチーズの塩味とドレッシング酸味のバランスがちょうど良いわね。それにキャビアのプチプチした弾ける食感がクセになる!

 

食べ進めると隠れていたオレンジといちごも出てきたわ。でもこんなにたくさんフルーツを入れてバランスが崩れないかしら?

……これは大正解ね。そっか、フルーツをいっぱい入れてもそれぞれの甘味や酸味の感じ方が違うからこんなにも調和が取れているのね。

それにチーズの塩味が味を一層際立たせてくれてる。

どの食材を組み合わせてもすごく美味しい。これはいくらでも食べれるわね。

 

ふと顔を上げると、甘雨がやけに嬉しそうな表情を浮かべていたんだけどなぜかしら?

 

 

 

Side:店主

 

お二人とも幸せそうな表情で食べていますね。それに甘雨の表情は料理によるものだけではなさそうですね。

そういえばこのサラダは甘雨のために作ったのが最初でしたか。

昔、甘雨はコロコロに太っている頃がありました。元々は本人も周りも気にしていなかったのですが、色々*5あってダイエットに挑戦しました。

そのとき低カロリーで栄養バランスが良く、美味しくて食べ飽きない料理として、甘雨とその保護者である留雲借風真君とともに考案しました。

それゆえ刻晴がサラダを気に入ってくれたのが嬉しいのでしょう。

自分が考えたもの、作ったもので人が笑顔になることほど嬉しいことはありませんから。

 

おっと、新たにお客さんが来店されました。

 

「いらっしゃいませ。お好きな席にお掛け下さい」

 

 

 

 

 

※刻晴と甘雨の帰路にて

 

「そういえば、甘雨って店主にすごく丁寧で物腰が柔らかいわよね。なにか理由があるの?」

「あれ、ご存じありませんでしたか。店主様――アスタロト様は帝君とともに璃月の基礎を築いた食の魔神その人ですよ」

「え?」

*1
璃月でその年最初の満月の夜に行われる祭典

*2
フレッシュチーズの一種

*3
花の中心部分、受粉すると果実になるところ

*4
渦の魔神の眷属との戦い

*5
戦争で巨獣に食べられたとき、そのコロコロ体型のおかげで巨獣の喉に詰まって生き延びた




今回から、視点を第三者視点から各キャラクター視点に変更しました。
私としてはこちらの方がキャラクターの感想や反応が表現しやすかったのですがいかがでしょうか。


今回登場する料理のモデルはYoutube上でFood Network Japanにて公開されている
「【料理対決】エイプリルフール対決 | グロッサリー・ゲーム~料理人対決~S17 EP10」
にてジャスティン・ワーナー氏が作ったものです。
大変面白い番組ですので、ぜひ視聴してみてください。


「刻晴と甘雨の帰路にて」は、最終回みたいな終わり方が嫌だったので書いたのですが蛇足でしたかね?
それにしても3話目にしてようやく名前が明かされる主人公とは。

小説の視点について、どちらの方式が良いでしょうか

  • 1,2と同じ(第三者)
  • 3と同じ(各キャラ)
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