オケアノス 七神の料理人   作:黒いの☮

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5. ウェンティと梅茶漬け

Side:店主

 

夜更けの頃、普段であれば閉店時間で締め作業を行っている頃合いなのですが、本日はアクシデントのため延長営業です。

 

「マスター、この稲妻のお酒すっごくおいしいよ~。次はカクテルで飲みたいな~」

「差出がましいようですがこれ以上はお体に障るのでは?」

「~♪」

 

お客様は私の問いかけには答えずに歌を口ずさみ始めました。これは話を聞いていませんね。思わず視線に厭いの情を籠めてしまいそうです。

察しの良い方ならお気づきかもしれませんが、アクシデントとはカウンターに居座り続けるお客様のことです。

お客様の様子を語るのであれば、両手で杯を大切に持って歌を口ずさむ緑の衣の紅顔の美少年、といったところ。まるで絵画の題材にもなりそうな構図ではありますが、実際には酔っぱらって頬が紅潮して平衡感覚が怪しくなっているだけです。

先日、他のお客様とトラブル*1を起こしたため出入り禁止令を敷いていたのですが、解除したのは誤りだったかもしれません。

 

正直、ウェンティ様に居座られるのは慣れているのですが、今日のうちに仕込みたいものもあるので困りますね。なにか気付けになるものを提供して酔いから醒めてもらいましょう。

さて、ウェンティ様は2軒目だからと食べ物は一切頼まず酒しか飲んでいません。食べた物はせいぜいカクテルに入っているオリーブやチェリーくらいです。そのため、唐辛子のような刺激の強い香辛料は使えません。できるだけ体への負担が少なく、気付けになるようなものがいいですね。

であれば、璃月や稲妻で二日酔い対策としても食べられている食材がちょうど良いですね。料理もサラッと食べられるもので作っていきましょう。

 

 

 

~梅茶漬け~

 

 

 

璃月や稲妻で広く親しまれている梅干しは、栄養豊富で疲労回復や静菌作用を持つなど非常に健康に良い食材で、稲妻には「梅はその日の難逃れ」という諺もあるほどです。実際、梅干しに含まれるピクリン酸という成分は肝機能を高める働きがあるとか。当店の梅干しは自家製の5年物ですのでインパクトも抜群です。これで酔いから醒めてもらいましょう。

 

今夜はもう出汁を使い切ってしまったので出汁から準備します。今回はお茶漬け用なので稲妻風に昆布とかつお節からとった出汁を醤油と塩で調節します。出汁をとるときは最初に水を入れた鍋に昆布を入れて中火で熱していき、鍋の底に小さな泡が出るまで煮て昆布を取り出します。出汁は沸騰してしまうと風味が台無しになるのでしっかりと集中して見守ります。昆布出汁がとれたらかつお節を入れて自然と出汁の中に沈んでいくのを待ちます。かつお節が沈み切ったら一度箸で混ぜ、弱火で熱して沸騰直前にかつお節を取り出します。最後に塩と醤油で味を整えて、稲妻風出汁の完成です。

続いて梅干しを準備します。梅干しは種を取り除いて包丁で軽くたたいて柔らかくします。そして少なめによそったご飯の上に盛り付けます。

アクセントに三つ葉を乗せて白ごまを振り、擦り下ろしたワサビも添えて梅茶漬けの完成です。

 

冷めてしまう前に急いで、……やけに静かだと思えばウェンティ様はカウンターに突っ伏して完全に寝てしまっていますね。仕方ありません。

 

「ウェンティ様、起きてください。お茶漬けを作ったのでこれを食べたら帰ってください」

「んあ?いい匂い。

 ……マスター、これ美味しいけどお酒じゃないよ」

「……」

 

もう一度出禁にした方が良いでしょうか?

 

 

 

 

 

Side:ウェンティ

 

やっとオケアノスの出禁が解けたよ!

まったくマスターもちょっとモラクス(じいさん)と口論になって、ちょっと物壊したくらいで出禁にしなくてもいいのに。しかも出禁は僕だけ!

まあ解除されたからもういいけどさ。それよりお酒!

オケアノスはモンドじゃ見ることもできないようなテイワット各地のお酒が飲めるのがいいよね。それにどのお酒もシンプルに美味しい!ふふ、ここで飲んでいるとテーマパークに来たみたいな気持ちになるよ。今日は久しぶりだし、とりあえず7国それぞれの一番有名な地酒を制覇しようかな。まずはモンドのワインから。

 

ふー、飲んだ飲んだ。とりあえずワングラスずつ飲んだけど今日は稲妻のが一番しっくりくるよ。

カワウソの宴だっけ?口に入れた瞬間からお米の甘さと香りが広がって、でも水みたいに軽い飲み口、これ無限に飲めそうだよ。とりあえず1本欲しいなぁ。後でどこの酒蔵か聞かなきゃね。

 

 

 

 

「ウェンティ様、起きてください。お茶漬けを作ったのでこれを食べたら帰ってください」

 

あ、マスターが次のお酒持ってきてくれた。何頼んだか覚えてないけど、いい匂い。

とりあえず一口。うん、口に含んだ瞬間に優しい旨味と香りが広がるや……あれ?これお酒じゃないよ。マスターが料理を間違えるなんて珍しいなぁ。

 

「マスター、これ美味しいけどお酒じゃないよ」

「……。もう閉店時間を過ぎているのでお茶漬けでさっぱりしてお帰り下さい」

「えー、もうちょっとだけいいでしょ?」

「ダメです」

 

うわ、すごい目で見られた。僕、これでも常連なんですけど!

まあいいや、改めてお茶漬けを楽しもう。椀に顔を近づけると芳醇な出汁の香りが食欲を刺激してくるよ、稲妻風の出汁みたいだね。白米とその上に乗っている赤い梅干し、緑の瑞々しい三つ葉(ハーブ)とワサビが色合い的にもバランスよくていいね。それではさっそく、……あぁ、美味しいなぁ。すっきりとした出汁の旨味が口いっぱいに広がってお米が美味しい。梅の塩味と出汁に溶かしたワサビもスッと味を引き締めてくれる。お酒ばかり飲んで冷えていたお腹がポカポカしてくるよ。毎日食べたい、そう思えるような優しい味わいだね。

 

ふぅ、美味しかった。お腹も温まって酔いも醒めてすっきりだよ。これならまだ飲めそう。……だめだね、マスターの目がヤバい。今日は大人しく帰ろう。

 

「マスターありがとう、すごく美味しかったしたよ。カクテルはまた来たときの楽しみにしておくよ」

「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております。」

「あ、稲妻のお酒欲しいんだけど、あれってどこの?」

 

 

 

 

 

※後日談 Side:店主

 

本日もオケアノスは平和に営業しております。

 

「マスターの特製ガレットは美味しいわね、お茶とよく合っているわ。でも作り方まで教えてもらっていいの?私、茶屋のオーナーでもあるのよ」

「良い料理ほど広まって欲しいと思っておりますので。もとより、私のお店は通行証を持っている方限定なので競合もなにもありませんから」

「ふふ、じゃあありがたく真似させてもらうわ。

 通行証を持つ人限定とはいえ相変わらずお店の客は有力者が多いわね。あそこに座っているのは稲妻の社奉行の当主でしょう?」

「さあ、どうでしょうか。」

 

ランチタイムを少し過ぎた頃、楽しくお客様とお話していると澄んだ大きな声と共にドアが勢いよく開けられました。

 

「マスター、助けて!」

「! いらっしゃいませ、ウェンティ様。ランチにいらっしゃるのは珍しいですね、ずいぶん慌ててどうしましたか?」

「実は、あの時のお酒が忘れられなくて璃月から稲妻に向かう船にこっそり乗り込んだんだ。でも出島でバレちゃって……。隙を見つけて逃げてきたんだ。

 マスターならここからモンドまでつなげられるよね?お願い助けて」

「構いませんが罪科は消えませんし、店の外では庇えませんよ」

「大丈夫、モンドに帰ればどうとでもなるから!」

「そうですか、私は構いませんが……」

 

私は構いませんが、情報官や役人の前で密航・密入国の罪を告白していることは構った方が良いのでしょうか。

 

*1
2話末尾参照




今回は忘れない内に書き上げられました。次回も早くできるとよいのですが。。

お茶漬けは毎朝食べている私のソウルフードで、題材にすることはすぐ決まったのですが具材で大いに悩みました。
梅と鮭、漬物、なめろう、etc、いろいろ悩みましたが梅にしました。
出汁は、普段はペットボトルに水と煮干しを入れて作る簡単出汁を使っていますが、やはり昆布とかつお節から作るのが最高ですね。もう無敵です。

小説の視点について、どちらの方式が良いでしょうか

  • 1,2と同じ(第三者)
  • 3と同じ(各キャラ)
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