米花町で五等分   作:マイケルみつお

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13話 米花町でシスターズウォー(一人は余裕です)

 それはある月末。家庭教師の授業がない日の事である。

 

 「これが上杉君、そして村城君の家庭教師の給料だ。五月君、これを彼らに渡してもらえるかな。」

 

滅多に家に帰ってこない五つ子の父親、中野マルオは家に帰るとその場にいた唯一の娘である五月にお札が入った封筒を渡しただけですぐに家を出て行った。

 

「それでは準備して出かけましょうか。」

五月はいつになくおめかしをしてから出かける準備をする。それは三女ほどではないにせよ、次女に対してそのような服装はどうなのか?と抗議していた姿とは全く矛盾するものであった。

 

 

 

 

 「それで五月。これはどういう事かしら。」

五月が全身おめかしをしてドアに手をかけようとした時、他の姉妹も帰ってきて玄関で鉢合わせる形となる。五月のその様子から何かあると次女らが問い詰めて現在に至る。

 

「五月。どうして私たちに何も言わずに行こうとしていたのかしら。」

「五月だけズルい...。切腹。」

「私も...ちょっと言って欲しかったな...」

姉妹はそれぞれ五月に対して思うことを述べる。

 

「しかし...私がお父さんから頼まれたのですから私が持っていくのは当然の話です!」

「そんなにお洒落して?」

「うっ...」

 

「みんな五月ちゃんに対して辛辣だけど...そんなにフータロー君に会いたいの?」

「上杉は別にどうでもいいわ。」

「私も。」

「私は...どうでもいい、なんて事はありませんよ?」

「上杉君はデリカシーのない人ですから!」

 

「みんな色々揉めてるけどじゃあフータロー君のお給料はお姉ちゃんが持っていくね。」

他の姉妹とは狙いが異なる長女は先に仕掛け、自分だけ他の立場を手に入れる。既に長女は勝利条件を満たす事に成功した。

 

 

 「二乃はシュートに対して酷い事をした。二乃が行ってもシュートは困る。」

「もう私は謝って彼とは和解したわ。三玖、いつもと違って随分と何か必死のようだけどあんた、村城の事が好きなの?」

「すっ!?」

 

姉妹は生まれた時から共に過ごしてきたいわば自身の片割れであり、お互いの考えていること、そしてお互いの弱点を知り尽くしていた。

 

「今はそのような感情は関係ありません。私がお父さんに頼まれた事なのです。」

「でも五月。五月は何か美味しいものがあったら寄っちゃうよね。いつまで経っても村城さんの家に辿り着けないよ?」

「人を子どもみたいに言わないで下さい!」

「でもそれならこの中で一番体力がある私が適任だよ!夜も遅くなったら村城さんも迷惑だし一番この中じゃ足も速い私が適任だよ!」

 

お互いがお互いに一歩に引かずに五つ子会議は進んでいく。会議は踊る、されど進まず。この会議を先に進め、終結に導ける人物はこの中でただ一人。

 

「はい。ひとまずここまで。ちょっとお姉ちゃんの話を聞いてね。」

 

既に勝利宣言を済ませた裁判長(長女)だけだった。

 

 

 「何?一花。関係ない人は黙っていて欲しいんだけど。」

「確かに私はこの話とは直接関係ない。だから公平な判断を下す事ができるんだよ。」

既に裁判長をなりきる気満々である。

 

「それで?みんなはシュート君にお給料を運びたいんだよね?」

「そうよ。」

「「「...。」」」

次女以外ははっきりと言葉にできず顔を赤くさせ俯くだけだった。先ほどまでの様子など見る陰もないがしかし裁判長(長女)は言葉にしないといけないという鬼畜でもなかった。

 

「ならこのままお互いに言い続けてもどうにもならないよ。それなら方法を変えなきゃ。」

そう言って一花はポケットからトランプを取り出す。

 

「ポーカーで勝負よ!」

 

 

 ポーカー。それはトランプを使用したゲームだが他のゲームよりも心理戦の割合が大きく運の要素は小さい。よって...

 

「べ、別のゲームにしようよー」

ポーカーフェイスとは縁もない四女は当然反対する。

 

「嫌よ。裁判長が言った事は絶対。」

「ポーカーに決定。」

自身のポーカーフェイスに自信がある次女と三女は当然賛成し、多数決の原理からポーカーに決定した。

 

 

 

 「なぜ...」

「そんな...はずでは...」

血で血を洗う姉妹間での戦争(ポーカー)。幾度の涙と屍を超えて勝者へとなったのは...

 

「やったー私の勝ちですよー!」

直前あれだけポーカーに反対していた四女だった。

 

 

 「や、やっぱりポーカーなんて辞めない...?」

「二乃。裁判長が言った事は絶対だよ。」

二乃が四葉に言った事をそのまま返す。次女も自分が言った事が滅茶苦茶だという事には気づいていたのでグヌヌと言いながら引き下がる。

 

「まさか...四葉があんな戦法をとるなんて...」

 

四葉は自分がポーカーフェイスが苦手だと言うことを自覚していた。このままでは勝負に勝てない。だからこそ四葉なりに策を弄した。どんなに注意しても緊張が顔に出てしまうのならもういっその事、常に緊張していようと。ポーカーフェイスとは常にクールな表情を浮かべる事。四葉は反対に常に緊張した表情を浮かべる事でポーカーフェイスの役割を果たしたのだ。

 

 

 「それで私が村城さんに持っていくんですが...」

四葉は勝ち誇った顔で続ける。

 

「私、村城さんのお家の場所知らないんですよねー。誰か知ってる?」

 

「「「「...。」」」」

 

誰も知らなかった。




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