テスト勉強期間中、上杉とは違い五つ子の家に泊まる事はなかった。彼女達には失礼だが俺たちの家庭教師はこのテストで終わりだ。これからは自分達で勉強しなければ卒業はできない。それに...夜はやる事があった。そして時は過ぎていき...ついに運命のテストの日を迎える。
テスト期間特有のピリピリとした、緊張感のある空気が教室を支配していた。しかし始業時間の十分前になっても三玖の姿はなかった。上杉も彼女達も時間にはいつも余裕を持って登校している。おかしいな、と思っていると...上杉から電話がかかってきた。俺は教室を出てからその電話をとる。
『遅いぞ修斗!』
電話口から聞こえるのはハァハァと息をきらせながら話す上杉の声。あいつが変態ではないのなら今、走っているのだろう。
「あと何分くらいだ。テストには間に合いそうか?」
始業時間の十分後からテストは始まる。故に始業時間を過ぎたとしてもテストを受ける事は可能なのである。
『テストにはギリギリ間に合うと思う。だが...』
「分かった。生徒指導の先生は俺が何とかしておく」
『話が早くて助かる』
生徒指導の柴田先生。生徒からは鬼柴田と呼ばれている。確かに遅刻は学校からすれば許される事ではないだろう。しかしテスト日であれば話は違うと思う。仮に遅刻したとしてもテストには間に合わせるのが普通の対応だ。そう、それが普通だが...鬼柴田にその理屈は通用しない。
テストに遅れる事も構わず彼なら容赦無く生徒指導室に連れ込むだろう。もし仮にテストに間に合ったとしてもその精神状態ならまともにテストなんてできないだろうな...。上杉はともかくあの五つ子はそういうプレッシャーにあまり強くなさそうだし。
「仕方ない」
これが家庭教師補佐としての俺の最後の仕事だ。
──────
「......」
校門の前で腕を組んで悠然と立っていらっしゃいますな。この学校は門は一つしかない。それ以外から入ろうとすれば警報が鳴り響く。鬼柴田をあそこから動かす他ないだろう。...正直あまり目をつけられたくない...
「誰かに変装するか」
まさかこんなところで変装するとはな...。キッドに指導され、俺の変装スキルは更に上がった。一般人の鬼柴田に見破られる可能性は皆無だろう。彼のように一瞬で変装する事は不可能だが。
さあ、誰に変装しようか。この前のキッドの時もそうだったが、一番変装がバレやすい要因は本物と遭遇する事である。教職員、生徒であれば学校で本物と遭遇する可能性が存在する。かと言って学校に関係のない人間が校門の方から現れればそれも問題だ。
学校に関係ある人物であり、現在この学校にいない人物......
「あ、いるじゃん」
その人物はこの学校の生徒でありながら、確実に今日、この学校にいない人間。
「いやいや! あいつは存在を知られたらいけないんだ! 何を考えているんだ俺は!」
危ない危ない。
「柴田先生!」
「ん? どうした?」
「ちょっと来てくれませんか?」
「えっ、あっ、おい!」
俺は鬼柴田を引っ張る。そして横目でアイコンタクト。俺が鬼柴田を連れ出した隙に上杉と五つ子が学校に入った事を確認する。
「で、どうしたんだ」
...鬼柴田を校門から動かす方法は考えてたけどその後は考えなかったな。
「おはようございます!」
「...は?」
「ですから! おはようございます! 柴田先生!」
やべー。自分でも何が言いたいのかが分からねぇ...。これは...生徒指導室に呼び出されるパターンかもな...
「そうだな! いい朝だな! おはよう!」
しかし鬼柴田は見た目通り熱い先生(?)だったようで叱られるどころかむしろ気に入られてしまった。
──────
特に鬼柴田からお咎めを受ける訳でもなく俺は教室に戻ってテストを受けた。教室には既に三玖が着いていた。
「ありがとう修斗」
「気にするな。それより...頑張れよ」
「うん」
修斗の様子を見てれば分かると思いますが彼、完全に辞める気満々です()
この作品は五つ子が赤点完全回避してから本編みたいなものなのでこれからもお付き合い下さい。
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