米花町で五等分   作:マイケルみつお

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ヒロイン二乃ってしましたけどまだ仮決定なので悪しからず......(本音を言えばクライマックスまで発表するべきじゃなかったと後悔中)

前回更新からかなり時間が空いてしまってすみません。

そういえば......活動報告にアンケート設置してますよ!ってこれまで告知していましたがまだURL載せていませんでしたね。(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=278247&uid=385679
現在はifルートの募集でしたがよければ是非。


39話 米花町で初めて

林間学校2日目。1日目が悪天候によって予定が変更になった事から2日目以降の予定もやや変更となった。

まず最初に取り組むのは班単位での飯盒炊飯、カレー作りである。とはいうもののインド人がスパイスから作るようなカレーではなく今回のようなカレーでは作業は簡単。強いて言えば野菜を切る事がやや煩雑といったところか......。

 

「村城君手慣れてるね! いつも料理とかしてるの?」

 

俺は一番時間がかかるとされる野菜を切る担当を申し出た。

 

「毎日って訳じゃないけどな」

 

クラスメイトの女子からの質問に目は野菜に向けたまま答え、包丁を振るう。

 

「............」

 

三玖からなんか凄い視線を感じるが......しかし彼女には大事な役割がある。

 

「何で私を料理の工程から外したの?」

 

野菜を切る工程、肉や野菜を炒める工程など、実際に料理の工程から彼女を外した事を根に持っているらしい。──っと、全部切り終わった。

 

「三玖には炊飯の時間を測ってもらいたい」

 

「それは料理じゃない」

 

三玖に担ってもらう大事な役割とはすなわち──何もしない事である。

家庭教師をしていなかったらきっと気づかなかった事だろう。彼女が関われば料理がびっくり罰ゲームへと変貌してしまう。

俺は訓練されているからどんなマズいものでも顔色一つ変えず食す事ができるが......別に好んでマズい飯が食べたいという訳ではない。

 

「時間を測る事も立派な料理の一部だぞ? 加熱のしすぎや逆に足りなかったりしたらどんなにその前の工程が完璧でも美味しく出来上がらないし......凄く大切な工程だ」

 

口籠る事なく言い切る事ができた。

 

「ほ、本当?」

 

「勿論。だから信用できる三玖に頼みたい」

 

「うん、分かった」

 

口先で騙している状況だが──蘭のおかげで慣れたのか、あまり罪悪感は感じなかった。

 

「一応言っておくけど隠し味とか絶対に入れちゃダメだからな」

 

「うん、分かってる」

 

そうも自信満々に答える三玖に──逆に心配になる。

 

「田代さんも見ててくれない?」

 

先ほど包丁捌きを褒めてくれたクラスメイトの田代さんに三玖のお目付けを頼んだ。

 

「......シュート、私の事信頼してない」

 

「話し相手がいないと退屈だろ? オレ、ミク、シンジテルカラ」

 

罪悪感を抱かないと言っても居場所が悪い事には変わりなかったため三玖を褒めた後、その場を離れた。

 

 

 

 

「あら修斗君じゃない。どうしたの?」

 

訪れた先は当然新一の元。あいつに気づかれないように発信機と盗聴器をつけていたのでまだ何の問題も起こっていない事は分かっていたが時間があればこうして来るようにしている。

俺にとってはこの林間学校は一つの任務のようなものだから。

 

「自分の担当は終わったから。ぶらぶら歩いていたらたまたまここに。新一は?」

 

「あそこにいるわよ。でも邪魔しない方がいいわね。なんてったって夫婦の共同作業なんだから!」

 

『もう新一! それじゃあ大きいって! 大きすぎると火が通るの遅いんだから! ったく、ちょっと頂戴』

 

『お、おう』

 

新一達と、園子と俺がいる位置は少し離れていて二人の会話は聞こえない。他に誰も聞いている者がいないと考えているからか、小っ恥ずかしい会話を繰り広げている。

俺は無線を通して二人の糖分高めな会話を意図せず聞いてしまい......口の中まで甘くなってきた。

俺達以外からも生暖かい視線と揶揄いの言葉が飛び──新一はその全てに反論しているが頬の紅潮を隠しきれていない。

自分が今、組織に絶対にバレてはいけない姿だというのに......全く周りを警戒する様子はない。

 

「......気楽なもんだな」

 

しかしそれはおそらく高校生としてあるべき、望ましい姿なのだろう。......俺が捨てたものだ。

そんな学生として林間学校を心の底から楽しむ新一に対して冷めた目をしてしまう自分が──俺は嫌いだ。

 

──────

昼食が済み、その後の行事も何の問題なく終える事ができ夜になった。現在は自由時間であり俺はホテルの外で冷たい風に当たっていた。

 

「そういえば自由参加で肝試しもやってるんだったな」

 

上杉と四葉が企画していると言っていたのを思い出す。尤も、あくまで自由参加であるため参加しない人も多いのだが。

現に耳から聞こえてくる新一の声を聞く限り、彼らは行かないようだ。蘭がそういう類のものが苦手らしい。しかし彼女達が肝試しに行かない事は正解だろう。条件反射で脅かした上杉を再起不能にしてしまいそうだから。

 

「新一、か......」

 

まだ前回の薬を飲んだ時間から逆算してここ数時間は大丈夫だろう。盗聴器から聞こえてくる音からしてもまだ異変は見られない。

 

普段の俺なら灰原同様、新一が大人の姿で林間学校に参加する事に賛成しなかった。危険すぎるからだ。

しかし俺はこうして彼に協力している。それはあの時、新一にこう言われたからだ。

 

「組織について新しい情報がある」

 

組織に関する情報は俺が林間学校への参加を否定したとしても共有されるだろう。あいつも公私の区別はついているはずだから。......ついてるよね? 

ともあれ俺はその交換条件によってあいつの要求を呑んだ。

 

俺にとって林間学校は一つの任務のようなものに変貌した。何を差し置いても新一の姿を衆目に晒さない事が俺の中での第一優先順位となっている。

五つ子と上杉は俺の何らかの異変に気づいているようだったが──何も尋ねてきてはいない。個人的に助かっている。そんな時、聞き覚えのある会話が聞こえてきた。

 

「ちょ、ちょっと! なんで肝試しなんて行かないといけないのよ! 五月! 行きたいんならあんただけで行きなさいよ!」

 

「に、二乃は怖いんですか? 随分と弱虫ですね」

 

「それはあんたでしょ! 何で私を連れて行くのよ! この森、出るって噂なのよ!?」

 

「だって......ここで逃げたら上杉君に負けたようじゃないですか!」

 

聞き覚えのある声は二乃と五月のものだった。声はこちらに近づいてくる。

 

「だからって何で私を......」

 

二人の声は間近にまで近づき、ついに二乃と目が合った。

 

「ねえ五月。私にいい考えがあるんだけど」

 

「奇遇ですね。私もです」

 

二乃と目が合った後、二人は何やら声を合わせて話し始める。何を会話していたのか聞こえないがしかし言おうとしている事は予想できる。右耳から聞こえる音に集中する。新一に異常はない。

 

「村城。ちょっと付き合いなさい」

 

──────

肝試し、とは文字通り精神力の源とされる肝を試す行為を指す。古くは平安時代の『大鏡』にも記述が存在し、藤原道長の逸話はあまりに有名だろう。道長は肝試しによって自らの精神力、度量の広さを見せつけた。

今回の肝試しでは、人気のない森を歩くというものなのだが......

 

「重い」

 

「し、仕方ないじゃない!」

「じょ、女子に対して重いなんて! 村城君も上杉君みたいにデリカシーがない男性だったんですか!?」

 

俺も普段なら気を遣って「重い」だなんて言わない。だが......

 

「じゃあせめて自分の足でしっかり歩いてから言ってくれ」

 

恐怖で足がすくんでいるのか、俺の腕にしがみついた状態で固まる二人を俺は半目で睨んだ。先ほどから俺が二人を引き摺って進んでおり、流石に重い。

 

 

 

 

「あんたは怖くないの? こういうの」

「村城君はあまり怖がっていないようですね」

 

二人が自分の足で歩いてくれて、肩こりから解放された。

 

「幽霊とか、人智を超えた存在は確かに怖いが、逆に何もできないから恐れる事はないな。恐れたって何もできないんだから開き直れる」

 

それに米花町出身なら暗闇で恐るべきは幽霊よりむしろ......

 

「そういえば今更だけどあんた、何でメガネかけてんの?」

「村城君も目が悪かったんですね」

 

俺がつけているのは視力矯正のためのメガネではなく、あくまで新一達の補足と盗──見守りが目的であるため視力は関係ないのだが──説明できる訳もないのでそういう事にしておこう。

 

っと、そう考えていると──見つけた。あそこだけ木が不自然に揺れている。中々よく隠れているけれど、風が当たる事までは計算してなかったようだな。二乃と五月は──気づいていないみたいだけど。

 

「勉強しろ〜!」

 

金髪のカツラに変な仮面つけた──声と体格的に見て上杉が降ってきた。

 

「きゃ、きゃぁぁぁぁ! ぐえっ」

「う、うわぁぁぁぁぁ! ぐえっ」

 

空からの上杉の登場に、二人はパニック状態に陥ったようで──走りだした。進路と全然違う方向に。

ただ走るだけならそれも肝試しの醍醐味とは思うがあの先は確か崖。怪我したり迷子になる事までが肝試しの醍醐味とは思わなかったので走って追いつき二人の首根っこを掴んだが──ぐぐもった蛙のような声が出てしまった。

 

「な、何するのよ村城!」

「そうです! 何するんですか!」

 

あれ、俺てっきり感謝されると思ってたんだが。彼女達の怒りの矛先は間違っている。正常なところに向けさせないと。

 

「二乃と五月が全然違う方向に走り出そうとしていたからな。上杉、脅かす場所を変えたらどうだ?」

 

「上杉!?」

「上杉君!?」

 

仮面とかつらを外した上杉に二乃と五月から詰められている。......正確には職務を忠実に実行して脅かした上杉に怒りの矛先が向かうのも少し違うとは思うが......まあいいや。

 

「策士ですね! 村城さん!」

 

ちょっと静かにしててね四葉。もう少しで上杉を生贄にして二人の怒りが完全に晴れるとこだから。

 

 

 

 

「二乃と五月はあれだけ驚いたというのに修斗、お前そんな驚かなかったな。ネタが割れてた一花と三玖以外は全員驚いたんだが」

 

「いや、別に何も怖い要素なかっただろ。風で茂みも揺れてたし誰かが潜んでいたのはバレバレだったし」

 

「なら何で言わなかったのよ」

「教えてくれても良かったですよね?」

 

左右から降り注ぐ視線が鋭くなった。

 

「テ、テーマを絞ってみたらどうだ? 心霊系の恐怖なのか凶悪犯が襲ってくるみたいな恐怖か。

凶悪犯的な恐怖は皆米花町の学校に通っているから慣れてるかもしれないけどさ。今のって単純なドッキリ──ただ驚かせただけじゃん」

 

蘭も参加するなら凶悪犯的なドッキリは上杉がボコボコにされるかもしれないからやめた方がいいと思うが──無線から聞こえてくる限りやはり蘭達は肝試しには参加しないようだ。

 

──────

今日の話的にあいつ(村城)、まだキャンプファイヤーの相手決まっていないみたいね。

 

「って! 何で私はあいつを誘おうとしてんのよ!」

 

これじゃあ私があいつの事好きみたいじゃない! 

 

「そんな事......あり得ないわ......!」

 

しかし脳内で言い合っている内も足は進み、気づいた時にはあいつの部屋の前まで来てしまっていた。

 

「べ、別にあいつが好きで誘ってる訳じゃないし。これはそう! 慈悲の心よ! どうせ相手がいない──いないよね?」

 

自分の中で結論つけようとしたが仮説に綻びが生じた。あいつ、外面はいいし私の友達でも気になってる人はいるけど......でもそうよ! そんな素振りなんてなかったわ! 

 

「ウジウジ悩むなんて私らしくない! 慈愛の心であいつを誘ってあげるだけなんだから! 特に深い意味なんてないんだから!」

 

自分の中でひとまずの結論をつけ、あいつの部屋をノックしようとする。その時......

 

「あれ、二乃?」

 

曲がり角を曲がってきてこちらに歩いてきたのは一花だった。村城達の部屋は突き当たり。つまり一花の行き先もここの部屋という事になる。

 

「あんたは......上杉を誘いにきたの?」

 

「ご名答!」

 

何も悪びれる事もなく一花は答えた。

 

「あんたも物好きね」

 

「あははー。怒るとこなんだろうけど、でも二乃と好きな人が違って良かったよ。二乃、手強いし」

 

「そうね。私もあんたと被らなくて良かったって思ってるわ。あんた、見た目にそぐわず結構エグい手使ってきそうだし」

 

「そんな事しないってー」

 

どうだか。

 

「ま、それぞれ目的は違う事だしさっさとドア開けるわよ」

 

そう言って村城達の部屋のドアをノックする時だった。

 

「ふざけんなっ! お前! 言っていい事と悪い事があるって分かんねぇのか!?」

 

ドアの向こうから途轍もない怒気を孕んだ怒鳴り声が。......私は、この声を知っている。

 

「村、城......?」

 

私が睡眠薬を混ぜた時もこんなに怒った事がなかった村城が──怒ってる。私はあいつがこんなに声を張り上げて感情を振るわせたところを──見た事がなかった。




結構更新空いたので改めて。二乃は恋心を自覚してから行動に移すまでは早いけど恋心を自覚するまではそんなに早いという訳ではないという解釈です。

個人的推しはともかく風太郎とのやり取りは一花とが一番好きなんですよねー

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