米花町で五等分   作:マイケルみつお

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原作を読まれた方なら結末分かり切っているとは思いますが今後の展開の練習のために推理パート入れてみました。冗長すぎますかね?アドバイスとかありましたらお寄せください。


41話 米花町でおめでとう

「帰ったのね」

 

新一と電話を博士に押し付けてから俺は林間学校の宿舎に戻った。戻ってみれば──やはりと言うべきか、二乃が腕を組んで待ち構えていた。

 

「リュックサック。小さくなっているわ」

 

彼女の視線は真っ直ぐに俺の背中を貫く。現状、五つ子の中では二乃が一番、俺の正体を疑っている。事実、五つ子の中で二乃だけが俺を待ち構えていた。

しかしどんなに疑われたとしても俺は彼女に正体を明かす事はできない。二乃の視線から目を逸らし、次の話題に繋ぐ言葉を紡ぐ。

 

「そういえば他の姉妹はどこに行ったんだ?」

 

「え? 何突然。四葉は確か実行委員会の手伝いで三玖は確か──って! なに話逸らしてんのよ! 今日という今日は逃さないんだから!」

 

流石に簡単に誘導に引っかかってはくれなかった。ただ、さっきと違ってリュックの中に新一がいない時点で既に何も恐れるものはない。ボロを出す事もない。

 

「逃さないって、何を?」

 

「何って! 今更とぼける気!? あんた、さっきの大きな悲鳴、まさかなかった事にする気じゃないでしょうね!?」

 

「だからさっき言っただろ? 映画を大音量で聞いていたんだって」

 

「それがあり得ないって事もさっき言ったわ」

 

どこまでいっても押し問答。堂々巡り。......そんな顔で見ても言えないっての。

話題を逸らすためにはそれ相応の威力のある話題を選択しなければならない。それでもって相手の意識を自然とそちらに誘導する事ができれば......

 

「キャンプファイヤーとか行かなくて良かったのか? お前、楽しみにしてただろ」

 

「キャンプファイヤーは明日よ。......ってなんで知ってんのよ!」

 

注意を逸らす事には成功した。我ながら酷い人間だと自覚する。

 

「それくらい見てれば分かる。確かに火を見ると人間は安心するように作られているしな」

 

俺は全く思わないが。

 

「火を見ると安心するって......。まあ確かにそうだけど......」

 

人が火を見ると落ち着くのは原始時代から長い年月をかけて遺伝子に刻み込まれているから。人間が遺伝子に逆らうのは難しい。それこそ強力な衝撃がなければ。

 

「その......あんた、明日のキャンプファイヤー。一緒に踊る相手とかもう決まってんの?」

 

「え? いや、決まっていないけど」

 

こいつは突然何を言い始めているんだ? ......そういえば新一の監視をしている時に蘭や園子が何か言っていたような......。確か「キャンプファイヤーの伝説」だったか? その時踊っていた相手と生涯結ばれるとかいう。まあそんな伝承があろうがなかろうが、俺は参加したくない。

 

「キャンプファイヤなら行く気──」

「も、もし相手がいないのなら私が一緒に踊ってやってもいいけど。キャンプファイヤーで一人踊るのも寂しいだけでしょ? べ、別に深い意味はないんだからっ!」

「............」

 

......急に断りにくくなった。二乃は頬を赤くし、俺から目を逸らして言う。その視線に込められた意味は──どんなテスト問題よりも簡単なように思えた。......俺は鈍感じゃない。むしろ敏感で過敏なほうだ。俺が極端な自意識過剰野郎で他人に言うのも憚れる勘違いをしていなければ。

しかしだからこそ、俺はその気持ちを理解した上で見て見ぬフリをしなければならない。俺では彼女の気持ちに答える事ができないから。

 

俺は火が苦手だ。幼い時、両親を最後に見たのは火の中だったから。その時に脳裏に刻み込まれた映像は遺伝子に抗うには十分な衝撃だった。ただ......

 

「じゃあ誘いを素直に受け取ろうかな」

 

彼女にできる身勝手な贖罪として俺はその手を取る。おそらくこれが彼女と深く関わる最後の機会になるだろうから。

 

──────

「あ、シュート。戻ってきてたんだ」

 

村城と話していると三玖がミシミシといった床鳴りをあげながらこっちに走ってくる。別に三玖の体重が重いとかじゃなくて、ただ純粋にこのロッジが建てられてから結構経つからだ。

 

「あ、村城くん。探しましたよ」

 

三玖に続いて五月もミシミシといった床鳴りをあげながら向かってくる。......こっちは分からないわね。

 

「......二乃。何か失礼な事を考えていますよね?」

 

前から思っていたけどあんた、そういう事には目敏いわよね。

 

 

 

 

「え? 一花がいない?」

 

「それと上杉くんも。まだ林間学校が始まってから7人で過ごしていなかったと二乃が言っていたので」

 

「......二乃が?」

 

何でそこまで言うのよ五月は! でもここで取り乱す方が不自然よね......。

 

「あんた。林間学校始まった時から不自然だったわ」

 

最初はそうね......。上杉が体調を崩してから迎えに行くかどうかの時。いつものあんたなら間違いなく私達に付いて来てくれた。その後も何だか別の事を気にしているようで何だか変だった。

 

「でも今はその不自然さもなくなった。......あのリュックサックが関係しているんでしょ?」

 

最後はあいつにだけ聞こえるように小声で。

その言葉が聞こえるとあいつは驚いたかのような表情を見せる。露骨すぎなのよあんたは。いつもならそりゃ私も誘導されたかもしれないけど、話を逸らされないように気をつけてたんだから。でも私はそれ以上踏み込まなかった。いいえ、踏み込めなかったのよ。その先に何があるのか、あいつが隠しているものを受け止められるだけの覚悟がなかったから。

 

「今は何も聞かない。でもいつか、ちゃんとあんたの口から聞き出すから」

 

「ちょっと二乃? さっきからコソコソ二人で何を話しているんですか?」

 

五月と三玖には聞こえなかったようでご立腹みたい。でももう内緒で伝えたい事は伝えたわ。

 

「別に? 何でも。とにかくもうあんた、今から就寝の時間までは一緒に過ごせるのよね?」

 

「ああ」

 

「それならいいわ」

 

それよりもさっきから誰も言わないけどこれ......おかしいと思っているの私だけ? 

 

「ねえ、一花と上杉がいないってのは分かるけど──四葉は?」

 

あの子の姿もさっきから見えないんだけど。

 

「四葉は一花とフータローを探しに行ってる」

 

「何か当てでもあるの?」

 

「「............」」

 

「ないの!?」

 

この林間学校は三学年全ての生徒が集まっていて、それだけにロッジだけでもかなり広い。そして範囲を更に広げれば──当てもなしに見つけられない事は流石に分かるわ。

 

「一応確認したとは思うけど──メッセージは返ってこなかったのよね?」

 

「一花はスマホを自分の部屋に忘れてた」

 

「上杉君の携帯電話ですが、彼と同じ......つまり村城君と同じ部屋の生徒に確認してもらったところ、彼も自室に置き忘れているようです」

 

「このご時世にスマホを置いて長時間離れるなんて......。あいつはともかく一花は考えにくいわね」

 

一花は女優を志している。花火大会の時に言われた時は突然で驚いたけれど......。でも林間学校の前にオーディションを受けたって言っていたしやっぱりスマホを離すのはあまり考えられないわね......。

 

「誘拐、とか......」

 

一度一花と間違えられて誘拐されそうになった三玖が零す。それは私達が考えないようにしていた最悪の仮説。ただ......

 

「一花はともかく上杉を狙うかしら?」

 

「そもそもさっきからどうして一花と上杉が一緒にいる前提なんだ?」

 

「え? ......確かに」

 

確かに言われてみれば一花と上杉が一緒にいるとは限らない。むしろこの広い林間学校の中じゃ別々にいる可能性の方が高いはず。

 

「どこかで思い違いをしていたようね。さっきまでの議論は捨て置いてもう一度考え直しましょう」

 

「いや、むしろさっきまでの議論をもっと掘り下げるべきだ」

 

「え?」

 

さっき一花と上杉が一緒にはいないと言った村城が、今度は一花と上杉が一緒にいるという議論を掘り起こす......? 頭がクラクラしてきた。

だけど村城が言っていたのはそういう事ではなくて......

 

「一人だけがそう思い込んでいたのなら、二乃の言う通り確かに考える事はない。ただ三玖も五月もそうだと思い込んでいた。言い換えるのなら先入観を持たざるを得なかった何かがあるはず」

 

「ではその正体に辿り着けば......」

 

「一花達に辿り着くんだね」

 

「そういう事」

 

ようやく村城の発言の意図が分かった私達はなぜそう思ったのか、三玖と五月の記憶を振り返る。

 

「えっと......一花達と最後に会ったのは......」

 

「ここで二乃が騒いでいた時だから1時間前くらい」

 

「うるさい三玖」

 

大体あの時村城が逃げなかったらこんな事にならなかったかもしれないのに! 村城......あ。

 

「その時上杉はいなかったわね」

 

「じゃあその時じゃないって事か」

 

私達の話を村城が取りまとめ、どんどん範囲を狭めていく。

 

「そういえば上杉君と最後に会ったのはいつですか?」

 

「肝試しの時。あの時私は一花と回っていた」

 

「私は......私も肝試しの時が最後ね。あんたに思い切り首を掴まれた時が最後に上杉と出会った時よ」

 

「首を......?」

 

「と、とにかく。それが上杉の最期だったという訳だ。そういえば四葉は上杉と一緒にいたな」

 

肝試しの時に私達と別行動をしていた三玖が村城が私の首を掴んだ事に一瞬反応したが──即座にあいつが話を逸らした。客観的に見るとよく分かるものね。

 

「四葉と上杉君は林間学校の実行委員会でしたからね。四葉はキャンプファイヤー担当でしたが上杉君を手伝っていたようです」

 

あの子はとことんお人よしだから......。

 

「でしたら、四葉はあの後も上杉君と居た事になりますね」

 

「そうなるな。なら四葉に電話してみよう。もしかしたら既に見つけているかもしれないし」

 

「なら私がかけるわ」

 

あいつの提案に私が答え、ポケットからスマホを取り出す。アドレス帳から「中野四葉」を呼び出し通話ボタンを押す。

 

無機質な発信音が流れる。私はこの音が消えて四葉の声が聞こえる瞬間を今かと今かと待つ。

どれだけ電話をかける経験を積み重ねようと、例えかける相手が家族だろうと繋がるまでのこの時間が少し私は苦手だ。

人との、家族との繋がりに依存する私にとってこの瞬間だけは相手と繋がっていないという事を目の前に晒されるから。そして程なくして発信音は──変わらなかった。

 

「多分あの子、探すのに必死で気づいてないわ」

 

前言撤回。仮にスマホを持っていても意味ない時もあるわね。......私もたまに通知逃す時もあるし。上杉はともかく一花には後で何かしてあげようかしら。

 

「結局四葉が一花達を見つけられたのか分からないわね」

 

「いや、見つけられていない。着信と違って発信は気づく気づかないじゃないから」

 

だとすると......結局何も掴めなかったって事じゃない。

 

「......四葉はキャンプファイヤー担当って言っていたよね?」

 

村城は考えこむ素振りを見せながら尋ねる。

 

「肝試しを手伝ってくれたお礼に上杉が四葉を手伝った、とは考えられないか?」

 

「でもそれなら四葉がとっくに見つけているはず。四葉はフータローと一花を探しに行ったから」

 

「流石に人探しをしている最中に誰を探していたか忘れるなんて、四葉でもあり得ないわ」

 

「それにそれだと一花は関係ありませんからね。うぅ......頭を使ったのでお腹が空きました......」

 

空腹......夕食......食堂......。

 

「思い出したわ。一花、ちょっと色々あって上杉とキャンプファイヤーを踊る事になったそうよ。その打ち合わせがしたいとか夕食の時に言ってたわ。三玖と五月も聞いたわよね?」

 

「ええ」

 

「うん。それ、私が絡んでいる話だから」

 

三玖が言うにはクラスメイトからの告白をかわした結果らしい。結局話は曖昧なままで細かい詰めをしにいったのね。

そういえばさっき村城が──一応の映画の音源だと主張したあの時も一花、上杉をキャンプファイヤーに誘うって言っていたわね。......上杉の事が好きな一花からしたら三玖の行動はナイスでしかなかったでしょうけど......。

 

「じゃあそれで一花と上杉が一緒にいるって先入観を持ったのか」

 

三玖と五月はそれぞれ顔を見合わせ、確認した後に首を縦に振る。でも、だからと言って一花達の場所が分かる訳ではない。私達は長い遠回りをして、結局何も辿り着く事ができなかった。

 

「二人がいる場所が分かった。着いてこい」

 

しかし私達が意気消沈する中、村城は場所が分かったようで......

 

「行き先はキャンプファイヤーの木材倉庫。理由は行きながら話す」

 

何だか探偵のようだった。

 

──────

「まず最初。一花と上杉が一緒にいるのかといった疑問だ。二乃。お前が俺の部屋を尋ねてきた時、一花は上杉を訪ねに来ていたんだよな?」

 

「ええ」

 

「理由は置いておくとしてもその時、俺の部屋に上杉はいなかった。すると次に一花はどういった行動を採ると思う?」

 

「どうって......」

 

目的の人物がいなかったらそりゃあ......

 

「ロッジの部屋以外の......上杉に会いに行くと思うわ」

 

「正解だ。そして上杉は携帯電話を部屋に忘れていたが既にこの時忘れていた確率も高い」

 

「どうしてよ?」

 

村城の確信めいた言い方につい聞き返してしまう。

 

「普通、人に会いに行くとしたらどうする?」

 

「連絡、しますね」

 

「正解五月。相手に時間があるのか、そもそも相手がどこにいるのか確かめるためにも普通、訪問の前には連絡をとる。まあ、連絡しないでいきなり部屋にやってくる人もいるにはいるけど」

 

「......うるさいわね」

 

絶対私の事を言ってる。間違いないわ。

 

「一花は上杉に連絡をしたが返信がなかった。なぜなら上杉は携帯電話を部屋に忘れていたから。それで一花は居る確率が高いロッジの部屋に来たんだ」

 

これでまず一段階、と村城は指を立てる。私達は話しながら足を進めており、話始めの方はまだロッジの中だったと言うのに今は外を歩いている。......と言うよりこの道、数時間前に通った道よね。幽霊とか出ないわよね......? 

 

「ロッジで上杉を見つけられなかった一花は別の場所を探しに行った。しかしこれも考えてみればおかしい。ロッジの中で待っていればすぐとは言わずともいずれ上杉は帰ってくる。しかも連絡は通じない状況。つまり一花はこのロッジ以外にも上杉がいるであろう場所を知っていたという事だ。一花の事だからスマホを忘れて出ていったってのはちょっと考えずらい。電池切れを起こしたとかそんなとこだろう」

 

「確かに......」

 

村城の話を聞いて五月は納得する。確かに今までの話で特に問題はなかったけれど......でもこれだけじゃ一花達の場所をキャンプファイヤーの倉庫だと断定する事はできないはず。

 

「その通り。これだけではまだ足りない。最後のピースは──四葉だ」

 

「四葉?」

 

今までの話とは一見無関係に思える四葉が出てきた事で三玖が首を傾げる。

 

「さっき言ったけど、一花達を探しに行った四葉はまだ上杉達を見つけられていない。さて、どんな時に四葉は上杉達を見つけられないと思う?」

 

「シンプルにフータロー達がいる場所をまだ四葉が探していないか......」

 

「既に探したと思い込んでいる場所、ですね」

 

「正解。より具体的に例を挙げると、四葉は一花を探す直前までキャンプファイヤーの作業をしていたはずだ。それならキャンプファイヤーの作業場周辺にはいないと思うのが自然だろう? さっき挙げた一花の条件と今言った四葉の条件が重なり合う場所──それがここだ」

 

丁度、村城が話し終えたと同時に私達はキャンプファイヤーの木材を保管していた倉庫の前に辿り着く。倉庫には鍵が閉められているが中からドンドンと扉を揺らす音がして──誰かが中にいる事は明白だ。

 

「って! 鍵はどうするのよ!」

 

「大丈夫。先生から借りてきた」

 

「シュート、仕事早い」

 

その準備の良さに思わず半目で村城を睨んでしまう。

 

「そういえばもう11月だな。もうすぐ正月だ」

 

「突然どうしたの? シュート」

 

「お前らは初詣とか行ったか?」

 

「ええ。毎年近くの神社に参拝に行っています。ですがそれがどうしたのですか?」

 

「じゃあ手を合わせる準備をしとけ」

 

そう言うと、村城は懐から取り出した鍵を倉庫の鍵穴に差し込み左に捻る。ガチャリとした音は扉が開いた事を示す何よりの証拠だ。鍵が開いた事を確認して、村城は両手で持って倉庫の扉を開く。今、長らく閉じられた扉が開かれる! 

 

「あきましておめでとう」




Q, 二乃消極的すぎんか?
A, 前に言ったか忘れましたけど二乃は好きになってからは早いけど好きになるまでの早さは人並みだと思っています。信じられないかもしれませんがまだ二乃は完全に自分の想いを自覚する段階にありません。

Q, 二乃以外の五つ子は何してんの?
A, 原作でも一花と二乃に半ば煽られる形でシスターズウォーが開戦しました。一花が別の人を好きになり、そして二乃の暴走機関車もまだ発車していないので何もアピールできてはいません。

ただ、まだ二乃がヒロイン最終決定という訳ではありません。

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