「くそっ!」
俺は八つ当たりのように壁を殴る。俺は今日、トロピカルランドに向かった。工藤がコナンになったという現場にも向かった。目撃者はいなかったか聞き込みもした。監視カメラの映像も違法な手段を使ってでも調べた。それでも何も見つける事はできなかった。範囲をトロピカルランドから広げ、周辺も同様に徹底的に調査した。しかしやはり証拠など残ってはいなかった。
「分かってた事じゃねぇか...」
組織が簡単に痕跡を残すはずがない。だがそれでもほんの僅かでも期待していたんだ。そんな希望も打ち砕かれた。
「俺はいつも奴らに届かない。」
「ああ、今日は学校に行く。家庭教師もするよ。心配かけたな、上杉。」
一日休んだだけだが、二乃の件があったためだろうあいつも心配してくれてたんだな。
「ん?よう修斗。」
登校していると校門の前で上杉に声をかけられる。左手には単語帳を持って。相変わらず二宮金次郎みたいだな...。
「そういえば、昨日あいつらの家で小テストをしたんだが...一応結果だけ見ておいてくれ。」
やっぱり上杉はあんな事があっても行ったんだな。
「分かった。」
俺は上杉から手渡された試験結果を見る。
「まさかあいつらが全員全教科赤点の成績とは思わなかったぞ...」
死んだ魚のような目で上杉は講評する。俺は零奈さんからある程度は聞いてたから心の準備はできてはいたが...まさか、ここまでとはな...。
「うわぁ、高そうな車。」
上杉と並んで歩いていると黒塗りの高級車が停車する。
「百万くらいするんだろうな。」
「お前の金銭感覚ぶっ飛んでんな。」
桁が足りないぞ、と言いかけたがその言葉は阻まれる。それは車から下りてきた人間がつい最近知り合った仲であり、また彼女らとの関係も決して良好と呼べるものではなかったからである。
「あ、おっはーフータロー君、シュート君。」
「あ、シュート、フータロー。」
「おはようございます!上杉さん!村城さん!」
「おはようございます。村城君、上杉君。」
「ッ!...。」
二乃さん以外の五つ子と挨拶を交わす。まあ俺が休んだのも一日だけだしな。こいつらはあんまり気にしてないみたいなのでよかった。しかし挨拶を交わすと彼女らは俺達から逃げ出すように走り出す。
「おい!待て!お前らよく見ろ!俺は手ぶらだ害はない!」
え、上杉俺がいない間になんかしたの?
「信用できない。油断させて勉強教えてくるから。」
ああ、なんか理解できた...。
「私達の今の力は理解しています。しかしあなたの力を借りずとも私たちは自分の問題は自分で解決します。」
五月さんは上杉に目も合わせずそう言い放つ。
「じゃあ当然テストの復習はできてんだよな?」
「「「「「...。」」」」」
おい...。
「第一問、厳島の戦いで毛利元就が破った武将の名を答えよ。」
この後めちゃくちゃ上杉が追いかけた。
「ちょっと...いいかしら。」
昼休み。食堂へ向かおうとする途中、二乃さんに廊下で呼び止められた。
「あまり時間は取らせない。だから、着いてきてくれるかしら...。」
屋上。多くの漫画とは違ってあまり生徒がいないこの場所。今ここにいるのは俺と二乃さんだけである。
「それで、話って?」
周りに誰もいないのを確認して二乃さんは頭を下げる。
「この前はごめんなさい!上杉には昨日謝罪したけど、あんたにはまだ謝れてなかったから。」
睡眠薬の件か。俺は二乃さんは自分の罪を認めない人なのかと思っていたから少し驚いてしまう。しかし黙ったままなのも失礼なので返答する。
「あの時も言ったけど、もう二度としないのなら水に流す。けどまあ二乃さんの謝罪は受け取った。」
「そう...、ありがとう。」
あの時に浮かべていた外面だけの笑顔ではない。俺は初めて二乃さんの素顔の笑顔を見た。
「あと私にさん付けする必要はないわ。呼び捨てでいいわよ。」
「分かった。」
「じゃあ、私みんなのところに戻るわね。...その、今日からまた家庭教師で来てくれるのかしら?」
「ああ。昨日は体調崩しただけだからな。あ、二乃のせいじゃない。」
「分かったわ。それじゃまた放課後。」
「あ!探したよ!村城君?」
二乃と別れて食堂に向かい、上杉と五つ子の姿を見かけた。さっきの二乃と少し気まずかったので食堂に併設されてる購買でパンを購入してから教室に戻る。その道中で毛利に声をかけられる。
「新一が...新一がまだ帰ってきてないの!何か知らない?村城君?!」
毛利は心配そうな顔で尋ねる。工藤の奴、メールくらいして安心させろよ...。
「だ、大丈夫だ。あいつが事件追いかけて数日家を開けるなんて今回が初めてじゃないだろ?」
「でも!連絡しても出ないなんて今までなかったもん!」
「分かった。こっちでも調べてみるから数日、待ってくれないか?」
調査、という名の時間稼ぎ。工藤関連で俺、毛利に対してかなりの罪悪感を抱えてきてるよな...。
おまけ 江戸川コナンは五等分され、探偵団に入らされる
「はあ、どうしてこうなった...」
コナンは小学生らしくない溜息をつく。
「それじゃあ!俺達!」
「少年探偵団!」
「大結成です!」
コナンが溜息をついているのは小嶋元太、吉田歩美、円谷光彦が自分を巻き込んで少年探偵団なるものを結成したからである。
「おい!コナン、六海、お前らも一員なんだからな。リーダーの俺に従えよ!」
「お、おう...」
「わ、分かったよ...。」
小嶋元太達に巻き込まれた彼ら、江戸川コナンと中野六海だが、実は彼らは小学生ではない。元の名前をそれぞれ工藤新一、中野零奈と言う。コナンは居候先の毛利探偵事務所絡みで元太達と知り合い、六海はその容姿から彼らの仲間にされたのだった。なお、お互いに同じ薬によって幼児化した存在だという事には気づいていない。
「コナン君どこか冷めてますよね...。本当に小学生ですか?」
「それを言うなら六海ちゃんもだよ!私たまにすっごく暖かい眼差しで見られるんだから!」
「何言ってんだ光彦、歩美!こいつらこんな小さいんだから小学生に決まってるだろ?それよりよ!さっさと依頼が届いているか見てこようぜ!」
初めて元太に救われたと実感したコナンと六海であった。
今話開始時点の修斗に対する五つ子の気持ち
好意 四葉、五月
中立or興味ない 一花、二乃、三玖
敵対
みたいな感じです。二乃は別に書く場所間違えた訳ではありません。これが上杉になると二乃と五月が敵対にまわったり一花が好意になったりします。今作の京都がどうなっているかはまた後ほど。
っていうかさ、物語の序盤、新一が蘭に電話番号教えてないのってどうなん?幼馴染に非通知でかけるって...。ですので今作では最初から番号交換してるからね。あともう面倒なので最初からスマホね。
今回からおまけは後書きではなく本文のところに書かれる事になりましたのでよろしくお願いします。
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