ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

15 / 39
感想でR18があるのかと聞かれていたのでお答えしますが、現状予定はありません。
ですが、要望が多いようなら書くことも視野に入れようかなと思っています。
少なくとも今は書きません。


他ならぬ親友の為に

部長たちのライザーとのレーティングゲームが終わって、数日。

俺の部屋に突然現れたグレイフィアさんが、「サーゼクス様よりあなたへ、と」と言って、転移用の魔法陣が書かれた招待状を渡してくれた。

招待状にはしっかりと厳密な日時が書かれており、俺がどのタイミングで乱入すれば良いのかすらも書かれていた。

ここまで仕込みをしてもらえるとは流石に思っていなかったが、まぁやってもらえたことには感謝感謝だ。

 

「……んじゃ、そろそろ時間だな」

「本当に行くの?流石のご主人様でも、フェニックス相手は…」

 

ベッドから起き上がり、転移の魔法陣を手に取る。

そんな俺に、心配する様に黒歌が声をかけてくる。

彼女は俺がどれくらい強いのか正直わかっていない節があるので、相手によってはこうして心配する素振りを見せてくれるのだ。

 

ここで「実は俺、世界最強なんだよね」なんて言ったらどんな顔をするだろうか。

流石に信じてもらえないか。なんだかんだ言っても俺はただの人間だしな。

 

「ま、大丈夫さ。対悪魔の性能には自信あるしね」

「……酷い怪我とかして帰ってきたら、絶対許さないから」

「おうよ。いくらでも怒りな、怪我してたらな」

 

流石に無傷で勝てるとまでは思っちゃいないが、そんな考えはおくびにも出さずに黒歌の頭を撫でて笑う。

今回の戦いで、俺が赤龍帝の力を使うわけにはいかない。

もし使ってしまえば、リアス・グレモリーはドラゴンの力を使って婚約を破棄したと後ろ指を指されてしまいかねない。

そんな事、部長もイッセーも望まないだろう。

 

だからこそ、俺はただの人間で、友人という立場で戦う必要がある。

使えるのは『聖書の剣』と『聖書の盾』、後は『気』の力くらいか。

バレない程度なら、『反魔の万能書(レボリューション・スペルブック)』を使ってもいいかもしれない。

フェニックスの炎も、元をただせば魔法だからな。

あの神器を使えば、必ず無効化できる。

 

「…んじゃ、行ってくるわ」

「行ってらっしゃい、ご主人様」

 

黒歌に見送られ、俺は式場へと転移するのだった。

部長やイッセー。アーシア達みんながいる、式場へ。

 

※―――

 

俺はライザーに敗れた。

左腕を捧げ、その命すら使い潰すつもりで戦ったのに、ギリギリで届かなかった。

気にすることは無いと、イッセーはよく頑張ったと、皆も部長も慰めてくれたけど、結果はアイツに部長を奪われたまま。

不甲斐ない。あんだけ大見得切っておいてこのザマだ。

 

そしてあの戦いから数日たった今、俺は部長とライザーの婚約パーティーに参加している。

サタンにくれてやった左腕は、今もまるで神器を展開している状態のようになっている。

神器との違いは、まるでこの腕が生きているかのように脈動している所だろう。

貴族らしき人達とすれ違う度に「アレがサタンの…?」「なんというオーラだ…」とか色々囁かれた。

まぁ、最終的にその驚きとか畏怖みたいな感情は「でもまだ未覚醒だろう。フェニックスの三男に敗れたのだから」という結論に至るわけだけど。

 

ソレを言われる度に、俺の中に言いようのない感情が渦巻くのを感じる。

怒りと、悔しさと、後はもうとにかく負の感情が一杯。

泣き出しそうだし、叫びだしそうだ。でも、部長の眷属である俺がこんな大勢の前で情けない姿を見せるのは、部長の評価に関わってしまう。

だから、歯を食いしばって堪える。

 

「皆さま!この度は私ライザー・フェニックスとリアス・グレモリーの婚約の席にお集まりいただき、誠にありがとうございます!」

 

マイクを片手に、ライザーがそんな事を言う。

相変わらずムカつく笑顔だ。ぶん殴って滅茶苦茶にしてやりたい。

でも、今の俺にそんな事ができるかと言われたら、ノーだ。

 

あの戦いで力の殆どを使いつくした俺は、しばらくの間戦闘はおろか少しの激しい運動すらも不可能になっているのだ。

輪廻曰く『気』を使いつくした影響らしいが、これ自体はちゃんと飯食って寝てれば数日で直るらしい。

問題は、今すぐには直らないという点のみだ。

 

今俺が動けたら、右腕だろうと両足だろうと何だろうと捧げて、もう一回あの力を使ってライザーをぶちのめすのに。

 

俯いて悲痛な顔をしている部長をどうしても視界に映したくなくて、俺は隣を見る。

木場に小猫ちゃん、朱乃さんにアーシア。同じオカルト研究部の仲間が、部長の眷属である仲間が、俺みたいに悲しそうな顔をしてそこに居た。

 

――皆、頑張ったのにな。

アーシアなんて、びっくりするくらい強くなってた。自分が消滅する危険だってあるのに、聖歌を武器にするなんて。

 

「部長さん、とても辛そうです……」

「…仕方ありませんわ。結局、私達は負けた。リアスを助ける事を、彼女の夢を守る事を、達成できなかった」

 

朱乃さんの言葉に、全員が唇を噛みしめる。

壇上では、ライザーが他の貴族から祝福の言葉を貰い、嬉しそうにしている所だった。

 

……畜生。左腕を捧げても、この命を懸ける覚悟があっても、どうして俺は届かなかった。

俺じゃ、部長の隣に立っちゃ、ダメなのかよ…!!

 

「いやぁ、嬉しいお言葉をありがとうございました。では次は―――ん?参加者?おかしいな、全員揃っているはずだが」

 

突然どよめきだす会場内に違和感を感じ顔を上げると、なぜか転移用の魔法陣が輝いているのが見えた。

あの魔法陣……グレモリー?グレモリー家の中に、まだ来ていない人でも居たのか?

 

誰もが頭に疑問符を浮かべる中、一際強く光が輝いた後、そこに居たのは――。

 

「…輪、廻?」

「突然現れた上で言うのもアレだが、この結婚、無かった事にさせてもらう」

 

黒いトレンチコートに身を包み、今までで一番の威圧感を放つ、輪廻だった。

 

突然現れたのが人間だと気づいた悪魔たちは、皆騒然とする。

そして輪廻を知る俺達やライザーは、もっと驚いた様子を見せる。

 

「なっ、なぜあの人間がここに…!!つ、つまみ出せ!!」

 

ライザーの怒号に従うように、衛兵たちが動き出す。

止めないと、と思ってか皆が動こうとした直後、凄まじいプレッシャーが会場を制圧した。

 

無論、その発生源は輪廻だ。

相変わらずのただの人間とは思えないような圧をまき散らしながら、一歩ずつライザーと部長に近づいていく。

威圧感で、近くの貴族たちが持っているワイングラスが砕けた。

 

――いやいや本当にバケモンじゃねぇか!!俺の幼馴染君やばすぎないかな!?

 

「久しぶりだな、ライザー・フェニックス」

「き、貴様…ッ!!ここがどのような場であるか、知らないとは言わせんぞ!」

「あぁ、知ってるさ。そしてお前がどうして()()()()()のかもな」

 

輪廻の言葉に、ライザーは露骨に言葉に詰まる。

どうしてこうなれた?一体なんの話をしてるんだ?

 

「あの剣…『引換剣』とか言ったか?アレ、夢幻人のモンだろ」

「―――ッ!!なっ、貴様なぜソレを!!」

「わからないと思ったか?――そして、お前がそれを使って何をしたのかも、俺は知ってる」

 

誰の目から見ても取り乱している様子のライザーに、輪廻が止めを刺すかのように一言告げようとしたその瞬間、ライザーはその手に炎を出現させて攻撃しようとして―――。

 

即座に、ドス黒い魔力によって炎が消滅させられた。

 

まるで部長のような魔力を放ったのは、これまた部長のように紅色の髪をした男性。

木場みたいな、爽やか系のイケメンだ。

そんなイケメンが、ツカツカと二人の下に歩み寄る。

 

「さっ、サーゼクス様!?」

「感心しないなぁ、ライザー・フェニックス君。人間相手に、話の途中に攻撃を仕掛けようとするなんて」

 

サーゼクス様の言葉に、ライザーは渋々頷いた。

ソレを見てなにやら満足した様子のサーゼクス様は、今度は輪廻に向き合ってこう言った。

 

「君はあの戦いを見て、何か不満に思う所があった―――そう捉えて良いかな?」

「えぇ。最後の『投了(リザイン)』の瞬間、確かに彼の神器が輝き、その力を発動していた。所有者の命と引き換えに、願いを叶える力が」

「い、言いがかりだ!!」

「その力を使い、リアスに『投了』させた…と?」

 

声を荒げるライザーを手で制し、サーゼクス様は輪廻に問いかける。

これまた凄まじいプレッシャーだが、輪廻は臆することなく頷いた。

 

「えぇ。しかしそれに気づいていたのは、どうやら俺だけだったようで、誰に言ってもそのような事実はないと返される。―――しかしながら結婚という一大行事の有無を決める戦いの結末が、このような不透明なまま終わらせて良いとは到底思えない。ですので俺はこうして式に乱入し、部長……リアス・グレモリー嬢を連れ去ろうかと考えたわけです。()()()ね」

 

態々単独という言葉を強調したのは、きっと全責任を自分で負うつもりだからだろう。

俺達の、何より部長の評価を悪くさせない為に。

 

そんな輪廻の言葉に、サーゼクス様は少し考える素振りを見せてから口を開く。

 

「ふむ。確かに、あの試合を見ていた者の中に一人でもあの結末に異議を唱える者がいるなら、そのような状態で人生における大事な決断をさせる訳にもいかないな」

「な、何を」

「だが、ぽっと出の人間の言葉に従って『じゃあ無かった事にします』とはできないのだよ。悪魔にも面子があるのでね。―――そこで、だ」

 

サーゼクス様は一度言葉を切り、ライザーと輪廻を交互に見据える。

その目からは何の感情も読み取れない。

何を考えているのか、まるで分らない。

 

「君とライザー。両者の意見は食い違っている…そうだろう?なら簡単だ。悪魔的に決めればいい。実力で、己の意見を貫き通せばいい」

「……それはつまり、私にこの人間と戦え、と」

「その通りさ。構わないだろう?君はただの人間と戦い勝利すれば、この先誰にも文句を言われずにリアスと結婚できる。対して―――君は、婚約破棄以外に何を望む?この戦いは悪魔としての戦いだ。人の身だろうと、勝者には然るべき報酬が必要だと思うね」

 

その発言に、会場の悪魔たちは騒めく。

ただの人間に、魔王様が何か褒美をやると言っているのだ。

悪魔のささやきとも言うべきその言葉に、輪廻は一度俺の目を見てから口元を歪め、こういった。

 

「そうですね。彼女、リアス・グレモリーの縁談を破棄、というのは前提条件。褒美としてもらえるならば―――俺の親友、兵藤一誠とリアス・グレモリーの()()を、許可していただきたい」

「えっ!!」

「はぁッ!!?」

 

輪廻の爆弾発言に、俺と部長、そして部長の御家族が驚愕の声を出す。

いやいやいきなり何言っちゃってんの!?こ、こここ、交際ッ!?俺と、部長が!?

 

「ま、待て待て輪廻いきなり何言ってんだよ!?」

「何言ってるって、言葉のままだが」

「そういう意味じゃなくってさぁ!」

 

周囲の目とか、魔王様の前とかそういうのは一旦忘れて、輪廻に掴みかかる勢いで壇上に立つ。

俺の言葉に、輪廻は飄々とした態度を崩さない。

部長は、なぜか顔を赤くしていた。

 

お、怒ってんのかなぁ。だって望まない結婚は嫌だって言ってたしな。

俺なんかじゃ、望まないどころか話にならないだろうよ。

 

「あの試合の最後。お前がサタンの力を使った時。確かにお前は告白してたと思うけどな。部長が好きだと」

「そ、そうだけども!でも、それとこれとは…!!」

「別に俺は結婚しろとまでは言ってないさ。あくまで交際。部長がお前を嫌だと思うなら、俺が勝った時点で別れの言葉でも告げりゃいい。告白はもう済ませてて、でも婚約云々で有耶無耶になってる状態。だったらその婚約が無くなりゃ、お前の告白に応える事だって可能なわけだ。――でももし仮にお前の想いに応えると部長が言ってくれたとしても、お前たちには『主と眷属』、『純血悪魔と転生悪魔』、『貴族と平民』なんて壁が立ちふさがるわけだ。俺の願いは、グレモリー家の方々に、もし二人が交際の意志を固めた場合その壁を取っ払ってくれってだけ。付き合うも付き合わないも、部長とお前の意志だよ」

「そ、それじゃお前に何の得も無いんじゃ」

「だぁー!!テメェそれでも悪魔か!貰えるモンはありがたく貰っとけ!――後、ここで改めて言っとけ。お前の想い。もう腹括ってんだろ、フラれても構わねぇって。だったら言え、躊躇うな!お前はリアス・グレモリーをどう思ってんだ!?」

 

輪廻の言葉に、なんだか会場の奥様方が騒がしくなる。

時々「若いわねー」とか聞こえてくるのは一体何なんだ。

 

チラッ、と部長を見る。

部長は顔を赤くしたまま、しかし何故か覚悟が決まったみたいな顔をして俺を見ていた。

 

え、えぇっ!これ、俺の告白待ち!?

―――え、えぇい、ままよ!

 

「お、俺は部長が――リアス・グレモリーが大好きだァあああああッ!!」

「良く言った!」

「うんうん。流石だ」

 

半ば自棄になって、腹の底から声を出す。

そんな俺に称賛の言葉をかける輪廻……と、サーゼクス様。

拍手までしている。いやなんで!?

 

部長は――ちょっと、今は見れない。

だって恥ずかしいし!こんな大勢の前で告白なんてしてすんませんね本当!

 

「じゃあ、その返事はもし君が勝ったら、だね?」

「えぇ。この戦いが終わった後に、ですね」

 

まるで負けるつもりがないと言いたげな輪廻に、ライザーは見るからに不機嫌そうな顔をする。

人間風情が舐めるなと、そう言っているようだ。

 

「――では、会場の準備をするとしよう。二人とも、良き戦いを期待しているよ」

 

※―――

 

「くそっ、なんでこんなことに……ッ!!」

「随分と不機嫌だな、ライザー」

「人間風情が気安く俺の名を呼ぶな!!」

 

不機嫌そうに炎をチラつかせ、俺を威嚇するライザー。

その表情に余裕は見られない。何度も俺の威圧を味わったからか、警戒している様子だ。

 

対する俺は自然体。

武器も構えず、動きやすくするためにコートのボタンをいくつか外しただけである。

だがいつでも『聖書の剣』は取り出せるし、『聖書の盾』に至っては攻撃と同時に発動するようになっている。

 

盤面は整った。後は倒すだけだ。

 

会場に急遽つくられたフィールドで、俺とライザーは向かいあう。

開始の合図は当に告げられた。どちらかが仕掛ければ、力のぶつかり合いが始まるだろう。

どちらかが倒れるまで。

 

「聞きたいんだが、夢幻人といつどこで接触した?連中の居場所を知っているなら吐いてもらいたいが」

「聞かれて答えるとでも?貴様のような、不愉快極まる人間に!」

 

…ふむ。洗脳されているとは思ったが、まさかここまでとはな。

本来のライザーは、アレでも強い奴には敬意を見せる事もあるし、あんな卑怯な戦い方だってしない。

味方の犠牲を問わないヤツではあるが、冷酷無情という訳でもないのだ。

 

大方、あの『引換剣』を受け取らせるために洗脳したのだろう。

それと同時に、俺に対し無意識に嫌悪感を抱くように仕掛けた。

発見次第、理由が無くとも殺すように仕向けたわけだ。

 

全く、一々作戦が狡い奴らだ。

 

「にらみ合ってるだけじゃつまんねぇだろ?そろそろ始めようぜ」

「はんっ、言われなくてもそのつもりだッ!!」

 

ライザーの炎が俺を襲う。

実際に対面すると凄いな。炎の塊が迫ってくるインパクトは。

 

躱すことなく『聖書の盾』を発動し、その攻撃を防ぐ。

熱も衝撃も完全に防げている。流石は聖書の力を持つ盾だ。

 

炎で包まれて誰の目に見えなくなっている今の内に『聖書の剣』を構え、走り出す準備をする。

炎が消えるタイミングが、俺の攻めるタイミングだ。

 

ジッと待つ。油断させるために、アイツが「やった」と思うまで、待機。

そして、時は来た。

 

「ふん、口ほどにも―――何ッ!?」

「油断したな、ライザー」

 

聖書の剣を逆手に持ち、駆け寄って直ぐにライザーの腹部から胸元にかけてを斬りつける。

高密度の光の攻撃を受けた奴の体からは、煙が立ち上った。

焼かれるような痛みが、全身を駆け巡っている事だろう。

 

しかし攻撃の手は緩めない。

まずは一度目の死を迎えてもらおう。

 

右手に持つ剣を振るい、ライザーの頭部を切断した。

 

その数秒後に、再生が始まる。

炎が揺らめいて、攻撃された部分が癒えていく。

 

「―――はぁっ、はぁっ!?そ、その剣…まさか聖剣か!?」

「そんな大層なもんじゃない。これはただの『聖書』だ。剣に加工した、な」

「剣に加工した、聖書…?馬鹿な、そんなものが……仮にあったとしても、なぜそれほどの痛みを俺に」

「そりゃ、聖書だぞ?十字架、祈り、聖書は神の力を一際受けているモノの代名詞。それが武器として相手を斬りつけ、その聖なる力を流し込めば、いかにフェニックスと言えど一撃で限界だろう?」

 

歯噛みして、ライザーは俺から距離を取る。

空を飛んでまで逃げるその姿は、まさに弱者のソレ。

この場の強者は、上級悪魔(ライザー)ではなくただの人間()だ。

 

「認めよう、認めてやろうじゃないか人間!大口を叩くだけの事はある!――だが、お前が無類の強さを誇るのはあくまで地上のみだろう!なぜなら人間は翼を持たず、俺は不死鳥と呼ばれし翼を、炎の翼を持っている!今謝ればお前の不遜な発言の数々、水に流してやっても吝かでは――」

「御託は良いからさっさと続きやろうぜ、来ないならこっちから行くがな」

 

『気』で足場を作り空を歩く。

階段を上るように足場を踏みしめてライザーへと接近し、再び聖書の剣を振るう。

 

俺が空中を移動した事に驚いたライザーだったが、今度は何とか回避した。

しかしギリギリ掠ったのか、光という猛毒に犯され苦しそうな顔をしている。

 

「く、くそっ、くそっ、くそっ、クソがァああああッ!!人間が、人間如きが!!俺はフェニックスだぞ、負けるはずが――」

「だから喋ってる暇があるなら攻撃すりゃいいだろ」

 

聖書の剣を投擲し、ライザーの腹部を貫く。

そのダメージに動きが鈍った瞬間を狙い肉薄し、新たに取り出した剣で頭部を切断し、踵落としで地に落とす。

 

これで二回目。

一回目の消耗具合を見るに、後二回も殺せば終わるだろう。

…いや、一回でも済みそうだ。どうやら、俺の予想以上に事が容易く終わりそう―――()()()な。邪魔さえ入らなけりゃ。

 

「アフターサービスも万全ってか、夢幻人さんよ」

「えぇ。お客様のピンチには即座に駆けつけるのが私のモットーですので」

 

足場を消して落下しつつ、先程まで俺がいた場所に光の剣を振るった()使()を睨む。

――どうやら、ライザーをこのまま負けさせるつもりは無いらしい。

 

しっかし参ったな。聖書の剣くらいしか使えないというのに、天使と来たか。

こりゃ、無傷で帰るのは難しいか…?

 

※―――

 

「なっ、天使だと!?」

「なぜ天使がこの場に!?」

 

先程まで輪廻の戦いに驚いていた悪魔たちは、今度は突然現れた天使に驚愕と恐怖を見せる。

俺達も驚愕しているが、驚ているのは乱入者が天使だから、だけではない。

輪廻の口から出た、『夢幻人』という言葉である。

 

夢幻人。奴らは真の赤龍神帝と呼ばれるグレートレッドというドラゴンを信仰している団体…らしい。

その信仰の邪魔となると判断したのが、今代の赤龍帝。二天龍という凄いドラゴンの片割れ…の、力を宿した神器の今の持ち主。

なんでもソイツは時間を操る力を持ち、過去と未来とを自由に行き来して、その力を振るったという。

何度か夢幻人を名乗る悪魔と戦って得た情報によると、

・曰くその赤龍帝は無限の龍神と呼ばれる最強のドラゴンを倒した。

・曰くその赤龍帝は過去現在未来の強敵との戦いを望んでいる。

・曰くその赤龍帝は純粋な人間であり、夢幻人は名前も顔も把握している。

とのこと。

 

部長たちから色々説明も受けて、なんとなく分かった事が一つある。

 

今代の赤龍帝、頭おかしい。

 

なんでも無限の龍神とやらは文字通り無限の力を持っているらしく、それを倒すには同じく無限の力が必要とのこと。

神様だって滅ぼしきれないようなヤツを敗北に追い込むってのは、どうしようもなく頭の悪い事だと部長が言っていた。

後時間の流れに逆らうのも、そういう効果を持つ神器にのみ許されたことであり、もしそのような神器を使っていないなら相当の脳筋(バカ)とのこと。

 

何が不思議って、俺達が何故かそんなバカと知り合い扱いされているのが不思議だ。

……まさか、松田とか元浜とか……いやいやないない。

アイツ等が「強い奴と戦いてぇ!」なんて言う所想像できねぇし。

輪廻に至っては「戦いとかめんどくせー」とかいうタイプだろ。今は俺達の恋路の為にと戦ってくれているけど。

 

――っつか、勢い余って告白しちゃったけど大丈夫かな俺。アイツが勝ったとして、俺は部長にどう思われてんだ?

…ま、絶対フラれますよね。わかっております。わかっていますけども。

 

「お、お前は……は、はははっ、た、助けに来たのか!」

「えぇ、ライザー・フェニックス殿。どうぞ『引換剣』のお力をお使いくださいませ。その隙は、私が作ります故に。――立神輪廻。貴方の『神器』でなければ私を倒す事は不可能でしょう?なぜ故その力を振るわないのかは疑問ですが、使わぬというならば……」

 

死にますよ。

 

そう告げると同時に、天使の男は輪廻に向かって剣を振るう。

空中からの落下の勢いを使った斬撃は、例え悪魔であろうと耐えられないはずだ。

そもそも光の力って時点で悪魔的には大分ダメなんだろうけど。

 

…ってかライザーの野郎、夢幻人と組んでやがったのか!

しかもよりによって、天使だと!?

 

いやいや今はそれよりも、だ。

輪廻は避けようとも武器を構える素振りを見せるわけでも無く、その場にボーっと突っ立っている。

何してんだよ!?死ぬ気か!?

輪廻はゆっくりと左手を頭上に掲げる。天使の剣を受け止めようとしているかのように。

 

そして、黒いグローブをつけている左手が、その剣に触れた。

 

――次の瞬間。

 

「なっ!?」

「ほら、お望み通り使ってやったぞ、神器」

 

剣は金色の塊になり、天使の攻撃は易々と防がれた。

そして輪廻の体から真っ赤なオーラが溢れると同時、その左手が剣だった塊を握りつぶした。

まるで金属を叩き割るかのように、粉々に砕け散る。

 

「そ、それは、未確認の神器!」

「驚いてる暇があったら、お客様とやらを守ってやれよ」

 

目線を天使に向けたまま、輪廻は剣をライザーに投擲する。

凄いスピードで迫った剣は見事にライザーに命中し、あの時持っていた神器を使おうとしていたライザーの手から、神器を弾き飛ばした。

 

腹部に刺さった剣から、猛毒の光が流れ込み、アイツは再び倒れる。

もう限界なんだろう。勝負はついたような物だ。

神器を弾き飛ばされ、腹部には高濃度の光が内包された剣。

誰の目にも、ライザーは輪廻に負けていた。

 

しかし戦いは終わらない。

まだ、アイツを客と呼ぶ天使が残っている。

 

「貴様ッ……いつもそうだ、貴様は、我々の邪魔ばかり…!!」

「勝手に目の敵にして攻撃仕掛けてくるからだろうが。俺に関係ない所で何をしようと何を信仰しようと関係ないのに」

「かつて強者というだけで様々な存在に攻撃を仕掛けた貴方がソレを言いますか」

「……俺の場合はちゃんと相手に許可を取ってだな」

 

?強者というだけで様々な…んん?

天使の男の言葉に、首を傾げる。

おかしい。俺の知る限り、輪廻はほぼ毎日俺と遊んでいた。

小学生の時なんかは、朝に会って夜まで遊ぶなんてのがざらだったし、アイツが強者とやらと戦うような時間は無かったはずだけど。

 

ってか幼少期から天使とかと面識があるなんて、それこそ普通の人間じゃあり得ないだろ。

神器持ちだとしても、俺みたいに中々発見されないパターンもあるだろうし。

 

「ま、良いだろ。ライザーはもう負けたようなモンだ。わざわざお前が俺に突っかかる必要は無いだろ。さっさと帰りな。勝てないってわかってるんだろうしよ」

「御冗談を。勝てないとわかっていても、それでも戦うのが我ら夢幻人故に」

「――そうかい。なら、()()になりな」

 

一瞬で肉薄し、輪廻はその左手を振るう。

天使の男は回避しきれずその手に触れた。

すると、触れた部分が輪廻の言葉通り、黄金に変わった。

 

あ、あれがアイツの神器の一つ……なのか?

あのグローブ…左手にしかつけてないみたいだし、俺の『悪魔の連撃』みたいに、片手に出るタイプなのかな。

 

「そのグローブ、触れた物を黄金にするんですか……また面妖な物を」

「『黄金の御手(ミダース・タッチ)』。ま、お察しの通りだな。触れた物を黄金に変える。天使だろうと何だろうと関係なく、触れた物は平等にな」

 

輪廻の言葉に、天使はさらに警戒を強める。

 

にしても凄い神器だな。触れた物をなんでも黄金に変えるグローブ、か。

だからさっきの光の剣も、突然力を失ったわけか。

 

――アレ、神器とかも黄金にできるんだったら凄いな。

相手にしたく無さすぎる。

 

「厄介ですね……しかし、私は()()()()()()()()()()

「時間稼ぎ?また変な事を言うな、お前以外の夢幻人の気配も感じないし、ライザーだって今はもう―――チッ」

「馬鹿がッ!!フェニックスを甘く見過ぎたな、人間!!」

 

輪廻が舌打ちすると同時に、炎の波がアイツを襲った。

発生源を見ると、そこには剣が抜けたライザーが、狂喜的な笑みを浮かべて手を伸ばしていた。

 

まさかアイツ、あの剣を無理矢理抜いたのかよ!?

光の攻撃を受けたら、普通力が入らなくなるはずなのに!

 

「流石フェニックス殿。見事でございます」

「は、はははっ、たかが光の力で、俺が、この俺がそう簡単にやられるとでも思ったか」

「思いはしたが、俺がこの炎でやられるとでも思ってるお前も同レベルだろ」

 

炎が掻き消えると、そこにはやっぱり無傷の輪廻がいた。

サタン曰くフェニックスの炎はドラゴンの表皮にも傷をつけるというのに、なんで無傷なんだよアイツ。

 

自分の自慢の攻撃が効かなかったにも関わらず、ライザーは笑う。

その手には、先程輪廻に弾き飛ばされていた『引換剣』が握られていた。

 

――まさか!

 

「あぁ、思っちゃいないぞ人間。俺の狙いは、先程の二の舞を繰り返させない事だった!『夢幻』よ!我が願いを叶えよ!アイツを――あの人間を、自滅させろッ!!()()()()()()()()()()()()!!」

 

ライザーが声高に叫び、剣を掲げる。

すると刀身が光り輝き、輪廻の目が虚ろになった。

 

そして、アイツはコートの中に手を入れ、新しい剣を取り出す。

 

「り、輪廻!!」

「は、はははっ、お前がいくら強かろうと、『夢幻』の力の前には無力!!さぁ、その喉を自らの刃で搔っ切れ!」

 

俺の声は届かず、アイツは手に持った剣の切っ先を喉に向ける。

 

そして、躊躇う事無くその刀身を喉へと突き刺した。




【オリジナル神器紹介】
黄金の御手(ミダース・タッチ)
・見た目は黒いグローブ。左手分しかないが、触れた物を問答無用で黄金に変える力を持つ。大きい物に触れた場合は、触れている時間に比例して黄金化させる範囲が広がる。
どんなものでも黄金にするが、液体だけは変えられない。濡れると力が使用不可になり、乾いてから一定時間の間ただのグローブになってしまう。
その存在はギリシア神話で確認されており、最初の所有者であるミダス王は自らの両手にその力を持った。
神話ではミダス王が自らの力を憎み、失う事を願った結果、川の水でその手を行水する事で力を失う事に成功した為、このグローブも水に濡れる事で力を失うようになった。
輪廻が過去に行って暮らしていた間の資金源は、この神器で作った黄金の塊であり、売りさばいた物の一部は今でも残っている。


評価感想お気に入り登録、よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。