ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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ライザー、殴ります!

修行の日々も終わりをつげ、ついに俺達は下山し、そしてレーティングゲームに臨む事になった。

下山前に修行の成果を披露するタイミングがあったが、そこで部長たちから賞賛してもらえた。

これならライザー相手でも見劣りしない、だそうだ。

 

そして今は試合会場の中。普段使っているオカ研の部室にそっくりなここは、なんと魔力で作った偽物の教室らしい。

魔力で作られているのはこの部室だけでなく、なんと駒王学園全体が作られているんだそうだ。

向こうばかりが優勢では不味かろうという事で、俺達の勝手知りたる学び舎がバトルフィールドに選ばれたらしい。

 

今は試合開始前の休憩時間。

しかし普段通りに落ち着いているヤツなんてここには居ない。

俺も木場も部長も朱乃さんも小猫ちゃんも、そして何よりアーシアも、全員引き締まった表情だ。

なんでもこの試合は、部長のお兄様…つまり魔王様も見ているらしいのだ。

その上輪廻まで見ているとなっては、絶対に無様な姿は見せられない。

 

大きく深呼吸して気合を入れつつ、部長から伝えられた作戦を脳内で反芻。

 

今回、俺は前線に出ない。

代わりにアーシアが、最前線で戦うらしい。

俺を温存してライザーとの戦いでのみ使う為でもあり、アーシア自身が輪廻に自分が強くなったと見せたいから、とのこと。

アイツが悪魔になったのも、輪廻の隣に胸を張って立てるように、強くなりたいと思ったからだそうで。

 

とにかく、序盤から中盤にかけては木場、小猫ちゃん、アーシア、朱乃さんの四人が戦い、その後部長と俺がライザーを叩きに行く。

それまでは、例え何があろうと俺達は待機だ。

正直、誰かがやられたってアナウンスが来たらすぐにでも駆け出しそうだけど……部長の指示だ。従おう。

というか万が一にも皆がライザーの眷属にやられるような事はないはずだ。だって、木場や小猫ちゃんは俺と一緒に輪廻から凄いトレーニングを受けたし、朱乃さんやアーシアだって、黒歌さんからかなり鍛えてもらったのだから。

 

「さぁ、試合開始ね。皆、この試合――必ず勝つわよ」

 

部長の言葉にうなずき、全員が行動を開始する。

俺は動く時まで精神統一だ。己という刃を研ぎ澄まし、極限までその切っ先を鋭くすることが、強者を穿つ最大の策だ、と輪廻に言われたからだ。

 

明鏡止水……とまでは行かないが、取り合えず常日頃考えているおっぱい関係の事は全て脳内からシャットアウト。

新技の洋服破壊(ドレス・ブレイク)を使う機会があったならおっぱい一色だっただろうが、生憎と俺の相手はライザー一人。男相手に素っ裸にする技を使っても誰も得しない。勿論俺もだ。

 

取り敢えずこの十日間。俺はやれるだけの事をすべてやった。

肉体、技術、精神力。そして神器との接し方、使い方。

達人レベルかと言われれば全然そんなことは無いが、付け焼刃だとしてもこの戦いで勝利を掴めるくらいには仕上がっているつもりだ。

 

――しかし、俺の神器。

修行中、神器を扱う鍛錬が多数あり、その過程で神器と多く関わる事になった訳だが、それでも名前はおろか、詳しい能力についてすらも不明なままだった。

輪廻には「もしかしたら肉体か魂がその神器を受け止めるに足りないせいで、その本質が見抜けないのかもな」と言われた。

あんだけ鍛えても、まだ足りないらしい。

単純に肉体が足りないのか、それとももっと別の何かが必要なのか。

 

わかっているのは、何かを殴りつければその攻撃の当たり具合によって強化され、攻撃を外せば一気に強化分が失われるという事と、気配に敏感になるという事だけ。

神器を使いこなせている、というには少々心もとない。

 

「イッセー、少し良いかしら」

「?はい、どうしました?」

「ちょっと、こっちに」

 

部長から呼ばれて、一度瞑想を止めてから手招きされるままに近づく。

何だろう。何か秘密の話だろうか。別にこの場に誰もいないんだけども。

まぁ、相手に俺達の行動が筒抜けの可能性だってあるわけだし、一応な。

 

「今から、貴方の駒の力を解放するわ」

「……はい?え、俺の駒の力って……」

「知っての通り、貴方は最初まるで力が無かった。魔力も無ければ、肉体もダメ。下級悪魔の中でもかなり下位に位置するような存在が、あなただった」

「うぐっ…ま、まぁ、そうですけど」

 

いざ面と向かって言われると心に来るぜ!部長様の言葉は時に俺を鋭く傷つける刃なのさ!

そんな事を考える俺だが、部長の続く言葉に胸を打たれる。

 

「でもあなたは努力した。その足りない分の才能を、努力でカバーして見せた。まだまだ発展途上だけど、それでもかなり成長してる。主として誇らしいわ」

「ど、どうも…」

 

飛び上がって喜んでしまいたい気持ちがあるものの、なんだか照れくさくって目を逸らしてしまう。

でもそっか。俺、ちゃんと成長してたか。

部長が誇らしく思ってくれたなら、それだけでも嬉しい。

 

「それでね、イッセー。貴方は最初、とても力が弱かった。それこそ、『悪魔の駒』に耐えられない程に。貴方には『兵士』の駒を四つ消費した、と前に話したわね?でも厳密には違う。貴方の本来の駒の消費量は、八つなの」

「八つ?…って、それ全部使ったって事ですか!?」

「そうよ。それくらい、貴方の中に眠る力は強大だったって事。まだその片鱗しか見えていないけどね」

 

部長の話を要約すると、なんでも俺に言っていた駒四つ消費の『兵士』という話は、厳密には『駒八つで転生させたものの、体に支障をきたさないレベルで力を発揮できるのは四つまでの兵士』という話だったらしく、日々のトレーニングと輪廻のスパルタメニューをこなした今の俺なら、八つ分の力を解放しても構わないとのことだった。

解放するかしないかの判断は俺にゆだねてくれるとも言われた。

 

なんでも、突然大幅にパワーアップしてしまうと、自分の力に振り回されて本来のパフォーマンスを披露できなくなる危険性があるから、だそうだ。

 

でも、力があればライザーに勝てる確率が上がるのもまた事実。

正直分の悪い賭けだとはわかっているが、俺はここに来て力を底上げする事を決意した。

 

これによって、プロモーション時に得られる恩恵が増したらしい。

後は素の力の向上。

試してはいないが、感覚的に強化の上限幅も大きくなった気がする。

 

「それじゃあ、後は皆からの報告を待つだけね。もう少し自由にしてていいわよ」

「了解です」

 

まぁ俺が今できる事なんて、精神統一くらいだ。

心頭滅却すれば火もまた涼し、ってやつだな。アイツは不死鳥で炎を使うらしいし、ピッタリの言葉だ。

 

俺は再び胡坐で床に腰を下ろし、静かに瞳を閉じるのだった。

そして次に部長から声をかけられたのは、俺の出番…つまり、ライザーに攻め入るタイミングだった。

 

※―――

 

部長に声をかけられ、すぐさま神器を用意し強化して、部室を飛び出す。

ドアからではなく、窓から。

屋上や屋根を通って、ライザーのいる場所へ攻め入る作戦だ。

部長だけなら飛んでいけば良いのだが、俺が飛べない為こうして足で向かう方法を選択する事になってしまった。

 

いくら格闘術とか筋トレとかに詳しい輪廻でも、流石に空を飛ぶ鍛錬はしてくれなかったからな。

そりゃアイツ、ただの人間だし。

 

「でも部長、ライザーの野郎、ちゃんと本陣に居座ってるんでしょうか?」

「データを信じるなら、ライザーはどれだけ眷属を失っても動かない。敗北はないと、そう確信しているから。もし本陣に居なかったとしても、ライザーが行く場所の予想はある程度つく。まず最初に一番可能性の高い所に向かっている、とだけ考えれば良いわ」

 

話しながらも、その速度は緩めない。

目線の先には、ライザーの本陣。窓を割って中に入り、そのまま奇襲で優位を取る。

それが俺達の作戦だ。

 

――だが、その奇襲作戦はすぐに失敗に終わる。

 

その原因は、ライザーがデータ通りではない行動をしたからだ。

そしてアイツの行動は、部長が予想だにしていないような突飛な物であり、とても舐め腐った物であった。

 

屋根を移動する俺たちの目の前に、突如として火柱が出現。

どこかデジャブを感じさせるその炎の中から現れたのは、やはりというかライザーだった。

 

奴曰く、俺達の活躍(眷属の大量撃破)を称賛し、自分を倒すチャンスを与えてやろうとの事。

自分が負けるわけが無いと知っていながら俺達の前に現れ、倒せるかもしれないという一縷の望みに賭けさせる。

悪趣味な野郎だ。お望み通り真正面からぶん殴ってやる。

 

「先手必勝ッ!!奇襲も正面突破も同じだぁああああっ!!」

「はんっ、力量差もわからないとはな!この一本道において優勢なのは、偏に炎を自在に操る俺だという事を教えてやる!」

 

ライザーの手が手を伸ばすと、俺に炎の波が押し寄せる。

物凄い熱気だ。こんなのに触れたら、俺の体は溶けてなくなってしまうだろう。

 

けど、俺は止まらない。部長を信じて、前へ進む。

 

「何ッ!?――チッ、そうかリアスの滅びの魔力…!!」

「喰らいやがれっ、腐れイケメンがぁッ!!」

 

俺を襲っていた炎は、部長の魔力によって消失した。

そのことに面喰って動きが固まってしまったライザーを、俺の拳が襲う。

顔面を抉るようなストレート!強化された俺の拳は上級悪魔レベルだと、部長からもお墨付きだ!

 

「ぐっ……ははっ、まぁ今の一撃でやられる程度なら、話にもならないからな。良いだろう、不死鳥と称えられし我が炎の真価、見せてやる!」

 

轟ッ!!と、俺の両側から炎が迫る。

部長の滅びの魔力で消滅させられても、しかしすぐさま再生する。

 

「まさかその炎、あなた自身だというの!?」

「その通りさリアス!魔力で放つ炎とは違い、こちらは俺の翼!フェニックスの不死性を持つこの翼は、君の滅びの魔力であっても消滅させきれないのさ!」

 

翼は止まらない。このままだと、必死に回避しようとしたところで必ず攻撃を喰らってしまう。

部長の魔力で消滅させられないような炎を、強化されているとは言え生身の俺では即リタイアだろう。

 

――だったら、俺のやることは一つだけだろ!

 

拳を握りしめ、左右から迫る炎の翼に感じる恐怖心を噛み殺し、前へ。

そんな無謀な真似をするとは思っていなかったらしいライザーは、これまた驚いたような顔をする。

しかし先程と違い固まったりはせず、その場を離れて避けようとしている――が、遅ぇッ!!

 

さっきライザーを殴った分の強化により、速度はさらに増している。

勿論先程までの速さを基準に考えていたライザーが、動きを合わせられるはずも無く。

 

俺の拳は、再びヤツの顔面に突き刺さった。

今度は強化分も相まって、文字通り顔が吹っ飛んだ。

つまり、一度死んだのだ。

 

無限の命を持つライザーにすればまだまだかすり傷程度だろうが、それでも俺の拳はヤツを屠るレベルにまで強くなっている。

しかも駒の力が解放された影響か、まだまだ強化できる気がするぜ!

 

勝てる。俺と部長で、アイツを倒す事ができる!

そう確信し、再生を始めたライザーへと駆け出そうとしたその時。

 

アイツから、途轍もないオーラを感じた。

 

「ッ、な、なにしやがった!?」

「ふっ、ふふはははははっ……どうやら俺は、お前の事を甘く見過ぎていたらしい。名も知らぬ神器を持つ下級悪魔と侮り過ぎた。――だが、もう手は抜かんさ。このライザー・フェニックス。本来ならば見せるつもりも無かった()()を出してやるとしよう!」

 

ライザーの体が突然大きく燃え上がる。

再生の時の燃え方の比じゃない。それなりに離れているのに凄まじい熱気だ。

 

咄嗟に部長のいる所まで退避し、様子見をする。

さっきみたいに馬鹿正直に突っ込むのは、流石に愚策過ぎる。

あの炎なら、俺の神器だって焼き尽くされそうだ。

 

「あの炎、部長の魔力で抑えたりとかできませんか?」

「恐らく無理ね。全力で魔力をぶつければ数秒程度隙は作れるでしょうけど……倒し切れるわけでも無いのに魔力を使い果たすのはダメよ。魔力切れは敗北扱いだもの」

「そっすよね……消しても即座に回復する以上、少量の魔力で消しつつっていう最初の作戦も使えないですし」

 

さて困った。負けるつもりはさらさらないが、これではどうやって勝ちを取りに行けば良いかわからん。

頼みの綱だった部長の魔力でも足りないとなっては、後はもうさっき愚策って言ったアレしかない。

俺が馬鹿正直に突っ込む以外に、方法がない。

 

「――でも、妙ね。ライザーの実力は私と同程度だったはず。それなのにどうしてあれほどの力を…?」

「え?上級悪魔って、あのくらいの事ができる物なんじゃ無いんですか?」

「違うわよ。仮に上級悪魔であのレベルだったとしても、それはもう最上級一歩手前とかだわ。勿論ライザーが最上級悪魔一歩手前だなんて事はない。直近の戦闘データを見てもそれは明らかだもの」

「じゃあ、あの力にはなんか仕掛けがある…って事っすか?」

「そうよ。そしてその仕掛けさえ何とかできれば、或いは――」

 

部長の言葉を遮るように、炎の波が襲い来る。

戦闘再開だ。とにかく今は逃げに徹して、アイツの力の源を探る!

 

「部長、失礼しますッ!」

「えっ?――ひゃぁっ!?」

 

足元を殴りつけてちょっぴり強化し、すぐさま部長を抱きかかえてその場を離脱。

部長一人でも逃げられるんだろうけど、今は俺達が二人で居た方が良い。

攻撃が来る場所を一か所に絞れば、部長に防いでもらえやすいからな!

それに、俺じゃアイツの力の源がわからなくても、部長なら見抜けるかもしれないし。

 

しかし部長の顔が真っ赤だ。

何だろう、もしかして照れている――んなわけねぇか。俺や木場がいるのに、カーテンに仕切られているからって堂々とシャワー浴びちゃうような人だし。今更抱きかかえられてる程度で顔真っ赤にして照れたりなんかしないだろう。

 

……まさか強く抱きしめすぎて苦しいとか!?

でもこれ以上力を緩めると落としてしまいそうなんで我慢してください!すんません!

 

「うひゃー…すっげぇ炎。校舎が歪んでるぜ…」

「フェニックスの炎は龍の鱗すら溶かすというもの。コンクリートはともかく、中の鉄筋なんかは溶けてしまっているのね。直接燃やさずとのこの熱気……もう少し、離れましょう」

「そっすねー……マジで、校舎がでっかくて良かったー…」

 

少し離れた場所に着地しつつも、その目はライザーから離さない。

炎に囲まれて見えないが、ライザーが何か強い力を放つ物を持っているのだけは感覚で分かる。

でも感覚は感覚だ。実際に見たわけじゃない。

 

だから、炎が揺らいで隙間ができる一瞬。その一瞬でアイツの力の正体を探れば――!

 

俺達を追いかけて来る炎を躱し、時に部長の魔力で防いでもらいながら、隙間を待つ。

まだか、まだかと焦りが生じそうになるのをぐっと堪えつつ、逃げ続ける。

 

そして、ついにその時が来た。

 

奴の手に握っているのは――剣。一振りの剣。

強い力を感じるのも、その剣だった。

 

恐らく、あの剣がライザーに力を与えてるんだろう。

つまり、アレさえ壊せば俺たちの勝ちだ!

 

「部長!」

「えぇ、見えたわ。アレを消滅させれば!」

「一気に近づき――ッ!?」

「あらお見事。今のを避けるだなんて」

 

突然悪寒を感じその場を離れると、俺達のいた場所が爆発していた。

そして聞こえてくる、女の声。

 

「ユーベルーナ…!」

「こんにちは『紅髪の滅殺姫』。挨拶ついでに忠告してあげるけど、()()、炎が来てるわよ?」

「んなっ――がぁああっ!?」

 

油断した。いや、意識を一方向に向け過ぎた。

背後から迫ってきていた炎。本来なら除けられたはずのソレを、俺は受けてしまった。

 

痛い!熱いとかじゃねぇ、痛い!背中の肉を引っぺがされてるような痛みが一気に押し寄せる!

 

「イッセー!?」

「はぁ、はぁ、部長…は、無事ですか?怪我は?」

「え、えぇ。私は何ともないわ。――でもイッセーは」

「俺は、平気です。ちょっと背中が焼かれただけで」

 

嘘です。ほんとは滅茶苦茶辛いです。涙出ちゃいそう。

でも男って馬鹿なんです。好きな人の前だと、どうしても格好つけちゃう生き物なんです。

だから泣かないし、倒れない。部長は離さないし、撃破判定が入るまでは戦い続ける。

 

「それよりもユーベルーナですよ。ライザーの突破口を見つけたとは言え、アイツが邪魔してくるとなると……それに、アイツがここにいるって事はつまり」

「朱乃が、敗れた…」

「その通り。『雷の巫女』には爆発してもらったわ。――けど、妙だと思わない?やられたはずの彼女の、撃破のアナウンスが無かった事」

 

そう言われてみればそうだ。

今現在、俺達の方は誰一人として撃破されたとのアナウンスが無い。

ライザーとの攻撃をかわしている時に、聞き逃した?いやいや、あの時はかなり集中していたとはいえ、周囲への警戒も怠っていなかったし、アナウンスなら聞こえていたはずだ。

 

訝しみつつ、もしかしてと思いながら気配を探る。

朱乃さんの気配は何処にあるのか。

そして、気づく。

 

――アイツの、ローブの中。

 

「ふふっ、怖い顔。わかったかしら?『雷の巫女』の居場所」

「……今、お前が抱えてるんだろ」

「ご明察。勿論なぜ連れてきたのかもわかっているでしょう?」

「…人質、ってわけね」

 

部長が歯噛みしながら言う。

ソレを見てユーベルーナを口元を三日月のように歪めて笑いながら、ローブで隠していた腕の中を見せる。

そこには、傷だらけの朱乃さんが抱きかかえられており、首元にナイフを突きつけるように、顔のすぐ近くに魔法陣が展開されていた。

あの至近距離で爆発なんかさせられたら、リタイアどころか顔に一生消えない傷が残ってしまう。

そんなの、良いはずがない。

 

「動きが無くなったかと思えば、まさかユーベルーナがやってくれたとはな」

「独断をお許しください、ライザー様。ですが、これも完全なる勝利の為」

「構わないさユーベルーナ。お前の俺を思っての行動、とても嬉しく思うぞ」

 

炎が弱まり、ライザーが俺たちの背後から歩み寄ってくる。

その手に持っている剣は怪しく輝き、その瞳もまた爛々と輝いていた。

勝利を確信した表情に、俺と部長が拳を硬く握りしめる。

 

「さて。どうするリアス。大人しく『投了』するならお前の『女王』にはこれ以上何もしないぞ」

「…最ッ低ね。こんな戦いをよりによって両家の当主たちが見る場でして、非難を受けないと?」

「いーや問題ないさ。なぜなら今俺達を見ている物は()()()()()()のだから」

「何?」

 

それが事実であるかのように話すライザーに、俺は眉をしかめた。

なんでコイツが、そう断言できるんだ?まさか、見ている人達もライザーに協力しているって事か…!?

 

愕然とする俺だが、表情から俺の考えている事を読み取ったのかライザーが首を横に振る。

そしてその剣を掲げ、次の瞬間俺は吹き飛ばされていた。

部長を守るとか、回避するとか、そんな隙も無く。

フェニックスの炎が突然俺を襲い、吹き飛ばしていた。

 

気配も何も無かった。

突然そこに現れたみたいに、なんの前触れも殺気も無く、いきなり。

 

「ぐうっ!?」

 

勢いよく地面に叩きつけられた俺は、脳が揺れたせいか動けなくなってしまった。

ぐらぐらと揺れる視界から察するに、俺は校庭に飛ばされたらしい。

しかも木場達がいる所だ。

 

皆が俺を心配するように声を荒げるが、それに応えるどころじゃない。

マジで全身が痛い。っつーか今の衝撃で神器が解除されちまって、強化が全部抜けてっちまった。

その倦怠感も相まってか、気絶寸前だぜ俺。

 

「おいおい、こんなんでへばってちゃお話にならないぜ下僕君。俺のこの新しい力の真価は、まだまだ発揮できてないんだからな」

「ぐっ、がぁっ……て、めぇ…!!」

 

拳を握りしめ、再び神器を纏おうとするも、ライザーは親指で背後を――ユーベルーナと、その腕に抱きかかえられている朱乃さんを指す。

脅しだ。俺が何か抵抗しようものなら、アイツは朱乃さんに攻撃する。

 

畜生っ、あのクソ野郎、最後の最後で卑怯な真似しやがって!!

 

「その剣と、朱乃さんの存在が無けりゃテメェなんか!」

「そうでもないさ。俺のこの剣の力はまだまだその力を発揮していない、そう言っただろう。元々リアス含めその下僕たちも、俺には敵わないのさ。だがな、ちょいと余裕を見せすぎた。そのせいで俺はお前に何度か殴られるという醜態をさらすことになってしまった。――だからな、ここで圧倒的な力の差を見せつけてやらないと、フェニックスの名前に泥ぬったままになっちまう」

 

だから、と言ってアイツは剣を掲げる。

そして再び怪しく光を放ち、今度は俺を心配して近づいてくれた木場達を焼き尽くした。

 

「ッ!!テメェ!!」

『リアス・グレモリー様の『騎士』『僧侶』『戦車』、計三名、戦闘不能』

 

アナウンスが冷酷に三人の敗北を告げる。

あまりに呆気なさすぎる。必死に修行して、ここまで鍛えてきたのに。

まだまだ戦えただろう三人が、たったの一撃で。

アーシアなんか、輪廻に見てもらおうと誰よりも張り切っていたのに。

 

歯を食いしばり、ライザーを睨みつける。

人質?そんなの関係ねぇ!朱乃さんに攻撃されるよりも先に、俺がライザーを撃破すれば良い!

 

神器を出現させ、一気に最大強化まで溜めて駆け出した俺に、ライザーはしかし余裕の笑みを見せたまま、悠然と剣の話をする。

 

「この剣は『引換剣』と言ってな。名前は安直だが、その力は所有者の命と引き換えに願いをなんでも叶えると絶大なのさ。神器に近しい力を持つコレは、不死(フェニックス)である俺が使ってこそ真価を発揮する。例えば、さっきみたいに俺の炎をより強く、より激しい物にしたり―――前触れも無く出現させてみたり、な」

「がぁああああああっ!!?」

 

飛び上がって拳を振りかぶった俺の目の前に炎が現れた。

いや、厳密には俺の目の前だけじゃない。俺を包み込むように炎が出現し、そのまま俺の全身を焼き尽くした。

 

熱いッ、死ぬほど熱いッ!!

最大強化されてるおかげか即リタイアとはならないが、それが逆に辛い。

でも、諦めるわけにはいかない。

俺の大好きな部長を、コイツなんかに渡すわけにはいかないからだ!!

 

地面に落下した衝撃も、現在進行形で全身を焼かれる痛みも、全部根性で耐え抜く。

たかが焼き鳥野郎の炎で、部長の唯一の『兵士』である俺がやられてたまるかよ!!

 

「はんっ、耐えるじゃないか。だが既に体は限界のようだな。その足、酷く震えているじゃあないか。今ここで諦めて倒れ伏したって、誰もお前を責めたりなんかしないと思うが?」

「うっせぇ!部長がまだ諦めてねぇってのに、眷属の俺が諦めてたまるか!どんな願いもかなえるだか何だか知らねぇが、俺のやることは―――テメェを、ぶん殴ってブッ倒す事だけだぁああああああっ!!」

 

拳を地面に叩きつけ、最大強化からさらに強化する。

数発殴っても問題ないレベルの強化なんかじゃ、足りない。

だから、一撃当てたら限界を迎えるようなレベルの、ギリギリまで強化した拳を振るう。

 

限界強化した拳の一撃なら、もしかしたら一撃でアイツの心を折る事ができるかもしれない。

修行中に輪廻に言われた言葉だ。

分の悪い賭けだからやめておけとも言われたけど、今はもうコレに賭ける他ない状況だ。

一か八かだ、気合入れろよ俺!

 

「チッ、今までのが限界じゃ無かったのか!」

「はんっ、今更気づいたって遅ぇッ!!」

 

驚いて硬直するライザーに肉薄し、顔面を砕く勢いで殴りつける。

防御も回避もされること無く、俺の拳はヤツを再び死に至らしめた。

 

強化限界を超えたせいで一気に力が抜けていくが、ヤツが即座に回復する素振りが無いのを見て勝ちを確信する。

見た所朱乃さんもまだ何もされてないみたいだし、部長も無事みたいだ。

 

どっと疲労感を感じるが、それ以上に達成感を感じる。

俺の拳は、ヤツを殺しえた。部長の婚約も、これで破棄だ!

 

「っしゃあっ、どうだこの野郎!!俺の限界強化パンチは、流石に堪えたろ!!」

「あぁ、本当に喰らっていたらやばかったかもなぁ」

 

ゾクッ、と。

特に殺気を感じたわけでも無いのに、途轍もない悪寒を感じた。

 

いや、それどころじゃない。

なんでアイツの声が、背後から聞こえる?

 

重力に従って落下していきつつ、体をひねって声の聞こえた方を見る。

そこには、『引換剣』を持ったライザーが、無傷の状態でそこに居た。

 

「んなっ、どうして!?」

「『引換剣』は所有者のあらゆる願いを叶える。――こうして、俺にそっくりな偽者を造りだす事も可能だし、誰にも気配を察知されること無く潜む事も可能という訳だ」

「い、いつから」

「俺が炎で自分の姿を隠してからさ。まさか、上級悪魔の中でもトップクラスの実力を持つこの俺が、なんの意味も無く乱雑に炎をまき散らしていたとでも?」

 

既に体力が尽きた状態でありながらなんとか着地し、ライザーの言葉を聞く。

なるほど、だからユーベルーナは俺の攻撃を妨害しようとしなかったわけか。

そうだよな、そこで怪しいと思わなかった時点で、俺の敗北は決定していたって訳か。

 

「――いや、まだだ。まだ動くぞ、俺は」

「はぁ。主の為と何度でも立ち上がるその姿にはいっそ敬意すら感じるがな、勝ち目のない相手に対して無駄な足掻きをするのは見苦しいだけだぞ」

「何が見苦しい、だ。それは貴族のテメェの意見だろうが。ノブレス・オブリージュだかなんだか知らねぇが、気品ある振る舞いがどうのとか、俺には知ったこっちゃねぇんだよ。泥臭くても、笑われても、勝利を掴む。大切な人のために戦う。それが俺だ、『兵藤一誠(ポーン)』なんだ」

 

無理矢理神器を再出現させ、二度だけ地面を殴る。

今の限界強化はこの二回分だけ。どうせ俺の力じゃライザーは倒せねぇが、隙を作るくらいなら……部長がライザーを攻撃する隙を生じさせるくらいなら、できるはずだ。

 

屋根の上でこちらを呆然と見つめている部長に、目線だけで俺の作戦を訴える。

わかってくれるだろうか。伝わらなかったら参ったな。

 

――それに、すっげぇ場違いだけど……やっぱ、綺麗だな。部長。

 

あの人に笑顔で居てもらうためにも。

そして俺のこの想いを、いつか告げるためにも

俺は最後まで抗い続ける!

 

「勝負だっ、ライザぁああああああああッ!!」

 

雄叫びと共に駆け出した俺は、多分誰の目にも情けなく、弱々しく、愚かに見えただろう。

相手は最強クラスの『王』で、こっちは消耗しきった『兵士』。

勝ち目なんて無くって、大人しく敗北を受け入れるのが正しいあり方なんだろう。

 

でもそんな事は知ったこっちゃないと、己の意志を貫き通すためだけに振るった拳。

その必死の一撃が、ライザーに届く事は無く。

 

振り抜く直前に力を使い果たした俺が強制的にリタイアさせられ、こちらは部長()を残すのみとなってしまい。

 

『リアス・グレモリー様の『投了(リザイン)』を確認。勝者、ライザー・フェニックス様』

 

退場者が集まる部屋で意識を失う直前に聞こえたのは、俺達の敗北を告げる冷酷なアナウンスだった。

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