ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う 作:うぉっ、でっか…
まぁ、大部分は旧章と大差ないのですが、輪廻がグレイフィアとそこまで面識がない事等一部相違点がありますので、違和感に気づいた方はこの説明を思い出して「あぁ、そう言う事ね」と納得していただければ助かります。
「……ここ、どこだ?」
ふと目を覚ますと、俺は真っ暗な闇の中に居た。
上下も左右もわからない、ただただ黒い空間。
俺はちゃんと両足で立っているのか、それとも何かに掴まっているのか、それもわからない。
視界もぼやけているし、意識だって朦朧としたままだ。
俺は確か、ライザーに負けて……で、皆に慰められて、部長に怪我が残っていないかって何度も心配されて……そっから、数日過ぎて。
部長が結婚しちまうってショックで漠然と過ごして、それで今日がその婚約を大々的に発表するパーティーの日で……
上手く思考がまとまらない頭を無理矢理働かせ、俺は今に至るまでの記憶を掘り起こす。
しかし、やっぱりなんでこんな意味不明な空間に居るのかがわからない。
「よぉ、やっと目ぇ覚ましたか」
「――えっ?ソファ?それに、誰?」
「おいおい挨拶も無しかよ、せっかくの
渋い声の男に声をかけられたと思ったら、今度はソファに腰かけていた。
隣を見ると、声の主であろう男も座っている。顔は何か影のようなもので塗りつぶされているようで、見えない。
「す、すんません……えっと、俺、兵藤一誠って言います。それで……アンタは?」
「あぁ、よーく知ってるね。そんでもって俺は――そうさな、お前の神器に宿るモノ、って言ったらわかるか?」
「神器に、宿る?」
おかしな話だ。神器ってのは神様が人間に授けるギフトだと、部長が言っていた。
ソレはあくまで
でもアレって比喩表現とかじゃないのか?
混乱する俺に、男は軽く笑って話し始めた。
「そう、神器に宿るモノ。赤龍帝だの白龍皇だの、聞いたことあるだろ?あれと同じさ。強大な力を持つドラゴンである俺は、こうして神器に封印されちまったのさ。ご丁寧に力の一部を切り離されてな」
「ど、ドラゴン?いやいや、でも見た目は普通の人間じゃ」
「あぁ。俺ってのはただのドラゴンじゃない。ドラゴンにして
「ドラゴンにして、悪魔?」
それもまたおかしな話だ。
ドラゴンってのは力の象徴。天使も悪魔も堕天使も、他の神話の存在も神様でさえも歯牙にもかけず、そのどれにも力を貸さずに自由に生きるのがドラゴンのはず。
それが、悪魔も兼任ってのは変だろう。
だが男はまるで平然と、ただ事実を並べ連ねるように話す。
「そうさ。ま、詳しくはわかんなくってもいいさ。取り敢えず今のお前に大事なのは、俺がドラゴンでもあり悪魔でもあり、そしてその力をお前に貸してやってるって事。左腕に出現する神器…『
「……いや、まぁ、助かってはいるけど……もうちょっと使い勝手良くなったりしねぇの?」
「たっはー!言うね。でもいいぜその強欲さ。俺は憤怒担当だけど悪魔らしいかったらなんだって大好きさ!――ただ、改良してやるよりももっといい手段があるんだよな、これが」
にやりと口元を歪める男。影で隠れているはずなのに何故かそうわかってしまうのに気味悪さを感じつつも、次の言葉を待つ。
「『禁手』ってのは知ってるよな?」
「…神器所有者が至る事の出来る、神器の力を解放しきったその先…だっけ?」
「ま、おおよそはそうだな。細かくは違うが、取り合えずそんな認識で構わん。――で、だ。お前、あのフェニックスの小僧にムカついてんだろ」
「え?」
突然そんな事を言われて、返事に詰まる。
まぁ、腹が立たないかと言われれば嘘になる。できる事ならアイツをボコボコにして、今やっているのかこれからやるのかわからない婚約パーティーを滅茶苦茶にしてやりたい。
でも、俺は無力だ。
もし『禁手』ができるならもしかしたらがあるかもしれないが、それは何年もかけてようやくたどり着けるような領域だと、輪廻が言っていた。
人によっては、何か劇的な変化があればその場でとの話もあったけど……あんな修羅場を潜り抜けても至らない俺は、きっと何年もの努力が必要なんだろうな。
「惚けなくたってわかるさ。好きな女取られて、自分は死ぬ直前までボコボコにされて……悔しいったらありゃしないだろ」
「……そりゃ、そうだけど」
「よっし。そうだ、それでいい。――さて、お前は今『自分には力が無い』だの『『禁手』に至るには何年もかかる』だのと考えてるだろう。あぁ言わなくてもわかる。俺達は今や一心同体。考えてる事は俺には筒抜けなのさ。お前の脳内の内半分は常におっぱいの事しか考えてない事も含めてな」
いやなんて事まで把握してんだコイツ!
「で、だ。そんな悩めるお前に悪魔から素敵な取引を持ちかけてやろう。力が手に入って、グレモリーの娘と結婚させないようにできる……そんな素敵な契約を、な」
ソファから立ち上がり、男は大仰な素振りと共に話し始める。
その内容は、確かに魅力的で――同時に、俺を破滅へと導くような物だった。
※―――
「さーって。そろそろ式場にでも行ってきますかね―――ん?客?」
「こんな時間になんて、珍しいにゃん。私が見てくる?」
「んや、俺の知り合いかもしれないし、俺が出るよ」
時間もまだあるしな、と付け足して一階へと向かう。
因みにここで黒歌に行かせなかったのは、こんな夜遅くに尋ねてくる俺の知り合いはいつもの変態三人組くらいだからだ。
イッセーはともかく、松田元浜と黒歌を二人っきりにするのはなんとなーく嫌だ。
別にアイツ等を性犯罪者か何かと思っているわけでも無いのだが、なんとなく。
今日も今日とて酒盛りしている両親を横目に玄関へ向かい、ドアを開ける。
するとそこには、真剣な顔をしているイッセーがいた。
――コイツ、腕を
「…おおよその事はその左腕を見りゃわかった。その上で聞くが――何の用だ?」
「婚約パーティーを滅茶苦茶にして、部長を取り返したい。お前なら会場に行く方法も知ってるだろうから、連れてって欲しい」
俺を真っ直ぐに見つめながらそう言ったイッセーに、俺は無言で頷くのだった。
※―――
「本日は私、ライザー・フェニックスと妻、リアス・グレモリーの婚約披露宴にお越しいただきありがとうございます!!」
胸元を大きく広げた悪趣味な服を着たライザーが、声高に告げた。
会場に集まった貴族達や、イッセーを除く私の眷属たちが、皆私とライザーの方を見てくる。
別にまだ完全に妻と決まった訳じゃ……いえ、もう無理ね。
私達がレーティングゲームで負けたのは事実。
朱乃を人質に取り、私達が所持していないフェニックスの涙を使用し、あんな反則級の武器すら使用したとは言え――どれも、ルールに抵触しない範囲。
寧ろあの試合を中継で見ていた貴族達は、ライザーの評価をより高い物にしたと聞いている。
冷徹さを持ち合わせ、しかしエンタメ性を失わない派手な戦闘。それは悪魔たちが好む物だから。
冷静さを装いつつも、拳を握りしめる祐斗。
無表情に見えて、悲し気に瞳を伏せている小猫。
気にするなと何度も言ったけれど、未だに申し訳なさげな表情のままな朱乃。
そして唇を噛みしめ俯くアーシア。
まるで自分の事のように悲しんでくれる眷属たちの姿に、私も抑え込もうとしていた感情がこぼれそうになる。
泣き言の一つでも、吐いてしまいそうだ。
……もし、もしもこの場に貴方がいれば、どんな顔をしたでしょうね、イッセー。
感情的な貴方だから、大声で泣いてくれたかしら。それとも、意外と冷静に堪えたり?
こうして貴方が何をするか、どんな表情を見せるかを考えると、私が全然貴方の事を知らないと思い知らされるわね。
イッセー。私の可愛い下僕。
エッチで、おバカで、熱血で……優しい子。
神器の名前を知らなくったって、魔法陣で転移できない程に魔力が無くったって、それでも諦めずに前を見続けられる……そんな子。
私はあの子が好きだった。
他の皆への好意とは違う。たった一人にだけ向ける、大切で、温かい気持ち。
初めて意識したのは、私が好きだと輪廻に話すのを聞いた時。
そこからイッセーを見る目が少し変わって、そして修行の最終日に二人で話した時、惹かれて。
でもまだそれは『好き』って気持ちじゃなくって、本当に『好き』になったのはライザーとの戦いの最中。
私を抱きかかえて戦い、ボロボロになってもなお最後まで戦い続けようとしたイッセーに、私は惚れた。
あの子はずっと自分を責めていたけれど、私にとっては一番頑張ってくれたのは、一番かっこよかったのは、あの子だった。
――あぁ、イッセーがこの場に居なくて良かった。
ウェディングドレスを身に纏った今の私を、
でも、それと同時に願ってしまう。
あり得ない事なのに、どうしても心の奥で抱いてしまう期待。
今この場に颯爽と現れて、私を連れ去って欲しい――なんて。
限界まで傷ついて、私の為に全てを懸けてくれたあの子に、これ以上求めるのは酷なのに。
そっと瞳を閉じる。
現実は受け入れよう。だが、心は決して渡さない。
体はライザーにゆだねる他無くとも、私のこの想いはイッセーだけの物。
そう硬く心に誓ったその瞬間、会場のドアから爆音が響いた。
「なっ、貴様は!」
ライザーが声を荒げる。
会場の貴族達が、皆動揺する。
ゆっくりと目を開く。
もしかして、と逸る気持ちを押さえつけ、ゆっくりと。
「お前に部長は渡さねぇ」
そこには、イッセーがいた。
拳を振り抜いた形で残心するイッセーが、確かにそこに居た。
そして、私が一番欲しい言葉を、この場の全員に聞こえるように告げた。
「部長の、リアス・グレモリー様の
私の
私を助けに、来てくれた。
※―――
神器の中に眠るモノ。ソイツの持ちかけてきた話はいたってシンプル。
俺の腕を生贄に、『禁手』を一時的に使用可能にするというもの。
場合によっては腕一本では済まないと告げられたが、俺は悩まずにその話に乗った。
最低腕一本で、部長を助け出す事ができる。俺にはそれだけで十分だった。
そうして腕を先払いした俺は、輪廻を頼ってパーティーの会場に乗り込む事にした。
今思えば無計画にもほどがあったと思う。
輪廻が婚約パーティーに行く手段を知らないとかだったら、俺の腕が捨て損になるところだった。
――で、意気揚々と会場に乗り込んで、輪廻のアドバイス通りドアを殴り飛ばして堂々と宣言。
まだ告白の一つもしてねぇけど、駆け落ち気分だ。
勿論ライザーは俺を見るや否や警備を担当しているだろう兵士たちを俺に差し向けてきた。
別に俺が相手しても問題無かったけど、露払いは全部輪廻がやってくれた。
直接言われたわけじゃないけど、「お前はライザーに集中しろ」って事だろう。
ありがとよ、親友。そして見ててくれ。
俺が
「あの人間…!!チッ、何しに来たんだよリアスの下僕君。君は俺に負けただろう?その上で、なんだって?リアスの全部は俺の物?お前が?身の程知らずにも程があるぞ下級悪魔。リアスは、俺のリアスだ。これは両家のお偉方が決定した事でもある。お前みたいな転生したての弱小悪魔が一々口を挟めるような内容じゃ」
「んな事知るか!俺に大事なのは、部長が望まない結婚を強いられるって事と!部長が俺以外の男と結婚するって事だけだ!行くぞライザー、ゲームの時みたいに顔面殴り飛ばして、そのまま部長を連れ帰ってやる!」
俺の言葉に、ライザーは顔を歪める。
心底憐れんでいるみたいな目を向けてくるのが腹立たしいが、それよりも部長だ。
純白のウェディングドレス。素敵だが、ライザーが選んだものなら今すぐにでも普段の制服に着替えていただきたい。
一触即発、といった雰囲気でにらみ合う俺達の間に、一人の男性が割り込んでくる。
部長のような紅の髪をした、中性的な顔立ちのイケメンだ。
「その話、私も一つ噛ませてもらおうかな?」
「なっ、サーゼクス様!?」
「サーゼクス…って、部長のお兄様!?」
「あぁ、二人とも硬くなる必要は無いさ。これは、個人的な介入だからね」
柔らかい笑みを浮かべるサーゼクス様に、しかし俺は緊張したままだ。
なんてったってサーゼクス様は、部長のお兄様にして魔王様。
その力は悪魔随一で、部長と同じ滅びの魔力を操る凄い人なんだとか。
俺なんか指先一つで簡単に消滅させられちゃうような人を前に、その人の妹を連れ去る宣言をしちまったんだから―――いやでも、怖気づくな俺。部長を取り戻すって決めただろ!
「……あなたは、あの試合が不服だったと?」
「いや?あの戦い方は悪魔としてとても褒められたものだった。私とて君の勝利が間違った物だというつもりは無い。――けど、それと同時に私は、こういう熱血漢というのが大好きなのさ。愛する主のためにと、無謀にもフェニックスに挑む下級悪魔。実に面白い。……確か、兵藤一誠君…だったかな?」
「は、はいっ!」
「君は、リアス・グレモリーとライザー・フェニックスの婚約を破棄させ、連れ去りたい…そう言っていたね?」
「っ!はい。俺は、俺は部長が結婚するなんて嫌です!勿論、部長だって好きでもない相手とは結婚したくないと言っていました!だから、だから俺は!」
「うん。もう大丈夫だよ。君の願いは、確かに把握した」
俺の言葉を遮り、サーゼクス様は頷いた。
そしてライザーの方を一度見て、その後全員に聞かせるように大きな声で言った。
「どうだろう。今から君と兵藤一誠君とが戦い、もし兵藤一誠君が勝利する事があれば望み通り、婚約を破棄させるというのは」
「し、しかし!」
「無論君が勝利すれば、君の望みを叶えよう。リアスとの婚約もそのままに願いが叶う、良いチャンスだと思うけどね。――富も名誉も、望むなら美女だって。魔王としての私が、望む物を与えると約束しようじゃないか」
「…望む、物を」
「あぁ。そも、君はフェニックス。いくらこの場に殴り込めるくらいの胆力があるとしても、単なる下級悪魔に敗北するような事はないと思うね」
「―――良いでしょう!不死鳥と謳われし我が一族自慢の炎を、お見せしましょう!!」
「…勿論、君も良いだろう?兵藤一誠君」
「えぇ。願ったりですよ。必ず勝って、俺の願いを……部長の婚約破棄を、叶えて見せます」
「イッセー……」
部長が俺を呼ぶ声が聞える。
視線を向けると、心配そうに俺を見つめていた。
大丈夫ですよ、部長。
なんてったって俺は、俺のこの力は――!!
「では、早速準備に取り掛かろう。この会場に、特設のステージを作るとしようかな」
「……あの、サーゼクス様。あちらの人間は…?」
サーゼクス様の隣に控えていた美人さんが恐る恐る指を指した先には、倒れ伏した兵士たちを一か所に集めている輪廻がいた。
……さ、流石。無傷な上に汗一滴流してねぇ。
サーゼクス様は輪廻を見ると、なぜか一瞬だけ表情をほころばせて、すぐに厳格な表情に戻り一言。
「…せっかくだ。私と一緒に、二人の戦いを見てもらうとしよう」
「よ、よろしいのですか!?」
「あの少年が一緒に連れてきた人間だ。本来招かれざる客ではあるが……今回は、特別に許そうじゃないか。君も、友人の雄姿を見逃すつもりは無いだろう?」
「――えぇ。俺は彼が勝つ姿を見るために、ここに居ますので」
…ッ!不覚にもジーンときた。
あの輪廻が、俺なら勝てると信じてくれている。
こんなのもう、負ける要素がどこにもねぇ。
願いを叶えるだか何だか知らないが、不死性を突破するくらいの一撃ぶち込んで、今度こそ勝ってやる!!
※―――
「お前…兵藤一誠とか言ったか。なぜまだ諦めない?あのレーティングゲームで、十分俺との実力差はわかっただろう?」
「あぁ。その上でだよ」
「…はんっ、勝ち目のない勝負に挑む事を美徳とは思えないがな」
「いーや、違うぜ。俺があのレーティングゲームで知った実力差は、殆どないって事だけだ」
挑発する様に言った俺に、ライザーは不快そうに顔を顰めた。
いいぞ、怒れ怒れ。かっこよさとか気にした、あの時みたいな舐めプはこりごりなんだよ。
「身の程を教えてやる必要があるらしいな!」
「言ってろ種まき焼き鳥!――聞こえてるよな、最初っから全力全開、クライマックスで行くぜ!プロモーション『
部長からプロモーションの許可は下りている。
最初は騎士にするか戦車にするかで悩んだけど、ここは女王を選んだ。
魔力での攻撃はできないとは言え、速度も攻撃力もどちらも極限まで引き出せるのは『女王』だからな。
一個の能力が無駄になっちまってるのは悲しい所だが、それでも十分、十二分!
プロモーションと同時に駆け出した俺を、ライザーは大きなため息と共になじる。
「おいおい、あんな大見得切っておきながら、やることは相も変わらず無策の突進か!所詮は下級悪魔だな、リアスの『兵士』!」
「いーや違うッ!俺はあの時よりも、もっとずっと強い!なぁそうだろ、見せつけてやろうぜ――
『Satan's power over drive!!』
生贄にした左腕を突き出し、神器の中の、俺の中のアイツに、
その声に反応するように、神器が黒い輝きを放った。
そして俺の全身を影が、闇が包む。
遠くから、近くから、至る所から聞こえる笑い声。
俺を包み込んだ不定形の闇が、形を持ち始める。
光の一切を飲み込むような、しかし黒く輝く鎧へと。
「これが俺の新たな力!『
『Break down!!』
「馬鹿なッ、サタンだと!?原初の悪魔の中でも最強と謳われる悪魔の力が、なぜ転生悪魔如きに宿っている!!――えぇい、まぁ良い。コケ脅しだろうが本物だろうが、願いを叶える俺の力には及ぶまい!さぁ『引換剣』よ!あの身の程知らずの下級悪魔を、灰すら残さず焼き尽くす力を俺に―――ぐぼぁぁッ!?」
力を解き放ち、ごちゃごちゃと喚き散らすライザーを思いっきりぶん殴る。
拳が当たり、さらに力が増していく感覚を覚えながら、俺は吹っ飛んでいったライザーを追撃するべく無言で駆け出す。
「なっ、速―――ッ!!」
驚いている様子のライザーを、さらに二発!
こんな重い一撃を三発も入れたら、普段の俺なら既に許容限界超えてぶっ倒れてる頃だけど……まだまだ、いけるよなぁッ!!
「うぉおおおああああああッ!!これがっ、俺の、力だぁああああああッ!!」
「ぐっ、ぼっ、があああああああああっ!?」
壁に埋まりかけているライザーを、さらに押し込むように殴る、殴る、殴り続ける!
力が増し、さらに気分が高揚する!
あぁ、そうだ。俺の心は今までにないくらいに燃え上がっている。
人質にされた朱乃さん。
ほんのおまけ程度に燃やされたアーシア、小猫ちゃん、木場。
必死に足掻き続けた俺を嘲笑ったライザー。
そして、俺がリタイアする直前に見た、部長の―――涙。
全部、全部だ。
その全部が今俺を奮い立たせる。
限界を超えろと、何もかもを捧げて戦えと。
「ライザァああああああッ!!」
「な、めるなよ、下級悪魔風情があああああああ!!」
一度攻撃を止め、俺のカス程度しかない魔力を限界まで込めた一撃を放つ。
今までの隙の一切を見せない連撃ではなく、確実に仕留めるための一撃。
だがソレを放つために生じてしまった微かな隙は、アイツに『願い』の力を発動させてしまう致命的な一瞬となってしまった。
瞬間、目の前に現れたのは青い炎。
フェニックスの炎は本来赤い物。けど、それよりもさらに強く、熱いその炎は、凍えるような蒼色だった。
「でもンなもん関係ねぇ!家柄とか体とかそんなモンにしか興味ねぇテメェと違って、俺は部長の
『願い』で強化された青い炎。
俺の放つ渾身の一撃。
数瞬の拮抗状態の後、勝ったのは俺の拳だった。
拳は確かにライザーに届き、しかも『引換剣』を砕いた。
ただ、威力がかなり殺がれちまったせいで、この一撃じゃ倒しきれない。
もう一発、もう一発殴れば――ッ!?
突然背後に悪寒を感じ、その場を飛びのく。
俺に残された時間はわずかだというのに、反射的に。
俺が元居た場所を見ると、そこには光り輝く剣のような物が刺さっていた。
いや、光り輝く、じゃねぇ――光の剣だ!
「やれやれ、まさかあの男ではなくこの男が出向くとは。しかも宿した神器がかの『憤怒の龍魔王』サタンだとは。ですがまぁ、私の敵ではありませんな。その身も神器も、悪魔の力が主である故に」
「お、お前は…!!た、助けに来たとでもいうのか!」
「えぇ。その通りでございます。――さて、サタンの少年。名を兵藤一誠と申しましたか。でしたら私も名乗りましょうか、私だけ名を知っているのは不公平であるが故に」
狼狽するライザーと対照的に、その男は極めて落ち着き払っていた。
しかし手に持った光の剣。そしてその背中に生える純白の――天使の翼。
それは明らかに、この場に居てはならない存在であることを示していた。
だが男は一切気負う様子無く、俺や、他の悪魔たちに向かって自己紹介してのけた。
「さて、名乗ると言ってしまってあれですが、生憎と私は名乗る名を持たぬ物。役職名は『
権天使。奴はそう名乗った。
確か権天使ってのは、天使の中でもかなり下の方……とはいえ下手すりゃ中級悪魔よりも強いような存在だ。
サタンの力を使っている俺でも、一撃喰らえば不味いだろう。
――ってか、待て。この力は、もう――。
『time out』
「うぉぁっ!――チッ、クソッ、時間切れかよ……!!」
『
名残惜し気に俺の体を伝っていく黒い塊は、地面に触れるとしみこむように消えた。
それと同時に、全身から力が抜け、倦怠感が襲い掛かってくる。
今すぐにでも意識を失ってしまいそうなほど、消耗している。
「は、はは、ははははっ!どうやら限界のようだな、兵藤一誠!サタンの力とやらが果たして本当なのかどうかはさておいて、俺をここまで追いつめたのは素晴らしいと褒めてやろう。だが、力及ばなかったな」
「ふむ。――いかがします?止めを刺しても構わないとは思いますが。まあ、あなたにも面子というのがあります故に」
「まず面子云々気にするなら上級悪魔が天使と組んでるってのが大問題だと思うんだよな、俺は」
聞き覚えのある声が聞える。
輪廻の声だ。いつもとまるで変わりない、落ち着き払った声だ。
「輪廻…?」
「よっ、イッセー。本当はお前とライザーだけの戦いのはず……だったわけじゃなくってな。まぁ俺がここに来たのも全部そこの天使が理由って訳だ。詳しい話はちょいと省くが、そうだな……『夢幻人』の力を借りての勝利ってのが、どうかなーって思ったって事だな」
「立神、輪廻……!!」
「よぉ、初めましてだが、俺の事は知ってるだろ?――でさ。お前の
次の瞬間には、天使は輪廻に蹴り飛ばされ、地面に埋まっていた。
かなりの距離を一瞬で詰めたアイツに、もはや驚く事はない。
なんかもう、一々反応してると疲れるタイプだ。
「さ、『禁手』終わったからってまだまだ諦めつかねぇだろ。ライザーだって気丈に振舞っちゃいるが正直限界のはずだぜ。なんせサタンの攻撃を十秒未満とは言え只管喰らい続けていたからな。――だから、諦めんなよ」
「……言われ、無くても!」
天使は任せろ、と目で言ってくる輪廻に心の中で深く感謝し、震える足に鞭打って無理矢理立ち上がる。
「お互い、頼れるモンは殆ど出し切った、な。俺は『禁手』と、魔力と、体力。お前は再生して復活できる精神力と体力、そして願いを叶える『引換剣』」
「…残ったのは、互いに攻撃手段一つのみ…か。俺は炎で、お前は神器」
「あぁ、そうさ。テメェはムカつく野郎だけど、でもその強さははっきり言って認めてる。もし部長の結婚云々が無けりゃ、俺はお前に憧れてたかもな。眷属ハーレム持ちで、わかりやすいくらい強いってさ」
「ははっ、だが俺の立場に立つと、存外面倒ごとの方が多かったりするもんだぜ。下僕たちは可愛らしいが、御家問題とかは三男坊だから色々と面倒臭い。関わらないといけない癖に、大して何ができるって訳でも無いからな。――そういう意味では、言っちゃあなんだが平民のお前が羨ましいよ」
なんだか憑き物が落ちたみたいなライザーは、ちょい悪そうな雰囲気はそのままに、しかしどこか爽やかさを感じさせた。
……もしかして、だけど。感じる気配から考察するに、あの『引換剣』とやらのせいで若干変わってた部分があったのかもしれないな。
ちゃんと話してみたら、気さくでいい奴だったり……なんてな。
「さて。俺もお前も、どっちも限界だろう?生身で俺の炎に耐えるなんて真似、お前にはできないだろうし……俺とて強化されたお前の拳を喰らえば、精神が尽きる」
「だから、この一撃で決まる」
俺は拳を何度か地面に叩きつけた。
ライザーは炎を揺らめかせた。
輪廻と天使が戦う音が、段々と聞こえなくなっていく。
それだけじゃない。静寂特有のうるささすら感じない。
極限まで集中しているんだ。だからこそ、無音。もはや、周囲の景色すら見えない。
見えるのは、ライザーの姿。その一挙手一投足に、俺は集中している。
「ッ!」
最初に動いたのは、俺だ。
炎の揺らめきや、感じる気配。その他諸々から、今この時が攻め時だと判断した。
事実、それは成功だった。
炎を出すのに準備とか予備動作とかあるのかと思うが、しかし俺のタイミングが正しかったのか、炎は数瞬遅れて放たれた。
俺の前方全てを覆い隠すような炎の波に、俺は拳を――振るわなかった。
恐怖心なんかを全部押さえつけて、炎の中に飛び込んだ。
あぁそうだ。ライザーの言う通り、生身の俺が炎の中になんて入ったら灰すら残らない。
だが、それはアイツが知るレベルの最大強化なら、だ。
今の俺は、左腕と一緒に
だから、ギリギリ耐えられる。
歯を食いしばれば、乗り越えられる。
俺の拳を、威力を殺さずにアイツにぶつけられるッ!!
「はははっ、ついに燃え尽きたかッ、兵藤一誠!」
「いいや、俺はまだ、ここに立っているッ!!」
炎を抜け、ライザーの前へ。
驚愕に目を見開いた奴に見せつけるように、体をひねって拳を構える。
「だぁっ、くそっ、俺の炎が、及ばなかったとでもいうのか!」
「あぁそうさ、俺の部長を思う気持ちの方が、もっとずっと強かったんだよ!」
「――下級悪魔と、純血の上級悪魔だぞ?本当に良いのか?お前が、思うような、良い事ばかりではないんだぞ。周囲の目、グレモリー家の介入、様々な問題や、困難がお前を襲うはずだ。それでも」
「それでも俺はッ、俺は部長が大好きだ!!問題がどうとか困難がどうとか、関係ねぇ!俺は、俺のやりたいようにやるだけだ。――悪魔らしく、突き進むだけだぁああああああッ!!」
俺の拳がライザーを穿つ。
顎を的確にとらえた強烈な一撃。限界間近だったライザーを倒すには、十分すぎた。
「はぁっ、はぁっ……勝っ…た?」
体がフラフラする。
頭がガンガンと痛む。
今にも倒れそうな俺を支えたのは、輪廻だった。
「よっ、お疲れさん。かっこよかったぜ、親友」
「おいおい、止せよ……男に褒められたって、嬉しかねーっての」
「……じゃ、そう言う事にしといてやるよ」
「イッセー!」
フィールドが消え、元居た会場に戻る。
俺達の下へと部長が駆け寄ってきて、俺の名前を呼んで抱き着いてきた。
――抱き着いてきた!?
「ぶ、部長!?そ、その、いきなりそう、下僕と主のスキンシップとなると俺のお馬さん根性がパカラパカラと!」
「ありがとうっ…私を、私の夢を、守ってくれて。私の為に、戦ってくれて…!!」
狼狽する俺に、部長は震える声でそう言ってきた。
輪廻は部長が抱き着くタイミングを見計らって離れてくれており、俺にサムズアップしてきている。
口の動きから察するに、「頑張れよ」と言っているようだ。
「部長の為だけじゃ、ないですよ。俺が戦ったのは、何よりも俺自身の為、なんです」
「…貴方、自身の為…?」
「はい。部長が望まない結婚をさせない。それは眷属としての俺の理由。そして―――だ、大好きな貴方が、俺以外の男と結婚して欲しくない。それが、一人の男としての、俺の理由でした」
「っ、そ、それって…!」
「お、俺は……俺は、俺は!部長が、リアス・グレモリー部長が、大好きですッ!!」
部長を一度離して、言葉に詰まりながらもなんとか思いを告げる。
あぁ、そうだ。俺は部長が大好きだ。
勿論他の女の子だって大好きだし、おっぱいへの情熱だって枯れちゃいない。
だけど、部長は特別なんだって、ついこの間気づいた。
部長に寄せるこの想いだけは、ただのスケベ根性とは違うんだって、やっと気づいた。
だからこそ、ここまで戦えた。
ライザーなんて強敵を、倒せた。
告白の返事は、正直あまり期待していない。
俺なんかを好きになってくれる人なんていないと、やっぱりレイナーレの一件で思ってしまっているからだ。
このトラウマは、多分一朝一夕で払拭できる物じゃない。
だから期待していないのに……していない、はずなのに。
なんでこんなに緊張しちまうんだ!?
フラれちまったら、俺はどうしようって……どうしてこんなに不安になっちまうんだ!?
あぁ、頼む、お願いします部長。
返事は言わないでください。言葉にしないでください。
拒絶するなら、せめて首を横に振るだけに――。
「イッセー……そんな、不安そうな顔、しないでちょうだい?」
「で、ですが」
「返事を聞く前から、決めつけないで欲しいわ。――何度も言った通り、私は私が決めた相手としか結婚しない。交際だって、勿論そうよ。今まで何人もの告白を断ってきたし、親が用意した縁談も全部破談にしてきた。――改めて、貴族としては最低ね」
「そ、そんな事!」
「いいの。事実だもの。私自身、正直ダメなんだろうなって思わなかったわけじゃない。――でも、そうして今まで断り続けてきたからかしら。やっと……やっと、会えたの。私が、心に決めた相手と。そして今、こうして私が好きだと言ってくれた。すっごく、すごく嬉しい」
「部長……それって、つまり…!!」
俺の言葉に、部長は目尻に涙を浮かべながら、頬を朱に染めて頷く。
首を縦に振る動作、そして今の言葉。
それは、もう勘違いでも何でもなく…!!
「私も、貴方が好き…うぅん、大好きよ、イッセー。下僕としてじゃなく、たった一人の男として」
「ッ!!や、やったあああああああああッ!!」
感極まって、叫びながら部長に抱き着いてしまう。
いやでも、こんなの嬉しいに決まってんだろ!
あの部長が、リアス・グレモリー先輩が、俺を選んでくれたんだぞ!
ライザーでも木場でも輪廻でも無く、他にもいただろうイケメンたちでも無く!この、俺を!
「ん、んんっ。お熱い所すまないが、少し口を挟ませてもらうよ」
「お兄様?」
咳払いをしつつ、サーゼクス様が歩み寄ってくる。
その顔は相も変わらず優しそうな笑みに彩られ……後、なんだかちょっぴり恍惚としているというか、憧れのスーパーヒーローのショーに行って握手までしてきたみたいな表情をしていた。
「無論、勝利した君の願い通り、リアスの婚約を破棄させる……が。ここは一応公の場なのでね。両家の面子の為にも、一応駆け落ちという形を取ってもらいたい」
「は、はぁ……でも、俺そろそろ意識も限界で」
「わかっているとも。だから私からプレゼントを、ね」
そう言ってサーゼクス様が指を鳴らすと、魔法陣が展開し、グリフォンが現れた。
す、すげぇ!一応、使い魔向け動物一覧で見た事あったけど、リアルで見ると違うな!
……しっかしプレゼントって……これに乗ってけって事?
でも俺グリフォンの操縦なんて無理だぞ。乗馬すらしたこと無いのに。
「この子は賢いからね。背に乗れば、後は勝手に目的地まで連れて行ってくれる。だからそんな不安そうな目をする必要は無いよ」
「あ、そ、そうなんですか…あ、ありがとうございます」
不安そうな顔、不安そうな目と部長とサーゼクス様に言われたわけだけど。
俺ってそんなに表情に出てるのか?輪廻曰く「エロい事考えてる時は良くわかる」とのことらしいけど。
ま、まぁとにかく。面子とか色々言われたら乱入した側の俺としてはちょっぴり居心地悪くなってしまうし、それに――せっかくその、付き合う事になったんだから……二人っきりで話たいなー、なんて思ったり。
そもそもグリフォンの上に乗った時点で限界迎えて気絶しそうだけど。
大丈夫だよな?俺。
「――では、これからもリーアを頼むよ、兵藤一誠……いや、
「えっ、今俺のあだ名…」
「あぁ!なんてことだ!私のリーアが、婚約を控えたあの子が、連れ去られてしまうー!」
サーゼクス様が急に棒読みなわざとらしい演技をすると、俺と部長を乗せたグリフォンは入口へと向かい、そのまま外へと飛び出した。
そして、俺達は殆ど一瞬で、冥界の空へと移動してしまった。
なんだか全体的に薄暗い雰囲気だ。
悪魔の住む場所なんだから当然っちゃ当然だけど。
「――ねぇ、イッセー」
「あ、はい。何か、ありましたか?」
「いえ、そんな大した話じゃ無いんだけど……ほら、貴方が寝てしまう前に、先にしておきたいなって」
「しておく?一体何を――んむっ!?」
冥界の空を飛ぶグリフォンの上。
部長の目を見て話そうと振り向いた俺の唇に、部長の唇が重ねられた。
時間にして、ほんの数秒にも満たない刹那のキス。
だけど、この限界付近の俺をオーバーヒートさせるには、そのキスの魅力と威力は十分だった。
「私の、ファーストキスよ。特別な一回……勿論その意味、わかってるわよね――って!!ちょっと、落ちちゃうわよイッセー!?イッセー!?」
ファーストキス、という言葉に名実ともに限界を迎えた俺は、グリフォンから落下してしまうかもしれないという事すら忘れて、全身の力を抜いてしまうのだった。
※―――
「ん、ぅぅ……朝、かぁ…」
憂鬱だ。ヤンデレ目覚まし時計(ランダム五種類の音声がなる、結構お高い目覚まし時計。今日は発狂型のヤンデレだった)を止め、未だに苦手意識の拭えない日光をカーテンの隙間から浴びつつ伸びを一回。
うーん、相変わらず日光強めの嫌な朝だ。でも曇りの日の方が力が出ない。
もしかして悪魔って日光そのものではなく紫外線に弱いのでは?と最近思った。
――さて。なんだろう。この俺の隣に感じる熱は。
感触、熱ともに人間味を感じる。というか人だろう。
丁度布団のかぶさり方でよくわからないが、きっとこの中には人が入っているはず。
しかし悲しいかな。俺と添い寝してくれるような人なんていない。
部長とはまだお付き合いを開始したばかり。いくらあの人でも、俺と一緒に同衾なんてまだまだしてくれないだろう。
では一体誰だ。
まさか親父かお袋が、酒の飲みすぎで俺のベッドにもぐりこんでしまったとか。
いやでもお袋は元々酒を飲まないし、親父は現在禁酒中。
だったら――いや、マジで誰?
頭の中で疑問符が躍る中、俺は恐る恐る布団を捲った。
「……ぶ、ちょう?」
そこには、部長がいた。
―――全裸の。
「え、えぇえええええええええっ!!?」
俺の主様で、素敵な先輩で、愛しい恋人。
そんなリアス部長との恋人生活は、どうやらかなり刺激的なモノになりそうだ。
フェニックス編、ようやく完結!
最後の方駆け足気味になった気がしなくもないですが、もうこれ以上は何を言われてもしばらく手直しとかしません。いい加減主人公に無双させたいんだ俺は。
次回から始まるエクスカリバー編。
謎に包まれたあの正体が遂に――?
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