ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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禁手に至る者。
禁手に至っていた者。

そんな二人の力が、駒王学園で解き放たれる――。


『禁手』

会長と部長の話し合いが終わり、作戦が決まった。

相手は堕天使の中でも上位に位置する、コカビエル。

ソイツとの戦闘の余波で町が壊れては本末転倒という事で、会長とその眷属たちが学園全体を覆うように結界を張り、俺達が存分に戦えるようにしてくれた。

 

本当は、会長たちと一緒に戦って……ってやった方が勝率高いけど、背に腹は代えられない。

何より、こっちは黒歌さんも輪廻もいるんだ。不安がる必要なんて、全くねぇよ。

 

『女王』にプロモーションし、皆が各々の武器を携えて、正門から堂々と中に入る。

唯一の出入り口だからな。本当は不意打ちとかの方が良いのかもしれないけど……ま、相手が強い事に変わりはねぇ。やることだって一つだ。大差ねぇよ。

 

入って直ぐに、凄まじいオーラを感じる。

聖剣の物だ。というか四本の聖剣が、光り輝きながら浮いている。

その下には魔法陣と、フリードと狩刈と老人。そしてその上には、空中に椅子を置いて優雅に座る堕天使……コカビエル。

 

それに対峙しているのが木場達なのだが、何でか木場は地面に手をついて何かを嘆いている様子だし、イリナもゼノヴィアも老人の方を非難するように睨みつけている。

 

「加勢が来たらしいな、聖剣使いに魔剣使い。かといって状況が好転したとは思えないが」

「……部長」

「微力かもしれないけど、主として助けに来たわ。――何より、私達も貴方のやろうとしている事を止めないといけないもの、ねぇ?コカビエル」

「はははっ、その瞳、その紅の髪――やはりお兄様に似ているなぁ、リアス・グレモリー。見ているだけで反吐が出る」

 

強い重圧が俺達を襲う。ただ睨まれてるだけなのに、物理的な重圧を感じるぜ。

けど、今大事なのはそこじゃない。見たところ、木場達は無傷みたいだけど…一体、何があったんだ?

 

「……バルパーから、何か言われたのか?」

「はははっ……さすがだね輪廻君…その通りさ。見てくれよ、この拳大程度の大きさしかない、石を。これがなんだかわかるかい?」

 

引きつった笑みと共に、大事そうに手に持っている石を見せてくる。

なんだろう。ただのちょっと変わった石にしか見えないはずなのに、今まで感じたことのないようなオーラを感じる。

 

分からずに無言でいる俺たちへ、木場が震える声で告げる。

 

「僕の、仲間たちさ。厳密には、僕の仲間たちの命を奪って取り出した、聖剣を扱う為の()()、だってさ」

「左様。私の実験…聖剣計画は失敗に終わった、ということになっている。だが実際には違う。私の出した結論は、人間は誰だろうと聖剣を扱うために必要な『因子』を持っており、その『因子』が一定数を上回ることで、聖剣を使えるようになるという物だ。当初こそ、人の中にある因子を一定数まで引き上げる実験を行なっていたが……その過程でな、死んだ人間から因子を抽出し、それを結晶として固めることができると結論付けたのだ。そしてその結晶を利用することで、第三者が聖剣に適合できるようになれる……あの時実験体を殺したのは、それが真実か否か確かめるためだったのだよ。結果は見ての通り。まぁ今となってはあの実験体どもの結晶は大した力も残っていない搾りカスでしかないが、それでもフリードに聖剣を自在に扱わせることが可能なほどではあったな」

「そんな…ひどい…」

「酷い?酷いのは教会の上層部の連中だ!私の実験は成功だった!それを証明するために実験体を全部処分したというのに、連中はやれ非道だのやれ異端だのと言って私を追い出した!何が非道、何が異端!聖剣の力を誰もが扱えるようにと最初に命じたのは彼らだというのに!」

 

バルパーの言葉に涙を流すアーシアだが、しかしやつは逆上するばかり。

くそっ、なんて身勝手な野郎だ!そのせいで、一体どれだけ木場が辛い思いをしたと思ってんだよ!

 

見れば、部長も朱乃さんも不愉快そうにしている。

小猫ちゃんだって、無表情ながら眉をしかめているのはわかるくらいだ。

 

「聖剣を帯刀するにあたり、教会から与えられた『祝福』…その正体が、聖剣の因子、だったなんてね」

「あぁそうだ。それが何より腹立たしい。私の生み出した技術だというのに、私を追い出した後でそれを我が物顔で使うなどと」

 

ゼノヴィアの言葉にも、やっぱり不機嫌そうに話すバルパー。

どこまでも自己中心的な野郎だ。一発ぶん殴ってやんねぇと気が済まねぇ。

 

『悪魔の連撃』を発動し、地面を何度も殴り付けて駆け出す。

すみません、部長。作戦とか、一旦忘れさせてください!

 

バルパーを殴りつけようと振りかぶった拳は、しかしフリードの持つ槍に防がれる。

……な、なんだよこれ!ただ槍に拳が触れているだけで、なんでこんなに力が抜けてくんだ!?

 

「いっひひひっひひ!どうよ堕天使の総督、アザゼル謹製の汎用龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)。その名も『愚かなる老騎士の槍(ランス・オブ・ドン・キホーテ)』!人工神器とやらの中でもより量産が容易く、尚且つドラゴンの力を持つ者に多大なるダメージを与えられる武器!君のサタンだって、悪魔でありながらドラゴンなんて属性もりもりの存在な訳だから……当ったり前のようにダメージ増加っしょ!」

「ど、ドラゴン・スレイヤー!?」

『不味いぜイッセー。『禁手』が使えるならともかく、使えない今その武器と真正面から殴り合うのは分が悪い。これならまだ聖剣素手で触る方がマシだぜ』

「そんなに危険なのかよ!?ちっ、クソッ!!」

 

拳を地面に叩きつけて土埃を上げ、その時の衝撃で後方へと跳躍。

部長たちの所へ戻り、一度体勢を立て直す。

 

……『禁手』、か。前に一回使った事があるけど、アレは俺の腕を捨てる事でようやく至れた領域。

そりゃ、いずれは好き放題使えるようにはなりたいけど、一朝一夕では不可能だ。

今使いたいのに、どうしても使えない。

―――いや、俺がもう一度腕を捨てれば或いは…?

 

『やめとけ、っていうか必要ねぇ』

「は?な、なんでだよ。相手は堕天使のすげぇ奴に、龍殺しを持ったフリードに、なんか同じくらい強そうな男で……『禁手』が必要ないなんて事は無いだろ」

『まず戦力差で既にこっちが勝ってるってのはあるが……それよりも、今はお前が力を解除したおかげで、あの木場って小僧が()()()()()()かもしれないからな。一旦黙って見守ってやれよ』

「は、はぁ?それってどういう……」

 

サタンの言葉に眉を顰めつつ、俺は木場の方を見る。

会話を聞いていた部長たちも木場へ視線を向けるが、そこである異変に気付く。

 

――木場の周りに、人影?

 

どんな顔をしているのかはわからない。どんな服装をしているのかもわからない。

黒い人影が、口元だけ動かして、木場に何かを言っている。

声はここまで聞こえないが、まるで木場を鼓舞するような事を言っている事だけはわかった。

 

「……みん、な」

 

涙を流しながら、木場が周囲の影一つ一つに目を合わせ、名前を呼ぶ。

呼ばれるたびに、影たちは小さく頷く。

そうか。アレが木場の、仲間たちなのか。

 

「先ほどの、サタンの言葉……もしかしたらイッセー君から抜け出た強化分の力が、この空間に満ちる力をさらに増やし、その結果あのように思念体を発現させることになったのかもしれませんわね」

「思念、体?」

『姫島とかいう女の言う通りさ。あの男、バルパーとやらは因子だなんだと言っていたが、あの結晶は言ってしまえば固体化した魂。神の力の一端である聖剣の光や俺の力…つまり悪魔の力がこうして閉ざされた結界内に満たされれば、物言わぬ魂の塊から意志を持った思念体が顕現できるようになる。――んでもって、何を話しているかはわからんが、あの手の人間ってのは何度も見てきたからわかる。死んだ仲間や、守りたいと願った大切な存在のために戦ってきた奴が、戦う原因となっていた奴の言葉や、遺した意志を手にした時、必ず()()()()()

 

いまいち具体的な事を言わないサタンを他所に、木場は影に話しかけ続ける。

コカビエル達ですら、そこに横やりを入れる事は無かった。

 

「……ずっと、ずっと悩んでばかりだった。生き延びてしまった僕が、どうすれば皆の為にこの先を生きていけるかと。僕よりも生きていたかった子がいて、僕よりも大きな夢を持っていた子がいて、ソレを踏みにじって生きているのが僕なんじゃないかと、毎日思ってた。本当に、僕はこのまま幸せに生きてて、良かったのか……って」

 

涙をボロボロと流しながら、木場が影たちへ問いかける。

影たちは、口をパクパクと動かして、何かを答えた。

俺には何を言っているのかさっぱりだったが、朱乃さんが教えてくれた。

 

「『良いんだよ。僕たちの事を忘れても、君が幸せに生きても。過去に縋り続ける必要なんて無い。過去に縛られ続ける必要なんて無い。君は他でもない、君なんだから』…と、言っていますわ」

 

突然、微かに歌声が聞こえ始める。

この歌は……アーシアが歌っていた、聖歌だ。でも不思議と、ダメージを受けない。

それどころか……心が、安らぐ?

 

部長たちが困惑する中、木場の手に握られていた結晶が、眩い光を放つ。

視界が白く塗りつぶされるが、しかしダメージは無い。

柔らかい、聖なる光だ。悪魔になりたての俺でもわかる。

 

『さぁ、手を伸ばして』

『恐れず、聖剣を受け入れるんだ』

『僕たちの力があれば』

『私達と力を合わせれば』

『君はきっと、聖剣だって使いこなせる』

「あぁ、そうだ――。僕たちは、例え直接会えなくったって、離れ離れだとしたって、その心だけは――」

『『「 いつだって ひとつだ 」』』

 

何も見えない光の中。

確かに聞こえたのは、木場と、その仲間たちの声。

そして俺は見た。見えないはずなのに、この目で見た。

 

木場が、一本の剣をつかみ取る瞬間を。

 

神器(セイクリッド・ギア)ってのは、所有者の心によって変化する。心の変化が大きければ大きいほど、神器は相応の反応を示すのさ。そして、今木場祐斗に起きた変化は、()()()()を引き起こすに足るモノだった。神器の力を、世界の理に反した禁じられし忌々しきモノへと変える、そんな変化をな』

「…まさか」

『あぁ、そのまさかだ』

 

サタンが愉快そうに言う。

それと同時に光が収束していき、木場の手の中へと消えていった。

 

その手には、一振りの剣。

今まで通りの魔剣……それと同時に感じる、光の力。

 

――そうか。アレが木場の…!

 

禁手(バランス・ブレイカー)。『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』……聖剣の力と魔剣の力。二つを合わせたのが、今の僕の――いや、()()()の力だ!!」

 

ソード・オブ・ビトレイヤー。

そう呼ばれた剣は、聖と魔の入り混じったオーラを、まるで心臓が鼓動するかのようなリズムで放つのだった。

 

「――ちぃっ、なんだなんだよなんですかぁ!?そのそーどおぶなんちゃらってのはよォおおおおっ!!くっそ、俺っち戦場でドラマチックな真似する奴や歌を歌うヤツが大っ嫌い。その上聖歌なんて聞いた日にゃ怒りで震えて涙が止まりません!っつー訳でバルパーのじっちゃん!聖剣、もう完成してるっしょ。俺っちに使わせてプリーズ」

「…あぁ、構わんさ。私の愛した聖剣が、あのようなイレギュラーに負ける事はあり得ないと、示してくれ」

 

いつの間にやら一本の剣になっていたエクスカリバーを、フリードが手に取る。

……おかしいな、本当だったらあの剣相手にするなんて…つって俺も加勢しちまうとこだけど、今は全くそんな心配が起きねぇ。

寧ろこれは邪魔しちゃだめだと思ってる。ここは、黙って見てるべきだって。

 

「やっちまえ、木場。お前と、お前の仲間ならできるさ。きっとな」

「…ファイト、です」

「祐斗君なら、必ず!」

「そうよ祐斗!その力、存分に見せつけてやりなさい!」

 

輪廻達が、木場に声援を送る。

負けじと俺も何か言おうかと思うが、ここは敢えて何も言わない。

……俺は、終わった後に真っ先に声をかけるとするさ。

 

木場は一度目を閉じ、そして聖魔剣を構える。

相手は聖剣。四本が一本になったってのは恐ろしい話だが、だけどきっと大丈夫。

木場と仲間たちの剣は、決して折れない。

 

「――改めて名乗ろう。僕はリアス・グレモリー様の『騎士(ナイト)』、木場祐斗。この聖魔剣で、その聖剣――破壊する(越えさせてもらう)!!」

「しゃらくせぇえええっ!!」

 

聖剣と龍殺しを持ったフリードが、木場に先手を打つ。

しかし奴の攻撃はするりとかわされ、お返しとばかりに木場が攻撃。

その動きは、部長の婚約破棄をかけたレーティングゲームに臨む際の修行で、輪廻からたたき込まれていた動きだった。

 

……完全に吹っ切れた、ってワケね。

 

剣戟が続く。

続くと言っても殆ど一方的だ。フリードは光の力を上手く利用しているみたいだけど、それよりも木場の方が圧倒的に上手だ。

そりゃそうだよな。ただの道具として聖剣を使うフリードが、仲間たちとの絆によって手にした聖魔剣に勝てるわけねぇ。

 

その状況を見たバルパーが、半ば半狂乱になりつつ狩刈へと声をかける。

 

「か、狩刈!お前も加勢し、あの聖魔剣使いを殺せ!!」

「ほいほい、っと。ああいうのは見てるだけが一番なんだけどねぇ……ま、悪いなフリード。躍起になってるとこ悪ぃが俺が全部持ってかせてもらう――っと?」

「邪魔立てはさせないさ。今の彼の敵は、聖剣ただ一つ…だからね」

 

金棒を構え、攻撃を仕掛けようとした狩刈の前に、ゼノヴィアが立ちふさがる。

だが無茶だ。アイツは聖剣を奪われてるはず。

勿論狩刈もソレをわかっているため、小馬鹿にするように問いかける。

 

「お前が?俺の相手を?聖剣がなけりゃ、力を持たねぇただのキリシタンだろ。言っておくが、鬼は祈りを捧げたって苦しまねぇし、その上俺は頸を切るだけじゃ死なねぇぞ?」

「日本の魑魅魍魎には生憎と詳しくないが、まぁ私とて愚直に前に飛び出した訳じゃない。――我が声に応えよ、()()()()()()

 

ゼノヴィアの声に呼応する様に、アイツが手を伸ばした先の空間に穴が開く。

そしてそこから出てくるのは、底冷えするような強い光のオーラを纏った剣。

 

…デュランダル?ゲームかなんかで聞いたことあるような…?

 

『はははっ、あの女、まさか天然の聖剣使いか。しかもよりによってデュランダルとはな。あの暴れ馬を御せる程の実力があるとは思えないが…はてさて、どう扱う?』

「面白がっているようだが、生憎と使いこなせているわけでも何でもない。私はただ、力任せに振るう事しかできないさ。まだまだ修行中の身なのでね、そこはご愛敬、ってやつさ。――だけど、鬼一匹と対峙するくらいなら、力不足に悩む事も無いはずだ」

「……ははっ、そこまで実力差がわかってねぇと笑えるぜ。俺は鬼の王。そんでもって『夢幻人』の幹部。流石に意地っつーか、見栄っつーのがあるからさぁ……ま、久しぶりに生娘嬲ってお楽しみと行こうかァ!!」

 

狩刈の金棒とゼノヴィアのデュランダルが交差する。

それだけで物凄い暴風が俺達を襲った。

 

一度衝突しただけで、余波がこんだけ来んのかよ!恐ろしいぜ、どっちも!

 

「ははっ、僕の聖魔剣よりも強い光のオーラ、か。だけど、こっちは聖なる力だけがウリじゃない。魔の力と聖の力が入り混じり、相乗効果で最強になる。――さ、そろそろ終わりにしようか。はぐれ神父フリード」

「だぁああああ!!さっきからムカつくんですよ、テメェはよぉおおっ!!ちょこまか避けてチビチビ攻撃してきやがってさぁあああっ!!」

「安心すると良い。もう君が怒りに苦しむ事は無いからね。――黒く輝け、聖魔剣よ!!」

 

刀身から光と闇のオーラが噴き出す。

二つの相反するはずのオーラは、螺旋を描くようにまじりあい、そして一つになる。

 

凄い力を感じる!あれなら、きっとフリードの持つ聖剣だって!

 

木場が剣を振り下ろし、フリードは槍を投げ捨て、エクスカリバーで応戦する。

そして刀身が衝突し、甲高い金属音を立て―――。

 

エクスカリバーの刀身が、ちょうど半分の部分で折れ、吹き飛ばされた。

木場と仲間たちの剣が、エクスカリバーを超えたのだ。

 

「く、そ、がぁあああああっ!!なんっでだよおかしいだろがよぉっ!なんで俺のエクスカリバーが、最強の聖剣が、折れてんだよぉおおおあああああっ!!」

「所詮はかつての大戦で本来の力を失った剣。僕たちの想いを砕くには、まるで力不足だっただけだ。――さぁ、君も……お休み」

 

優しく告げて、フリードを袈裟斬りにする。

鮮血が舞い、アイツは白目を剥いて倒れた。

 

後には、残心する無傷の木場。

完全勝利とは、まさにこのことだろう。

 

「ば、馬鹿なっ、馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ!!四本の力を一つに統合した、エクスカリバーだぞ!?それが、あんな呆気なく折られて良いはずがない…!!」

「次はお前だ、バルパー。もう復讐心も、憎悪に駆られる事も無いが……それでも、お前が生きていればこの先も必ず、僕たちのような被害者が生まれるはずだ。だから、ここで斬る」

「被害者?たわけた事を抜かすな。私の研究の実験体となれることが、一体どれほど栄誉ある事かわからんか!聖剣だぞ。神が、星が、世界が!人間に与えた形ある奇跡を、扱えるようにする実験だぞ!多少の犠牲程度で喚くとは、狂っているのはそちらだろう!!――そもそもなんだというのだ。聖魔剣だと?聖と魔のバランスが乱れている事は既にコカビエルから伝えられてはいたが、まさかこのような事象に繋がるとは……ふん、()()()()()()()()()()()()は、つくづく私の邪魔ばかりする」

「な、に?」

 

さらっと口にされた言葉に、俺達は耳を疑った。

 

魔王が死んだ。この話は部長から聞かされていた。

四大魔王が、かつての戦争で皆死に、その後を継いだのがサーゼクス様達だと。

 

けど、神?比喩でも何でもなく、きっと…神様の、事だよな?

それじゃあつまり、アーシアや…イリナや、ゼノヴィアが信じてきたモノは?

木場や、その仲間たちが信じてきたモノは?

 

「ふむ。その様子だと知らなかったようだな。――コカビエル」

「あぁ。構うまいよ。別に話した所でコイツ等が死ぬことに変わりはない。この国の言葉を使うなら、冥途の土産、と言ったところか?くくっ、そうさ。先の大戦で、三大勢力はどれも痛手を負った。俺達堕天使は最大のウリだった数を失い、悪魔は四大魔王を、そして天使は神を失った。だから今までは、この三竦みじゃ睨み合いが続いていたわけだが……俺は、それが耐え切れなかった。なぜ勝敗も決まっていない戦争を、こんな形で終わらせようとする?おかしいだろう。この戦い、あのまま戦っていれば俺達の勝ちだった。だというのにアザゼルですら戦争はもうしないと宣う始末だ!だから今日、俺は戦争の火種を手に入れる。悪魔や天使を、再び闘争の渦へと巻きこんでやるのさ!――内部分裂の激しい悪魔と、神を失い数を増やすことのできないばかりか、その力の大半が世界中に散ってしまった天使を滅ぼし、俺達堕天使が頂点へ至る!!」

 

両手を広げ高笑いをしながら、コカビエルは言い放つ。

 

……アイツ、本当にただ戦争をするために…そのためだけに、この町の皆を殺すとか言ってんのか…!?

 

怒りで振るえそうになるが、暴走しかけた俺の思考を、アーシア達のすすり泣く声が冷静にしてくれた。

……そうだ。アイツ等にとっては、信じていた神がいないってのは……

 

「主が、主が既に、死去していた……だと?なら、私は、私達は今まで、何を信じて…?」

「うそ、嘘よそんなの!我らが主が、死んでいる、だなんて……!!」

 

ゼノヴィアが俯き、イリナが嘆く。

その姿をコカビエルは一瞥し、狩刈へと声をかけた。

 

「そこのデュランダル使いは放っておいて良い。心の柱を失った奴は、置物にしかならん」

「へいへい……ったく、ようやく温まってきたってのによー」

「まぁそういうな。――さてバルパー。術式の方は後どれくらいだ?」

「どれだけ遅くとも、後十分もすれば発動する。この町は、一瞬にして地図から消えるだろうさ」

「そうか……なら、お前らを甚振って手慰みとしようか!」

 

コカビエルが手を横薙ぎに振るう。

その瞬間、俺達を凄まじい衝撃波が襲った!

光の力が含まれているのか、全身が熱波に襲われているかのように痛い!

 

わかっちゃいたけど、やっぱりコカビエルは強い。この一撃だけで、力の差がわかっちまうほどに。

でも負ける訳にはいかねぇ。この町は消させねぇし、戦争だって起こさせねぇ。

 

――ってか、イリナとゼノヴィアは!?

あの一撃を一番近くで無防備のまま受けるなんて、流石にまずいんじゃ……

 

「ほう。お前が動いたか。()()()()

「……イリナ、ゼノヴィア。それにアーシア」

 

コカビエルに名前を呼ばれるも、輪廻は無視してイリナ達へ声をかける。

その手には大きな黒い布が握られている。もしかして、あれも神器か?

というか、なんでアイツの名前をコカビエルが知って……

 

「神がいなくて、辛い気持ちはわかる。俺とて信じるモノが、己の精神的支柱が最初から無かったとしたら、そんな風にもなるだろうからな。――けど、その上で言わせてもらう。何を嘆く必要がある?」

「……輪廻、さん?何を言って」

「嘆くに決まっているでしょう!?私たちのずっと信じてきたモノが、敬愛してきた主が、死んでいたのよ!?」

「信じてきたものを失ったというのに、嘆かないはずがないだろう」

「だろうな。けどお前らは少し間違ってるぞ?――お前たちは、今まで神の何を信じてきた?」

 

コカビエルが光の槍を投擲する。

ソレを黒い布で受け流し、まるで闘牛士のように堂々と立つ。

その間も、ずっとアーシア達に語り掛けていた。

 

「その存在か?確かにそうかもな。だけどお前らが信じてきたのは、神の()()だろう。聖書とはそういうものだし、信仰ってのはそういうものだ。だってお前ら、神に会ったことがあるから信じているわけじゃないだろう?結局、神が居ようがいまいが、信じるべき()()ってのは、こうして残ってるじゃねぇか」

「…それ、は」

「なら……なら一体、誰が私達を救ってくれる!?迷える私達に、一体誰が愛を注いでくれる!?」

 

ゼノヴィアが激昂する。

それでも、輪廻は飄々とした態度のままだ。

 

……コカビエルの攻撃をずっと受け流し続けてるってのに。

もうアイツ一人でいいんじゃないかな。

 

魂の叫び、とすら思えるほど感情的な問いかけに、しかし輪廻はあっけらかんと答える。

そんなの簡単だ、と言わんばかりに、さらっと。

 

「そんなの、俺がやってやるよ。助けて欲しいなら助けてやるし、望む事があるなら、できる範囲で力を貸す」

「んなっ……そ、そんな無責任な言葉を、信じろ、と?」

「勿論、こうして鼓舞しちまった以上、責任はとるさ。微力かもしれないが、俺の力で良けりゃいくらでも貸してやるよ。―――ドライグ」

『おう相棒。ははっ、久しぶりだな、こうして人前で見せるのは。復帰戦が聖書に記された堕天使ってのは、なるほど俺達には丁度いいな』

 

輪廻の右手から声が聞える。

どういう原理で聞こえているのかはわからないが、とにかく威圧感のあるというか、偉大さを感じる声だ。

 

そしてその声と名前に、コカビエル達が反応を見せる。

 

「まさか、正体を明かすつもりなのか?今まで隠してきたらしいが」

「あぁ、そのまさかだぜコカビエル。それと『夢幻人』……お前らの宿敵の力、龍帝の力を見せてやる」

 

輪廻が右の拳を突き出す。

それと同時に、凄まじいオーラが噴き出した。

まるで、天に昇って征く龍のようなオーラだ。

 

突き出された右手に、赤い籠手のようなモノが装備される。

あれも輪廻の神器か!

 

手の甲部分の宝玉が点滅し、さらにオーラが増幅。

 

「さぁ、行こうぜドライグ!禁手化(バランス・ブレイク)ッ!!」

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』

 

会長たちの張っている結界を破壊する程の力が爆発し、輪廻が赤い光に包まれる。

現れたのは、赤い龍を模した全身鎧。

強大な『力』の塊が、そこにあった。

 

「改めて名乗ろうか。――俺は立神輪廻。今代の赤龍帝にして、無限の龍と並ぶ者だ!!」

 

ずっと謎だった今代の赤龍帝が、確かにそこに立っていた。




夢幻を冠する龍、グレードレッドを崇拝する組織、夢幻人(イマジネウス)
彼等が命を狙い続けていた、赤龍帝がついにその姿を仲間たちの前に晒す。
その時親友は、仲間は、彼を愛する者は、一体何を思うのか。

果たして、コカビエルや狩刈はかませにならずに済むのだろうか!?




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