ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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男の娘と、イッセーの強化フラグが出てきます


邪眼と魔法。そしてブザー

公開授業の翌日、俺達は旧校舎の一室に集まっていた。

そこはまるで事件現場のように警告色のテープで厳重に封印されており、何重にも重ね掛けされた魔法を感じた。

 

「ここに、もう一人の僧侶が?」

「えぇ。強力な神器を持つ、ヴァンパイア……それがここに封印されている、ギャスパーよ。一応、この封印は夜には解除されて外を出歩けるようになるけれど……あの子自身がソレを拒んで、部屋から一歩も出ないのが現状。私としてもそっとしておいた方が良いと思って放置していたけれど……今日からは、そうも言ってられないのよね」

「引きこもりってヤツなんですか……」

 

俺達が話している間に朱乃さんらが結界を解除し、そして閉ざされていたドアが開く。

そしてそれと同時に響く絶叫。耳をつんざく甲高い声に、俺達は大きく肩を震わせた。

 

「な、なんだ今の声」

「今のがギャスパーの声よ。あの子、極度の人見知りでもあるから…こうして自分の部屋が開けられたことに、驚いちゃったのかしらね。――じゃあ、呼んでくるから」

 

そう言って部長と朱乃さんが部屋へと入っていく。

奥から聞こえる声は、やっぱりとってもうるさかった。

 

「えっ、えっ、何事なんです!?封印が解けるなんて、一体全体何が!?」

「貴方の封印を解除しても良いと、上の人達から許可が下りたの。だからあなたも、今日から昼夜気にせず外に出ていいのよ」

「ひっ、い、嫌ですぅううううううッ!!お外、いやぁああああああッ!!」

「あらあら、そんなに嫌がらないで?ほら、私達も一緒よ?」

「そ、それでもお外は怖いですぅうううっ!人に会いたくないっ、僕の聖域はここなんですぅううううっ!」

 

悪魔が聖域なんて言葉を使うのか(困惑)

 

しかしまぁ、かなり外に出る事を嫌がっているな。

アレは無理矢理出さない方が良いとすら思えるが、それでもやっぱり出してあげたいのが主心なのだろうか。

 

二大お姉さまに呼ばれて出てこないとは何事か、とイッセーが部屋に入っていくのについていき、部屋の壁に張り付くようにして泣きわめいている女子生徒の制服を着たギャスパーを初めて視界に映す。

 

うーん。やっぱ見た目は女だよな。中性的な顔つきもあって。

だけど感じる気配も、骨格の感じも男だ。

イッセーも気配が男だという事はわかったのか、物凄く不思議そうな顔をしている。

 

「え、これ、金髪美少……女?でも気配は男?え、うぅん?」

「ひぃっ!?し、知らない人が続々とぉぉぉ……!!」

「イッセー。確かに見た目は女の子だけど、この子は男よ」

 

首をフクロウのごとく傾げるイッセーに、部長が苦笑いして真実を伝える。

ソレを聞いて数秒間硬直した後、今度はイッセーが大声を出す。

 

「え、えぇえええええええええっ!!お、男!?でも、なんで女子生徒の服を着て!?」

「ひ、ひぃいいいっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃいいい!!」

「この子、女装趣味があるのよ」

 

朱乃さんが補足し、イッセーは膝から崩れ落ちる。

なんとなくわかってはいた物の、それでもショックだったのだろう。

 

「先輩は、驚かないんですね」

「気配も骨格も男のソレだったからな。今時じゃ女装趣味も一般的になりつつあるくらいだし、俺は全然いいと思うけど」

「いや、断じて良くないね!!コイツ、俺の一瞬夢見た金髪外国人美女コンビが『僧侶』という光景を、完膚なきまでに叩き壊しやがって!!」

「そ、そんな事言われてもぉ…!」

「人の夢と書いて、儚い」

 

おぉ、上手い。

 

「と、ところでこちらの方々は…?」

「あ、私はアーシア・アルジェントって言います。同じ『僧侶(ビショップ)』なので、よろしくです!」

「私はゼノヴィア。『騎士(ナイト)』の駒を授かっている。アーシアもだが、元教会の人間なので、悪魔としての生き方は未だ勉強中だ。よろしく頼む」

「俺は兵藤一誠。『兵士(ポーン)』で、部長のその、か、彼氏なんぞをな。やらせてもらってる。うん。んでー……ま、さっきは夢が云々で怒鳴っちまったけど、あんま気にしてないしよろしくな?気軽にイッセーで良いぜ」

「い、いきなり沢山増えてますぅぅううう……よ、よろしくですぅ……って、じゃあそちらの方は…?」

「俺は立神輪廻。この中で唯一の人間だけど、一応オカルト研究部に所属させてもらってる。ま、よろしくな」

「君のどこが普通の人間なんだい……」

「え、違うんですか?」

「彼は今代の赤龍帝。あのウロボロス・ドラゴンを倒したと言われている、現在世界最強の存在ですわ」

「あぁ、赤龍帝。世界最強の―――って、えぇええええええええええッ!!!?」

 

少し壁から離れていた物の、また壁に張り付いてしまう。

後朱乃さん。俺別にオーフィス倒した訳じゃないですからね。ギリギリ引き分けました。残念ながら。

 

「確かに赤龍帝ではあるけど、そんな大仰なもんでもないさ。――で、話は変わるけど、なんでそんなに外に出たがらないんだ?吸血鬼だから陽の光に当たりたくない、って話だったら、一応今は曇りだし問題ないと思うけど」

「そ、そういう問題じゃ無いんですぅうううううっ!!お外に出るのも、人に会うのも、全部嫌なんですぅうううっ!!」

「だーっ、もう!いつまでもそうやって怖がってるだけじゃ何にも変わらねぇんだって!よし、取り敢えず外出るぞ。話はそこで聞いてやっから」

「や、やめてぇええええええッ!!」

 

痺れを切らしたイッセーがギャスパーの手を掴んだ瞬間、景色が一瞬歪み、世界が色を失った。

時が止まった世界だ。俺は自分の魔力が()()()()()()()()となってるから、世界そのものが止められようが影響を受けないが、他のみんなはものの見事に固まってしまっている。

 

「これがギャスパーの力、か。目が光っている所を見るに、身体が直接神器になってるタイプか?」

「え、えぇえええええっ!!なんで動けるんですかぁあああああっ!?」

「なんでってそりゃ、俺の魔力は時間そのものっていうか…俺も一応時間操作ができてな。その方法として常に本来の時間の流れと同時に俺の体内だけにある『俺が自由に操れる時間法則』を無理矢理世界に適応させるって形をとってるんだけど……世界の時間に誰かが干渉しても、俺の時間法則だけは乱れずにそのまま進み続けるから、こうして俺だけ止まらずにいられるって事だと思うぞ」

「わ、わけわからないですぅぅ……」

 

頭を抱えてうずくまり、先程までのギャグチックな号泣から一転して、ポロポロと涙を溢し始めるギャスパー。

大方、自分を外へ行こうと誘ってくれた皆の動きを止めて、裏切るような真似をしたと悲しんでいるんだろう。

 

「なぁ、ギャスパー。外は怖いか?」

「え?……は、はい。怖いです。人が、沢山いて」

「なんで人が怖いんだ?」

「それは……僕の、この力を、きっと悪く思うから」

「どうして悪く思われるんだ?」

「あ、貴方だって、突然自分の動きが完全に止められて、その間に好き勝手動ける奴が居て…ってなったら、その人の事を気味悪がるでしょう?…だから、止まった時の中を動くことのできる僕の神器は、会う人全員に嫌われる」

「確かに、そうかもな。自分の知らない所で、自分に何かされているかもしれないって思ったら…誰もが良い感情を持てる、とは限らないな。――つまり、それさえ何とかなればお前は外に出られるんだな?」

「へ?え、いやいや。確かに僕の最大の悩みの種は、それですけど……無理ですよ、今ですらこの力を制御しきれていないのに、日に日に強くなっているんです。勝手に。ソレをずっと制御できるようにならない限り、僕が誰かを意図せず止めて不快な気持ちにさせてしまうのは、どうしようも……」

「それを俺が手伝えば良いだろ」

 

俺の言葉に、ギャスパーはポカンと口を開けてこちらを見つめてくる。

イッセー達はまだ、動く様子が無い。

 

「俺は赤龍帝だし、何より同じく時間を操る力を持ってる。俺の場合はお前よりも年季が入ってるし、神器と魔法とじゃまた違うだろうけど、アドバイスとか特訓の手伝いとかなら全然できる。もしお前が誰かに悪意を向けられて、傷つけられるようなことがあれば、俺が守ってやる。――それじゃ、ダメか?」

「え、いや、でも……その……なんで、なんでそんなに僕に優しくしてくれるんですか?今日、初めて会っただけなのに」

「んー?大した理由は無いけど、強いて言うなら()()()()()、かな。ほら、お前だって部長の眷属で、一応これからは毎日俺達に顔を見せる事になってるわけでさ。もう自己紹介も挨拶も済んだし、なんなら俺もお前も互いの力を披露したわけで。これって、友達じゃねぇの?」

「とも、だち…………僕と、僕なんかと友達で、良いんですか?」

「良いも悪いもねーよ。ってか友達に良し悪しつけ始めたら俺の親友三人は全員変態の極悪人だぞ?―――あんま一人で抱え込むなよ。これからは、止まってようが止まっていまいが同じ時間を過ごせる俺が、力になってやるからさ」

「う、あ……うわぁああああああああああん!!」

 

大声で泣き始めるギャスパーだが、なんだかその涙は先程までの物とは違うような気がした。

今までため込んでいた物を、全部吐き出すような、そんな感じ。

 

俺はそんなギャスパーに近づき、そっと頭を撫でてやった。

なんでそうしようと思ったのかはよくわからないが、自然と。

 

「…あ、れ?これは…」

「あらあら……一体、何があったのかしらね」

 

停止状態から解除されたイッセー達が、号泣するギャスパーとそれをあやす俺を見て、不思議そうな声を発するのだった。

 

※―――

 

停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』。それがギャスパーの神器。

ケルト神話の邪神、バロールに由来するその力は、視界内の物体の時を停止させるというもの。

理論上は神や魔王すらも止める事ができるらしいし、何なら世界そのものを完全に停止させることだってできるらしいが……今はまだ、所有者のギャスパーの意志で発動する事すら難しいとのこと。

その癖力の規模は日に日に上昇しており、このままだと勝手に禁手に至る可能性だってあると部長が言っていた。

 

禁手、かぁ。俺もいつかは使えるようになりたいけど、俺の場合は日課の筋トレなんかじゃ全然たどり着けそうもないんだよな。

木場や輪廻にコツを聞いてみても、力さえ一定以上あれば、心境に大きな変化が生じればすぐにでも禁手になるとしか教えてもらえなかったし。

というかそれくらいなんだろうな。禁手になる方法って。

 

ちくしょー。やっぱ力かー。

 

「い、いやぁああああああっ!!聖剣怖いっ、にんにく怖いっ、十字架も聖水も、こっわぁあああああああいっ!!」

「どうしたギャスパー。そんな軟弱なようでは、吸血鬼として情けないぞ」

「お、追ってこないでぇええええええっ!!」

 

吸血鬼殺し四点セットを手にしたゼノヴィアが、真顔でギャスパーを追いかけまわす。

「彼の面倒を見るのを一度任せてくれ」と意気込んでいたが、まさかこんなスパルタ式とは思わなかった。

 

小猫ちゃんも「ギャー君はもっとニンニクを食べるべき」とか言ってガーリックトーストを山ほど差し出してたしな。

 

……あぁ、そうそう。ギャスパーは小猫ちゃんと同じ一年で、オカ研メンバーの中で唯一いじれるからなのか、中々サディスティックなコトをしている。

この間は炎天下の外に放り投げてたな。アイツはデイウォーカーって言って、日光を浴びても灰にならないらしい吸血鬼らしいけど、それでも陽の光は嫌いだって言ってたのに。

 

「おーいゼノヴィア。そろそろやめてやれ、本気で不貞腐れるぞ」

「あっ、輪廻せんぱーいっ!た、助けて~!!」

「むっ、輪廻の背に隠れるのは卑怯だぞ」

 

最初にあった時から、やけにギャスパーは輪廻に懐いているように見える。

理由を聞くと、同じ力を持つ者同士で信用してくれてるんだと言われた。

 

…そうだったな、アイツ。時間操作とか平然とやるもんな。

プールの清掃をさっさと終わらせたいからって言って時間を大幅に巻き戻すような男だもんな。

 

輪廻の背中に隠れて震えるギャスパーに、ゼノヴィアが唇を尖らせデュランダルをしまう。

仲間の剣なんだけど、やっぱり近くにいると光の力のせいかヒリヒリするな。アーシアの十字架もだけど。

 

「うぅ、怖かったですぅぅ…」

「よしよーし、もう大丈夫だからなー……あのなゼノヴィア。その『健全な精神は健全な肉体に宿る』式教育もまぁ、一概に悪いとは言わんが。人にあった教え方というか、鍛え方というのをちゃんと考えてやれ」

「むぅ……私はコレが一番手っ取り早いと思うが」

「自分ができる事が誰もができる事じゃねーんだよ。逆も然りだろ?ギャスパーと違ってお前は身も心もある程度強いが、その代わりお前じゃ時間を止められない」

「それは、そうだが……」

「このままじゃ、子供を持つのはまだまだ先だな。危なっかしすぎて育児させるのが不安だ」

「なっ、それとこれとは別問題だろう!」

「同じだバカ」

 

厳しいゼノヴィアに、甘やかす輪廻。保護者かな?

 

遠巻きにその様子を眺めている俺達に、匙が声をかけてくる。

 

「よっ、最近騒がしいけど、どうした?」

「んー。新入部員というか、元々いたけど最近になって顔を出したというか。――ほら、部長が前々から連れてはいたけど、実際には封印されてた『僧侶』」

「あー。会長が言ってたな。どれどれ……おぉっ、金髪美女!またしても立神にくっついてるが、アレはアレで良いじゃねぇか」

「……男なんだぜ、アイツ」

 

俺の言葉に、匙が「ぱーどぅん?」と聞き返してくる。

うんうん。わかるぜその気持ち。俺もマジで裏切られた気になったもん。

 

「嘘だろ詐欺だぜあんなの……てっきりグレモリー眷属の『僧侶』は金髪美女二人という夢の編成かと思ったのに」

「わかるぜ匙。俺も最初はそう思った。――けど実際出てきたのは、女装趣味の引きこもり男子……現実ってなんでこんなに厳しいんだろうな」

「そうだよなー…」

 

遠い目をして輪廻とギャスパーを眺める。

俺達と接するときは少し距離感を感じるアイツだが、輪廻相手には結構自然体に見えた。

やっぱ、同じ力を持つってだけで違うのかね。悩みもわかってくれるだろうし。

 

「へぇ、ここが悪魔の学校、ね。神器持ちに聖剣使いが揃い踏みとはすげぇじゃねぇか」

「ッ!?あ、アンタ、いつの間に背後に…!!」

 

気づけなかった。気配には人一倍敏感な俺が、背後に立たれたことに気づけなかった。

 

浴衣姿の男は、あくまで自然体のままそこに立っている。

いきなり俺が離れ、警戒心をあらわにしても気にも留めていない。

 

というか、悪魔、神器、聖剣……どれも普通の人間が知っているような単語じゃない。

三大勢力関係か、それとも別の神話体系か……もしくは神器持ちの人間か。

とにかく、警戒しないとやばそうだ。

 

アーシアもゼノヴィアもそれぞれの武器を構え、匙も咄嗟に神器を出現させている。

輪廻だけは突っ立ったままだが、その背後にいるギャスパーを庇うようにしている。

 

「貴方は、一体誰ですか…?」

「ん?俺か?俺はアザゼルっつーんだが……流石に知ってるよな。これでも堕天使の中でも有名どころだし」

「アザゼルだと…!?」

 

堕天使の総督にして、生粋のコレクター。

サーゼクス様がそう言っていた。神器を好み、所有者を捕まえては何らかの研究をしていると。

まさか、俺たちの神器狙いでここに!?

 

さらに警戒を強める俺達に、しかしアザゼルは困ったように笑うだけ。

 

「おいおい。そんなビビるなよ、下級悪魔くん達。今回用があるのは、聖魔剣の使い手だからな」

「木場の聖魔剣狙いか…!!クソッ、『悪魔の連撃(コンボ・オブ・デーモン)』!!」

「おぉ、サタンの神器!今まで未確認だった、原初の魔王の力が込められた神器か。そいつも興味深いが……コイツの場合だと、腕ごと持ってくことになっちまうしなぁ。それはお前が許さないだろ?赤龍帝」

「やるってんなら止めませんけど、その場合は三大勢力が二大勢力になる事をお忘れなく」

「だー、わかった。わかったからその馬鹿みてぇな殺気を止めろ。俺でも体の芯から震えるってどうかしてんだろその威圧感………ったく。せっかく()()()()()()()()っつーのに、それの立役者であるお前が火種持ち込んでどーすんだよ」

「だから、貴方と戦うなら堕天使そのものを根絶やしにするって言ってるでしょう。そうすれば恨みを持つ者も、次の争いを望む者もいなくなる」

「……それを本気でやるのがテメェなんだよなー……けっ、しけちまったぜ。やめだ。帰る」

 

お、おぉ?なんかよくわかんねぇけど、帰るのか?

踵を返したアザゼルに、なんだか気が抜ける。

しかしヤツは途中で立ち止まり、ギャスパーを見てこう言った。

 

「そこの『停止世界の邪眼』の吸血鬼。その力、制御できてねぇんだろ?それなら、そこの『黒い龍脈』使いの力を借りると良い。余剰分の力を抜いてもらいながら練習すりゃ、コツもつかめるようになるはずだ」

 

なんてことはないただのアドバイスに、少々面食らう。

だってアイツは堕天使のトップ。悪魔の俺たちとは敵同士……のはずだ。

 

いや、でもさっき平和的に解決したとかなんとか言ってたような。

それの立役者が輪廻だ、とも言ってたけど……一体どういうことだ?

 

「お、おい!待てよ!」

「あん?なんだよ、さっきまでは出て行けムードだった癖に。なんだ、サタンの神器見せてくれるつもりにでもなったか?」

「いや、そうじゃねぇけど……い、意味深なんだよ!さっきから!なんか輪廻と知り合いみたいだし、俺たちと敵対するムードでもねぇし、しかも、平和的に解決したって……一体全体どういう意味なんだよ!?」

「ん?なんだ、輪廻から聞いてねぇのか?三大勢力の睨み合いが終わったってこと。つまり、和平が結ばれたって事をよ」

 

和平。和平ってのはつまり、争いはもうしませんって事か?

……いやいやいきなりそんな、え?三大勢力の溝ってすっごく深かったって話じゃねぇの!?

 

目を白黒させる俺たちに、アザゼルは「その様子だと聞いてねぇらしいな」と呟いてから説明する。

 

「コカビエルと戦ったんだから聞いただろうが、俺たちは元々戦争をもう一度起こすつもりなんてなかった。それは魔王を失った悪魔も、神を失った天使も同じだった」

「え、か、神様を、失った…?」

「ギャスパーは知らなかったっけか。聖書の神も、件の戦いの最中死んでたんだよ」

「それでも互いの内情を知っていようと、俺たちは戦争をやめにしようなんて言い出せなかった。まぁ、コカビエルがいい例だな。戦争賛成派は少なからずいたし、悪魔の方だって旧魔王だの新魔王だので揉めてやがる。そんな折に『自分には戦う力なんてありません』宣言なんざしたら、格好の的になっちまう。少なくとも俺はそう思ってた。……だから、本当ならもうじき行われる会合で言い出すつもりだったんだが……そこの馬鹿が良い方便を寄越してきてな。おかげで三大勢力は()()()()状態になっちまった」

「輪廻が…?」

 

ゼノヴィアが首を傾げる。

 

「そうさ。噂が本当なら三大勢力全部が束になっても敵わねぇような奴が、和平に反対するならばその勢力を消すって脅してきた……って方便だ。実際は俺たちの考えをこいつが聞いて回って伝えて、一先ず平和だけは確保することに決定したって話なんだがな。ま、強いやつに脅されてっつったら下の連中も不満を言い出しようがねぇし、最悪矛先が輪廻に向かってもこいつに敵うような奴はそうそういねぇ。後は会合で正式な書類でもなんでも作って、互いの近況報告なりこれからの関わり方なりを決めるだけってわけだな」

「そ、そんな話になってたのか……ってかなんで黙ってたんだよ!」

「サーゼクスに口止めされてたからな。まぁ、サプライズにしておきたい程度だったし、止める必要も無いと思ったからアザゼルに説明させたってだけだ。はっきり言って俺にはどっちでも良かったからな」

「…そっすか」

 

なんというか、知らない間にでかいことがあってさらっと終わってるってのは、結構疲れるんだな。

今度からは定期的に何か無かったかって聞いた方が良いかもしれない。

 

あと魔王様呼び捨てにしてんのかこいつ。殺されたり……ないか。

 

「でも、会合の時に意見の食い違いが……とかって、ならないんでしょうか?」

「意見交換だの近況報告だのはあくまで飾りさ。会合つっても形だけだしな。どちらかと云えば、それぞれのトップ同士で決めた事を周りに伝えるためにやるし、それに……まぁ、これはそん時にでも話しゃいいか。とにかく、俺たちが対立することはもうねぇよ。そんな心配しなくてもな。――所で、その十字架は一体なんだ?スピーカー……なるほど?大方それを通して発せられた言葉に聖なる力が宿るってとこか。音なら相手の強さ関係なく耳に届かせることができるし、中々強力じゃないか」

「えっ、あ、ど、どうも…?」

 

褒められて困惑するアーシアを鼻で笑い、アザゼルは今度こそ本当に去ろうとする。

しかし再び足を止め、最後に、と呟いてから俺にこう言ってきた。

 

「あぁ、そうそう。サタンのガキ。お前、随分と女の胸に執着してるじゃねぇか。リアス・グレモリーの素敵なバストだけじゃ我慢できねぇくらいにな」

「んなっ…!!なんで俺のおっぱい好きをテメェが知ってんだよ!!」

「まぁそう怒るなって。――お前が恋人相手にゃ奥手っぽいから一つ良いアドバイスをしてやる。おっぱいってのは揉むためだけにあるんじゃない。吸う楽しみだってある」

「はんっ!んなこた言われなくても」

「そして。おっぱいってのは、その先っぽを押す楽しみもあるんだ」

「―――なに?」

 

先っぽを、押す…だと?

コイツは、コイツは一体何を言ってやがるんだ?

おっぱいの、先っぽ。女の子の敏感な所。

俺達が生まれた時から吸っていて、大人になってもなお吸いたいと思えるような素敵スポット。

 

そんな大切な所を、押す?

そんな――――そんな、素敵なコトがあるというのか…!?

 

「その様子じゃ、やっぱり知らなかったみたいだな」

「し、知らないも何も、そんなスイッチ押すみたいなノリで触る訳ねぇだろ普通!ってか俺、まだ部長のおっぱいをまともに揉んだことすらねぇんだぞ!!」

「え、まだだったのかイッセー」

 

うっせーほっとけ!いざって時にヘタレる男で悪ぅございましたねぇ!!

 

「スイッチ?いや違う。女の乳首ってのは、時にブザーになるのさ。()()()()()()()()

「な、鳴る?何がだよ。一体何が鳴るって言うんだよ!!」

「いやーん……ってな」

「ッ!!?!?!??!!」

 

まるで雷に直接撃たれたかのような衝撃。

アザゼルの、敵のはずの…いや、敵だったはずの男の言葉に、俺は脳内に存在するおっぱいのワンダーランドに迷い込んでしまった。

 

例えば、部長のおっぱい。

ちょっとした動きに呼応するように揺れて震えるあの素敵な柔らかおっぱいを、ブザーのようにポチっと押してみたら――。

 

『いやぁんっ……!』

 

艶やかな声、ほんのり赤くなる頬!

そして未だ俺は知らない、コリコリとしているだろう乳首の感触!!

 

お、押したいッ!一度で良いから押してみたいッ!!

 

「い、イッセー先輩がすごくだらしない顔してますぅ…」

「あー、気にしなくていい。コイツはそういうヤツだ」

「はははっ、まさかそこまでお気に召すとはな。――ま、なんだ?主様のお乳でも、試しに一発つついてみると良い。もしかしたら―――あぁ、いや。これは言わないでおくか。それじゃあな」

 

そう言って、今度こそアザゼルは去って行った。

それでも、俺の脳内は既におっぱいブザーの事で頭が一杯なままだった。

 

「おっぱい……先っぽ……ぽちっと……いやーん…」

「…さ。イッセーは放っておいて、神器を使いこなす特訓を開始しよっか。匙、手伝ってもらっていいか?」

「え、あー…うん。いいぞ。『黒い龍脈』に神器の力だけ上手く抜き取るような器用さがあるなんて、考えてもいなかったが……できるなら、いずれ強力な神器を持つ相手と戦う時にも活かせるかもしれねぇし」

「ま、最初の内はブーステッド・ギアで補助してやるから。ギャスパーは、頑張れるよな?」

「は、はいっ!頑張ります!」




【オリジナル要素解説】
『時間操作魔法』
・輪廻が時間を操作できるのは、一度自分の中で『輪廻だけの時間法則』を生み出し、それを魔力を使って世界そのものの時間法則に無理矢理適用させているためで、その副産物として輪廻は常に『輪廻だけの時間法則』の中を生きることになっている。
そのため世界そのものの時間が止まっても巻き戻されても加速されても、輪廻だけは一切の影響を受けずにいられる。
その代わり体内時計が狂いに狂っているため、朝なのに深夜テンションだったり、夕方に夜食を食べたくなったりする。




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