ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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最初バラキエルが朱乃と朱璃を助けに行けなかったのは輪廻の通り魔的喧嘩に巻き込まれたせいという話にしてみようかと思いましたが、流石に収集つかなくなるので止めました。


神社の天使と救えない者

ギャスパーの神器指導もそれなりに軌道に乗りつつある今日この頃。

朱乃さんからの呼び出しがあり、俺とアーシア、そしてゼノヴィアの三人は、とある神社に向かっていた。

 

理由はきっと、俺が前々から頼んでおいた()()だろう。

そのことについて、直接関係のある二人も呼んできたってとこだろうか。

 

「ここが神社、か。宗教が違うから一度も足を踏み入れた事が無かったが、なるほど。これが和の風情、というヤツなのかな」

「石段に、涼し気な木々…なんだか、落ち着きますね。私達は、悪魔、ですけど」

「それは、裏で行われた取引があってこそですわ」

 

石段を登りながら談笑していた俺達に、上の方から朱乃さんの声が届く。

視線を向けると、声の聞こえた所には、巫女装束の朱乃さんが微笑みながら立っていた。

 

※―――

 

かなり前からこの神社に住んでいる、という話を聞きつつ朱乃さんと石段を登り、神社に着く。

どうやら部長が、家の無い朱乃さんを慮ってこの無人の神社を住まいとして使えるようにしてくれたらしい。

感謝の言葉しかないが、しかし家が広いせいで掃除が大変なのが困る、と笑いながら愚痴っていた。

 

「そういえば、ですけど。私達ってどうして呼ばれたんでしょうか…?」

「あぁ。輪廻が呼ばれるならともかく、私達も一緒にとなると……聖なる力が、何か関係している…とか?」

「うふふ。それはお会いしてからのお楽しみですわ。――ただ輪廻君はもう、わかってるみたいですけど」

「強い気配も感じますしね。しかし今いるって事は、待たせてるって事なんじゃ…」

「それは大丈夫ですわ。先方も、来る時間が遅い早い等を気にする事は無いとおっしゃっていましたし。――ほら、着きましたわよ」

 

長い石段登りも終わり、ついに境内に上がる。

直ぐに視界に映ったのは、無人と言えど綺麗に残っている神社と、賽銭箱の前で微笑みながら佇む、白い翼の生えた男。

 

金髪の美男子は、俺達を視認するとこちらに近づいてきて、柔らかな雰囲気のまま口を開く。

 

「初めまして。よくぞ来てくださいました。私はミカエル。天使の長を務めさせてもらっている者です」「なっ!?み、ミカエル様!?」

 

相手がミカエルだとわかったゼノヴィアとアーシアが、驚きつつも即座に跪く。

しかしその行動が悪魔的にアウトだったのか、痛ッと言って二人とも頭を抱えた。

それを見てミカエルが「自然体で構いませんよ」と言い、二人は申し訳なさそうにしつつその言葉に従った。

 

「色々と聞きたいことがあるでしょうが……話は、中で」

 

※―――

 

神社の本殿につき、ミカエルと向かいあうようにして俺達三人が座り、その横で朱乃さんが平素と変わらぬ笑みを浮かべている。

なんだかお見合い気分だ。まぁ、ミカエルはあまり異性に興味があるタイプでは無いんだけども。

 

「さて。まず最初に、お二人に謝らせていただきたい。我々の勝手な都合で、同じく主の教えに従い、主を敬愛する者を、異端として排斥してしまったことを」

「あ、頭をお上げください!私達は、微塵も気にはしていませんから」

「えぇ。そうです。私に至っては、己の意志で教会を離れた身。その上でミカエル様に頭を下げさせたとあっては、かつての同志たちに申し訳が立ちません」

 

開口一番頭を下げたミカエルに、アーシアとゼノヴィアが冷静さを装いつつも慌てる。

仮にも自分たちの宗教のトップみたいな存在だからな。そんなすごい人に頭を下げられたら、そりゃ驚きもするだろうさ。

相手は天使の長だしな。

 

「……神が死に、人々を救済するために存在した『システム』は不完全な物となってしまった。それゆえに切り捨てずにはいられない信徒が多数生まれてしまったのは、偏に主の御心を理解しきれぬ我らの至らなさが故です。だからこそ、悪魔をも癒す『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の持ち主であるアーシアを追放し、神の不在を知り、教会を離反する意志を固めたゼノヴィアを放っておくことになってしまいました」

「それでも、私達は今、幸せですから。もしかしたらこれも、主の御導き……だったのかもしれないと、私はそう思っています」

「私も、同じです。教会を離反したとて、主を思う気持ちは同じ。しかし教会に属していた時には無かった新たな喜びや発見に、日々が明るく彩られていると楽しく思っています。だから、ミカエル様が気に病む事等、一つもございません。――強いて気になるとすれば、同じく神の不在を知ってしまったイリナの事が」

「紫藤イリナならば問題ありません。彼女は神の不在を知ってもなお教会に残る意志を固めてくれた者。それを無理矢理追放するような真似も、異端の烙印を押すような真似も、絶対にしません」

 

その言葉を聞き、ゼノヴィアはほっとしたように大きく息を吐く。

なんだかんだ、気にしてたんだな。

 

その後もいくつかの言葉を交わし、二人が今の状況に対して理不尽を感じている事が無いとしったミカエルが、本題に入る。

俺との()()で、既に決まっていた事だ。

まぁ、二人への俺からのお節介みたいなモノだが、喜んでもらえると嬉しい。

 

「では、本題に入るとしましょう。今日私がここに貴方方を呼んだのは、貴方方の意志を問うためです」

「私達の、意志?」

「はい。――貴方方は、今でもなお主を想い、主の御言葉を話し、主を賛美する歌を歌ってくださる。しかし、それは悪魔である貴方方を無条件に苦しめてしまう……しかし神が死に、かくあれかしと定められていた『システム』が揺らいだ今ならば、貴方方が宗教行為を行って受ける痛みを無くすことも可能です」

「そ、それってつまり、私達が聖書を読んでも、十字を切っても、痛みを受けない…と?」

「はい。貴方方が望むならば、私は喜んでそのようにいたしましょう。それが私にできる、唯一の償いなのですから」

 

そう言って微笑むミカエルに、二人は互いの顔を一瞬見て、そして頷いた。

 

「はい。是非、お願いします」

「教会を離れたと言っても、やはり神を慕う気持ちは揺るぎありません。今まで通りの宗教行為が可能ならば、それに越したことは無い」

「お二人の意志は、確かに聞き受けました。『システム』の変更には少々時間がかかるので、明日まではまだ聖書を読む事も聖歌を歌う事も能わないと思いますが……必ず、明日からは可能となるはずです」

「ありがとうございます!……で、ですが、なぜ私達にそんな措置を?」

「私達以外にも、異端とされて去って行ってしまった者は多くいたと思いますが…」

「それは立神輪廻……今代の赤龍帝が、私にそう取引を持ち掛けてきたからですよ」

「え?」

 

二人が俺の方を見てくる。

まぁ、いい取引だったと思う。俺が渡したのは技術で、貰ったのがアーシアとゼノヴィアの信仰の自由。

渡した技術だって、俺には何の痛手も無い物だし。……いや、部長たちにとっては良くないか?

 

「『聖書の剣』と呼ばれる物のサンプルと、簡単な製造法を教えていただきました。その代わりに、貴方方の信仰を自由にして欲しいと」

「そんな事を……で、でも良かったんですか?聖書の剣って、すごく貴重な物なんじゃ」

「聖書一冊から数百本作れる代物だし全然問題ないさ。それに、俺が作るならともかく天使や教会で作るなら制作にかなりの時間と労力がかかるし、あまり三大勢力のバランスも崩さない」

「えぇ。聖書の一ページが、誰でも操れる聖剣に早変わりというのは素晴らしいですが……如何せん、聖なるオーラを一点に貯めるという工程が難しく、量産は難しいというのが現状の結論ですね。ですが、それで良いだろうと思ってもいます。少しずつ数を増やすだけなら、信徒たちの自衛手段として広げつつも、他勢力をあまり刺激せずにすむでしょうし」

 

俺の製法だと、倍加と譲渡無しじゃ作れないからな。

強い光の力を持つ天使なら倍加も譲渡も不要かもしれないが、その場合の作り方を自分達で模索してもらう必要があるし、まだまだ量産は厳しいだろう。

 

「……では、そろそろ私はお暇させてもらいましょうか。これから戻って『システム』を変更する必要もありますからね」

「あっ、その、ありがとうございます!」

「礼を言うのであれば、私ではなく赤龍帝に。彼がこの取引を持ち掛けてこなければ、今この場で私達が会う事も無かったはずですから」

 

そう言って、ミカエルは強い光と共に去って行った。

残されたアーシア達は、知らず力の籠っていた肩を下ろし、俺の方を向いて、感謝の言葉を一言告げた。

 

――今思ったけど、今までは自分もダメージを受けるからギリギリ許されていた聖歌の攻撃がノーダメージになるって、結構やばいのでは?

 

※―――

 

アーシアとゼノヴィアが先に家に帰って、後には朱乃さんに引き留められた俺だけが残った。

今は場所を変えて、茶をいただいている。

 

美味しい。ただ抹茶だからか、落雁が食べたくなる。

もてなしてもらっている側だし、要望とかは言わないけどさ。

 

「えっと。俺に話があるようですけど」

「えぇ。一つ、聞きたい事があって」

 

俺の言葉に、神妙な面持ちで頷く朱乃さん。

普段の笑みも姿を消している彼女に、こちらも自然と肩に力が入ってしまう。

 

「……あなたは、未来と過去とを行き来する赤龍帝……そうよね?」

「はぁ……そう、ですけど」

「だったら!…だったら、貴方のその力で……私の母を、助けて欲しいの」

「―――朱乃さんの、お母さんを?」

 

聞き返した俺に、彼女は頷いた。

そして、詳しい事情を語りだす。

 

彼女と、その母に、何があったのかを。

何より、彼女がどのような存在なのかを。

 

「母の死について話す前に、私の()()について、見せるわ」

「正体って―――その、翼」

 

服をはだけさせ、朱乃さんは背を向けて、翼を出現させた。

片方は、蝙蝠のような悪魔の翼。

そしてもう片方は……黒く染まった天使の羽を思わせる、堕天使の翼。

 

「そう。私の中には、堕天使の血が流れているの。幹部バラキエルの血……ふふっ、汚らわしいわよね。とても惨めで、みすぼらしくって、悍ましい翼。私が悪魔になったのも、悪魔になればこの翼を――あの男の痕跡を失う事ができると思ったからなの。けど結果は、見ての通りよ。悪魔と堕天使の翼をもつ、歪な存在に成り果ててしまった」

「……バラキエル、ですか。もしかして、貴方の母親の死に、何か関係しているとか」

 

俺の言葉に、朱乃さんは無言で頷いた。

そして、その瞳を憎悪の色に染めて、語りだす。

 

「私の母が、傷ついたバラキエルと出会い、その傷を癒したことが二人の出会い。その縁で私が生まれ、しばらくの間平和な日々が続いた。私と母が暮らす家に、仕事の合間を縫って顔を見せるバラキエル。私は彼を父と慕って、いつかは家族三人で暮らせる日が来て欲しいと――そう、願っていた」

「……まさか、バラキエルが貴方の母親を?」

「いいえ。直接手を下した訳じゃない。――けど、裏切ったような物よ。ある日、バラキエルが不在の時、彼に恨みを持つ集団が私達を襲った。そして母は私を庇って殺された。――それでも、バラキエルが私達を助けに来ることも、生き残った私の下に来ることも、無かった」

「……なるほど。それで、俺に時間を遡って、過去の朱乃さんとお母さんを助けて欲しい…と」

「えぇ。貴方ならそれが可能なはず。――お願い、します」

 

深く頭を下げて頼んでくる朱乃さんに、しかし俺は言葉に詰まった。

はっきり言わせてもらうなら、それは不可能だ。

俺が過去に干渉するのは、歴史を変えない範囲だけ。そうでなければ、この世界は()()()()()()()

 

確かに俺は色々な存在に喧嘩を吹っ掛けてみたり、サーゼクスの師匠面なんかしたことがある。

だがそれでも歴史は、大まかな本筋を逸れる事は無かった。

もし仮に逸れる事があったならば、俺はそれ自体を無くすつもりだったし、一応問題は無い。

 

しかしこの話は違う。

朱乃さんの母を救ってしまえば、朱乃さんがグレモリー眷属に加わる事も、その先の歴史も全て変わってしまう。

そうして本来のレールを外れた世界は、世界の()()()によって、そのものが消失する。

そうすれば本末転倒だ。救った瞬間に、この世界の住民である彼女達は死よりも救いのない状態に変わってしまう。

 

生き残るのは、この世界の住民ではない俺と、魂レベルで同化しているドライグだけだ。

過去に、俺はソレを体験している。

ほんの気まぐれに『聖剣計画』の被験者たちを救おうとした時に、この世界は一度崩壊した。

あくまで木場達を助けるのはリアス・グレモリーでなければならなかったのだろう。

 

じゃあ黒歌は?と思うだろうが、彼女は遅かれ早かれイッセー達の仲間になるし、イッセーに好意を向け()()()()()()()()のはリアス・グレモリーただ一人であって、他のハーレムメンバーが生涯独身だろうが他の男や女に好意を抱こうが、なんの問題も無い。

 

――かといって、ソレを馬鹿正直に話した所で彼女は納得しないだろう。

できるわけが無い。俺だって同じ立場なら、例え理解はできても納得はできない。

 

……恨まれる以外、無いか。

 

「すみませんが、それはできません」

「なっ…!!なぜですか!?貴方なら、きっと私達を襲撃した集団相手でも…!」

「勝てない、とかそういう問題じゃ無いんです。――予定説って、知ってますか?」

「世界の全ては、神の定めた通りに動いている…ですか。それとこれとに一体なんの関係が」

「過去を変えた場合。それは最終的に同じ結末にたどり着くならば許され、()()に影響を及ぼさないのなら無視される。しかし、大きく何かを変える干渉は、()()()が動く原因となる」

「修正、力…?まさか、母の死は、すでに決められたもので……助けようと、別の理由で死ぬと?」

「それもありますが、それ以前に世界が滅びる。いや、消滅すると言っていい。事実俺は、一度人助けをしたせいで世界が消失し、無だけが残ったのを見ました。―――貴方の母を助けても、その瞬間貴方達は消えてなくなる。死ぬとか生きるとか、そんな事が関係なくなるんです」

「……じゃあ、私の母様は、何があっても助からない…と?」

 

絶望しきった顔をする朱乃さん。

その目から涙がこぼれるのを見て、俺は無意識のうちに口を開いた。

 

「確かに、朱乃さんのお母さんは助かりません……けど、だからこそ、今の朱乃さんがあるんじゃないんですか?慰めになんてならないかもしれませんけど、今の朱乃さんだって、部長みたいな友人が居て、イッセー達みたいな仲間がいて、駒王学園にはあなたを慕う後輩たちが沢山いる。確かに、父母の愛というのはかけがえのない物かもしれませんけど、今あなたが持っている物だって、大切な物のはずです。失った物を忘れろとか、そんな事は言いません。――けど、それにばかり執着して、今ある物を見失って欲しくないんです」

「貴方に何がわかるっていうのよ!親を失った事なんて無い癖にッ!!」

「わかりませんよ、俺には。――それでも、せめて寄り添うぐらいはできる。貴方の母を救う事ができなくても、今の貴方の大切な物を、今の貴方を守るくらいなら、俺もできる。代わりになんてならないかもしれませんけど、だから、その……そんな絶望ばかり、しないでください」

 

一度激昂した朱乃さんは、続く俺の言葉に、今度はしおらしくなって、すすり泣くように問いかけてきた。

 

「……寄り添うくらいはできる、って…今の私を見ても、そう言えるの?汚らわしい堕天使の翼を生やして、現実を受け止めきれずに泣き出して、貴方に当たるような真似までして。そんな、貴方達の知るような完璧な姿とは程遠い私に、等身大の私に…寄り添えるの?」

「朱乃さんは朱乃さんですよ。二大お姉さまとしてのあなたも、今こうして俺に自分の弱さを見せてくれているあなたも、どっちも朱乃さんです。俺が力になってあげたいと思う、姫島朱乃ですよ」

「……私を、守ってくれるの?こんな私を。悪魔で、堕天使の、姫島朱乃を」

「求められれば、いくらでも。――後、朱乃さんは汚らわしいとか言ってますけど、その翼。コカビエルや他の堕天使なんかと全然違って、綺麗ですよ」

「ッ………そんな、事」

 

言葉を切る。

なんだろう、余計なコトを言ったとかじゃ無ければ良いが。

正直自分でもこれで良いのか怪しく思っているくらいだし、これで「もう顔も見たくない」とか言われたら耐え切れない自信があるぞ。

 

表情には出さないものの内心不安で仕方が無い俺に、朱乃さんは呟く。

 

「……そんな事言われて、()()()()はずがないじゃない」

「えっ?」

「――ねぇ、輪廻君。私、一番じゃ無くて良いわ。いいえ、最悪五番目でも構いませんわ」

「えっ?いや、いきなりなんの番号?」

 

混乱する俺に、朱乃さんはなんだか吹っ切れたと言いたげな顔を見せる。

それどころか、なんだかちょっと蠱惑的な笑みまで浮かべて……

 

「輪廻君も、イッセー君ほど大っぴらにはしていなくても、()()()()()()、興味あるわよね?」

「は、はい?いや、え?さっきから全くついて行けていないんですけど何事―――うぉあっ!?」

 

抱き着かれた。突然。

朱乃さんの体温を、かなり近くに感じる。

そりゃそうだよね。服がはだけてるんだもの!

 

いやいや何事!?なんで俺にいきなり抱き着いて……その、そういうコトっていうのは、エッチなお話という事でしょうか!?

 

「こうして女の人に抱き着かれるの、お好きかしら?」

「は、はいっ!お好きです!!」

『(相棒……)』

 

ドライグが情けないと言わんばかりに溜息を吐く。

うるさい黙ってろ!半裸の女性から抱き着かれるなんて黄金体験、俺は生まれてこの方数度しか味わっていない!

 

「うふふ。これからは私も、こういうコトを沢山してあげますわ」

「マジですか!?そりゃ嬉しい限り―――ッ!!?」

「へーぇ。嬉しいんだ」

 

朱乃さんの体で隠されて見えないが、部屋の入り口から聞こえた声は確かに黒歌の声だ。

というかちょっと前から気配自体は感じてたし。

なのになんでこんな他の女にデレデレする所見せちゃったのかと言われれば、俺が女性から攻めに転じられると弱い童貞野郎だという他ない。

情けない赤龍帝と笑い給え。

 

『(お前の話に俺の名前を持ち込むな!赤童帝チェリードラゴンなんて名で呼ばれるのはもう嫌だぞ!)』

(昔オーディンに呼ばれたヤツか。まだ引きずってたかお前)

「あら、黒歌。ここに何の用かしら?」

「ご主人様の帰りが遅いから迎えに来たにゃん。けど、そしたらつまみ食いの瞬間を目撃しちゃったって所ね」

「あらあら、申し訳ありませんわ。け、ど。彼の方もつまみ食いされることに何ら抵抗は無かった用ですわよ?」

「……ふんっ。今のうちに良い気になってなさい。ご主人様だって、私の方が…――帰るわよ」

「え、あの、黒歌」

「良いから。黙って帰る」

「……はい」

 

――これでハーレム作るとか、大丈夫なのかなー。

 

そんな事を思いつつ、俺は朱乃さんに挨拶して、黒歌と共に帰路に就くのだった。

 

※―――

 

「ねぇ、ご主人様」

「…あ、うん?どした」

 

帰り道、人通りの少ない場所に差し掛かった所で、ようやく黒歌が口を開いた。

 

「ご主人様って、ハーレム作りたいのよね」

「……まぁ、そうだな。うん。知られてたよね、やっぱり…」

「私が知ってたかどうかは今はいいの。―――ご主人様だから、別に沢山女の子囲おうと、誰も悲しませるような真似はしないだろうし。だけど一つだけ聞かせて?」

 

そう言って、俺の方に体を向ける。

その顔は真剣そのもので、俺は自然と生唾を飲み込み、次の言葉を待った。

 

「……ご主人様には、一番って…いるの?」

「――それは」

 

いる。勿論いる。

というか今ここにいる。目の前に。

 

確かに他にも魅力的な子ってのは俺の周りに沢山いるけど、それでも、俺は黒歌が一番好きだ。

直接伝えられなくっても、その気持ちに変わりはない。

 

『(いや、さっさと言えばいいだけだろう)』

(うるせぇっ、俺にそんな度胸があったらもっと前から俺と黒歌はジュテームな関係だっての!…いや、そうでもないかもしれないが!)

「いるよ、一人。この先誰に好意を向けられても、俺にとっての一番は、ずっと―――」

「そう。―――なら、それでいいにゃん」

 

くるっと体を回転し、先へ歩いていく。

その時見えた横顔は、なんだかちょっと笑っているように見えた。

 

……これ、黒歌も気づいてるんじゃないかな、なんて。

その上で何も言わず何もせずにいるって事は、俺はもしかしたら()()()()()()のかもなって。

ちょっと、思った。

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