ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う 作:うぉっ、でっか…
黒歌さんに叱られていた輪廻が、そんな事を呟いて立ち上がる。
その言葉に首を傾げる俺達を無視して、アイツは突如禁手を発動。
鎧姿に変化し、窓の外を見た。
――そして次の瞬間、途轍もない力を外から感じる。
一体何が、と身構えようとしたその時には。
俺達の時間は、完全に止まったのだった。
俺達の耳に突然響いたのは、何かが爆発するかのような轟音。
それが『人を殴った音』だというのに気づいたのは、開け放たれた窓の外に見えた輪廻と、吹き飛ばされていく白龍皇の姿を視認した時だった。
「……ったく、意味深な事言いだしたと思ったらこれかよ……何が『力を借りる事になるかもしれません』だ。時間停止だか何だか知らねぇが、たった一瞬で壊滅させてんじゃねぇか」
「アザゼル。アレが君や輪廻が語っていた、『禍の団』と『夢幻人』かい?」
「あぁ。さっきの莫大な力を生み出したのが大方『引換剣』を使った『夢幻人』で、今の一瞬であの赤龍帝がほぼ全滅させたのが『禍の団』だろうな。はははっ、戦う相手を間違えるってのはまさにこのことだろうな」
アザゼルとサーゼクス様が、窓の外へ飛び立ちつつそんな話をしている。
内容が全く分からない…って訳じゃないけど、大半が何を言っているかわからない。
『夢幻人』と、なんだって?カオス・ブリゲード?『夢幻人』以外にも何らかの組織があったって事か?
そしてそいつらが何かを企んでいて、今の一瞬で輪廻が粗方片付けた、と?
んんん?
混乱する俺の手を部長が引き、皆が外に出たから貴方も外に行きましょうと連れ出す。
温かくてすべすべして綺麗な手だ。
デートはまだ数えるほどしかしていないが、そのたびにこう、手を繋ぐと、なんか性欲とは違うドキドキが来るんだよな。
なんかやばそうな状況の今でも、ちょっと緊張する。
「うわっ、なんだこれ…死体の、山?」
「『引換剣』、とやらの効果でしょう。貴方が過去に対峙したという、フェニックス家の三男が持っていた物と同じです。命と引き換えに、願いを叶える剣ですよ」
「えっ、あの剣を使って、一体何を…!?」
「簡単さ。ヴァーリの底上げだ。さっき一瞬感じた凄まじいオーラは、『引換剣』で強化されたが故だろう。――事実、俺達が張った結界が罅だらけになってるしな。確かに赤龍帝に勝てるなんて夢を、一瞬くらいは見ちまうだろうなぁ」
アザゼルやミカエル様が、俺の疑問に答えてくれる。
さらっと凄い事なんじゃねぇかな、と思いつつ空を仰ぐ。
禁手状態の輪廻だ。相変わらず直視したくないレベルのオーラ。
そしてその視線の先には、地面に倒れ伏す白龍皇。エクスカリバーの一件の時に、輪廻が止めを刺そうとしていたのを邪魔してきた奴だ。
他にも、なんだかエッチな見た目をしたお姉さんや、コカビエルに狩刈と、強そう(事実コカビエルや狩刈は強い)な奴らが全員負傷した状態で地面に叩きつけられている。
これを、一瞬でやったのか……時間操作ってすごいなぁ。なんかもう、感嘆の溜息しかでねぇわ。
「ぐっ、がはぁっ……!は、ははは。やはりその時間を止める能力。厄介極まりないな。そこの『停止世界の邪眼』ならまだ対策はあったが、世界の法則を思うがままに歪められるとなると手の施しようがない」
「称賛する余裕があるのか?前にあった時は勝てない相手じゃないとか言ってたが、今の一撃を受けてもなおそう言えると?」
「あぁ、言えるさ。なぜなら俺はまだ、禁手にしかなっていない……感じただろう、先程の俺の力の波動を。龍の極地、『夢幻』の力を一時的に手に入れた俺は、この一戦の間は……『覇龍』を扱える」
その言葉に息を呑む、三大勢力のトップたち。
アザゼルとサーゼクス様だけが、それぞれ緊張感のない顔をしている。
アザゼルは「やっぱりな」と言いたげな顔で、サーゼクス様の方は「それが何か」と言う顔だ。
「は、『覇龍』?」
『ドラゴンの力を宿す神器の真骨頂…とでも言うべきかね。封印されている本来の力を完全に解き放つ代わりに、それ相応の代償を支払わせるものさ。ただあの口ぶりだと、ノーリスクで使えるらしいな』
「そ、それって流石の輪廻でもやばいんじゃねぇか!?アイツのオーラも、馬鹿にできねぇレベルだし!」
「まさか。輪廻が負けるなんて事があれば、それはこの世界が滅ぶ時だけさ」
当たり前のように笑うサーゼクス様に、何とも言えない顔になってしまう。
いや、いくら師匠だったり昔からの友人だったりするからって、信頼しすぎじゃないですかね。
「…はぁ。まぁ、止めはしないけどさー……アザゼル。ヴァーリは
「あぁ。殺さずに頼む。死んだら神器の回収ができないかもしれないからな。奪われた分取り返さねぇと」
「了解……じゃ、行こうぜドライグ」
『おうよ』
『Change Blaster weapon!!』
鎧の両手部分が砲口に変化し、莫大なエネルギーが収束していく。
BoostBoostと鳴り響く音が、本能的な『死』の恐怖を煽ってくる。
これ、逃げなきゃ近くに居る俺達も危ねぇんじゃ――と思った次の瞬間には、サーゼクス様が結界を張ってくれた。
滅びの魔力でできているのか、触れるとやばいという危機感を覚える。
「ロンギヌス・スマッシャー……アレって、禁忌に属する力よね?」
「あぁそうさ。アレの一発を放つだけで、町一個が枯れ果てる代物だ。それをセーブしているとは言えあんな連発するたぁ……やっぱドラゴンを宿す者ってのは、どこかイカれてんだな。――さて、んじゃ俺達は自分の勢力のイカれたヤツを相手するか」
「イカれた奴、とはご挨拶だな。アザゼル」
いつの間にか起き上がっていたコカビエルや狩刈が、結界内に転移してくる。
なんでか知らないが、前よりも格段に強くなっている……そんな気配がする。
「イカれてるだろ、お前はよ。ったく。何が戦争を始めるだバーカ。俺の事昔散々中二病だのと煽って来たくせに、テメェのが中二野郎じゃねぇか」
「ふん。言いたきゃ言えばいいさ。俺がする事は決して何一つ変わらない!」
光の槍を構えたコカビエルが、一気にアザゼルへと肉薄する。
そして次の瞬間には、堕天使二人は空中に移動し、光の槍同士で剣戟を始めていた。
は、速すぎる!全く目で追えなかった!
コカビエルなんかは、あの時の輪廻の攻撃で片腕無くなってるってのに……改めて、自分がまだまだだと思い知らされる。
「まったく。コカビエルは直情的というか、なんといいますか……久しぶりね、サーゼクス、ファルビウム、アジュカ。そして――セラフォルー」
「カテレアちゃん……一応聞くけど…『禍の団』に、入ったの?それとも『夢幻人』?」
「両方、と言えば良いでしょうね。私達『禍の団』と『夢幻人』は先日のコカビエルが引き起こした一件の日に同盟を結んだ。言うなれば、『
『禍なる夢幻団』…?や、やべぇ。何が何だかさっぱりわからん。
部長の顔を見ても、いまいちよくわかっていない様子だ。
ただ、魔王様達は皆神妙な顔をしているし、後ろで金棒を振り回してニヤニヤしてる狩刈も怪しげだし、とにかく良い話ではなさそうだ。
当たり前か。
……ってか、カテレアって呼ばれたあの人…魔王様達の知り合いなのか?
「そんな物を作って、君たちは一体何を望むんだい?」
「貴方にそれがわからないとは言わせませんよ、サーゼクス。我ら旧魔王派は、貴方達新魔王派の思い描く世界を見限った。平和、共存、助け合い。全くもってくだらない。この世界はもっと陰惨で、凄惨でなければならない。本質も見ずに理想だけを語る貴方達には、もはや誰も従いはしない」
「そんな……」
「旧魔王派は全員そちら側、か……やれやれ困ったな」
カテレアと呼ばれた女性の言葉に、魔王様達はそれぞれ違った反応を見せる。
ただどれも芳しい物ではない。
旧魔王とか新魔王とかが良くわからない俺でも、取り敢えず悪魔の多くが敵に回ったという事だけはなんとなくわかった。
「今私がこの場にいるのは、その事実を伝えるため――――そしてセラフォルー。かつて私からレヴィアタンを奪った貴方に復讐するためです」
「っ、カテレアちゃん、私は――」
「気安く呼ぶなッ!!――んんっ。とにかくここで貴方を殺し、『禍なる夢幻団』の活動の第一歩を…そして、私が真のレヴィアタンとして返り咲くための踏み台とします………この神器を使って」
そう言って取り出されたのは、禍々しいオーラを纏う傘。
感じる気配は、悪魔と……ドラゴン?みたいな。
似ているけど、ドラゴンの物ではない。
言うなれば蛇、か?
『ほぅ!これは面白い、面白過ぎるぞ!レヴィアタンの一族を名乗る女が、
「は、はぁっ!?原初魔王って、お前みたいな!?」
「あぁ、サタン。そう言えばその力を持つ下級悪魔がいると、話に聞いていましたね。――その通り。この傘は『
「サタン以外にも存在していた…か。だが君は生まれながらの悪魔。その神器の本来の所有者では無いんだろう?選ばれたわけでも無いただの悪魔に過ぎない君がその力を使いこなせるとは思えないが」
「えぇ。相応の代償を支払う事は覚悟の上――さぁ、話は終わり。私の目的はあくまでセラフォルーただ一人。邪魔をするなら、まとめて殺します。そこで見ている分には、殺しはしませんが」
「わ、私は嫌だよ。カテレアちゃんとだって、話し合えばちゃんと分かり合える……」
「そんな甘えた事を。いつまで経っても現実が受け入れられない、考えも趣味も幼子のような貴方が、私は嫌いなの。―――原初魔王のレヴィアタン。その名を継ぐ私に、その力を与え給え―――『
『Leviathan power Blance Breaker!!』
傘が光の粒子になり、カテレアの体に付着していく。
光は次第にドレスの形を取り、完成と同時に黒と青の入り混じった妖艶で厳かなドレスへと変貌した。
これが、原初魔王レヴィアタンの神器。そのバランス・ブレイカーか。
サタンと違って、一見すると戦闘向けとは思えないな。
「これが『悪魔の絶海』の禁手。『
カテレアが右手を振るうと、突然結界内部に大波が出現し、セラフォルー様めがけて流れていく。
あんな大質量の水を浴びればひとたまりも…!と思ったが、その心配はすぐにかき消される。
セラフォルー様が、一瞥する事も無く大波を凍らせたのだ。
す、すごい!輪廻と白龍皇、アザゼルとコカビエルの戦いだけでも腹いっぱいなレベルなのに、こっちもこっちで途轍もない戦いだ!
足手まといにすらなれてないぞ、俺達。
上空の戦いも、結界の向こうの戦いも、既に俺では目で追う事すら叶わない程だし。
「私は、嫌だよ。カテレアちゃんと戦うなんて。殺し合いなんて、したくない」
「私を馬鹿にしているの?戦う価値も無いと。私なんて、取るに足らない存在だと!」
大きな水の塊が出現し、爆発。
風を切る音を立てて水滴が飛び散り、地面を抉り、辺り一帯の物を襲う。
それでも、セラフォルー様は立ったまま、攻撃を防ぐだけだ。
「いつだってあなたはそう。人を小馬鹿にした態度で、いつだって人並み以上の結果を残して!!」
カテレアが怒り狂いながら、様々な攻撃を仕掛ける。
水の刃や、水の矢が、セラフォルー様を襲い続ける。
だけど、届かない。
神器では埋められない差が、存在するんだろう。
「私からレヴィアタンの座を奪った時だってそう!いつもいつもいつも!私を、私達を馬鹿にしてッ!!」
半狂乱のカテレアが、今までで一番の攻撃を放つ。
それに対しセラフォルー様は、ついにその手をカテレアへ向け――。
※―――
「ははっ、おいおいマジかよ!原初魔王の神器、他にもあったのか!」
「よそ見してるんじゃねぇッ!!」
俺に飛んでくる光の槍を躱し、舌打ちを一つ。
全く、邪魔しやがって。サタン以外の原初魔王の神器にテンション上がってたっつーのによー。
戦闘の最中、腕をもってかれたのだ。
「はぁ。お前は戦闘に夢中になり過ぎなんだっつーの。戦うのがそんなに好きか?えぇ?」
「あぁ、好きさ。俺は戦いを何よりも求める。だから、他勢力の連中の入り混じった組織に入る事も是とした。この世界を、血で血を洗う闘争の世界へと変えるためにな!」
「っと。――やれやれ、そろそろ終わりにしてぇ所だが……一つ聞きたい事がある」
「あ?なんだ?」
「カテレアの話がこっちにも聞こえてきたんだが、『夢幻人』と『禍の団』が組んだらしいじゃねぇか」
「それがなんだっていうんだ?」
苛立ち混じりに聞き返してくるコカビエルに、俺は小馬鹿にするような仕草を付け加えて答える。
「おかしいんだよ。『
俺の言葉に、コカビエルは一度首を傾げてから、不思議そうに口を開いた。
「お前は何の話をしているんだ?オーフィスが、静寂を求めて次元の狭間への帰還を求めている?そんな話は一度も聞いていないぞ?」
「何?そんなはずはない。過去にオーフィスと接触した輪廻が語ってるんだ、間違いないはずだ」
「立神輪廻が?――あぁ、なるほど。そういうコトか…はははっ、なるほどな」
何かを納得したように笑うコカビエルに、俺は知らずと苛立ちが募った。
コイツ、俺がわかってねぇからって馬鹿にしやがって。
まぁ良い。コイツも態々隠すつもりも無さそうだし、聞きゃいいだけだ。
……あの赤龍帝、立神輪廻が嘘を吐いたとは思えねぇ。大方、アイツの情報も真実だ。
いや、真実
「何がおかしいんだよ」
「いや何。あの男が
「……は?つまりそりゃ、あいつは有限の存在になったって事か!?」
「そうさ。力は無限のままだが、存在そのものは有限。性別も定まったらしいしな」
あ、あのオーフィスが、有限に?
性別すら定めたって、つまりそりゃ『一個体として確定した』って事じゃねぇか!
一体何が目的なんだ!?
「あの無表情無感情野郎がそこまでするとはね……マジで何が目的なんだ?」
「それは―――――ッ、何ィッ!?」
俺の質問に答えようとしたコカビエルが、突如真っ赤な光の柱に飲み込まれた。
慌てて俺も回避したが、余波だけで軽く火傷を負っちまった。
今のはロンギヌス・スマッシャーか。
まさか滅びの魔力の結界をぶち破ってくるとはな。
……しかし、あの戦争狂の最期が、他所の戦闘の余波に巻き込まれて、とはね。
あいつにとっちゃ、一番辛い終わりだろうな。話してる最中に呆気なく事故死とは。
元ボスとして、黙祷くらいはしてやるか。
「……さて、あっちの
※―――
どろり、と。
カテレアの右腕が突如液状化し、地面に落ちた。
せめて自分の手で殺す、という覚悟を決めたセラフォルー様の瞳が、困惑の色を帯びる。
しかし当のカテレアは、何か悟ったような表情をするだけで、左手を振るって攻撃を行った。
「どうしたんです、セラフォルー。攻撃の意志を固めたのでしょう?それなら、私と真のレヴィアタンの座をかけた殺し合いを――」
「いや、でも、その腕……」
「
濁流がセラフォルー様を襲う。
それは瞬時に凍てつき、砕け散る。
「……なるほど、それが君の代償…という訳か」
「ど、どういう事なんですか?」
「先ほど言った通りさ。兵藤一誠君の『悪魔の連撃』も、君の『魔剣創造』も、どちらも強大な力を持つ神器だろう?だけど君たちはその力が暴走して命に関わる事は無い。ギャスパー君の『停止世界の邪眼』だって暴走する事は有れど、それは彼の無意識が願って発動している物だからね。危機的状況と感じていない時は発動しないだろう?」
「そ、そういえば……」
「だがそれは、君たちが正式な所有者だからだ。その神器の力を持って生まれる事を許された存在だからだ。だから、下級悪魔に過ぎない兵藤一誠君にもサタンを扱う事が出来た。―――ただ、カテレアは違う。彼女は純血の悪魔だ。つまり、あの神器も誰かから奪った物という事になる。正式な所有者でなければ、いくら上級…ともすれば最上級とも言うべき彼女だろうと、原初魔王の力を使い続けるだけでその体を失う事になってもおかしくはない…という事さ」
「……えぇ、サーゼクスの言う通り。私がこの力を振るう度、体がどんどんとこの神器へと奪われていく。腕が完全に液状化したのは、実体を保てるだけのエネルギーを全て吸い上げられた証拠。――けど、それで良いの。セラフォルーを殺せるなら、私はそれでいい。……さぁ、私は文字通り命を懸けてこの場に居る。ソレを知って尚、貴方は私に情けをかけますか」
鋭く睨みつけるカテレアに、セラフォルー様は逡巡する様子を一度見せた物の、深呼吸一つの後には覚悟を決めた顔を見せた。
それに満足そうに頷き、カテレアは再び攻撃を仕掛ける。
……新魔王と旧魔王の、結末の見えた戦いが、ようやく始まった。
「――っと。凄い戦いだな。俺達なんて光の槍でチャンバラやってただけだっつーのに」
「アザゼル……っ!その腕」
「あー、油断しちまった。そうそう、ちょいと衝撃的な話を聞かされたんで、せっかくだから聞いてけよ。お前らは別に、あの戦いに乱入するような無粋な真似はしないだろ?」
左腕を失ったアザゼルが、しかしソレは何てこと無いというように振舞いつつ、俺達の下に降り立つ。
そして狩刈の方を一瞥してから、話し始めた。
「コカビエルから聞いた話なんだがな。どうやらオーフィスの野郎、無限をやめたらしい」
「あの無限の龍神と呼ばれたオーフィスが…?一体、何があったというのです?」
「さぁな、そこまでは聞けなかった。だがアイツはなんらかの目的のために、無限の力を存在と切り離した。力は健在でも、存在は有限になったらしい」
オーフィスってのは知ってる。輪廻が倒しただか引き分けただかいうドラゴンだ。
だが無限をやめただの力は健在だの有限がどうとかは、全くもってわからない。
混乱する俺たち下級悪魔に対し、魔王様や大天使様達は神妙な面持ちで考え込んでいる様子。
「お前達にもわかりやすく説明するとだな。無限の力ってのがこの場合水。蛇口がオーフィスだな。今までは蛇口と、いくらでも水が湧き出る場所が直接つながっていた。だが今のアイツは、蛇口が貯水タンクに繋がれている。水は後からいくらでも注ぎ足せるが、一時的には有限になる。俺も詳しいことは知らねぇが、多分これであってるはずだ」
やっぱりちょっとよくわからないが、なんとなくはわかった。
けどすごい力を好き放題使えなくして、一体何がしたいんだろ。
混乱する俺達のすぐそばに突如、ズゴンッッッ!!と、爆音と共に何かが着地する。
土煙から覗くのは、赤い鎧。
輪廻だ。
「輪廻!?」
「油断した。っつーか捕獲狙いの戦闘なんて初めてだしな。なれないことはするもんじゃない。……ただ、それ抜きにしてもアイツが強いってのはあるな」
「流石の赤龍帝も、『
空を飛ぶ白龍皇が、俺たちを見下すように佇む。
ケイニス・リュカオン、というのはよくわからないが、それが輪廻の腕を奪ったのだろう。
輪廻は腕を生やして(時間を戻したんだろう)空を仰ぎ、煽るように言った。
「奪った力でよく威張れるな。恥ずかしくないのか?」
「いいや?戦いに、勝利に、美学なんてつまらないものは要らない。勝てばそれでいいだろう?………だが、確かに気に入らないところはある。それは立神輪廻。君が本気を出していない事だ」
「…それ言ったらお前だって『覇龍』を使ってないだろ」
「それどころか、今『黒刃の狗神』を使うまで、神器の力を振るっていないさ。俺は君を殺すつもりでいるのに、君は捕獲狙い。そこで最初から本気を出せば、せっかくの歴代最強同士の戦いがつまらない結末を迎えてしまうだろう?」
「歴代最強、ねぇ。確かにお前はそうだろうけど、自分で言うか?」
呆れた様子で言う輪廻に、ヴァーリは自信満々に言い切った。
「あぁ、俺は旧魔王ルシファーの血を引き生まれた、言うなれば奇跡の存在。出生だけ見れば、君よりも俺の方が上さ」
「なっ、ルシファー!?」
「ん?サー坊には言ってなかったっけ?アイツはヴァーリ・ルシファー。言ってた通り、旧魔王ルシファーの血を引く白龍皇。魔力の才覚なんかは、多分俺以上だろうな」
輪廻の言葉に、俺たちは息を呑んだ。
神器を持てるのは人の血を引く者。
だから、吸血鬼と人のハーフであるギャスパーは神器を持って生まれた。
それと同じように、アイツは旧魔王の血を引きながら、白龍皇なんて呼ばれる存在の神器を持って生まれた。
その上『引換剣』の効果で強化され、奪った神器でさらに強くなっているなんて……流石に、勝てねぇんじゃ。
「さぁ、どうする?本気を出さないと、流石の君とて命に関わるだろう?それでもなお、殺す気にはならないと?」
「ま、頼まれたしな」
「………なら、話を変えようか」
鎧を解除し、ヴァーリが地に降り立つ。
銀髪のイケメンだ。力も才能も恵まれてるだけじゃなくイケメンか。ムカつく野郎だぜ。
ヴァーリは輪廻に一度視線を向けた後、今度は黒歌さんの方を見て口を開いた。
「久しぶりだな、黒歌」
「っ、えぇ。そうね」
「……知り合いなのか?」
「あぁ。元々黒歌も『禍の団』のメンバーでね。俺のチームの一人だった」
黒歌さんが、禍の団に…?
輪廻もそれは知らなかったのか、驚いている様子だ。
黒歌さんの方は、なんだか気まずそうな表情。
「途中で離脱したから何かと思えば、まさか赤龍帝の方についていたとはな。離脱する少し前からそんな雰囲気は感じていたが……赤龍帝の提示する
「その話はもうしたでしょ。元々私は『禍の団』の活動には興味が無かった。私はただ、もう一度白音と一緒に暮らせるようになれればよかっただけ。ご主人様を選んだのだって最初はそういう理由だったし。けど今は違う。ご主人様の飼い猫やってるのが幸せだし、そのおかげで白音とも一緒に暮らせるようになった。もうアンタ達の所に戻ってテロ活動に勤しむつもりは無いわよ」
白音……小猫ちゃんか。
主殺しの件で離ればなれになっていた時も、ずっと小猫ちゃんの事を案じていたんだな。
そのために『禍の団』に……なるほど。
納得する俺達だが、ヴァーリは黒歌さんの言葉を聞き口元を歪めた後、今度は輪廻に話しかける。
「黒歌はそう言っているが……はは、なぁ立神輪廻。君は黒歌に並々ならぬ感情を抱いている。そうだろう?」
「……それがどうした」
「前置きは無しにして、結論から言おうか。――俺は黒歌に『子供を産ませて欲しい』と言われたことがある」
「――――は?」
ミシッ、と、空気が軋む音が聞えた。
輪廻は、それはもう見事にキレている。
そう言えば前にアイツが言っていた。――元カレとか、気にするタイプだって。
ヴァーリは、輪廻のその様子を見てさらに口元を歪め、さらに煽る。
「同じチームで活動している時にな。俺の強さと、旧魔王の血、白龍皇の力に惹かれてか、そう頼んできてね。まぁ、ドラゴンの血というだけでも、強い子を産みたいと思う女を惹きよせるのに、俺はその上旧魔王、ルシファーの血筋だ。動物的な本能が強い黒歌には、さぞ魅力的だったんだろうね」
『待てヴァーリ。それは』
白龍皇……アルビオンが口を挟むが、ヴァーリは意に介する事無く話す。
…いや違うな。これは……挑発している。
本気の殺意を向けられるために。
「ところで、だが。君はきっとそう言われた事は無いんだろう?見ればわかるさ。俺と違って黒歌にそういった感情を抱く君なら、誘われて直ぐに応じるだろうからね。――つまりだ。雄としての魅力で言えば、黒歌からすれば君よりも俺の方が優れているという事になる」
「…………」
「可哀そうにね。歴代最強、世界最強と称されようと、結局は想い人から誘われる事も無い孤独な存在。大して俺は、奇跡と称される生まれで、君が求めてやまない女性から子を産みたいとせがまれた。―――そうだ黒歌。退職金代わりに、そこの赤龍帝じゃ無く白龍皇である俺の子を産ませてやっても――」
ドグンッッッッ!!!
心臓が鼓動するような音が響き、この学園を覆っていた結界に罅が入る。
アレは魔王様達が力を合わせて作った結界だから、並大抵の衝撃じゃ壊れるはずがないのに。
結界は瞬時に再生するが、辺りに充満する『力』の波動は濃いままだ。
「はははっ、ようやくやる気になったか!そうだ憎め怒れ!!それでこそ二天龍の戦い!力の極地の衝突だ!!」
『ええい、この大馬鹿者めっ!戦狂いの大馬鹿者だお前は!!』
「馬鹿で結構。俺がしたいのは本気の殺し合い。ソレを制し、真の最強に君臨するのが俺の目的さ。……さぁアルビオン。『覇』を使うぞ。――我、目覚めるは、覇の理に全てを奪われし二天龍なり――」
嬉しそうに笑いながら、ヴァーリが何らかの詠唱を始める。
それと同時に純白の凄まじいオーラがヤツから噴き出し、禁手の鎧が装備され、そして姿を徐々に変えていく。
「無限を妬み、夢幻を想う」
シルエットは、ドラゴンそのもの。
今までは鎧としての側面が強かったが、今度は生物的な雰囲気を感じる。
「我、白き龍の覇道を極め、汝を無垢の極限へと誘おう―――!!!!」
『Juggernaut Drive!!!!!』
音声と同時、一際強く輝くヴァーリ。
龍の与えてくる恐怖と、光から感じる神々しさは、抗おうという気の一切をそぎ落とす。
――けれど、そんなもの知るかとばかりに怒る男がここにいる。
白い龍と対を成す赤が、ここにいる。
「さぁ立神輪廻!!君の本気を見せてくれッ!!」
『……喜んでいる所悪いが、ヴァーリ・ルシファーよ』
「ドライグ?…一体何だと言うんだい?まさか、彼は『覇』を使えない……とでも?」
『いや、そうではない。ただ一つ良い事を教えてやろう。先程の黒歌の話は、相棒に本気を出させるための物だったんだろうが………お前は選択を間違えた』
『ッ、おいイッセー。後他多数。逃げろ。さっさと逃げねぇと死ぬぞ』
「は、はぁ?いきなりなんだよ」
「………まさか、
「おいサーゼクス。お前いきなり何を」
「どんな結界を張ろうと、この距離なら余波だけで私達くらい容易く殺せるという事だよ。輪廻のあの姿は、それほどに強大で、恐ろしい」
翼を出現させ、空を飛ぶサーゼクス様。
それに色々言いたげな顔をしつつもアザゼルが、そして一先ず従おうと俺達がついていく。
確かにすごいオーラだけど、死ぬって……アイツが今キレてるのは、あくまでヴァーリ相手なんじゃねぇのか?
「我、目覚めるは、覇の理を超え、万象を支配せし赤龍帝なり」
「ッ、このパワー………それと、詠唱が違うか。はは、流石に『覇』の力をそのまま使うわけが無いか」
「夢幻を喰らい、無限へ至る」
輪廻が禁手の鎧を纏う。
ヴァーリとは違い、ドラゴンらしさはあまり感じない。
生きた鎧、というべきだろうか。
ってか凄いエネルギーだ。
かなり離れて、結界まで張ってもらってるのに……圧で気絶しそうだぞ!?
「我、龍の最果てたる赤となりて」
「来い、立神輪廻」
「『汝を血濡れの永劫へと沈めよう―――!!!!!」』
『「
最後にはドライグと輪廻の声が混ざり、赤い輝きが視界を塞ぐ。
結界に守られているはずの俺達が、死を覚悟するレベルの力に晒される。
俺達が先程までいた場所は、姿が変わる際のオーラで抉り取られ、大きなクレーターが生まれていた。
「それが君の『覇』か。はははっ、面白い。――さぁ。白と赤、『最強』の戦いを始めぼぐぁっ!!?」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
ヴァーリ・ルシファー。
旧魔王の血を引き、白龍皇の力を持ち、そして堕天使が所有していた神器の数々を奪った男。
その力は確かに圧倒的で、きっと魔王様達でなければ相手にならないだろう程の相手だ。
だが、アイツはドライグの言った通り。選択を間違えた。間違え過ぎた。
輪廻に本気を出させるための煽りに、黒歌さんとの話を持ち出したのが悪かった。
「俺は俺は俺はッ、俺は一度たりともそんな事言われてないのにッ、テメェはぁああああああああッ!!!『子供を産ませて欲しい』だとォおおおおおああああああああッ!!!殺すッ、ぶっ殺すぞこのド腐れカス野郎がァあああああああッ!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
今まで見たことも無いくらいにブチギレた輪廻の叫びと共に、魔王様達が張った結界は砕け、俺たちの学び舎は、跡形も無く消し飛ぶのだった。
【オリジナル要素、神器紹介】
『
・原初魔王レヴィアタンの力が込められた神器。ゴスロリお嬢様が持つ日傘のよういな見た目をしている。
傘を展開すると、その方向に絶対的な防護壁を張る事が出来、また傘を一度振るえば洪水を引き起こす事もできる。
ただし範囲が狭い等の欠点がある。
『
・『悪魔の絶海』の禁手。黒と青の入り混じったドレスで、使用者にあったサイズに変更される。
使用者はあらゆる攻撃の一切を受けず、またノーコストで大量の水を操る事が出来、災害とも言うべき攻撃を乱発できる。
しかし気温等、環境の変化には対処できないという弱点もある。
『
・輪廻が最強たる所以。詳しい能力の詳細は次回。
覇龍にして覇龍ではないこの力は、原作における『龍神化』にあたる。ただその力は倍加無しで神を片手間に滅ぼせるレベル等と頭がおかしい。
ドライグと魂レベルで融合した姿であり、この状態でさらに進化、改良する事もできる。
オーフィスと戦う事や、異世界の存在全てを相手にする事も可能な程強力だが、輪廻はこの姿のまま一生を終える事も可能な程持続して使用する事ができる(ヴァーリの禁手継続時間が大体三か月ほど。輪廻の寿命はブースト込みで現在一万年)
また、輪廻は既に歴代の赤龍帝全員と話し合って和解した為、この力はノーリスクで扱える。
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