ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う 作:うぉっ、でっか…
因みに再開するとか言いつつ、今度は来週七日間殆ど何もできないので、次話はそれなりに遅れるとみています。まぁ、意外と何とかなるかもしれませんが。
さて。どうでも良い話は置いておいて、まずは本編をどうぞ。
いざ、夏の始まり
「ご主人様」
頭蓋の中身が全て蕩かされるような甘い甘い声が、ほんのりと生暖かい呼気と共に耳朶を打つ。脳が先に目を覚まし、開く前の瞳には恐らくカーテンから差し込んできているのだろう陽の光が白と赤の入り混じったような色となって知覚された。
そこまでしてようやく本当の意味で目を覚ました俺は、迷わず声の聞こえた方を向く。まず見えるのは、金色の瞳。やや潤んだソレは、慈しむように、愛おしいと叫ぶように、俺をじっと見つめていた。そこから少しだけ視線をずらすと、彼女の頭部に一対の猫耳が見える。ピコピコと動くそれは、確か『嬉しい』のサインだと、猫の気持ちについてまとめた本に書かれていたはず。アレは大分眉唾ものだが、もし本当だとしたら良いな、なんて思いながら、やっと口を開く。
「おはよう、黒歌」
「おはようにゃん」
色気と、無邪気さと、可愛らしさと、あざとさと。色々な物が入り混じった声がすぐ近くから聞こえる事に、ソレを発した本人が、今こうして俺に密着しているという事に、自然と体が歓喜に振るえる。
彼女はいつもと変わらぬ様子で挨拶をし、そして少しの無言状態を経て、その視線を適当な場所へと移した。
黒歌。長い事俺と一緒に暮らしていて、ついに最近交際する様になった女。そして。
「にゃっはは……昨日の今日だと、なんだか小恥ずかしいわね」
「……だな」
俺の童貞を、貰っていった女である。
※―――
「……夕べは随分とまぁ、お楽しみでしたね。御二方」
「えっ」
「も、もしかして、聞こえて……?」
「はい、それはもうバッチリと」
あの後、いつも以上にのんびりとイチャイチャしながら一階に降りると、なんだか気まずそうな雰囲気が満ちていた。皆食卓に集まっているのに、驚くほど会話がない。一体どうしたのだろう、と思いながら俺達が近づくと、小猫がいきなりあんなことを言ってきた。
どうやら、小猫だけでなく全員に聞かれていたらしい。
「あのね、輪廻。若いんだし、長い事片思いしてた子相手だと、そういう事をしたくなる気持ちもわかるけど………避妊はしなさいよ?」
「朝っぱらから母親にそんな話をされたくは無かった」
「避妊なら大丈夫です。房中術の応用で、何度出しても受精せずにそのままエネルギーに変換して吸収できるようになってますから」
「あら、そうなの?凄いのね、最近のその、ぼーちゅーじゅつっていうのは」
「母さん絶対知らないしわかってないだろ」
房中術は仙術の一種で、男女がまぐわう際の生命エネルギーのやり取り的な話の事だ。なるほど。俺が一人物凄く緊張して買ってきたコンドームが一つも袋から出されること無く生で終わったのはソレのおかげか。行為の最中に仙術特有の気の動きは感じなかったし、マジで孕む気かと思ってた。
「……輪廻さんと黒歌さん、最近かなりエスカレートしてますよね」
「ん、あー……まぁ、俺としては物凄い年数お預けされていたというか、我慢の連続だったわけで……長い事片思いし続けた分が、こう。さ」
「なぜ黒歌は良くって私はダメなんだ!」
「いや俺とお前は別に付き合ってるわけでも何でもないだろ」
アーシアは静かに、ゼノヴィアは烈火のように俺の良心や羞恥心をチクチクと刺してくる。いや、ゼノヴィアの方はあんまり罪悪感とか無いかな。一周回ってギャグ感がある。口にはしないけど助かってるよ、ありがとう。
居心地が悪く、流し込むようにして食事を終える。別に後悔だとかそういう感情は無いが、確かに家族や居候の女の子達がいる時に、あんな激しくする必要は無かったかなと思う。考え無しにも程があったな、俺。
「……ところで姉様。喉の調子はどうですか?」
「え、いや、別に特に何もないけど」
「そうですか。あんな声を長々と出していては、相当な負荷がかかっていたと思いますが」
「っ、白音ぇ~!」
平然と下ネタというか、昨日の俺達の話を持ち出す小猫に、黒歌が顔を真っ赤にして掴みかかる。掴みかかると言っても頬っぺただ。両手でムニムニと引っ張って、じゃれついている様子。
小猫は「いひゃい、いひゃいです、ねぇさま」と抗議していた。
「でも、確かに驚いたな。まさか黒歌が、ずっと濁点混じりのような声を出し続けて」
「うぅ……なんだか、当事者でも無いのに恥ずかしくなってきました……」
「共感性羞恥を感じられるとこっちも余計に恥ずかしくなるからやめてくれないかなぁ!」
意図しているか否かは別として、俺と黒歌は三人から言葉で虐められながら、夏休み初日の朝を迎えるのだった。
※―――
「夏休みが始まって、いざ部長の実家、冥界へ!ってなったはいいけど……なんで駅?」
荷物をまとめて、部長に指示された場所へ付くと、俺達と同じタイミングでイッセーと部長がやって来た。すぐに木場や朱乃さんも合流し、アザゼルやギャスパーも集まって、全員が到着した。
現在地は、イッセーが先程わかりやすく説明口調で一人呟いた通り。最寄りの駅だ。
それなりに大きい物の、冥界なんて摩訶不思議な場所に行くにはそぐわない物である。
「ここにはね、悪魔が冥界に行くときに使う電車があるのよ」
「冥界に電車で行くんですか!?魔法陣とか、そういうのじゃなくって!?」
「魔法陣は魔王様を筆頭とした、それなりに地位のある人でないと使いませんわ。それに転生したての悪魔は最初、この正式なルートを通らないと罰則ですもの」
「ば、罰則……!!」
「へぇ、そうなってんのか。なるほどなぁ。俺もてっきり、魔法陣でバンバン出現してるモンだと思ってたぜ」
「知らなかったんですか?」
「ま、ついこの間までは冷戦状態だったからなぁ。悪魔も堕天使も天使も、みーんな睨み合いで、腹の中の探り合いだ。お互いの人間界への通路だって、隠したい重要項目の一つだったさ。だからこうして堕天使の長である俺が悪魔のルートを使うのも、友好の証って訳だな」
はぇー、とわかっているんだかわかっていないんだか不鮮明な声を出して、イッセーは駅の中をキョロキョロと眺める。行きかう人達の視線が、時折こちらに集中する。まぁ、この一団で目立たない事は無いだろう。顔だけはそれなりにイケメンのイッセーに、純粋に王子様な木場。ワイルドイケメンのアザゼルに、男の娘とかいう重要文化財のギャスパー。女性陣は言わずもがな、二大お姉さまの部長に朱乃さん。アーシアは聖女か天使かの二択だし、小猫だってマスコット的な可愛らしさがある。ゼノヴィアのボーイッシュ?シニカル?な感じも良く、何より黒歌はこの世に二人としていない絶世の美女。これに勝る女がいるというなら是非連れてきて欲しいという話だ。まぁ、そんな話に対処できるのは一休さんくらいだろう、屏風の虎とか、その手の方式を利用してくるに違いない。
東京に初めてやって来た田舎者のような素振りを見せながら部長のすぐ隣を歩いていたイッセーは、部長が足を止めると、少し遅れて止まる。そして、その止まった場所に疑問を覚えたのか、思いっきり首を傾げた。
「ここ、普通のエレベーターじゃないですか」
「えぇ。表向きは、他のエレベーターと変わりないわ。けれど、このエレベーターだけは特別なのよ。悪魔が使う時は、ね」
着いてきなさい、と言って、イッセーと小猫、そしてアーシアを連れて行く。イッセーは彼氏だからだろうし、他二人は多分、小柄だからだろう。荷物もあるし、朱乃さんとか黒歌とかが入れば、すし詰め状態になってしまっただろうし。何よりイッセーと黒歌が密室で、なんて許容できん。俺がこの建物を破壊するのが先か、黒歌とイッセーが(事故だとしても)触れ合ってしまうのが先になるかの話になってしまう。
「普通は一階と二階しか行先が表示されないんですが、このカードを電子パネルにタッチすると、悪魔用の特別階に移動するようになるんです」
「へぇ。魔法とかは使ってない訳か。その方法、アリだな」
部長たちが移動している間に、木場が俺達に解説してくれる。最初は魔力を識別して、とかかと思ったが、そうでもないらしい。まぁ、その分コストも低く抑えられているだろうし、考えられている、という方が正しいか。
木場の説明を聞いて、顎に指をあてて何かを考え込むアザゼル。まさか堕天使側でもその発想を利用しようとしているのだろうか。コイツの技術力と人望とその他諸々があれば、正直なんでもできそうな気はするが。
再び扉が開き、今度はエレベーターに俺達全員が一斉に乗り込む。こっそり俺が空間を倍加しておいたため、かなり快適だった。なんなら部長の時もやってあげた方が―――いや、イッセーと部長が人目を憚らずにくっつく理由を奪うのは、流石に悪いな。
地下へと到着した俺達は、巨大な洞窟のような悪魔用の駅構内を移動し、電車へと乗り込む。その際、部長だけが一両目に乗り込んで、俺達は二両目以降に乗る様に指示された。そういうルールらしい。眷属と主との立場を明確に、とのことらしいが、俺やアザゼルや黒歌は部外者なんだが、そこら辺はどういう扱いなんだろうか。
まぁ、電車の車両にそこまでこだわりとか無いんだけど。
「なんだか、先輩とこうして落ち着くのって久しぶりな気がします」
「最近は一緒にゲームしてやる機会も減ったしなぁ。偶には遊びに行ってやるから、そう悲しそうな顔すんなって」
「ん、えへへ……なんだか、先輩と一緒にいると安心するんです。段ボールの中にいるくらい」
「俺は段ボールだった……?」
黒歌とギャスパーに挟まれるようにして座りながら、背もたれに全体重をかけてリラックス。ギャスパーとの話を聞いて、黒歌が揶揄うように、悲し気な顔を作ってすり寄って来た。
「ご主人様は、私よりもギャスパーの方が良いの?」
「それとこれとは別だ。俺の一番は例え世界が崩壊しても揺るがないからな」
「いやーん、情熱的!」
なんだか冷たい視線と、呆れたと言いたげな溜息が聞えて来た気がするが、それは多分気のせいだろう。黒歌を抱き寄せながら、その頭を撫でてくつろぐ。これ以上ない贅沢な時間だった。
「二人を見ていると、なんだか嫉妬してしまいますわ」
「あ、朱乃さん?どうしてこう、俺に抱き着くような形に?」
「以前言った通りですわ。私は一番でなくとも構わないと。何なら一番最後でも構いませんのよ?」
「い、いや、それって一体どういう……?」
なんの番号だろうか。まさか、正妻、後妻の話?―――な訳ないか。俺はこの人に恨まれる事はあれど、好かれる事は無いはず。何せ、救えるはずの(実際は修正力のせいで不可能だが)母親を、救わないと断言した男なのだ。なぜ抱き着いてきているのかは甚だ不明だが、少なくとも俺には嫌悪感しか抱いていないはず。
混乱する俺に、今度は黒歌が呆れたように溜息を吐く。無論、離れたところに居るイッセー達も同じだ。本当に、俺の発言がさも「あり得ない」と言うかのようである。
いやいや、確かに何も知らなければ朱乃さんが俺に好意を寄せているように見えるだろうけど。こっちはその、あまり言いにくい事情が確かにあってですね。
「朱乃は随分と輪廻にご執心のようね」
「あら、リアス。いつの間に戻っていたの?」
「ついさっきよ。せっかくだし、私も皆と―――特に、イッセーと一緒に居ようと思ってね」
「っ、部長ー!!」
感激したように大声を出しながら、イッセーが飛びつく。それをひらりと躱して、体制を崩した所を後ろから抱きしめる。なんというか、惚れ惚れするような身のこなしだった。
「貴方から抱き着かれるのも嬉しいけれど、あの勢いだと倒れちゃうわ」
「す、すみません!」
「良いのよ。いつかは私も、貴方を正面から抱き止められるようになるから」
「……あの二人に関しては何も言わないのか、小猫」
「姉と主とでは話が違います」
二人だけの空間を生み出しつつある彼等を指さすも、小猫は特に言いよどむ事無くそう答えた。畜生。俺達の方がダメなのは、片方が姉だからか。そりゃ肉親がデレデレしてる所なんて見ていて恥ずかしくなって当然だとは思うけど。俺だって父さんと母さんが人目も憚らずイチャイチャとしていたらなんか気恥ずかしいし。
そんなやり取りの間に、人の良さそうな老人が俺達に何か機械のような物を向けて登録(これで魔法陣を使った入国が可能になったそうだ。とは言え滅多に使う事は無いらしいが)を完了させ、幸せそうな部長の姿に微笑んだ後、先頭の車両へと戻っていった。
「……あ、輪廻さん!外を見てください、外!」
「ん、おぉ。冥界だ。もう次元を抜けたのか」
アーシアに言われるままに外を見ると、先ほどまで石でできた壁しか見えなかった窓の外が、冥界の広大な自然に早変わりしていた。懐かしい景色だ。昔はよく、この冥界で修行をしたものだ。時々ドラゴンだとかそう言った存在と喧嘩になったり、色々と充実していた事を良く覚えている。
「ここはもう、グレモリー領なんだよな?」
「うん、そうだよ。君は過去に来たことがあるんじゃないかな。魔王様の友人、なんだろう?」
「友人、だな。一応。俺からしたら、サー坊は弟子というか、弟というか、そんな感じだけど」
「あの魔王相手に弟、ねぇ。流石は赤龍帝様だな」
アザゼルの皮肉るような発言につい苦笑いがこぼれる。実際、あのサーゼクス相手に弟だのなんだのと言えるのは現状俺だけだろう。というか、一般人の目線だとサー坊って呼び方が既にアウトだと思う。事実、大分慣れてきているとは言え、俺がサーゼクスをサー坊と呼ぶたびに、部長の眷属全員が肩を震わせている。畏れ多いのだろう。主の肉親だから特に。
『まもなく、グレモリー本邸前。まもなく、グレモリー本邸前』
俺達の登録作業を行った老人の声が、スピーカーから流れる。どうやら到着らしい。グレモリー本邸は何度か訪れた事が実はあるのだが、こうして正面から堂々と入るのは初めてだ。何せ当時は俺とサー坊の関係は二人だけの秘密だったからな。
緩やかに停車した車両からいざ降りよう、となった時、アザゼルだけが動かなかった事にイッセーが首を傾げる。
「あれ、先生はこのまま降りないんですか?」
「あぁ、俺はこのままサーゼクスのところに向かわねぇとだからな。後から合流すっから、お前らは先に行っとけ」
そう言って手を振る彼に、なるほど、と納得したようにうなずいて、イッセーは部長と手を繋いで降りて行った。本当に仲睦まじいな。原作よりも仲良いんじゃねぇのか?
そんな事を考えながら、負けじと俺も黒歌の手を握ろうとして、腕を掴まれた。なるほど。抱き着く感じなのね。
『リアスお嬢様!お帰りなさいませ!!』
アザゼル以外の全員が電車を降り、少し進んだ所で、綺麗に整列したメイドたちが一斉に頭を下げ、そして交響楽団のような人達が演奏を始め、空にはワイバーンに乗った騎士甲冑の者が横断幕をはためかせているのが見えた。
なんだ、このカオス。と一瞬思ったが、ここはグレモリー領。部長を歓迎する従者たちが居て然るべきだろう。その上、グレモリー家は基本的に血の繋がりが無い従者にすら優しい事でお馴染みの悪魔。恩返し、というか、これくらい力が入るのも仕方ないのだろう。
派手な出迎えに驚く俺達と違い、慣れた様子で全員に手を振り、にこやかに歓迎に対する礼を言う部長。なんだか、こういう姿は人の上に立つ者って感じがある。ここ最近はイッセーと付き合っているというのもあってかアレだったけど。
一団の中から、二人の女性が代表する様に出てくる。二人とも銀髪で、服の色以外は殆ど同じのように見える。片方がグレイフィアさんなのは確かだけど、もう一人は一体?
「お帰りなさいませ、リアスお嬢様」
「眷属の皆様も、よくぞお越しくださいました。こちらに馬車の用意がしてありますので、是非お乗りください」
「ありがとう、グレイフィア、リーシア。所でだけど、私を眷属と同じ馬車に乗せるのは可能かしら。ほら、イッセーもアーシアも冥界は初めてみたいだし、一緒に居てあげたいのだけど」
「それがお嬢様の意志とあらば。ではお嬢様の馬車の方に、特別に御二方もお乗りいただく事としましょう」
「それが良いわ。ほら、着いてきて」
「は、はい」
「じゃ、じゃあ輪廻さん。また後で」
「おう、また後でな」
リーシアさんと言うらしい人に連れられて、三人が移動していく。俺達が乗るであろう馬車と違い、装飾が派手だ。一瞬見えた中身も、かなり高級感がある。まぁ、眷属と主とでそれくらいの差をつけるのは当然か。
一応俺、客人枠なんだけど。
「では、残る皆さまはこちらの馬車へ。広さの方はご安心ください。魔法の力で、見た目よりも中のスペースはずっと広くなっていますから」
その場に残ったグレイフィアさんが、俺達の誘導をしてくれる。やや不安定な足場を踏んで乗った馬車の中は、なるほど確かに広かった。しかも眷属用とは思えない備品の数。クッションもあるし、何ならお茶菓子もある。これが関係者全員に優しいグレモリーの力か。日本の店に並ぶ、いや超えるようなおもてなしの心を感じる。
「魔法というのは凄いんだな。まるで輪廻が部屋の大きさを変えた時のようだ」
「俺の場合は、普通の魔法が使えない分をドライグに補ってもらってるだけだしな。こっちの方が凄いだろうよ」
「時間操作の魔法の為に、他の全てを諦めた、か。よくもそんな思い切った決断ができたね」
「人間、追いつめられるとそういう決断もポンポンできるようになるんだぜ、木場。お前もいずれわかるよ。まぁ、そんな状況には陥りたくないだろうがな」
「ははは……悪いけど、君が追いつめられるような状況がまるで想像できないや」
「同感です」
辛辣だなぁ、なんて思いながら、静かに動き始めた馬車の微かな揺れを楽しむ。時間が経つと辛いだけだが、最初の内はこうした振動がまた楽しかったりするのだ。時間が経つとマジで腰とか尻とか痛くなるけど。まぁ、この馬車にはクッションもあるし、何なら俺の場合痛みを感じる前の時間に戻せば問題は無いし。ほんと、こういう時にこの力は便利だと思う。
「それにしても、この道ってこんなに長かったんだな。サー坊と遊んでいる時にチラッと一部分だけ見えたけど、まさかこんな続いているモンだとは」
「サーゼクス様と、ですか」
「あぁ、そうそう。アレ?確かサー坊が結婚した相手って」
「はい。私の
なんか原作に居なかった(はずの)人が増えてるし、一応確認しておこうと口を開くと、予想外の、とは言え少しは予想していた返答が来た。
どうやら、この世界ではサーゼクスとグレイフィアさんではなく、サーゼクスとリーシアさんが結婚したらしい。それって修正力は働かないのか、と思ったが、今こうして俺達が生きているのだから大丈夫なんだろう。
相変わらず、基準が良くわからない。
内心かなり驚いているのを隠しつつ、その話に関連した話を出して何とか話題を逸らす。混乱する頭を整理しながらの会話はかなり骨が折れたが、まぁ大勢の前で間違った事を言わなくて助かった。
―――にしても、グレイフィアさんフリーなのか?にしては人妻のような色気のあるオーラがあるけど。
※―――
「リアス姉さま!お帰りなさい!」
馬車から降りてすぐ、部長の下へ紅色の髪をした少年が駆けていく。さながら電車の中のイッセーのように抱き着こうとした彼を、今度は回避を挟まずにそのまま受け止めた。
その事にちょっぴり複雑そうな表情を見せながらも、姉さま、という言葉から色々察したのか、イッセーは平常心を装っていた。『気』は若干乱れているがな。
「ただいま、ミリキャス。大きくなったわね」
「はい!――あっ、リアス姉さまこそ、たいへん美しくなられて」
「あらあら、挨拶のお勉強も進んでるみたいね。ただ、もう少し自然な態度を意識した方が良いわよ。まぁ、まだまだ習いたてなんでしょうけど」
「……あ、あの。部長、この子―――じゃなくて、この方は?」
言葉を選びながら、イッセーが問う。それに対し、ミリキャスと呼ばれた少年の頭を撫でていた部長は、あっけらかんと答えた。
「この子はミリキャス。お兄様の子供よ」
「あっ、ご、御挨拶が遅れました。僕はミリキャス・グレモリー。今後ともよろしくお願いいたします」
「えっ、あっ、は、はい!ご、ご丁寧なご挨拶をどうもありがとうございます!俺―――じゃなくて、自分は兵藤一誠などと申しており!」
「テンパり過ぎだろ。別にフォーマルな場でも無いんだから多少無礼でも肩の力抜いた方が良いぞ」
「そ、そうは言ってもよぉ……ん、んんっ。えっと、俺――いや、僕は兵藤一誠って言います。僭越ながら……僭越ながら?と、とにかく部長――リアス・グレモリーさまとお付き合いの程をさせていただいている所存で……」
「あっ、貴方が兵藤一誠さまですね!お噂はかねがね」
「そ、そうなんでございますか!?」
「だーめだこりゃ」
一応アドバイスはしたものの、イッセーの緊張っぷりは変わりなく。意識しすぎて慇懃無礼になりつつある物の、それを気にする素振りも無く(或いは慇懃無礼を知らないのか)普通に会話をするミリキャス。
というか、母親が違くてもミリキャスなんだな。名前と言い、見た目と言い。いや、見た目は良く知らないけど。
「お嬢様。そろそろお部屋の方に移動なさっては」
「えぇ、そうね。皆も長旅や慣れない雰囲気に疲れているでしょうし。何よりお父様とお母様に帰国の挨拶もしないといけないもの」
「旦那様は現在外出中ですので、お顔合わせは帰宅後となる夕餉のタイミングだと仰られていました」
「あら、そうなの。なら仕方ないわね。とにかく、皆も荷物を置きたいでしょうし、部屋に向かいましょう」
部長に着いていく形で、俺達は巨大な城の中へと入っていく。懐かしいなー、なんて思いながら中を見渡すが、全然見覚えのある場所は無かった。と言うか、俺はサー坊の部屋くらいしか入った事が無かった。何が懐かしいだよ、図々しいにも程があるわ。
中に入って、皆が皆周囲を見渡す中、上の階から女性の声が聞えてきた。声の聞こえた場所へと視線を移すと、そこには部長と同い年に見える女性が。
「あら、もう帰っていたのね」
コツコツと規則正しい音を立てて階段を降りてきた彼女に、イッセーが鼻の下を伸ばす。まぁ、部長にそっくりだし仕方ないだろう。―――いや、部長
「……イッセー。貴方は私よりも、私の
「えっ、いやいやそんな――――って、えぇええええええええっ!!?お、お母様!?部長の!?」
お手本のようなリアクションで、イッセーが驚く。ただ実際はそう驚く事も無い。なぜなら悪魔は、一定の年齢を超えると姿を魔力で変える事が出来るようになるからだ。わざと年寄りを偽装したり、いつまでも年若い姿で居たり。似たような事は俺でもできるが、正直する必要はないと思っている。ただまぁ、年を取ればまた違うのだろうが。
「ぶ、部長と同年代にしか見えませんよ!?」
「あらあら、嬉しい事を言ってくれるわね」
「悪魔は一定の年齢を超えると、見た目を好きなように変える事が出来るの。お母様は普段からこの年頃の姿にしているわ」
「見た目を、変える事が……?」
「つまり松田だか元浜だかが言っていた、ロリババアも夢ではないって事だな」
「お、おぉ。アイツ等が聞いたら血の涙でも流して喜びそうだ」
「あら、久しぶりね輪廻君。式場で会った時は話せなかったけど、元気そうで何よりですわ」
「ご丁寧にどうも。おかげさまで、今日も大事なしですよ」
イッセーとくだらない事を話していると、彼女は俺に挨拶をしてきた。目つきは鋭いが、なんだかふんわりおっとりとしたオーラを纏った人である。ただ怒ると滅茶苦茶怖い。昔はよく、サー坊にいらん知恵を与えて怒られたっけな。
なんだか親し気に会話をする俺達に、イッセーを始め全員が驚いたような顔をする。そして、代表するかのように部長が問いかけてきた。
「あ、貴方、お母様と知り合いなの?」
「はい。サー坊と密かに会っている事がバレて、成り行きで」
「サーゼクスの命の恩人でもありますし、二人の友情を断ち切るのも忍びなかったものですから。特に最初『このような怪しい男とは関わらない事』と言った時、滅多に泣く事の無かったあの子が号泣して」
「お、お兄様が……?」
信じられない、と頭を抱えた部長に代わり、イッセーが恐る恐る口を開く。
「あの、命の恩人、と言うのは……?」
「文字通りですわ。アレはまだ、権力を握っているのが今でいう旧魔王派だった時代の話。貴族という物に恨みを持つ集団に、あの子が攫われてしまって、それを助け出したのが彼なんです」
「え、サーゼクス様が?」
「えぇ。今ではあの子は魔王の一角を担い、最強との呼び声も高い。しかし当時は弱く、才能は有れどそれを振るう事が出来なかった。だからそれを狙って、無差別に貴族を攻撃している集団に連れ去られたのです」
「んで、ソレを通り魔的喧嘩の真っ盛りだった俺が邪魔して、その時にサー坊に懐かれたって訳だ。アイツが強くなりたいって言いだしたのも、それがきっかけだったらしい」
「そ、そんな事が……」
開いた口が塞がらない、という様子。それはイッセーのみならず、全員がそうだった。グレイフィアさんすら目を丸くしていたし、知らなかったんだろう。思えばライザーとの一戦の際、彼女は俺の事を微塵も知らない様子だったし。
今更俺とサー坊が仲が良い理由が判明した所で、彼女は一度咳払いをして話を切り替える旨を言外に示し、そしてとても経産婦とは思えないような瑞々しい笑顔を見せ、優雅にお辞儀をして、言った。
「とにかく、今日からよろしくお願いしますわ。私はヴェネラナ・グレモリー。リアスの母です」
ここまで長い事待たせておいてあまり話が進まないという事を、遅れながら謝らせていただきます。
すまない。こんな言ってしまえばどうでも良い回に一万字も使ったダメな作者ですまない。
因みに聞かれる前に答えておきますが、サーゼクスの妻がグレイフィアでもリーシアでも構わないと世界が判断しているのは、彼について大事な事は『隔絶結界領域に入り後の世代(つまりイッセー達)に全てを託す事』ですので、ソレを無くさない限りは何が起きても問題はありません。
『隔絶領域結界に入って永い戦いに身を投じる事』さえ変えなければ、何も問題は無いのです。