ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う 作:うぉっ、でっか…
夏休み、初日。俺はいつも通り全裸の部長と共に目を覚まし(まだエッチな事は一度もしていない。どうしても俺がヘタレてしまうのだ)いつも通りの時間を過ごして、部長の実家へと移動した。
家に着くまでは驚きの連続だった。いや、何なら着いてからも驚きが連続していた気がする。部長と同じ年ごろにしか見えないお母さまに、魔王様と輪廻の関係。その他諸々、聞いているだけで気疲れしてきた。
それで、割り振られた部屋でしっかりと休もうかと思ったら、部屋は教室くらいのサイズがあった。家具は全部高級品(だと思う)だし、ベッドなんて天蓋付き、カーテン付きの超巨大ベッドだ。何人がかりでベッドメイクをしているのか、試しに聞いてみたくなるほどのサイズだ。緊張してリラックスする所ではない。
結局疲れを取ることができないままに夕食の時間になり、俺はやたらと豪華な食卓で、これまた豪華な食事を頂くことになった。作法が分からず手をつけられなかった俺に、隣に座る部長が色々教えてくれた。現在交際中という事で、こうして隣に座らせてもらっているのだ。本当なら、眷属と主とは離れて食事を行うものらしいけど。
因みに、木場達は特に困った様子もなく綺麗な所作で食事をしていた。勿論輪廻も、ギャスパーもだ。正直この二人は俺と同レベルだと思っていたから、ちょっと驚いた。俺よりもずっと年下のミリキャス様ですら何てことないようにできているし、一人だけ常識知らずみたいで恥ずかしい。
「いやぁ、今日はめでたい日だ!これからグレモリー家の一員となる、一誠君が家に来てくれたのだからね!」
部長のお父様……いや、お義父様が、ワイン片手に嬉しそうに言う。グレモリー家の一員。そうだよな。このまま俺は、部長と結婚して一誠・グレモリーに………ん?婿入り?いやまぁ貴族の、家を継ぐことができる一人娘の結婚相手なんだししょうがないか。兵藤家が俺で終わりとなると、なんだか親父とお袋に申し訳ない気もするが……もし仮に部長と付き合えていなければ、俺は誰と交際する事も無く一生を終えていただろうし、結果は同じだ。
「ここ最近は吉報が多い。リアスや眷属たちの活躍が認められつつある事に加え、封印を命じられていたギャスパー君の解放。果てはリアスに婚約者だ。なんだか、一生分の幸運が消費されようとしている気すらするよ」
「もう、貴方ったらそんな縁起でもない……んんっ。ですが、そうですわね。まさかあのリアスが、男を連れて来るだなんて」
「お父様もお母様も、私を何だと……」
「何度縁談を持ってきても、全て一瞥することなく拒否したのはどこの誰ですか。相手の面子を潰さないためにと、私達が一体どれほどの……」
「まぁまぁ、せっかく皆が集まってくれているんだ。口喧嘩はほどほどにね」
口喧嘩があっても無くても、俺は緊張しっぱなしなんですけどね!
一緒に食卓を囲んでいるのは、部長のお父様にお母様。周囲を直立不動のメイドたちに囲まれ、元一般市民の俺には胃に穴が開きそうな緊張感がのしかかっていた。
最初の挨拶の時なんかもう、汗がダラダラ流れていたし。一応部長との交際が決定したあの会場に居たとしても、改めて自分の口から説明するとなると、それはもう……うん。
今は大分マシだけど、さっきまでは顔が真っ青だったはずだ。
「ところで一誠君。まずは君に、いくつか聞きたい事があるのだが」
「はっ、はい!!なんでございましょうか!?」
「ははは、そんなに緊張しなくとも構わないさ。―――まず、君の事なんだが」
ビシィッ!!と姿勢を正した俺に、お父様は軽く笑ってすぐに、真剣な表情を見せる。鋭く睨みつけるようなその瞳に、俺は自然と生唾を飲み込んだ。
「イッセー君、と。読んでも構わないかな?」
「―――へっ?あ、あぁ、は、はい。それは、全然」
「そうか!いやいや。実を言うと、一誠というのは発音が難しくってね。せっかく家族になるんだ。ラフな呼び方でも構わないだろうと思っていたのさ」
「そ、そうだったんですか……」
「そうだとも。だから是非、私達の事も楽に―――いや、ここは厳命しておこう。私達はお義父様、お義母様と呼ぶように。勿論君の、だ。君のお義父様、お義母様だからね」
お、お義父様、お義母様……!?な、なんて素敵な響きなんだ!なんだか部長との関係が一歩先へ進んだような気がする!
隣の部長が若干照れくさそうにしているのを見つつ、俺はお義父様の言葉にしっかりと頷いた。
……しかし、こうもあっさりと受け入れてもらって良かったのだろうか。俺は下級の転生悪魔に過ぎないし、部長は純血の貴族悪魔だ。ライザーに忠告された通り、身分の差とかで難色を示されるモンだと勝手に思っていたけど。
「……あの、俺からも一つ、いいですか?」
「む、何かな?」
「いえ、その………どうして、こう。俺の事をここまで歓迎してくれるんですか?部長と俺だと、普通は釣り合っていないと嫌な顔をするものだと思っていたんですけど」
「あぁ、娘は君にはやらん!というヤツか。君がそういうタイプが良いなら、一度やってみても良いが」
「そ、そういう意味じゃなくってですね!―――その、俺は部長が好きです。悪魔になって一生の重みが増えた今でも、一生愛していると言えます。けど、第三者の視点で見れば、俺は下級の転生悪魔で、部長は貴族で純血悪魔。普通は結婚どころか交際すら認めない物だと思うんです」
「あぁ、
「き、気にしないって……はっきり言えば、俺みたいなどこの馬の骨とも知れない男、普通は受け入れられませんよ!?自分で言うのもなんですけど、イケメンでも無けりゃ頭も悪いし、敬語も作法もてんでダメで、おまけに人目も憚らずおっぱいおっぱい言っちゃうような変態です。普通、大事な娘には決して近づけたくないような男だと思うんっすけど……」
「……なるほど」
立ち上がって思いの丈を叫んだ俺に、お義父様は静かに呟いて、ワインを飲む。飛び出した言葉の中に、部長との交際に関して感じていた後ろめたさ的な物のみならず、ここ最近俺が抱えていたモヤモヤも含まれていた事に遅れて気づき、やっちまったと口を抑えたくなるような気持ちになる。
見れば、お義母様も部長も、何なら皆も俺をじっと見つめていた。驚いたような物、悩まし気な物、等々。含まれた感情がやけに鋭く知覚されて、居心地の悪さが加速する。
そんな中、お義父様がゆっくりと口を開いた。
「君はいくつか勘違いしているようだ」
「勘違い、ですか?」
「あぁ。まず初めに、私達は出自や身分なんかで他人を判断しない。リアスが君と決めたのなら、その判断を信じ、ただ祝福する。それだけだよ。生まれも育ちも、容姿も頭脳も作法も何もかも、どうでも良い。それを加味して君が良いと、他ならぬリアスが決めたのだからね」
「それは」
「それに。君とは何度か会い、その姿を見て、ある程度私の中でも君という人物の像が定まっている。その上で、君ならリアスを任せられる。君なら家族に迎え入れられる。そう判断したんだ。ずるい言い方になるが、私の判断を君の感情で否定するのは、どうかと思うぞ」
何か反論しようとして、すぐに何も思いつかない事に気づき、ただモゴモゴと口を動かす。そんな俺を見ているのかいないのか、お義父様は言葉を続ける。
「君はリアスを愛していて、リアスは君を愛している。そこに第三者の存在は必要かい?いや、不要なはずだ。大事なのは互いが互いをどう思っているか。どこまで想い合えているか。これから、どう想いあっていくか、だ。それでも不安だというなら、変えられる部分だけ変えれば良い。力が無い事を嘆くなら鍛えれば良い。頭が悪いというなら勉学に励めば良い。見た目に自信が無いなら、美容を学ぶ事も良いだろう。作法なんて、ほんの少しの見栄えさえ整えれば、後は思いの問題だ。相手への敬意があれば、それ以外は飾りに過ぎないのだよ」
お義父様の言葉に、俺は開くに開けなかった口が開いたのを感じた。そして次の瞬間には、落ち着く間も無く言葉が飛び出す。
俺の胸の奥に、ずっとつっかえていた物が。
「ッ、でも、俺じゃ―――俺じゃ輪廻みたいにはできないんです!どれだけ鍛えても力じゃ遠く及ばない。どんだけ勉強してもアイツに勝てる分野はまるでないし、見た目なんてアイツがちょっとでも努力すりゃ、俺が埋めようとした差なんて容易く抜かされるに決まってる!持ってる神器だって、俺もアイツと同じくらい強いはずなのに、肩を並べるどころか、背中を追いかける事すらできない!!同じ年齢で、同じ変態で、同じ戦い方で同じ考え方で、色々な物が同じだったり似ているのに、全部俺はアイツに劣ってる!劣り続ける!!そりゃ、努力はします。してますよ!でも、不安なんですッ、俺………このままじゃ、部長の愛想つかされるんじゃないかって……!!」
「イッセー!」
ビクッ、と体が震える。暴走していた俺を止めたのは、部長の声だった。すぐに冷静になって、俺はよりによってこんな場所で、なんて事を言ってしまったんだと凄く後悔する。しかし過ぎてしまった物は仕方ない、と無理矢理割り切って、恐る恐る部長の方を見る。
すると、その目がまるで今にも泣きだしそうなように、潤んでいるのが分かった。
そして次の瞬間には、優しく抱きしめられていた。
「ぶ、ちょう?」
「―――そういう、事だったのね。貴方が最近、ずっと元気が無かったのは。貴方の様子が、おかしかったのは」
「っ、そ、そんなに変だったんですか……?」
「えぇ。明るく振舞っていても、沈んだ表情をしている機会が多かったもの。誰でも気づくわ。けどその原因がわからなくって、聞くに聞けなくって、今まで放置してしまっていた。―――本当は、すぐにでも誤解を解いてあげないと、いけなかったのに」
慈しむような声と共に、俺の頭を撫でる。なんだか無性に落ち着く。犬猫が飼い主に撫でられるのってこういう感じなのかな、なんて頭のどこかで思う。
顔は見えないながら、泣いているように聞こえる声の部長は、詫びるように話す。
「確かに、貴方に強くあって欲しい。貴方に賢くあって欲しい。社交界に大手を振って出られるくらいに作法を身に着けてもらえたら嬉しい。そう考えている部分は確かにある。けれどそれを強いるつもりも、それが出来なければダメだというつもりも無い。まして、私が愛想をつかすだなんて、そんな事は絶対に無い。誓うわ。私は、例え何があっても貴方を愛し続ける」
「―――部長」
「それにね、イッセー。貴方は輪廻と自分とを比べて悲観的になっていたようだけれど、そんな事する必要は全く無かったのよ?―――だって私が好きなのは、私が愛しているのは、輪廻じゃ無くてイッセーなんだもの」
その言葉に、俺は全身の力が一気に抜けていくのを感じた。
そうだ。部長は、俺を愛していると何度も言ってくれていた。毎朝、毎晩、昼までも、俺と一緒に居てくれた。それは決して将来輪廻のようになれ、と丹精込めて育てていたわけではなく、俺が、兵藤一誠が好きだからだ。
急に今まで悩んでいた事がバカバカしく感じられてきて、同時に輪廻に対して申し訳ない気持ちが浮かんでくる。なにせつい最近はアイツに比較的冷たく接する事が多くなったし、今なんてなんか当て馬みたいな使い方しちまったし。
―――アレ、今の状況よくよく考えたらやばくね?お義父様、お義母様への挨拶を済ませたばかりの食事の時に突然立ち上がって親友に感じていた劣等感を爆発させて、実は何てことはありませんでしたで解決したって……輪廻に対してだけでなく、この場の全員に申し訳が立たない気がしてきた。
挨拶の時とはまた違った冷や汗が流れ出す俺から、部長が丁度良いタイミングで離れる。そろそろ食事に戻りましょう、とのことらしい。
「………えっと、その、なんか、すみません。溜まってたもんが弾けちゃったといいますか……」
「いいさいいさ。若いうちにそういうのを何度も経験しておくのが人生のコツだよ。―――それとねイッセー君。最後に一つ付け足しておきたい事があってね」
「は、はい。なんでしょうか」
「性欲が強いのは私的には良い事だよ。何せ悪魔は出生率が低いからね。数をこなしてもらわないと、孫の顔を見る日が遠くなってしまう」
「か、数をこなすッ!?」
真顔でとんでもない事を言ってくださったお義父様に、皆は「解決したっぽいな」と言いたげな顔をして、各々食事を再開するのだった。
因みに俺は、その後もお義父様からの質問攻めを受ける事になった。父さんと母さんへのお土産は何が良いか、とか、色々と。
流石に、城をプレゼントするのはどうだろうか、と言われた時はぶっ倒れかけたが。
※―――
「―――ですので、近代における魔王とは―――」
本来、修行漬けになるはずだった俺の夏休みは、始まってから数日間、殆どこうした座学の時間に費やされていた。俺に不足している一般教養から、悪魔の常識に悪魔文字。後は礼儀作法のお勉強を、毎日みっちりと行っていた。
おかげでかなり上達した気がする。とは言え、ギリギリ人様に見せられる程度、だが。
隣に座るミリキャス様は、真剣な顔でノートと黒板とに視線を行き来させ、一定の速度で文字を書き込んでいた。勿論悪魔文字だ。人の手で書くにはそれなりに難易度の高い文字だと思うのだが、教師役をしてくれているミリキャス様お付きの家庭教師の人の言葉をそのまま文字に起こすかのように、淀みなく書いている。
対する俺はと言うと、まぁこうして今の状況を報告する程度には暇を持て余している―――言ってしまえば、ノートの記録が追いついていないという訳で。一応前日の内に予習をしたりして対応しているが、それも気休め程度。勿論内容はしっかりと頭に叩き込んでいるが、多分ミリキャス様ほど身になるような勉強はできていない。
一応、駒王学園なんて難しい高校に入学できるくらいだから酷くバカという訳でもないんだろうけど、そこまで頭が良いという訳でもないのが現実。ミリキャス様が10覚える間に、俺は5くらいしか理解できない。
「お勉強は、はかどっているのかしら?」
「あっ、おばあさま!」
「お義母様!」
俺とミリキャス様が同時に声を出す。ドアを開けて入って来たお義母様に、二人揃って頭を下げた。それに片手を上げて挨拶を返し、家庭教師の人に一言二言聞く。恐らく、俺達の指導者側から見た態度とか成長とかを聞いているのだろう。教師役の人の言葉に満足げに頷いて、お義母様は優しい笑みを浮かべて、メイドにお茶を持ってこさせた。
ミリキャス様は紅茶。俺は緑茶だった。別に日本人は緑茶以外飲めないって事は無いんだけども。
「今日はイッセーさんの教育の最終日ですけれど、早めに切り上げる事になっています。理由は既に、リアスから聞いていますわね?」
「はい。若手悪魔の行う、恒例の行事だとか。会合のような物だと」
「その通り。これから自身のライバルとなる者達と共に、魔王やその他重鎮の前で決意を表明し、互いを意識し合う場。眷属であり、そして伴侶である貴方は、特にその振る舞い一つ一つに気を払うのですよ。―――なんて、言うまでもありませんわね」
お義母様の言う通りだ。俺の行動一つで、部長の評価は最高にも最低にもなりうる。敬語は苦手だとか、フォーマルな場は肌に合わないとか、そんな事を言っている場合ではない。
それにその行事から逃れた所で、どうせ大勢の前に立つような機会はいずれ来る。なら、今の内に本番の空気ってヤツを味わった方が得だ。
「そういえば、赤龍帝様もついていくのですか?」
「えぇ。サーゼクスが無理を通したようですわ。全く、普段は滅多に我欲を表に出さない子なのに、一度言い出すと頑として譲らないのですから……」
何かを思い出すように呟くお義母様から視線を逸らし、ミリキャス様を見る。少し悲しそうな顔をしているが、その理由はたった一つ。輪廻が俺達と一緒に行ってしまうからだ。
というのも、ミリキャス様はサーゼクス様の息子。そう、あの輪廻を狂信しているようにすら見えるあのサーゼクス様の息子なのだ。だから、それこそ物心つく前から最強の赤龍帝について毎日話し続けられたらしく、かなり憧れというか、幻想を抱いていたそうだ。
実際は俺レベルの変態だけど。
けど輪廻も輪廻でファンには優しいというか、子供を邪険にはしないらしく、意味も無いのに禁手を使って見せたり、抱きかかえて空を飛んでやったり(勿論音速を遥かに上回る速度だ)して、かなり懐かれた。
今では家族以外でミリキャス様と最も仲が良いんじゃ無かろうか。―――ギャスパーと言い、アイツ実は男の方にも興味が……なんて。流石に無いか。
……無いよな?
「とにかく、急ぎ準備をなさって。そろそろリアス達も、輪廻君も戻ってくる頃ですわ」
お義母様の言葉にうなずき、俺は部屋を出て、自室へと向かう。フォーマルな場に出かけるのだ。一応、髪型くらいは整えておかなくては。
因みに、部長たちも輪廻も、それぞれ冥界観光に繰り出していた。部長と眷属組、輪廻と黒歌さんのカップルで別れて行動しているらしいが、一つだけ俺から言える事がある。
マジで羨ましい。
イッセーの心の闇が晴れた回でした。
こんな軽いノリで良いのかと思う方もいるでしょうが、このまま長々と引っ張ってしまうと原作以上にギャグチックなエロいノリで、別件と一緒に雑に解決という話にしかならなかったので泣く泣くこういう展開にしました。
原作と違って、部長父も部長母も家族レベルの感情を向けてきてくれたわけですから、その包容力(長い年月を生きている事に由来する余裕など)にやられてつい本音が漏れてしまって―――という話に。
この作品の彼は比較的底抜けに明るいというか、面倒くさい事は考える素振りは見せても適当に放り投げるタイプなので、今回のように抱え込んだのはレアケースです。そしてそれももう二度とないでしょう。
なぜなら彼の最愛の女性が、明確に『彼』だけを愛していると告げたのですから。
因みに輪廻はダシにされたような感覚はあってもあまり気にしてはいません。イッセーがスッキリできたなら良かった程度に考えています。