ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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熱い男

「ねっ、ご主人様。私今日はお散歩したい気分にゃん」

「散歩か。せっかくならお洒落な喫茶店とか、行ってみるか?」

「にゃんですとッ!?そ、そそ、それって――ッ!!」

 

今日はアーシアの所へ寄らず、そのまま家に帰って来た。

することも無いので膝の上に猫モードの黒歌を載せ、ソファでまったりと本を読んでいたのだが、その時突然散歩に行きたいと言われた。

 

無論断る理由も無いし、せっかくならデートっぽいのでもしてみるかと尋ねてみたら、まぁ面白いくらい顔を真っ赤にして狼狽していた。

原作だと、狼狽させる側だった気がするが。これも俺がこの世界に居るが故の変化なのだろうか。

あの夢幻人なる存在然り。

 

「あぁ、ただ耳と尻尾は偽装しておいてくれよ?もしお前の存在がこの町の悪魔に知られるようなことがあれば、最終的に悪魔を根絶やしにする必要があるかもしれん」

「わ、わかってるにゃん。だいじょぶだいじょぶ。―――そ、それよりも!ちょっと準備してくるにゃん!」

『おーおー。生娘みたいに慌てて。相棒がさらっととんでもない事を言った事に気づかなかったか。勿体ない奴』

 

何がどう勿体ないのかわからんが、まぁ良いだろう。

 

…しかし、黒歌とデートか。

せっかくだし俺もちゃんと着替えたりするか。

 

『…はぁ。そこまで意識しているなら、さっさと愛でも何でも囁けばいいだろうに』

「うっせ。俺はもしもを考えて足が止まっちまうヘタレ野郎だよ、どーせな」

 

※―――

 

道行く人が、俺達を……正確には俺の隣を歩く黒歌を、すれ違いざまに二度見する。

遠巻きに眺めている人がいれば、友人と共に「声かけちゃう?」とか話している輩までいた。

 

まぁ、チャームポイントの猫耳と尻尾を隠しているとはいえ、黒歌は相当の美人。

モーターショーのコンパニオンみたいな体のラインが透けて見える服を身に纏っている為に、そのそこいらのグラビアアイドルを優に上回るボディが強調されており、特に男性の目を引いてしまうようだ。

 

そんな彼女と腕を組んでいる俺に対しては、特に女性から色々と陰口を言われているらしい。

何と言っているかは聞こえないが、きっと男性と違って黒歌を見ても「綺麗な人だな」程度にしか思わないから、冷静に「なんであんな男があんな美人と歩いてるんだろう」とか言われてるんだろうな。

猥談云々を知らなければ俺はそこそこ美男だと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。

少なくとも、黒歌と一緒に歩いていて陰口を叩かれるくらいには残念なようだ。

 

「にゃはは、凄い注目されてる」

「なんだか居心地悪いな……ま、黒歌みたいな美人の隣を歩いてりゃ、こうもなって当然か」

「――んもう。ご主人様ってば」

 

俺から顔を背けて、何か小さく呟く。

幻術の耳ながら、なぜか赤くなっていた。

まさか、美人と言われて照れたのだろうか。

 

『(やれやれ、相棒はもう少し女心を知った方が良いな)』

(どういう意味だオイ)

『(そのままの意味だ。ほら、俺なんかと話してないで、そこの猫魈に構ってやれ)』

 

いまいち何が言いたいのかわからないが、取り合えず俺に対して呆れているのだけは良くわかる。

だが確かに今は黒歌とのデート中。(相手がどう思っているかは知らないが)

声も酒の趣味もおっさんなドラゴンに構ってやるよりも、可愛らしい猫耳少女(今は人耳だけど)と話している方が良い。

 

「ほら、あの喫茶店。今時見ないだろ、あぁいう雰囲気の店」

「あ、本当。外装もシックな感じでお洒落にゃん」

 

少しの間外観を眺め、そして店内へ入っていく。

 

店は前に来た時同様、殆ど人がおらず、よく経営できているなと思ってしまう。

しかしこの雰囲気は嫌いじゃないので、このままずっと経営していて欲しくもある。

 

「今日のおすすめ一つと……黒歌は何にする?」

「あ、私も同じのが良いにゃん」

「かしこまりました」

 

無表情なメイド服の男性(!?)に注文を言い、待つ間何気ない日常会話に花を咲かせる。

 

最近外であった事。

白音……小猫は今日も元気そうだったという事。

後、なんでか俺が命を狙われているという事。(話した時とても取り乱していた。まぁ、俺の脅威になり得ない存在だろうし問題ないとは言っておいた)

 

「いやぁ、赤龍帝ってのも楽じゃ無いな。こうして変な所で恨みを買う事になるとは」

「……その、ごめんなさい」

「え?いや、なんで?」

「…だって、ご主人様が命を狙われてるのって、私のせいじゃ」

「え?うん?あっ?あー……なるほど、そう思っちゃったわけか」

 

少し時間はかかった物の、黒歌が取り乱し、落ち込んでしまった原因は理解できた。

 

どうやら俺の説明不足のせいで、コイツは『指名手配されている極悪人である自分と一緒にいるせいで命を狙われてしまった』と勘違いしてしまったらしい。

確かにこいつは主殺しの大罪猫として主に悪魔から狙われているが、しかし今回はまるで関係ない。

それどころかこいつ関係で襲われた覚えは一度もない。

 

早急に訂正してやらないと。

 

「違うよ。これは俺の自業自得。夢幻人って組織が、アイツらの信仰してる存在の為につって俺を狙ってるだけだ。黒歌については微塵も言及されてねぇし、問題ねぇって」

「……そう、にゃん?」

「そうそう。――ってか、こないだ言ったばっかじゃねぇか。もしお前が原因で悪魔全体と戦う事になろうが俺はお前を捨てたりしねぇし、全霊を賭して守るって」

『(……ほんと、これで付き合ってないんだからなぁ)』

 

うるさいぞドライグ。いつかはそこもはっきりさせるつもりなんだから口を出さないでくれ。

 

俺の言葉を聞き、涙を流す黒歌。

……多分、こいつがこんなに俺に懐いてきたのは、俺のこういう発言が原因なんだろう。

意識していなくても、どうしてもなんだかキザったいというか、格好つけてるようになつてしまうのだ。

そのせいで、好意をほのめかす感じになったりして、若干勘違いさせてるんだろう。

 

……まぁ、最初の方こそ黒歌相手に好意なんざ抱いてなかったが、今は………

 

「仮にも赤龍帝だぜ?そうそう負けたり死んだりなんざしねぇよ」

「おまたせしました。本日のお勧めブランドでございます」

「あー、ほら。コーヒー来たし飲もうぜ?泣いてないでさ」

「う、うんっ」

 

無理矢理作ったんだろう笑顔は、涙でグシャグシャだったが、それでも俺は、美しいなと思った。

 

※―――

 

店の奥の、窓の外が見えない席に座って過ごしていたせいで、外に出たときにはすっかり陽が沈んでしまっていた。

時間を忘れる、とはまさにこのことだろう。

 

しかしまぁ、俺の帰りが遅いのはいつもの事。

なんかすごいドラゴン(二人のドライグの認識はこの一言なのである)が宿っているから、不審者に襲われても大丈夫だから、だそうだ。

 

遅くなってしまったなら、とことんのんびり帰ってやろうという事で、行きとは違いちょっと遠回りをして家に向かっていたのだが、とある場所を通っていた時に、あり得ない気配を探知した。

黒歌の方も、何かの匂いを嗅ぎつけたらしい。

 

「……この気配、悪魔とエクソシストか」

「血の匂いもするし……多分、犠牲になった民間人がいるにゃん」

「そうか。―――ちょっと、行ってくるよ」

「…もう、民間人の方は殺されてると思うけど」

「まぁ、一応な。――お前はどうする?」

「…待っておくにゃん。ここらで悪魔って言ったら、もしかしたら白音と鉢合わせちゃうかもしれないし」

「わかった。じゃあ、ちょっと待っててくれ」

 

お面を取り出し、そのまま気配のする場所へ向かう。

今日は上下ジャージじゃないが、まぁそっちにこだわりは無いしいいだろう。

 

……恐らく俺の予想通りなら、悪魔の気配の正体はイッセー。

エクソシストの方は、はぐれのエクソシストであるフリードだろう。

 

奴は悪魔祓いの天才でありながら、殺す事に悦を見出し、人間であっても悪魔と関わった存在は惨たらしく殺すようになった狂人。

イッセー一人で戦うには危険な相手だ。

 

一応原作では負傷する物の駆け付けたリアス達によって救出されるが、まぁ万が一という事もある。

俺が介入しておいて損はないだろう。

 

「よぉ、またピンチみたいだな」

 

※―――

 

悪魔の仕事。

それだけ聞くと、魂だの命だののやり取り…って思っちまうけど、意外と今の悪魔は違うらしい。

勿論そういう仕事もあるにはあるらしいけど滅多になく、金品を貰ったりするのが基本だ。

 

で、色々あって悪魔になっちまった俺も、最近はこうして仕事をこなすようになったんだけど……俺を呼び出した人が、なぜか死んで居た。

 

正確には殺された、だ。

だってあんな、あんな惨たらしい死に方、自殺なわけが無い。

 

大量の血が飛び散っている部屋の中には、その惨殺を行った男がまだいた。

 

名前はフリード・セルゼン。

白髪の十代くらいの見た目のソイツは、返り血で濡れていながらも愉快そうに笑っていた。

狂人ってのはきっと、こういうヤツを指すんだろう。

 

聞けば、悪魔を呼び出したから、って理由だけで俺の依頼主は殺されたらしい。

 

「う、うォおおあああああああああッ!!」

「うわ、なにいきなり叫んじゃってうるさ――っておぉっ!?神器持ちかよ悪魔くん!こりゃいい!神器持ちの悪魔ちゃんを刻んでみたいって、ずっと前から思ってたのさっ!」

 

許せねぇ!敵対している悪魔ならともかく、ただの一般人を殺すなんて!!

 

感じる恐怖をねじ伏せるために叫びながら、俺は神器を左手に出現させてフリードに殴りかかった。

けど、当たらない。紙一重で躱されて、背中を蹴られて壁にぶつけられた。

 

い、いてぇ…!けど、まだ蹴られただけだ!

あの見るからにやばそうな剣はまだ使われてねぇ!

 

「ひゃっははは!弱い、弱っちいっすよ悪魔くん!体の使い方全然だめ。素人ちゃんですのん?しょうがねぇから、俺っちが殴り方教えてやんよぉッ!!」

「ぐぁっ!?」

 

きっとコイツはわざと武器を使わねぇんだ。

俺が弱いから、こうして拳とかで攻撃して遊んでいやがるんだ。

 

ちくしょう、ムカつく。ムカつくムカつくムカつくッ!!

こんな人殺し野郎にすら勝てねぇのかよ、俺!

それにこの状況でも、神器はうんともすんとも言わねぇ!

 

再び吹っ飛ばされてフリードから離れた時、俺は行き場のない怒りをぶつけるように、床を神器をまとった手で殴りつけた。

力いっぱい、拳を打ち付けた。

 

――すると、突然力がみなぎるような感覚がした。

 

フリードの方も、何か訝しむようにこっちを見ている。

 

「…今、床を殴ったから力が増した…?も、もう一回っ!」

 

ドゴッ!!と、さっきよりも強く、大きな音を立てて床を殴りつけた。

すると、また力が湧き上がってくる。

 

――もしかして、俺の神器の力…!?

 

「あらら?なんでか悪魔くんの力が増してるぞ?」

「これが、俺の神器の力だ…!!行くぜフリード、今度こそテメェをぶん殴ってやるッ!!」

「はぁ~!?下級悪魔くん風情が、ちょろっと強くなった程度で調子乗ってんじゃねぇーんですよ!!」

 

いつもよりも、もっと感覚が研ぎ澄まされてる気がする。

今なら何でもできる。――コイツに、勝てる!!

 

左手を思い切りフリードに向けて振りかぶる。

狙いは顔面、ど真ん中!

拳を振る速度も、さっきよりずっと速い!

これでいける。このムカつく顔、ぶん殴って――。

 

突然足に激痛が走り、体が固まる。

これはまさか、光の攻撃!?

 

「どうよ、この俺っちお手製対悪魔用祓魔銃!光の弾を発射するだけだから音無し火薬無しで周囲に優しい設計となっておりまぁす!当たると悪魔ちゃんは、気持ちよすぎて昇天しちゃうでしょ!」

 

話しながらもさらに数発撃たれる。

慌てて躱そうとするも、光の攻撃で足が上手く動かない。

全弾、当たってしまう。

 

「がぁあああっ!!熱いっ、熱いッ!?」

「ひゃっははは!!光は悪魔に猛毒。いくら一発一発はかなり弱いとは言え、数発も当たっちまえば動けねぇでしょ。――でもま凄いんじゃない?ほんとの下級悪魔くんだったら、ここでもうおさらばしてたわけだし?耐えてるだけ偉い!なんちゃって」

 

耐え切れずに倒れ込む。

当たった箇所が、まるで直接火であぶられてるみたいに熱くて痛い。

 

このままじゃ、死ぬ。

もし死なないにしても、きっと殺される。

 

あぁ、すみません。部長。せっかく悪魔にしてもらったのに、俺、何もできずに死んじゃいます。

親不孝だな、俺。悪魔は人間よりずっと長生きのはずなのに。

――はぁ、出世してハーレム、作りたかったな……

 

「よぉ、またピンチみたいだな」

「……お、お前は」

「んん~?一体全体どこの誰ちゃん?ま、知らないけど言葉的にこの悪魔くんのお友達かなんかでしょ。はーアーメンアーメン。こんなクソザコ悪魔くんとつるんじゃう悪い子は、血塗れオブジェに改造手術ってね!!」

 

突然部屋の中に入って来たのは、これで三度目になるお面の男。

また、俺を助けに来てくれたんだろうか。

 

――でも、フリード相手は不味い。

 

いつだかの悪魔には有効だった聖書の剣とやらも、狂人で人殺しとは言えただの人間なフリードには効かないはず。

それにこんな狭い場所じゃ、あの時みたいなアクロバティックな動きもできねぇだろうし。

 

男に襲い掛かるフリードを止めないと、と思って手を伸ばすが、届かない。

このままだと、あの人があの光の剣で殺され――。

 

「こんな玩具で俺を血塗れオブジェに?面白い冗談だな、はぐれ神父」

「んなっ!?」

 

振り下ろされた剣を、あろうことか男は素手で掴んだ。

す、すげぇ!

そういやあの人、堕天使の光の槍も素手で掴んでたし……よく考えたら全然危なく無かったな!

 

男は光の剣をなんと握りつぶし、驚いて硬直しているフリードの顔面を殴りつけた。

明らかに骨が折れる音が聞えた。

 

「ごばぁぁっ!?」

「弱い、弱すぎるぞ。そんな程度でよく調子に乗れていたな」

「ふ、ふざけてんじゃねぇーですよこの化け物野郎!!決めた、アンタ地獄行き。遊び無しでぶっ殺して」

「喋る暇があるなら動けっての」

「ぐごばぁっ!?」

 

男に再び殴られ、フリードは壁にぶつかる。

あまりに一方的なこの光景に、俺は唖然とした。

 

…さ、さっきまで俺をボコボコにしてたフリードが、今度はあの男にボコボコにされてる…。

 

本当にあの男はただの人間なんだろうか。

毎回俺がピンチの時に駆けつけてくれるし(あの自称魔法少女な筋肉ダルマのミルたんとの遭遇時は来てくれなかったけど)しかも必ず一方的に勝つし。

仮にも相手は堕天使や悪魔、そして今はエクソシストだってのに。

 

「む、無理無理無理無理カタツムリッ!こんな化け物系男子相手するつもりとかねぇんですよこっちは!ささっと退散させていただきましょうかねぇっ!」

「させると思うか?人一人殺しておいて、お前だけたった数回殴られて逃げられると?」

「だーかーら。悪魔と関わっちゃうようなド腐れ人間は殺してもノーカンなんですノーカン!んでもって悪魔くんを庇っちゃうような君も腐れ系男子に見事認定!次は殺す。必ず殺す」

「次は無い。お前はここで終わ――」

「きゃああああああっ!!」

 

突然、部屋の入口の所から悲鳴が。

甲高い、女の子の声。

聞き覚えがある。この声の主は。

 

「アーシア…」

「っ、こ、これは…!?」

「おんやぁ?助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。結界は張り終わったのかしらん?でもせっかく張ってもらった所申し訳ないけど、ちょいとこの悪魔…というか悪魔の知り合いくんが強敵なんでね。涙ながらの敗走ですよ」

「答えてください!この、壁の…この人は、何があったんですか!?」

 

金髪のシスター。俺がつい最近一緒にハンバーガーショップに行った子だ。

困ってる所に出会ってな。悪魔的にはダメだろうけど、可愛い子だったし、つい放っておけなくて。

……でもまぁ、俺より先に輪廻と知り合ってたらしいし、なんかいい感じになってたんだけどさ。

アイツの話する時だけ、すっげぇ目が輝いてたっていうか。

 

で、そんなアーシアは、フリード相手に壁の死体について質問した。

きっと、なんとなくわかってんだろう。

これをやったのは悪魔である俺でも、その仲間らしきお面の男でもなく。

神に仕え、悪魔から人を守る立場にあるはずのフリードだと。

 

「んー?あぁ、ソイツは悪魔を呼び出す常習犯だったし殺したよん。んでそっちで寝っ転がってんのが悪魔くんで、そこのお面野郎は悪魔くんのお友達って訳。ザッツギルティ」

「っ!?い、イッセーさんが、悪魔…?」

 

信じられないという目を俺に向けてくるアーシア。

くそっ、知られたくなかったのに。知らせるつもりなんて、無かったのに。

俺はあの一回以降会うつもりなんて無かったのに。

 

どうして、こんな所で再会しちまうんだ…!?

 

「あんれぇ?アーシアちゃん、もしかして悪魔くんとお知り合い?もしかして悪魔とシスターの禁断の愛!とか言っちゃう?――ま、その面白話は後で聞かせてもらうとして、そろそろドロンさせていただきまひょ。ほら帰るわよアーシアたん。悪魔くんとの涙のお別れでっせ」

「だから逃がさんと……!!」

「おーう怖い怖い。でもねーでも、僕ちん気づいちゃってんです。さっきアーシアちゃんが入って来た時、お面くんも動揺してたってコト。多分アンタもアーシアちゃんとお知り合いなんでっしゃろ?ならなら、この子の目の前で僕ちん殺すなんて真似、できないよねぇーえ?」

「チッ…」

 

物凄い殺気を滲ませながら、しかし男は動かない。

本当にアーシアと知り合いなのか。

 

立ち尽くす男と動けない俺を嘲笑いながら、フリードはアーシアを連れて出ていった。

 

「――()()()()

 

少し経って、男は俺の名前を呼んだ。

しかも、あだ名で。

返事をせずにいると、ソイツはつけていたお面を外してその素顔を見せた。

 

その正体は俺の予想していた通りでありながら、やっぱり驚きの隠せない物だった。

 

「…り、輪廻」

「色々聞きたい事はあるだろうが、聞いてくれ。――俺はアーシアを取り戻しに行く。あの畜生神父にやられっぱなしなのがまず気に入らねぇし、それに――」

 

一度言葉を切り、俺の目を見つめてくる。

今まで見た事無いような顔だ。昔本気で喧嘩した時ですら、ここまで怖い顔をしていなかった。

 

「アイツが向かった、この町唯一の教会。あそこは堕天使が根城にしている場所だ。お前を殺した堕天使もそこに居る。そして、連中はアーシアが持つ神器を、奪おうとしてる」

「神器を、奪う?」

 

アーシアの神器。聖母の微笑、だっけか。

うっかりできた俺の手の傷を、それで治してくれたのを覚えている。

俺を殺した堕天使が……夕麻ちゃんが、ソレを奪おうとしている?

 

「大事なのは、神器を奪われた人間は例外なく死ぬという事だ」

「えっ、死!?」

 

アーシアが、殺されるって?

そんなの、はいそうですか、なんて受け入れられる訳ねぇだろ。

 

――でも、俺には力が無い。

お面の男…いや、輪廻みたいに、堕天使や悪魔、エクソシストを圧倒するような力を持っていない。

それに俺は悪魔で、しかも使い走りのポーン。

大した力も何も持たない、神器だってようやく使い方が感覚で分かりつつある程度。

助けに行こうったって、どうしようも……

 

「知り合いなんだろ、お前も。なら助けてやろうとは思わねぇのか?」

「それは……できるなら、そうしたいけど。俺は結局ただの悪魔で、力なんて無くって。部長たちに迷惑をかけるわけにもいかねぇし。――せめてお前くらい強けりゃ、俺だって…」

「悔しくねぇのか?自分を殺した女が、今度は自分の友達殺そうとしてんだぞ?それを黙って見て見ぬふりすると?」

「悔しいに決まってんだろ!!夕麻ちゃんに色々言いたい事だってあるし、アーシアだって助けたい!でも俺は部長の眷属で、神器の力もろくに扱えねぇ!それなのにどうしろってんだよ!?俺は、ただのポーンなんだぞ!?」

「かもな。だが兵士(ポーン)だって(キング)が取れねぇわけじゃねぇ」

「…は?」

 

壁に打ち付けられた惨い死体を床におろし、バラバラになった部位をできる限り人の本来の形へと直しながら、輪廻は話す。

 

「俺の知る兵藤一誠は、誰よりも変態で、誰よりも馬鹿で、誰よりも熱い男だ。だからこそ俺はそんなお前に憧れたし、お前だから親友になった」

「…いきなり、何言ってんだよ」

「力がない?部長の眷属?そんなの俺が聞きてぇ事でも何でもねぇ。俺はな、ただ『行く』か『行かない』かだけ聞いてんだ。馬鹿が面倒くさい理屈考えてんじゃねぇよ。変態が可愛い女の子助けるのに理屈捏ねてんじゃねぇよ。熱い男が、何冷めた事言ってんだよ。お前はイッセーだろ。誰よりもおっぱいが好きで、誰よりも馬鹿野郎で、誰よりも熱血な、イッセーなんだろ。似合わねぇ事やってねぇで、さっさと俺に着いてくるかどうか決めやがれ」

 

…びっくりだった。

あの輪廻が、あのいっつもクールぶってる輪廻が、ここまで熱く俺に語り掛けてくるなんて、初めてだった。

 

それと同時に恥ずかしくなった。

俺は一体、どんだけ似合わねぇ真似してたんだ。

そうだよ。俺はバカで、変態で、んでもって熱苦しい男だ。

 

だから、アーシア助けに行くのに、一々変な言い訳も何も、要らねぇんだよ。

 

「行く。俺も行く。アーシアを助けに行きたいし、夕麻ちゃんと話がしたい。―――けど、やっぱり先に部長に話してくる」

「……お前なりの、ケジメって訳か」

「あぁ。部長は俺の命の恩人だし、俺は部長の眷属だ。だから、死ぬ可能性の方が高い戦いに挑む前に、ちゃんと話だけしてくる」

「引き止められたら?」

「無理矢理でも教会まで行く。もう、揺るがねぇよ」

「そうか。――ま、俺は先に行っちまうからな。アーシアの王子様、俺になっちまっても恨むなよ?」

「……いや、お前気づいてねぇの?」

「あん?気づく?」

 

……ほんっと、こういう鈍感なとこさえなきゃ、手放しにカッコいいって言えるんだけどな、コイツは。




主人公は「ハーレム作りてー」と言っていますが、しばらくの間は黒歌一筋です。
滅茶苦茶鈍感で直接好きと言われるまで好意に気づけない(というかわかっていても受け入れられない)せいで、自分から何か行動に移すような事ができないので。

でも黒歌は長い事一緒にいたせいで『相手からどう思われていようと取り合えず俺は好き』という状態なので、今回のようにデートに誘ったりします。

…どの辺でヒロインの好意に応えさせましょうかね。


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