ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う   作:うぉっ、でっか…

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神器

「さてドライグ。一つ聞きたいんだが」

『なんだ?』

「…この教会の中にいる連中相手に、お前を使わずに勝てると思うか?」

『あぁ、そんな事か。聞くまでも無いだろう。良くても中級堕天使程度のヤツしかいないのに、お前が俺を使う必要があるわけないだろう』

「そうか。そりゃよかった」

 

あの後黒歌に事情を話して先に帰ってもらい、俺は教会まで来た。

アーシアは原作ヒロインだし、何より俺の友達だ。

絶対に死なせるわけにはいかない。

 

まぁ、最悪の場合はブーステッド・ギアも使おう。

使ったら夢幻人が乱入してくる可能性もあるし、できる限り使わないでおきたいものだが。

 

「おろ?アンタ、誰です?」

「……服装で気づかんか?」

「服装?―――あ゛ッ!てんめ、さっきのお面野郎!!」

 

普通に入り口を開けて入り聖堂まで向かうと、フリードが頭部の破壊された聖人の像の前で立っていた。

俺に殴られて腫れていたはずの顔は、まるで何も無かったように綺麗になっている。

 

大方、アーシアに治させたのだろう。

アイツの事だから自分から治したんだろうか。それとも、無理矢理させられたのか。

何にせよ今コイツは、ただただ邪魔なだけだ。

 

「ただ、悪いな。お前の相手はまた今度だ」

「かっちーん!さっき優勢だったからってチョーシ乗っちゃってます?乗っちゃってんなお前な。けどお生憎様。こっちはアーシアちゃんの神器で傷を治して元気いっぱい夢いっぱい。今度は油断も怠慢も無し子ちゃんなんで、圧勝間違いなし――おごぉっ!?」

「油断無しっていう割には、話しに夢中になり過ぎだ」

 

『気』を使って特殊な動きをすることで発動できる『縮地』という技術を使い肉薄し、顎を揺らすようにして強めに殴る。

フリードは何ら抵抗する事なく、吹っ飛んでいった。

 

まぁ、死んではいないだろうが、これでしばらく動けないだろう。

起き上がってもしばらくの間は脳が揺れて立つだけで限界だろうし。

 

…さて、確かアーシアに堕天使、信者たちは地下に居るんだっけか。

さっさと向かって、終わらせてやろう。

 

※―――

 

部室に戻り、事の顛末と俺がこれから教会に行くことを伝えると、部長からビンタされた。

痛いな。主に心が。

 

目を見ればわかる。部長は本気で俺を心配してくれている。

決して自分の名声やなにやらに関わるから、なんて保守的な理由じゃ無く、俺の身を案じてくれている。

 

だけど、俺は行く。アーシアを助けに。

夕麻ちゃんと……俺を殺した堕天使と、話しに。

 

「すみません。心配してもらえているのはわかります。部長にどれだけ迷惑がかかるのかも、わかります。―――けど、俺は行きます。アーシアは友達ですし、それに……夕麻ちゃんと、会いたい」

「駄目よ。絶対にダメ。光は悪魔にとって猛毒なの。死ぬなんてものじゃない。消滅するわ。それなのに、敵勢力の存在でしかないその子の為に、自分を殺した堕天使の為に、危険な場所へ向かうというの?」

「はい。俺はただ、それを言う為だけに来ました。では」

 

部長に頭を下げ、部室を出る。

しかしドアノブに手をかけたその時、部長が俺の背中に声をかけてきた。

 

「イッセー。良い事を教えてあげる。『兵士(ポーン)』には、『プロモーション』っていう力があるの。私が敵地と認めた場所でそれを使えば、『王』以外のすべての駒になれる。『騎士』のスピードも『戦車』のパワーも『女王』の万能性も、望むままにね」

 

そ、そうだったのか。

いや、でもこの情報は大収穫だ。プロモーションと神器の力が合わされば、夕麻ちゃんを前にしてもすぐに死ぬような事は無いはず。

 

「そして神器について。貴方の神器は前にも言った通り、未知数よ。だけどどんな神器にも共通する大事な事がある。―――想いなさい。貴方の願いを。神器は、それに応えてくれる。貴方の願いを叶える手伝いを、きっとしてくれるはずよ」

 

俺の、願いを?

 

神器の宿る左手を見てみる。

俺の神器。それは多分、殴れば殴る程力が増す、って能力なんだろう。

実際床に拳を叩きつけた時、俺の力はかなり上昇した。

そんな戦い特化みたいな神器でも、俺のこの、アーシアを助けたいって思いや、夕麻ちゃんともう一度話したいって願いを、かなえてくれるのか?

 

「……ありがとう、ございました」

 

礼を言って部室を出る。

 

やっぱり、部長は優しいよ。

俺の意志を、最終的には尊重してくれた。

戦いのアドバイスまでくれた。

 

――正直、生きて帰れる自信はねぇけど、やってやる。

馬鹿はバカなりに、やりたいようにやるのさ。

 

※―――

 

最初は、傷ついた小鳥を見て、可哀そうだと思った事だった。

なんとかしてあげたい、って思ったら、私の手から光が出て、その小鳥の傷が癒えた。

そして、その光景を見ていた教会の人が、私を『聖女』だと喧伝した。

傷を癒す聖女だと、多くの信徒にあがめられた。

 

そして、その『奇跡』を使い、私は教会に命ぜられるままに人を癒し続けた。

嬉しかった。ドジで非力な私でも、こうして誰かの、何かの為になれたんだと思うと、嬉しかった。

お礼を言われる度に、ポカポカした気持ちが胸に生まれるのを感じた。

 

……けれど、本当に幸せだったかと言われれば、違う。

私には、対等な立場の人が与えられなかった。

みんな私を『聖女』と呼び、間に見えない壁を置いて接する。

まるで、『人を癒す機械』のような扱いだった。

 

それでも良かった。私の行いが誰かの為になるのなら、それで良かった。

良かったのに、ある日事件が起きた。

 

私の目の前に、傷ついた悪魔が現れたのだ。

苦しそうに、うわごとのように助けを求め続ける彼を見て、助けてあげたいと思った。

そして癒しの力を使うと、なんと悪魔の傷が治ってしまった。

 

それを目撃した教会の人は、今度は私を悪魔を癒す『魔女』だと嫌悪し、教会を追い出した。

ずっと感じていた孤独感が、ようやく目に見えるものとなって私を襲った。

心細かった。主を思う気持ちに嘘偽りは無いのに、この力のせいで私は『魔女』になってしまった。

 

――けど、この国に来て、私にも友達ができた。

こんな私を、友達と呼んでくれる人が、できた。

 

輪廻さんに、イッセーさん。

二人とも私の言葉がわかるみたいで、言語の壁や文化の違いに困っていた私を助けてくれました。

それだけじゃなくって、私の身の上話を聞いて、神器を使う所を見た上で、友達になってくれたんです。

輪廻さんは殆ど毎日のように私に会いにきてくれて、とっても嬉しかった。

 

イッセーさんとは、つい先ほど…私達にとってあまり良くない再会をしてしまったけれど、それでも私はあの人が話に聞く悪魔とは違うように思えた。

おかしな話だけど、良い人にしか思えなかった。

 

――だから、もう一度会いたい。

 

教会の地下にある祭儀場。その高台にある十字架に、私は拘束されていた。

レイナーレ様……この廃教会のトップである堕天使様が、独特の装束に身を包み、磔られている私に妖艶に微笑む。

 

「さっき話した通り、今から貴方の神器を抜き取るわ。神器によって人生を狂わされ、孤独に生きる道を余儀なくされた貴方を、死を以て救ってあげる」

「……確かに、今までの私なら、それでも良いと受け入れてしまったかもしれません。―――ですがっ、今の私は一人じゃないんです!だから、やめてくださいレイナーレ様!私は、この力を恨んでいるわけでも、孤独を感じているわけでもございません!お願いします!」

「…あぁ、そういえば、最近よく貴方に会いに来る人間がいたわね。大事な人なのね。――安心しなさい?あなたが死んだことくらいは、伝えておいてあげる」

 

懇願するも、レイナーレ様は私を殺す事を止める気配はない。

もうすぐ、レイナーレ様が言っていた儀式が成功してしまう。

そうすれば、私から神器は失われ、同時に命も失われてしまう。

 

――つまり、輪廻さんに会えなくなってしまう。

まだ今日は会えていないのに。

まだ別れの言葉も伝えられていないのに。

 

「い、いやっ、嫌ですっ!私、死にたくないっ!」

「その反応、もしかして貴方、あの男に恋でもしてたの?ふふふ、だとしたら滑稽ね。恋どころか友情すら知らなかった孤独の聖女様が、魔女になってようやく友人を得て、挙句は恋心まで抱くなんて。何もかもを手にしていた時より、何もかもを失った時の方が満ち足りていたなんて」

 

どれだけ抵抗しても、レイナーレ様の笑みは崩れない。

儀式は決して、止まらない。

もうすぐ、もうすぐで私の命は尽きてしまう。

 

嫌だ。怖い。

イッセーさんに、悪魔でも私の友達ですって、言いたかった。

輪廻さんに……輪廻さんに、好きですって、伝えたかった。

 

「……助けて、輪廻さん…!!」

「敬虔なシスターが最後に縋るのが神ではなくただの人間。本当に落ちるところまで落ちてたのね、教会の視線で見れば。けどそういう子は好きよ。堕天使的にもね」

 

でも、殺すけど。

 

レイナーレ様の声に、私は全身の力を抜いた。

…もう、抵抗しても意味は無い。いや、元々意味は無かったのだ。

全部。全部。

せめて、苦しくない事を祈ろう。別れを告げられない事を懺悔しよう。

 

しかし、瞳を閉じた瞬間。

祭儀場のドアが大きな音を立てて吹き飛び、次の瞬間には儀式の魔力が消滅した。

 

「なっ、何が起きたというの!?」

「簡単さ。俺が魔力をかき消した」

 

逆光で顔が見えないけれど、この声を私は知っている。

低くて安心できる、落ち着いた声。

時々変な事を言って私を笑わせてくれた、あの声。

 

輪廻さんの、声だ。

 

「輪廻さん!!」

「遅くなって悪いな、アーシア。助けに来たぜ」

 

※―――

 

「あなた、立神輪廻ね?ここ最近、アーシアに会いにここを訪れていた」

「あぁ、そうだな。そういうお前はレイナーレって名前であってるよな?」

「下等生物が気安く呼ぶな!――と言いたい所だけど。なぜ私の名前を知っているの?それに、私の計画すらも知っていたみたいだし」

「他の堕天使に、色々あって襲われてな。その時にベラベラ勝手に話してくれたよ。お前の名前も、やろうとしている事も」

「チッ…どいつか知らんが勝手な事を…」

 

話しながらも、俺はゆっくりとアーシアのいる方へ近づいていく。

会話の最中だからか、周りの信者たちは様子を見るだけで攻撃はしてこない。

 

――まぁ、してくるようなら今の俺は人間だろうと容赦なく殺せるんだが。

 

「そしてソレを知った上で言わせてもらおう。――つくづく不愉快だよ、お前。俺の親友殺した挙句、今度は違う友達殺そうってか?」

「不愉快、とはまた大きく出たわね。どうやって他の堕天使と対峙して生き延びたのか、とか儀式の魔力をかき消したのか、とか色々疑問はあるけど、所詮あなたは人間。上位の存在に勝るとも劣らない私を、倒せると思って?」

「当たり前だろ。ただまぁ、そこはイッセーに譲るがな」

 

俺がイッセーの名前を出した途端、レイナーレは大声で笑い始めた。

心底愉快そうに、腹を抱えて。

 

「イッセー君が?私を?あっはははは!そんなのできる訳ないでしょう?確かにあの日殺した直後、悪魔に転生したらしいけれど……でも、まるで脅威を感じなかったわよ?彼の神器は不明だけど、あってもなくても同じ程度の微かなオーラしか感じなかった!そんな下級悪魔が、私を倒す?あり得ないわよそんな事!」

「……ま、どう思おうがアイツが来たら全部わかる事さ。――とにかく、俺の目的はたった一つ。アーシアの奪還だけだ。大事な友人なんでね。殺させるわけにはいかねぇんだよ」

 

そう言って、『気』を大量に放出する。

 

『気』を扱う仙術に長けた黒歌曰く、俺ほどに老練された『気』は、ただそこらにまき散らすだけで鍛えていない人間なら死に至らしめることができるらしい。

だてに何百年も練っては居ない、という事だな。

まぁ言われた時はかなりびっくりしたけど。

 

「なっ、なんてオーラ…!?貴方、本当にただの人間!?」

「まぁ、正確にはドラゴン関係の神器を持っている人間、だな。だから半分人間半分ドラゴンみたいなもんさ。あぁ、言っておくがさっき魔力をかき消したのは違う神器の力だからな。まだ俺はドラゴンの力を微塵も使っていない」

「違う神器…?まさか、神器を二つ持っているというの!?それこそあり得ないわ!ドラゴンの神器ですらレアケースなのに……あなた、もしかして私のように他人から奪ったの?」

「奪ったわけじゃない。その力を分けてもらって、ソレを増幅させて本家本元と同等かそれ以上の出力を出せるようにしたのさ。――ま、一応神器は()()持って生まれてきたわけだけど」

 

そう。俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)以外に、もう一つの神器を持って生まれた。

オーフィス相手に引き分けられたのも、白龍皇との戦いの切り札も、そのもう一つの神器。

原作では登場しない、存在しないはずの神滅具(ロンギヌス)

 

たださっき儀式の魔力をかき消したのはそれとも別の神器だ。

 

因みに神器の力の貰い方は『気』を相手と同化させて力の流れる道を作り、そこからブーステッド・ギアの『譲渡』の力を発動してこちらに相手の神器の力の欠片を持ってきて、ソレを倍加の力で底上げするという物だ。

相手の信頼や許可が無ければこんな真似できないので、一個の神器を貰うのにかなりの時間と体力を必要とする。

 

「ま、お前ら相手にゃ使わないさ。必要無いからな。――さ、帰ろうぜアーシア。つってもここがお前の家なんだもんな……どうすっか」

「あ、あれっ?私、いつの間に拘束が解かれて…?」

 

『気』をまとった手刀でアーシアを拘束していた枷を全て破壊し、十字架から落ちてきたアーシアを優しく抱きとめる。

その流れを一瞬で行ったからか、アーシアは混乱している様子だった。

 

それはレイナーレの方も同じらしく、開いた口がふさがらないといった感じだ。

 

「さて。俺の目的は終わったし、後はここでイッセーを待つだけでいいんだけど……多分、そうさせるつもりは無いだろ?」

「―――あっ、当たり前でしょう!立神輪廻を殺しなさい!早く!」

 

信者…というより神父か。

神父連中が、レイナーレの言葉に従って襲い掛かってくる。

 

いや、ここまで俺の力を見ておいてまだ下っ端使うって、相当だなこの女。

流石最初期の敵。かませの匂いがする。

 

「ったく。俺を攻撃してくんのは良いけど、アーシアにまで当たったらどうすんだよ」

 

流石にアーシアを抱き止めた状態で『気』の放出を行うわけにもいかないので、取り合えず床を砕いてその欠片を彼等の脳を揺らすように狙って投擲。

一人、また一人と倒れていき、それを見てただ突っ込むのは危険だと判断した他の神父たちが動きを止める。

 

それを良く思わないのが、レイナーレだ。

 

「なんて使えない連中…ッ!!いいわ、私が直々にあなたを殺してあげる!!」

「いやだからさぁ……ったく。ま、程々にな。無駄だから」

「ッ、ふざけろッ!!」

 

光の槍が投擲される。

俺ではなく、俺の腕に抱かれているアーシアに向けてだ。

怒り狂っているようで、こうして弱点となる部分を狙ってくるあたり流石…なんだろうが、やっぱり及ばない。

 

攻撃はアーシアに届くことなく、半透明の壁が出現して槍を防いだ。

 

「チッ、それも神器の一つか!」

「いや?コレは俺の手作り。天使や普通の人間の攻撃は防げねぇが、悪魔や堕天使の攻撃は基本なんでも防げるんだ。この『聖書の剣』同様に聖書のページを使って作った…言うなれば『聖書の盾』だな」

 

これも白龍皇対策で作った物だが、意外とこういう時に役に立つ。

わざと防戦に徹しなければならない時とか、実は結構あるのだ。

 

「大丈夫だぞ、アーシア。もう安心していい。俺の傍にいる限り、お前に傷一つつけさせんさ」

「あっ……は、はいっ!」

 

よしよし。さっきからなんか震えてたし、フォローして良かったみたいだな。

落ち着いたのか、震えも感じなくなった。

 

ただなんだか顔が赤い気もするし、瞳が潤んでいるような気もするけど……いやいや、思い過ごしだよな。

確かに色々アーシアの琴線に触れるような言動をした覚えはあるけど、それでも俺に惚れるなんて、なぁ?

 

「なんでっ、なんで攻撃が効かないのよッ!!私はアザゼル様や、シェムハザ様に、御寵愛をいただけるはずの存在なのに!どうして!?」

「どうしても何もないだろ。コレが現実だよ。―――ほら、後はアイツに任せっから、俺は外野に回るぜ」

「あ、アイツ…?」

 

首を傾げるレイナーレに、指で入口の方を見るように誘導する。

そこには、木場と小猫、そしてオレンジ色のガントレットを左腕に纏ったイッセーが立っていた。

 

※―――

 

教会に向かって走り始めて数分。

俺の隣を走るのは、木場と小猫ちゃんだ。

なんでも、俺一人で行くのが心配だからついてきてくれるらしい。

 

言っていないだけで輪廻がいるからあまり心配はないと思うけど、厚意は受け取っておくべきだと思ってついてきてもらった。

 

そして教会についたが……なんだろう、変な空気感だ。

前に教会の前に来た時は、凄くうすら寒い嫌な予感がしたのに、今は何もない。

 

代わりに、地下から物凄いオーラを感じる。

きっと、輪廻だ。

 

臆することなく入り口から入り、聖堂へ向かう。

すると、壁にめり込んで気絶しているフリードと、開け放たれた地下への扉が視界に入ってきた。

 

「……これ、一撃でやられてるよ。一体誰が……」

「い、一撃か……ま、やったのは多分、俺らの味方だから。それよりもさっさと行こうぜ」

 

気絶しているフリードの状態を確認し戦々恐々とする木場に、俺は言葉を濁して先に進むように促した。

……さっきも圧倒はしていたけど、まさかの一撃か…すげぇな輪廻。悪魔の俺よりも全然強くね?

 

乾いた笑い声を出しながら、俺は地下の階段を駆け降りた。

一歩進むごとに強いオーラを感じる。木場も小猫ちゃんも圧倒されているのか、冷や汗を流していた。

…いや、マジで何モンなんだ輪廻。悪魔ビビらせるって相当だぞ。

終わったら必ず話を聞こうと思いながら、破壊されたドアを通り中に入る。

するとそこには沢山の気絶した神父と、槍を下ろし絶望したような顔をしている夕麻ちゃん、そしてアーシアを腕に抱き、半透明の壁に守られている輪廻がいた。

 

「……輪廻、先輩?」

 

小猫ちゃんが呆然と呟く。

さらっと名前呼びされてやがる……とちょっとアイツを羨ましく思いつつ、夕麻ちゃんを見つめる。

ボンテージ姿に、黒い堕天使の翼。

……やっぱり、堕天使だったんだ。

 

「遅かったな。ほとんど終わっちまったぞ」

「悪いな。わざわざ夕麻ちゃんにだけ何もせずにいてくれて」

「気にすんな。……じゃ、俺は見る側に徹するから、やりたいようにやりな」

「おう」

 

神器はそのままに、俺は夕麻ちゃんに近づく。

 

「久しぶり、夕麻ちゃん」

「……えぇ、久しぶりね。まさか悪魔になって生き延びるなんて、予想外だったわ」

「……本当に、堕天使なんだな」

「そうよ。私は堕天使、レイナーレ。それもあなたのような下級悪魔と違い、上級悪魔すら屠る力を持った者よ」

 

まるで自分に言い聞かせるように話す夕麻ちゃんに、俺はどんどん近づいていく。

 

「俺さ、本気で好きだったんだぜ?夕麻ちゃんの事、大事にしようって思ってた」

「あぁ、そうだったわね。騙されてるとも知らずに私に尽くす姿は、まさに滑稽だったわ」

「初めての彼女だったからさ。最初死んでくれって言われたときは、なんか失敗しちゃって嫌われたのかと思っちまったよ」

「初めての彼女、ね。確かにそんな感じだったわ。初々しくって、可愛いかったわよ?哀れって意味でね。けど安心して頂戴。あなたのデートプランは陳腐でつまらなかったけど、当たり障りのないものだったから。他の子ならある程度妥協してくれるんじゃない?」

「………一応、聞かせてくれ。……俺の事、好きか?」

 

俺の質問に、夕麻ちゃん……いや、レイナーレは数秒黙り込む。

何を言われたのかわからない、という顔をして、そして突然吹き出した。

 

「ぷっ、あは、あっはははははっ!私が、あなたを?それこそありえないわ!あなたに向けた好意も、言葉にした想いも、全部偽物よ!あなたに取り入って神器を見極め、殺すための方便!もしかして、本気にしちゃってた?ふふ、あっははは!もしあなたが人間のままだったら、優しく抱きしめてあげたいくらいに哀れだわ!」

「……そうか」

 

わかっていたけど、やっぱり全部嘘だった。

これで名実ともに、俺の初恋は終わったわけだ。

 

「…そうかよ……!!」

 

だったら、もう、良い。

 

「レイナーレぇえええええええ!!!」

「気安く呼ぶな、下級悪魔っ!」

 

その、ムカつく顔面、ボコボコに腫れ上がらせてやる!!

 

俺は左の拳を握りしめ、レイナーレに飛びかかった。

光の槍の切っ先が俺に向くが、関係ない。

 

俺の気持ちを踏みにじり、アーシアを殺そうとしたコイツは、なんとしても俺が倒す!

 

雄叫びをあげて恐怖心をかき消しながら、俺は拳を振り抜く。

狙いはレイナーレの顔面……に、見せかけて床!!

 

ドゴッ!と床を殴りつけた途端、俺の全身に力がみなぎる。

レイナーレは突然床を殴ったことに困惑して、動けていない。

 

「くらいやがれぇええええっ!!」

「ぐぅっ!?」

 

隙だらけの顔面を今度こそそのまま殴る。

ギリギリのところで防がれてしまったが、腕の骨を折った感覚があった。

それと同時に、さらに力が増す感覚を覚える。

 

いける。

俺は、コイツを倒せる!!

 

「な、なんだっていうのその力は!明かに下級悪魔のソレを超えてる!こんなの、中級…いえ、上級悪魔レベルじゃない!」

 

腕を抑え、俺から距離を取ろうとするレイナーレ。

その顔は恐怖に歪んでおり、まるであの日殺される直前の俺のようだった。

 

……ほんとに立場が逆転したな。

全く気分は良くねぇけど。

 

「上級とか下級とか、関係ねぇ……!」

「ひっ!?」

 

ガシッとレイナーレの肩を掴み、拳を限界まで硬く握りしめる。

普段の俺なら、女の子殴るのは抵抗が〜、とかいうんだろうけど、今はそんなのまるで気にならない。

 

「俺はただ、テメェを殴るだけだぁあああ!!」

 

おおきく振りかぶって、拳を顔面に叩きつける。

レイナーレは声を発することもできないまま、壁に叩きつけられた。

そしてそのまま動かなくなり、俺も力の限界が来たのか、膝から崩れ落ちた。

 

「おつかれさん」

「……あぁ。………終わっちまったなぁ、俺の初恋」

「アイツの言葉聞いた後でも、やっぱ辛いか?」

「…確かにレイナーレは清々しいくらいクソ野郎だったけど、あの日あの時俺が夕麻ちゃんが好きだったのは、変わらないからさ」

「そうかい。………胸、貸してやろうか?」

「………背中で頼む」

「了解」

 

俺に向けられた輪廻の背中にしがみついて、俺は大声で泣いた。

もう、ここで一生分泣いてやろうと、本気で泣いた。

 

その間、輪廻は黙ってそこにいてくれた。

……やっぱ、持つべきは友だな。

いや、今でも女の子大好きだし、おっぱいへの情熱も燃え盛ってるけど。

こうして弱いとこ見せられんのって、多分親友で男なコイツだけなんだろうな。

 

…余談だが、木場達は俺が泣く事を察して先に出ていってくれてた。

ほんと周りに恵まれたな、俺。




【神器紹介】
反魔の万能書(レボリューショナル・スペルブック)
・作中でアーシアの神器を抜き取る儀式を阻害した神器。
相手の魔法の反対となる魔法(反対魔法)を使う事でその魔法を不発にできる。
また世界中の魔法の詳細な情報が記載されているので、知識を身につけるのにも有効。
新しく作られた魔法も即座に記録されるため、この世全ての魔法、魔術はコレによって必ず無力化させられる。
しかし一度に複数の魔法は無効化できず、一度使うとしばらく使えないという弱点もある。

【オリジナル要素紹介】
『聖書の盾』
・聖書の剣同様、聖書のページを加工して作られる盾。どちらかというと光の壁といったイメージ。
ブースト無しでも上級悪魔クラスの攻撃は完全に無力化できる物の、ただの人間や天使にはまるで意味をなさない。
しかし下級の悪魔や堕天使はこの壁に触れるだけで消滅するので、その力は絶大。
並の防御系神器を上回る破格の性能を有している。



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