ハイスクールD×Dの世界に転生したので、俺もハーレムを目指そうと思う 作:うぉっ、でっか…
これからもあまり発生しないようにはしますが、もし何かあった場合はそれとなく伝えていただければ幸いです。
抱いて。それは一体つまりどういう事なんだろうか。
抱きしめれば良いのだろうか。
それとも性行為的な意味で言ったのだろうか。
混乱して固まってしまった俺に、部長はさらに近づきながら服を脱ぎ、下着姿になってこう囁いた。
「私の処女を、貰ってちょうだい」
脳が茹ったかのように錯覚した。
考えてもみて欲しい。俺は童貞だ。いくら現在進行形で想い人がいようとも、何百年という時を生きてきたのだとしても、その思考は一般的な男子高校生同様、常にエロに比重が寄っている。
そんな俺に、突然『駒王学園の二大お姉さま』なんて呼び慕われてるような美人が下着姿になって「処女を貰って欲しい」だなんていうって、もうつまりそういう事なんじゃないでしょうか。
特にこの、貰って欲しいってのがベストだ。
基本的にいちゃらぶ系が好きな俺としては、奪って欲しいという言い方よりもこの捧げてくれる感が凄く良い。
――って、おいおいおいおい!冷静になるんだ俺、落ち着くんだよ俺。
この状況、知らない訳じゃないだろ?原作でもあった、あのシーンじゃないか。
だからほら、別に突然俺への好感度がバグってエッチな事させてくれるようになったわけでも、家に侵入してきたサキュバスが夢を見せてくれてるなんて都合のよすぎる展開が発生しているわけでも無いんだ。
落ち着いて行動しろ、オーケー?
自分で自分に説教するようにしつつ、現実でも深呼吸。
そうそう。部屋が暗いせいで分かりにくい物の、しっかりと見れば部長の肩が震えているのがわかるだろう。
つまり、彼女自身これは本意ではないという訳だ。
――だが解せないな。コレが原作でもあった
…聞いてみるか。
「…えっと、なんで俺なんですか?イッセーとか、木場とか…アイツ等なら眷属だし同じ悪魔だし、正直俺を選ぶ理由ってないと思うんですけど」
「祐斗は根っからの騎士だから、きっと拒むでしょう?そしてイッセーは……その、すぐにでも抱いてくれそうではあるけど、なんだか怖いし。その点貴方はイッセーと同じくらいに性欲が強いらしいけど、そこまで押しが強くないっていうか、どちらかと言うと紳士寄りでしょう?」
「俺が紳士、ですか」
この人は一体俺の何を見てきたんだろう。
風呂上がりにバスタオル一枚で歩く黒歌を見た数年前の記憶を未だにオカズにするような性欲の権化相手に紳士とは、まさに片腹痛い。
評価が高いのは嬉しい事だけども。
「それで、ダメ?私じゃ不満?」
「いえ、部長程の美人を抱けて、しかもそれが初めてだなんて。それこそ身に余る光栄ですよ。―――それが普段のあなたなら、ですけど」
俺の言葉に部長の表情が、俺を誘うかのように色っぽい物から、強張った物へと変わる。
瞳は震えているし、こりゃ相当追いつめられていたと見受けられる。
「……気づいていたの?」
「観察眼には自信がある方でして。―――何か、あったんですか?いえ、無理に話して欲しいとは思いませんが。ただ悩み事というのは、意外と口にして誰かにぶつければ楽になれるもんですよ」
俺も実際そうだった。
本来イッセーが持つはずの赤龍帝の力を俺が持ってしまった事に対する、ある種の罪悪感。
ソレをドライグに全て話した時、そしてソレでも俺を相棒と呼び、俺は俺だと言ってくれた時に、救われたと感じたように。
部長も、自分の今抱えている悩みの種を俺に――もし俺が無理なら他の人にでも、ぶつけてみりゃ良い。
「そ、それは――いえ、ダメよ。ダメなの。だって私は」
「『王』だから、ですか?」
先んじて答えを当てた俺に、部長は押し黙る。
まぁ、そう言うと思ったよ。
この人は理想に生きる事を第一とする人だ。
貴族らしい優雅な振る舞いを、グレモリー家の名を穢さぬ誇り高い生き方を、そして『王』として弱い姿を見せない強かなあり方を。
そんな理想論を己の現実の目標として掲げつつ、それに反する願いである「ただ一人の少女、リアスとして愛されたい」という欲望を貫く事も夢見ている。
その姿の、なんと人間らしく、悪魔らしい事か。
強欲。まさしく強欲。
かけ離れた対極の願いを、どちらも現実の物としようとする。
妥協の一切をせず、他への影響を無視してでも行動へ移す。
それでこそ悪魔だろう。それが人間の姿なのだろう。
読者の中には、何も知らぬ子供のように理想を全て実現すると声高に叫ぶ彼女を「我がままだ」とか色々非難する者が多いが、俺は彼女はそれでこそリアス・グレモリーなんだろうなと思っている。
少なくとも嫌いではない。
それに俺が見殺しにしたイッセーの命を救った人だ。
読者時代の感情の有無にかかわらず、困っていたらある程度は手を貸すさ。
「っ……えぇ。その通りよ。私は『王』。強かで、弱音を吐かず、決して人前で膝をつくことのない存在。それが『王』なの」
「でもそれは理想論だ。平均的な『王』の話じゃない。悪魔だってきっと、最初っから理想の状態にたどり着いてる存在なんて滅多にいないんですよ。確かに一握り才能に恵まれ尽くした輩は居るでしょうけど、自分がその一握りじゃない事を恥じる必要なんて全くない。―――それに部長。俺は人間ですよ?オカルト研究部に籍を置いてはいますが、ただの人間。部外者なんです。『王』がどうとか、悪魔の都合は関係ないんですよ。ここに居るのは、ただリアス・グレモリーっていう先輩が困っている所を見て手を差し伸べたいなんて考えた、おせっかいな後輩なんです。だから、年甲斐も無く泣きわめこうが、癇癪おこして駄々こねようが、問題無いんです」
「ぁっ……」
部長を隣に座らせ、肩を抱き寄せる。
小さく声を漏らした彼女の瞳を見て、もう一押し必要だろうか、と次の言葉を考える。
しかし、その必要は無かった。というか無くなった。
突然床に魔法陣が輝き、部長が現れた時のように違う人が現れたのだ。
銀髪に、メイド姿。
俺の記憶が確かならば、彼女はグレイフィア。
部長の兄であり魔王の一角を担う、サーゼクスという男の伴侶にして、グレモリー家に仕えるメイドだ。
彼女は俺の方を一瞥すると、部長に向かってどこか呆れたような声音で語り掛けた。
「……こんな事をして、破談に持ち込もうとしたわけですか」
「こうでもしないと、お父様もお兄様も私の意見を聞いてはくれないでしょう?――けど、今はもうそんな事する気も無いし」
「まったく……いくら貴方の貞操は貴方自身の物とは言え、流石にこのようなただの人間に捧げるのはいかがなものかと。もうする気がないというならそれまでですが、もし仮に捧げようものなら、旦那様もサーゼクス様もとてもお悲しみになられますよ」
『(はっはっはっ、ただの人間だと。言われてるぞ相棒)』
(そう笑ってやるなよ。俺が今必死に人畜無害に見えるように偽装してんだから)
仮にも魔王の伴侶だ。俺の存在に意識を向けられるのも困る。
…まぁ、魔王の方には既に
俺がドライグと会話している間に、二人の会話も終わったのか、部長はいそいそと服を着て、魔法陣の上に乗った。
「ありがとうね。輪廻。話を聞いてくれるって言われただけで、結構救われたわ。――詳しい話は、明日部室でしましょう」
「輪廻…?あぁ、貴方がお噂の」
「えっ、噂?」
部長の言葉にうなずいた俺だが、続くグレイフィアさんの言葉に素っ頓狂な声を出した。
噂ってなんだ、噂って。俺の名前を噂するような連中なんて、それこそ夢幻人みたいな変人集団だけだと思うんだが。
「…いえ。まずは失礼しました。挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。私はグレイフィア。グレモリー家に仕える者です。以後、お見知りおきを」
「あ、いえお気になさらず。――えっと、俺は立神輪廻と申します。一介の男子高校生ながら、リアス・グレモリー嬢とは親しくさせていただいており…」
「別にあなたが堅苦しくする必要は無いわよ」
苦笑交じりの部長の言葉に、俺は少しホッとした。
敬語に自信が無いのは勿論の事だけど、実際にそう言うのに厳しそうな人(メイドとか執事とか面接官とか)の前で敬語やそう言ったマナー的な物を披露するのが緊張するタイプなんだよな。俺って。
「…えっと、じゃあさっき言っていた噂というのは?」
「人の身でありながら、上級に匹敵するような中級悪魔の討伐。はぐれ堕天使の無力化とエクソシストの集団の鎮圧を、無力な少女を守りながら行った事。他にもいくつか貴方の武勇は報告されています。他ならぬお嬢様によって」
何俺の事報告しちゃってんの?と部長を見ると、なんだか居心地悪そうに頬を掻いて、目を逸らしていた。
おいおいおい、俺はその場にいなかった体で話してくれといったはずでは?
まぁ、話されちまったもんはしょうがない。
絶対サーゼクスあたりがなんかやらかしてそうというかやらかしそうだけど、それは後になって考えれば良いだけだ。
「聞けば聖なる力を扱うのに、悪魔であるお嬢様方と友好関係を築いているとか」
「えぇ、まぁ。俺の方も良くしてもらってますね、はい」
「……そろそろ良いでしょう?元々私に話があって来たんでしょう?続きは私の根城で聞くし、話すわ。朱乃も同伴で良いわよね?」
「『雷の巫女』ですか。私は構いませんよ。上級悪魔たるもの、『女王』を常に傍らに控えさせるのは当然ですので」
「よろしい。―――それじゃあね、輪廻。ちゃんと明日、全部話すから。いつも通りの時間に部室に来てちょうだい」
そう言って、一度俺に近づいて頬にキスをして、そのまま去っていった。
びっくりして固まった俺に一礼して、グレイフィアさんも去っていく。
後に残されたのは、部長のキスに未だに動揺しっぱなしの、現役童貞の俺だけだった。
「輪廻さーん、お風呂湧きましたよー!」
「あ、あぁ、うん!今行く!」
※―――
そんな事があった翌日。
言われた通り、いつも通りの時間に部室に向かう。
隣を歩くアーシアは気づいていないが、旧校舎から露骨に威圧感というか、物々しい雰囲気を感じる。
グレイフィアさんの『気』もあるし、きっとそのせいだろう。
木場もイッセーも既に部室入りしている頃だし、さっさと中へ入る。
するとそこには険しい表情をしている部長と、なんだか笑みに凄みを感じる朱乃さん(部活仲間なんだから他人行儀は無しとのこと)いつもの爽やかな笑みがちょっと引き攣り気味の木場に、居心地悪そうに何度も座る姿勢を直す素振りを見せるイッセー、そしていつもと変わらぬ無表情な小猫がいた。
いつもと変わらぬと言っても、勿論雰囲気はこの空間にあった重々しい物だったが、俺が来たのを見た途端、ソファを一度離れて、そこに座るようにと手で促してきた。
後はいつも通りだ。
そこに座ったと同時に、小猫が俺の膝の上に陣取り、ソレに頬を膨らませたアーシアが俺の右腕か左腕、どちらかを抱き寄せる。
いつもと違ってグレイフィアさんまでいるというのに、なんと平常運転な奴らだ。
そんなところも癒されるのだが。
「……立神輪廻様。失礼なのですが、その…いつも、そのような事を?」
「ここ最近はそうですね。それが何か?」
「―――いえ、特には」
嘘つけ。その間は明らかに何か言いたい事がある時の間だろ。
言わないけど。一々指摘する方が面倒ごとになりそうだし。
「ん、んんっ。これで、全員揃ったわね」
咳払いをして、部長が話し始める。
部活動開始前のルーティンワークのようなものだ。こうして部長からの一言を聞いて、俺達の部活動は始まると言っても過言ではない。
しかし、今日は部長の一言を聞けないようだ。
部室の魔法陣が突然光り輝き、そしてその模様が違うものへ……フェニックス家の物へと変化したのだ。
「フェニックス?」
「……お詳しいのですね」
「まぁ、人並みには」
グレイフィアさんのお世辞に定型句で返した所で、突然魔法陣から炎が噴き出した。
炎はかなりの規模だが、しかし部室の中の物に一切火が飛び移らない。
なるほど、これも演出か。
そしてしばらく火柱が立っていただけだったが、中から男の影が見えるようになった。
その影が手を手刀のようにして振るう素振りを見せると、まるでその手に斬り裂かれたかのように火柱が開き、そして炎は霧散していった。
後には金髪オールバックに、着崩した赤いスーツと言った、ホストのような風貌の男だけが残っていた。
どこか悪童のような雰囲気を感じさせるワイルド系の顔立ちは、多数の女から黄色い声援が飛んでくるであろうこと間違いなしと言える。
―――ライザー・フェニックス。
純血悪魔の一族、フェニックス家の三男。
「ふぅ、人間界に来るのは久しぶりだな。相変わらず息が詰まるぜ。けど、これもお前に会うためだと思えば途端に何てこと無く思えてくるんだから、不思議なもんだよなぁ?愛しのリアス」
普通に生きていればまず聞くことのないだろう気障ったい発言に、全員が眉を顰める。
特に名前を呼ばれた部長と、この世全てのイケメンは敵と断言するイッセーはそれが顕著だった。
「さて、式場を見に行こう。日取りはもう決めてあるんだ。早めがいいんでな」
「……その手を放しなさい、ライザー」
馴れ馴れしく部長の手を掴んだライザー。
直ぐにその手を振り払われ、絶対零度の瞳を向けられるが、しかし余裕そうな笑みは消えない。
寧ろ、その顔は愉快そうで、まるで「手なずけられない我儘な動物をどう手なずけるか」と遊び感覚でとらえているように見えた。
というか、実際にそうなんだろう。
コイツは多分、そういうヤツだ。
「おい、アンタ。部長に対して無礼なんじゃねぇか?つか女の子にその態度はどうなんだよ」
そしてそんなライザーに耐え切れなくなったのか、イッセーが立ちあがり苦言を呈する。
あんなことを言われたライザーの方はと言うと、これまた不機嫌そうにイッセーを一瞥して一言。
「あ?誰お前?」
「俺は兵藤一誠。リアス・グレモリー様の眷属悪魔、『
「ふーん、あっそ」
力強く自己紹介したイッセーだったが、まるで相手にされていない。
素っ気ない返事とも呼べないような返事をされ、イッセーはさらにムカついたようだ。
「つーか!アンタこそ誰なんだよ!」
「……ん?え、もしかしてリアス、俺の事下僕に話してねぇの?いや話してねぇにしても俺の事知らねぇって中々だろ。転生悪魔にしたってよ」
「えぇ。話す必要もないもの」
「おぉっと、こりゃ手厳しい」
軽薄そうな笑みを絶やさない物の、少し目元が引き攣ったように見える。
それは果たしてあまりに冷たくされ過ぎてショックなのか、はたまた思い通りに行かない事に対してストレスが溜まり始めているのか。
恐らくは、両方だろう。
さて、イッセーにもしっかりと説明してやるかな。
俺が知っていてもおかしくない程度……冥界の常識に多少通じていればわかる程度の範囲で。
「イッセー。その人はライザー・フェニックス。部長と同じ純血の悪魔で、フェニックス家の三男坊だ」
「フェニックス?フェニックスって悪魔なの?鳥じゃ無くて?」
「フェニックスにも色々あるんだ。中国の高い山の峰に巣を作る不死身の鳥を指す場合もあれば、ソロモン七十二柱の悪魔の一柱を指す場合もある。この場合だと、ソロモン七十二柱の方が正しいな。まぁ、あくまで人間側の呼び方だから悪魔側だとまた少し違うんだろうが」
「へぇー……詳しいんだな」
「常識だぞ」
「いえ、かなりお詳しい方かと」
「だな。ただの人間にしちゃ、随分と詳しいじゃねぇか」
グレイフィアさんとライザーの二人から太鼓判を押されてしまった。
うーん。許嫁云々の話以外は有名だし、別に知っててもおかしくはないと思うんだけど……あぁ、でも俺は一応ただの人間って扱いだし、知らない方が当然か。
「……っと。俺の説明はそこの人間が言った通り。俺はライザー・フェニックス。フェニックス家の三男にして、リアスの許嫁だ」
「えっ、えぇぇええええええええええええっ!!??」
嫌がる部長の肌に再び触れながら、ライザーはイッセーに対しそう告げた。
そしてソレを聞いたイッセーは、まるでこの世の終わりを知らされたかのような叫び声を上げるのだった。
※―――
「いやー、やっぱりリアスの『女王』が淹れる茶はうまいな」
「痛み入りますわ」
ライザー。いけ好かねぇホスト野郎だけど、これでも部長の許嫁なんだとか。
でもだからって、部長に随分と引っ付きすぎなんじゃねぇかな!!なんだよアイツ嫌がる部長の腕触ってみたり肩抱き寄せてみたりよぉ!
…俺だって、部長が嫌がって無けりゃ素直に祝福したさ。
相手がどんなイケメンだろうと、部長がその人が良いって言うんだったら、仮にハーレム王だったとしても俺は全力で後押ししようと思う。
けど、今の部長は明らかに嫌がってる。
この許嫁云々も、きっと親かなんかが勝手に決めたことなんだろう。
だとしたら許せねぇ!そもそも部長とのスキンシップが許されてんのは俺達眷属だけなんだよ!
今まであったスキンシップなんて頭を撫でられるくらいだけど!
…で、朱乃さんもライザーは嫌いなのか、いつものような温和な雰囲気はどこへやら、随分と冷たい表情をしている。
いや、笑顔なのは変わらないんだけどさ、なんだろ、うすら寒いというか。
「いい加減にしてちょうだい!」
しばらくの間されるがままだった部長が、ついに声を荒げた。
しかしそれでもライザーの余裕そうな笑みは変わらない。
それが余計に俺と部長に苛立ちを募らせる。
くぅっ、殴ってでも部長から引き離させられない自分の立場が悔しいッ!
「何度も言ったはずよ!私は貴方と結婚するつもりなんて無いわ!」
「あぁ、それは以前に聞いたさ。けどなリアス。君の所の御家事情が切羽詰まっているのも事実だろう?君のお父様もサーゼクス様も、御家断絶を恐れてる。大学に行くのも、下僕をどう扱うのかも自由にしてもらってるんだから、せめてこれくらい妥協したらどうだよ?」
御家事情?断絶?
途端に話のスケールがデカくなってないか?
許嫁云々の時から貴族的な会話だとは思ってたけど、両親がなんだとか言われると本当に俺、口の出しようがなくないです?
あとサーゼクス様って誰?
混乱する俺を無視して、二人の話は進んでいく。
部長側の話を俺が理解できる程度に噛み砕くと「確かに部長の家は現在断絶寸前で、婿養子を迎え入れなくてはならない状態。しかし部長はライザーと結婚するつもりはさらさらなく、自分で心に決めた相手と添い遂げたい」とのこと。
別に結婚しなきゃいけないなら好きな相手ができてからでいいんじゃねぇの?って俺も思うけど、話はそう簡単な物じゃないらしく。
ここで、さっき輪廻が話してた「純血悪魔」ってのが出てくるんだそうだ。
ライザー曰く「同じ純血悪魔同士、つまり部長とライザーの婚約でなければいけない。そもそもこの話は両家の当主が合意している縁談な為、ソレを個人の事情で破棄されては面子が立たない。もし仮に抵抗を続けるならばこちらも多少強引な手段を選ぶ必要が出てくる」だそうで。
今まで余裕ある表情をしていたライザーが、ついに部長に苛立ち始めた。
そして最後の脅すような一言と共に、俺達に向かって炎を放って―――。
「完全部外者の俺が口を出すのは良くないんでしょうけど、流石にそれはやりすぎだと思いますが?」
「ふん。寸止めにするつもりではあったさ。―――だが解せないな。お前ただの人間か?俺の炎は手加減したとはいえ、ソレを
「良い事教えてあげますよ。人間ってのは誰かを守る為ならいくらでも強くなれるんです」
「けっ、かっこつけやがって……」
勢いよく俺達の方へ向かってきた炎が、何か赤いオーラのような物に
それと同時に、今まで黙って眺めていた輪廻から途轍もない威圧感を感じる。
恐らく、あの赤いオーラは輪廻の物だ。
いやいや。誰かを守るためなら強くなれるって言っても限度があるだろ!?
明らかに今の炎、軽くかき消せるもんじゃ無かったと思うんだけど!?
ってか普通の人間にこんな目に見えるオーラとか出せる訳ねぇじゃん!!
しかも小猫ちゃんとかアーシアとか、見るからに照れてるし!守られて嬉しいんだろうな、発言も込みで!
輪廻の言葉により一層不機嫌さを際立たせてるライザー。
俺達を下に見ている雰囲気は変わらないはずだが、なぜか湯呑を持つ手は若干震えていた。
…そりゃ、俺も直接向けられてるわけでもねぇのに震えちまうくらい強大なオーラを向けられちゃ、流石の上級悪魔と言えどビビるか。
輪廻の話が本当なら、実力はライザー以上らしいし。
最上級悪魔レベルの人間って、マジでなんなんだろうな。
ってか俺の親友はいつからそんな人外レベルに至ってたんだ?
「――立神輪廻さま」
「わかってますよ。俺だって荒事にしたいわけじゃない。何より俺はあくまでただの人間ですしね。この場で何か口出しする方がおかしいとは、わきまえていますとも。―――ですがライザー殿。これだけは留意しておいていただきたい。部長……グレモリー嬢含め彼女の眷属は全員俺にとって大切な存在。もし傷つけるというなら、俺は容赦しない。上級悪魔だか純血悪魔だか何だか知らないが、その場で消滅させる」
こ、怖ぇえええええっ!!空気が確実に重いし、家具とかがミシミシいってるよコレ!?
圧が本当に現実の物になるって、マジでなんなんだコイツ!?
今までにない位の威圧感をまき散らす輪廻に、ライザーはもの言いたげな目をしているモノの、素直に頷いた。
グレイフィアさんの方は小さくため息をついている。
きっと、「わかってないじゃん」とか思ってるんだろうな。流石にそこまでフランクじゃないとは思うけど。
「――話を戻しましょうか。このように話し合いで解決できないだろうという事は、両家とも予想済みでしたので、最後の手段としてある提案がなされております」
「提案?」
「はい。それは、お嬢様とライザー様で『レーティングゲーム』を行うという物です。ゲームでもしお嬢様が勝利なさった場合はこの話は破棄。なかったものとします。代わりにお嬢様が敗北されれば」
「俺とすぐさま結婚って訳か。良いじゃないかリアス。非公式戦とは言え『レーティングゲーム』で決着をつければ、俺もお前も文句ないだろう?それに、こういう荒事の方がお互い好きだしな」
「…貴方と意見が合うのは癪だけど、いいわ。『レーティングゲーム』で決着をつけようじゃないの」
どうやら話はまとまったらしい。
部長もライザーも、さっきまでの険悪なムードを脱した様子だ。
輪廻の方も、茶を飲んでまったりしている。
……コイツさらっと朱乃さんに茶淹れてもらいやがって……あんだけ俺達ビビらせといてよ。
厳密にはビビってたのは俺と木場とライザーの男性陣で、女性陣はなんだかんだときめいてる風だったけど。
…いやいや待て!さらっと部長と朱乃さんまで毒牙にかかってないか!?
「決まりですね。――では、詳しい日程は後程お伝えいたします」
グレイフィアさんの言葉に、二人とも頷く。
しっかしレーティングゲームか。
確か、チェスの要素を絡めた総力戦みたいなモンだっけ。たまにルールの都合上勝ち抜き戦になったりするらしいけど。
『兵士』『騎士』『僧侶』『戦車』『女王』の眷属と、主である『王』が、専用のフィールドで戦うというのが基本。
『王』が取られればどれだけ相手の眷属を倒していようと問答無用で敗北と、チェスらしい部分もありながら、そのフィールドによって立ち回りや定石が変わったりと奥が深いゲームだと、前に皆から教えてもらった。
部長はまだ成人していないから公式戦には出られないらしいけど、非公式戦な戦いは別だ。
そしてその非公式戦ってのは、基本的に家族間の争いや今みたいに許嫁云々の問題を解決するのに行われるらしい。
――ま、俺が考える事はただ一つ。アイツの眷属を倒して倒して倒しまくって、ライザー本人もブッ倒す事だけだ。
細かい指示は、部長がしてくれるし。
司令塔が『王』の基本的な立場らしいしな。
「しかしリアス。そそのかすような言い方をしておいてアレだが、君は本当に俺と戦うのか?こっちは公式戦の経験もあるし、その殆どが勝ち星だ。今ならまだなかった事にしても」
「冗談言わないでちょうだい。いくら貴方に実績があろうと、私には関係ないわ」
「随分と自信満々なようだが……失礼だけど、君の下僕たちじゃ俺の可愛い下僕たちには遠く及ばないと思うぜ?良くて君の『女王』である『雷の巫女』が食らいつけるか。―――そこの人間は、君の下僕じゃ無いようだし」
随分な物言いだが、それでも輪廻の事はなんだか恐れてる様子だった。
いやまぁ、アイツだけこの場で規格外枠だよな。俺なんて味方してもらってるはずなのに怖ぇもん。
「因みに、これが俺の下僕たちさ。――おいで、可愛い下僕ちゃんたち」
ライザーが指を鳴らすと床の魔法陣が輝いて、一気に複数の人影が現れた。
その数、十五人。
全員が眷属って事は、フルメンバー揃ってるって事だ。
俺みたいな例外は居ないらしいけど。
――ってぇ!!なんだこりゃ!?
「ぜ、全員……女…ッ!?」
「あぁ。その通りさ。これが俺の可愛い下僕たち。全部の駒が埋まってるのさ。―――で、リアス。なんで君の下僕くんは号泣しているんだい?」
「……その子の夢、ハーレムなのよ。だからきっとあなたがうらやましいんじゃないかしら」
溜息混じりに、額を押さえながらそう話す部長。
呆れられてしまった。
こんな欲望に忠実な下僕でごめんなさい!
それでもこの、男の夢をかなえている姿を見ると、どうしても涙が止まりませんっ!
そんな俺に、ライザーの眷属の子達は「気持ち悪ーい」だの「きもーい」だの好き放題言ってくる。
やめろよ!余計に涙がこぼれちゃうだろ!
「っていうか!部長をそんなハーレム野郎に渡せるわけねぇだろ!!」
「英雄色を好むって言うだろ?俺くらいになると、一人の女熱心に愛するだけじゃ足りないのさ。――まぁ、君には一生わからないだろうけどね。下僕くん?」
そういうとライザーは、近くに居た自分の眷属の子を抱きよせ、見せつけるようにディープキスをし始めた。
な、なんだコイツ!仮にも部長と結婚するっていうなら、そんな見せつけるような真似してんじゃねぇ!羨ましいぞこの野郎!!
恍惚とした表情や、自分もして欲しいと言いたげな顔をするライザーの眷属の子達と対照的に、部長たちは嫌悪感を滲ませた顔をしていた。
グレイフィアさんも、表情はあまり変わっていない物の眉が少し寄っていた。
多分、不機嫌なんだろうな。
因みに輪廻は、今度はあまり怒っている様子でも何でもなかった。
あくまで俺達に手を出されたらキレるって事だろう。
ライザーもそれが分かったからか、少し緊張感が薄まった様子だった。
踏んだら不味い特大の地雷でも、見えてりゃ恐怖も薄まるってもんだろう。
「お前じゃこんな事、一生できまい」
「んなっテメェソレを言ったら戦争だろうが!!――くそっ、イケメンだってだけでもいけすかねぇのに、部長に言い寄っておきながらその狼藉!レーティングゲームとか関係ねぇ、ここで全員俺がブッ倒す!!」
堪忍袋の緒が切れる音が、確かに聞こえた。
俺は神器を纏い、足元を壊さない程度に三度ほど殴りつけ、ライザーに向かって一直線に駆け出す。
なんだかいつもよりも力が入っていない気がするけど、これでも大丈夫だろ!
格上上等。俺の攻撃は当たれば当たる程強くなるんだよッ!!
俺が拳を振り上げるも、しかしライザーは嘆息するばかり。
まるで呆れて物も言えないと言われているようで、俺はさらにイライラする。
この種まき焼き鳥野郎ッ、堕天使を倒した俺の拳を喰らって逃げ帰りやがれッ!!
「やめとけ馬鹿」
「ぐぇぇっ!?」
突然俺の真横に移動して、首根っこ掴んできた輪廻。
だいぶ距離があったはずなのに、いつの間に?という疑問を抱いたが、今はそれよりも。
「な、何しやがんだ輪廻!」
「お前が考えも無しに突っ込むから止めたんだろうが。神器使えるようになって調子に乗ってるか何なんなのか知らんが、せめて実力差くらい理解しろ」
「じ、実力差って…」
「ははっ、そこの人間のがよっぽどわかってるようだな。その通りだよ下僕くん。お前じゃ俺は愚か、下僕たちの一人にすら勝てないさ」
挑発してくるように話すライザーだが、これは多分違う。
本気で俺じゃあ誰にも勝てないと思って、言ってやがる。
「ふざけんな!んなモン、やってみなきゃわかんねぇじゃねぇか!」
「そうでもない。――じゃあイッセー。さっきお前が拳を振りかぶった時、誰が何をしていたかわかったか?」
「何をって……そりゃ、ライザーが溜息ついた程度じゃねぇの?」
俺の返事に、輪廻はそれはもう大きくため息を吐いた。
な、なんだよ。事実アイツの眷属は何もしてなかったじゃねぇか。
「馬鹿。そこの
「は、はぁ?そんな訳」
「その通りだぜ、下僕くん。俺の下僕たちは優秀なんでな。俺に危機が迫れば、すぐに対応する。そっちの人間の方が、本当に良くわかってるじゃないか。―――だがなんでレイヴェルが俺の妹だって気づいた?」
「別に。ただ顔立ちとか雰囲気が似ていたので。悪魔は見た目の年齢を変えられると言いますし、確実に妹だとは思っていませんでしたよ」
そ、そうだったのか……全然わかんなかった。
ですご過ぎねぇか輪廻。なんでそんなわかるんだよ。
――って、妹ぉ!?
「い、妹までハーレムに加えてやがるのかテメェ!!」
「あー。そうそう。別に手は出して無いし、形だけ眷属だけどな?ほら、妹萌ってのが世間一般にあるらしいし、せっかくなら入れとくかって」
「そ、そんな軽いノリで…!!」
ますますコイツが許せねぇ!今すぐにでもぶん殴ってやりてぇ!
……けど、輪廻の話を聞いてちょっと冷静になった。
今の俺じゃ、コイツは愚か眷属の方にも勝てねぇ。
だって、構えていたかどうかすらわかんねぇんだもん。実際に戦ったら気づかない間にやられちゃいそうだ。
「ま、神器があるからって驕ったな。何度だっていうが、お前じゃ俺達には勝てないよ。―――さて、そろそろ帰るとしようか。またなリアス。次に会う時はゲーム会場で」
「えぇ。必ず勝つわ」
「はははっ、その勝気な顔が俺からの愛を求める蕩けきった顔になるのが楽しみだよ。じゃあな」
そう言うと、ライザーは魔法陣を光らせて、眷属たちと共に消えていった。
後に残ったのは、悔しそうな顔をしている俺含む部長の眷属たちと、まるで表情の変わっていない輪廻とグレイフィアさんだけだった。
そして今日の夜、俺達のレーティングゲームが行われるのは十日後と知らされた。
十日。長いようで短いが、俺はやれるだけやるだけだ。
待ってろライザー!テメェのその顔、人前に晒せないくらいボコボコにしてやるからな!!
主人公はまともに見えてそれなりにネジが外れているタイプなので、何か許せない事があると後先考えずに怒ります。
今回のが良い例ですね。
因みに実際に誰かが火傷した、とかだった場合、あの場でブーステッド・ギアを使ってライザーを再起不能にしていました。
ギリギリセーフでしたね。
まぁ、ブーステッド・ギアを使っていないとはいえ『気』は使ってしまったので、ライザーからもグレイフィアからもやばい奴扱いされる事は免れませんでしたが。
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