魔法少女さくら☆マギカ-偽書ゲッターロボ ダークネス・ファンタズマ-   作:凡庸

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"魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) - エピローグEX 鏡合わせのマガイモノ
https://syosetu.org/novel/132845/228.html

同タイトル第二部プロローグEX ダークネス・ファンタズマ
https://syosetu.org/novel/132845/236.html

これらの話の続編となります





プロローグ 物語の終焉と、開幕

 そこは奇怪な世界だった。

 灰色の乾いた大地、緑色の粘塊、赤黒い肉襞、鉄骨と臓物、そして肉管。

 無機物と有機物が蕩けて混ざり、そのくせ硬さと柔らかさを残している。

 鉄塔の残骸の表面を這い廻る管の中を、血液らしき何かが奔り、大地に絡み付いた臓物は蠢動し、皮膜に覆われた機械は半ば蕩けつつも稼働していた。

 

 そんな狂った世界の至る所に、異様な存在が群れていた。

 地面は建造物を彩る、グロテスクな趣の造形をした、四肢を備えた異形の生物。

 獣でもあり、昆虫でもあり、鳥であり魚であり、爬虫類であり、そして機械である存在。

 

 無数の眼球を全身に付けたもの、装甲で覆われた体表の隙間から無数の触手を生やしたもの。

 疣足を持つ魚の背には、大鷲の翼が備わっていた。

 蕩けて爛れ、金属の光沢を肉体の随所で輝かせた異形達。

 

 そのどれもが肉体を破壊され、醜い姿の内側から巨大な内臓を零して息絶えていた。

 どれも形状が異なっていながら、それらが浮かべた断末魔の表情は紛れも無く人間特有のものだった。

 知性に悪意に欲望にと、それらが破壊され純粋な苦痛と恐怖に染まり切っている。

 それは、そんな顔だった。

 異形達の死体が草原の草花の如く、異形の世界に広がっている。

 その中に、巨大な物体が突き刺さっていた。

 

 有機物と無機物が交じり合う世界の中で、それは尋常な形をしていた。

 全長にして500mにも達する巨大な戦艦。

 銀の装甲で覆われた流線型の美しい姿。

 

 されどその至る所は無残に切り裂かれ、左右の翼も崩れ落ちている。

 艦のブリッジには大穴が空き、破壊された内部が見えた。

 

 その中で、割れたコントローラーパネルの上で重なる二つの手があった。

 一つは青年、もう一つは少女のそれ。

 ぴくりとも動かずに、ただ慈しみ合うように静かに重ねられている。

 肘から先は見え、それ以降は闇に溶けていた。

 血肉で満ちた大地に垂直に先端を突き立てたそれは、巨大な墓標にも見えた。

 

 墓標の下にわだかまる異形の死骸が、不意に震え始めた。

 まるで怯えているかのようだった。 

 それは、遥か彼方で生じた衝撃の波によるものだった。

 役目を終えた巨大な戦艦のみが、不動のままに立っていた。 

 それを見守っているかのように。

 一つの物語の結末を。

 

 

「ゲッタァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 咆哮が世界に響く。

 少女のような声色だったが、それは少年の声だった。

 その声を聞くものは、既にその声を発する者しかいない。

 他は全てが死に絶えてる。原型を留めない程に破壊された異形の残骸が挽肉となって周囲に散らばる。

 空に広がるのは漆黒の闇。闇の彼方には、青と緑、黒と赤に彩られた惑星が浮かぶ。

 異形と化してはいたが、それは母なる惑星・地球であった。

 

 母なる星に見守られながら、異形と化した月面で少年は叫ぶ。

 漆黒の装甲を纏った、巨大な戦鬼を操りながら。

 

 

「ビィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイム!!!!」

 

 

 戦鬼、『ゲッターロボダークネス』の腹部が展開して生じた孔から、漆黒の破壊光が放たれる。

 アンチ・ゲッター線を増幅・収束させて放つ破壊光線。

 『ゲッタービーム』の漆黒の闇が放たれる。月面に立つ何かへと、それは着弾した。

 全長約60メートルのダークネスから放たれた輝く闇は、幅にして100メートルを優に超えていた。

 

 触れた月面が半円に抉られ、衝撃波が月にへばり付く肉襞と死骸の群れを消し飛ばす。 

 ビームは月の表面を抉りながら直進し、宇宙空間へと抜けた。

 無限に広がる宇宙の黒よりも色濃い闇が、何処までも伸びていく。

 

 その中で二つの光点が輝いた。亀裂のような二つの菱形の中央には、輝く光点。それは眼であった。

 ゲッタービームの中で輝いたそれは、破壊光の中を一気に直進していく。

 

 

「ぐぁっ!」

 

 

 少年の苦鳴、弾ける闇、そして撒き散らされる黒い欠片。

 破壊不能である筈のダークネスの装甲が割砕かれる程の破壊力。

 それは、ゲッタービームを貫いて振り切られた剛腕の一撃だった。

 

 吹き飛ばされるダークネスであったが、両脚を血肉の地面に着き立てて耐える。

 牙を剥き出しにした凶悪な顔で、胸の装甲を抉った相手を睨む。

 先に立つのは、血に塗れたような真紅の巨体。

 

 ダークネスの倍はある体高、更に重厚な装甲を纏った体躯、怒髪天を衝くという言葉の体現の如く天に向けて伸びた複数の角。

 その形状には、対峙するダークネスとの類似性が見受けられた。

『ゲッターロボ・セイントドラゴン』。

 無限のエネルギー、ゲッター線を以て稼働する最悪の殺戮兵器。

 それを操る者は、数多の地獄絵図を作り上げ地球の総人口三分の一までに減らした、悪夢の災厄をこの世に振り撒いたもの。

 

 

「早乙女……賢!!」

 

 

 ダークネスを操る少年が、怒りと怨嗟に満ちた声で叫ぶ。

 名を呼ばれたものは沈黙を貫いた。少年の怒りなど、知った事ではないと言わんばかりに。

 操縦席のコントロールパネルを貫き、機体と一体化させた両手の義手が、機械の内部で握り込まれる。

 自らを圧壊させかねない、莫大な力が籠められていた。

 

 対峙する二体の戦鬼。

 装甲の表面には亀裂が走り、血のようなオイルがダクダクと流れている。

 砕けかけの大地からマグマが湧き出ているかのようだった。

 戦闘は既に長時間に及び、互いに満身創痍となっていた。

 

 内蔵された武器も使い切り、拳は砕けて爪も折れている。

 再生させられなくも無いが、それではジリ貧に陥る。

 幸いにしてエネルギーは満ち満ちている。

 セイントドラゴンの中にはゲッター線が、ダークネスの中にはアンチ・ゲッター線が渦巻き解放の時を待っている。

 搭乗者の感情にそれらは反応し、際限なく増幅する。

 

 この一撃で最後。

 まるで示し合わせたかのように、二体は動いた。

 セイントドラゴンは肩から生やした装甲を翼に変えて、一気に上空へと飛翔した。

 その巨体は、眩い緑光に輝いていた。

 人型をベースとした形状を、緑の光が炎のように包み込む。

 

 対するダークネスは両掌を向かい合わせて手前に引いた。

 掌の間で、輝く闇が溜まっていく。

 ダークネスの全身から、全てのエネルギーが掌へと収束される。

 

 

「うううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 少年が叫ぶ。

 叫びは怒りに満ちていた。

 世界を蹂躙し、全てを奪った悪魔。

 それを滅するべく、彼は力の全てを籠める。

 ダークネスと融合している義手を介して、彼は自分の全存在をこの一撃に籠めた。

 今のダークネスと、彼との間に境界線は無かった。

 体は別であっても、一つの存在と化している。

 

 

『シャインスパーク』

 

 

 そんな声が、彼には聞こえた気がした。

 セイントドラゴンが急降下し、その体を深緑の光そのものと化してダークネスへと一気に迫る。

 照らし出される光の中、漆黒の巨体もまた行動を起こしていた。

 

 

「ストナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 少年の叫びに呼応し、凝縮された闇が膨張する。

 

 

「サァァアアアアアアアンシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイン!!!!!」

 

 

 撓められていた両手が伸ばされ、球状となった輝く闇が投擲される。

 闇ではあるが、それは万物を照らす太陽の如く光でもあった。

 迫る汚濁の緑の光を、光り輝く闇が迎え撃つ。

 闇が光を喰らい、光が闇を喰らう。

 交差する二つの光が炸裂し、一帯を飲み込んでいく。

 それは無数の死骸が転がる月面をも覆い尽くし、やがては宇宙にも広がっていった。

 

 

 

 

 その様子を、一人の少女が眺めていた。

 真紅の瞳が、破壊と災厄の光景を見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 眼が開いた。

 真紅の瞳が最初に見たのは、白い天井。

 細いヒビが縦横に入った、痛々しい有様だった。

 上体を起こした時、自分は全裸である事が分かった。

 

 体の右半分を覆う火傷を、白い包帯が巻いている。

 顔もまた同様であり、右に巻かれた包帯の下では赤桃色の火傷が咲き誇っていた。

 炎のように赤く長い髪を背中に垂らしながら、その少女は自分が元とは異なる場所に来たことを察した。

 

 

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