転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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祝100話!

え?投稿話数と違う?ナンバリングは100なので100話です。
思い付きのワルプルギスの進行でズレたから気づいてなかったとか言えねぇ…


100話:評議会混迷

 テクトがギィと対面しているとき、緊急招集された評議会にて喧喧囂囂とした騒ぎになっていた。

 

 ギィの配下の悪魔族が防衛戦を突破したことで、既に最終防衛ラインまで戦線が後退している。

 

 これを突破されれば防衛線に面したイングラシア王国を始め、西側諸国は壊滅的な被害を受ける。

 

 対応としては援軍として各国から軍を派遣し、段階的に防衛拠点を築くことだが、連合国家軍であることが邪魔をする。軍の派遣にはそれぞれの国の承認が必要なのだ。

 

 現状取れる手段は自由組合への緊急依頼の発布や盟主国家であるイングラシアの常設軍の動員ぐらいだが、どちらも問題がある。

 

 前者は下級でもBランクに相当する悪魔族に対抗できる冒険者がすぐに集まらないこと。

 

 後者は王都の防衛戦力を回すことは難しいだろうということだ。そもそもこれまで北方の守護を務めてきたイングラシアに緊急時まで全て任せるというのも酷な話であり、連合軍の編成は必須であった。

 

 ここで問題となるのは連合軍の取りまとめを行うのが新参である魔物の国(テンペスト)であることだ。

 

 満場一致で可決されたとはいえ、自国の貴重な戦力を魔物に預けるのは抵抗感があるのである。

 

「各々方、静粛に願いますぞ!」

 

 議長の声に会場は少しづつ静かになっていく。

 

 議員たちの視線が集まったことを確認し、議長が口を開いた。

 

「今は一刻を争う時です。我等で言い争いをするよりも、早急に本国に連絡を取って、この地に軍を派遣してもらいましょうぞ。ここには魔王両陛下より派遣された、魔国連邦の代表もおられます。彼女―テスタロッサ殿は、軍事にも明るいとの事。あのテクト様が代理と認めるお人ですし、連合軍を預けるに不満などありますまい」

 

 議長の発言に議員の一部が辛うじて聞こえる程度に反論する者もいた。しかし、代案となるものはないため目立って反論するものはおらず、議員達の視線はテスタロッサへと集った。

 

 議員としては珍しい、若い女性に見えるテスタロッサに値踏みするような視線が集中する。とはいえ、それも仕方のないことだ。彼等からすれば、テスタロッサの差配に人類国家の命運が託されるのだ。

 

「テ、テスタロッサ殿、そのう、こんな事を問うのが失礼なのは重々承知なのですが、貴女に軍を指揮できるのですかな?」

 

 議員の一人が勇気を振り絞ってした質問に、テスタロッサは艷やかに笑って答える。

 

「皆様、ご安心なさいな。我等が主君、魔王両陛下からの命令は、西側諸国評議会に加盟する西側諸国の守護ですわ。既に私の配下が、各地に散っております。そして、モス」

 

「はい。先程入手した情報ですが、北方の防衛に頼もしい援軍が到着した模様です」

 

 テスタロッサの後ろに控えていたモスの報告に再び会場は騒然となる。

 

「し、して、テスタロッサ殿、その援軍というのは?」

 

「モス」

 

「はい。魔導王朝サリオンの飛竜船が、現地に向かっております。あそこで暴れている低級の悪魔共であれば、あの風精人(ハイエルフ)の配下で十分に駆逐可能でしょう」

 

「だそうよ、議長殿。それとモス、両陛下の盟友殿に対して、“風精人”呼ばわりは感心しないわね」

 

「ハッ!? こ、これは大変失礼を」

 

「二度はないわよ? これからはちゃんと、エルメシア陛下とお呼びしなさいね」

 

「し、承知しました」

 

 テスタロッサの紅い瞳に睨まれ、モスは萎縮し顔を青褪めさせる。

 

 テスタロッサの不興を買うことはモスの破滅を意味するのだ。

 

 悪魔界の大公爵時代の感覚が抜けきっていなかった事が原因で、テクトとリムルが友として認めた相手を蔑ろにしたことはモス自身としても許されざることだった。

 

 テスタロッサがモスの心情を読み取ったからこそ忠告で許されたのであり、もし不遜な態度が改められなければ次の瞬間にはテスタロッサによる粛清が待っていただろう。それは、モスが大悪魔であり、永き時をテスタロッサに使える忠臣であっても変わらない。

 

 テクトの前で見せることはないが、テスタロッサは優しさと冷酷さを両立させた人物なのだ。

 

 モスの自省の間にも議会は混迷を極めていく。

 

 テスタロッサとモスの会話を真実とする裏付けはなく、それを信じるのかが争点となっていた。

 

 やがて、テスタロッサを信じる者と信じきれない者で二分され、議論が加熱していく。

 

 テスタロッサはそれを悠然と眺めていた。

 

 意見を口にするでもなく、ただただ喧騒へと耳を傾ける。

 

 そしてしばらく経った後、唐突にテスタロッサが立ち上がった。

 

「そう、貴方でしたの。やはりいると思いましたわ」

 

 突然の言葉に議員達は困惑する。意味を考える有象無象を無視し、テスタロッサは一人を見据える。

 

 テスタロッサの視線の先にいたのは五大老の一人―ロスティア王国の公爵、ヨハン・ロスティアだった。

 

 ヨハンはテスタロッサの言葉の意味が理解できているようで、脂汗を垂らしながら顔を青褪めさせていた。

 

「わ、私が何だというのだ?」

 

 動揺を必死で押し殺しながら、ヨハンはテスタロッサに問う。それに対する返事はなく、テスタロッサは艷やかな唇に弧を描かせるのみだった。

 

 やがて根負けしたのはヨハンだった。

 

「や、やはり魔物など信用出来ぬわ! 人を守るのは、我等自身の手であるべきだ。衛兵、衛兵よ出会え、出会え──いィ!!」

 

 ヨハンは脂汗にまみれた必死の形相で大仰に叫ぶ。一方のテスタロッサは嬉しそうな笑みを深めるだけだった。

 

 ヨハンの命令に従い、会場内に兵士がなだれ込んでくる。その中にヨハンの護衛も混ざっており、ヨハンの表情には余裕が戻ってきた。

 

 テスタロッサは優雅に髪をいじっているが、他の議員は混乱するばかりだ。

 

 魔国連邦の評議会入り承認の際にエルリックが処断されたのが示す通り、法の手順を踏まない横暴は評議会で認められることはないからだ。

 

「ねえ貴方、確かお名前はヨハン・ロスティア、だったわね? ロスティア王国の公爵で、とっても偉いのよね」

 

「だ、だから何だ? 今更媚を売ろうと」

 

「ヨハン殿、今、貴方が魔法通話でお話した相手は誰なのかしら?」

 

「なっ!?」

 

「どうして貴方は、この国の「防衛結界」の破壊を命じたのかしら?」

 

「な、何故それを……」

 

「私に教えて下さらない?」

 

 お茶会での会話を楽しむかのような気安さで、テスタロッサはヨハンを追い詰めていく。

 

 驚愕するのは他の議員達だ。慌てて部下に命じ、イングラシア王都の「防衛結界」の様子を探らせようとしたが、調査に出るよりも早く衝撃が会場を襲った。

 

 明らかな異常事態がテスタロッサの言葉を肯定する。議会は混乱の一途を辿り、何人かがヨハンへと問い詰めにかかった。

 

 一方のヨハンは計画の達成に安堵し、笑みを浮かべている。

 

「ジラード殿、結界も消えた事だし、もう良かろう。あの御方を御呼びするのだ」

 

 ヨハンに促され、その隣へと並び立ったのは“緑の使徒”の団長だった。以前と違い明らかに害意を持って立っているジラードに議員は青ざめる。

 

「確かに、今こそ契約は成立した。協力を感謝する」

 

「なあに、構わんとも。我等が盟主たるグランベル翁の最後の望み、それが貴公等の望みと合致したまでの事。さあ、遠慮は要らぬ。どうせなら派手に、この地を地獄へと変えて見せよ!」

 

 そう言い放ち哄笑するヨハンからは明らかに理性を失っていた。何をしようとしているかはわからずとも、明らかな裏切りと哄笑が孕む悪意に議員達の顔色が絶望に染まる。

 

「アイン、やれ」

 

「うん、わかったよ!」

 

 ジラードに促され、チーム“緑乱”のリーダーであった精霊使役者の女性が呪文の詠唱を開始した。

 

 黒い楕円形の転移門が出現し、それをくぐり抜けて暗紅色のメイド服を着たミザリーが姿を表した。

 

 ミザリーがこの場に現れたのは偶然というわけではない。彼女は“緑の使徒”が信仰する神であり、その信託によってこの場への召喚を行わせたのだ。

 

 ミザリーから放たれる妖気に駆けつけた魔法審問官さえも硬直する。

 

 絶望が人間達を包む中、テスタロッサは平然と艶やかに微笑んでいた。その後ろに控えるモスも面白くなさそうな顔を浮かべるだけであり、その反応の薄さにヨハンは驚愕した。

 

「そう、なかなか面白い事を企んでいたのね、ヨハン殿。もしかして、この国を滅ぼして世界を戦乱に導きたいのかしら?」

 

「だとすれば何だね?」

 

 テスタロッサの声音に微塵も怖れがない事で、ヨハンは内心不機嫌となる。魔王を凌ぐ力を持つミザリーの召喚という事態を前に余裕を保っている姿が気に喰わなかったのだ。

 

 しかし、すぐに考えを改める。

 

 テスタロッサが余裕を保っているのは自身の力を過信しているためであり、決して敵わない相手と知れば、その美貌をぐちゃぐちゃにして泣き叫び、無様に命乞いをする事になるだろうと考え、嗜虐的な高揚を感じていた。

 

「これは滑稽だこと。私がここにいる時点で、貴方の計画なんて破綻しておりますのに」

 

「クックック、何を世迷い言を」

 

 テスタロッサの言葉にヨハンは余裕の笑みを漏らす。

 

 自尊心が高ければ高いほどに、それをへし折られたときは深い絶望に陥る事になる。それをこれまで政敵を陥れる過程で得た経験則により知っていたヨハンはテスタロッサの絶望する姿を夢想し、下卑た期待をしていた。

 

 そんな二人に割り込むように議長が声を上げる。

 

「テ、テスタロッサ殿、そんな悠長な事を申しておる場合ではありません、貴女だけでも早々に脱出し、魔王両陛下への御注進をお願い致したく!」

 

「あら、議長殿? 私から両陛下に何をお伝えすればいいのでしょう?」

 

 西側諸国における悪魔族に対する理解度は東と比較するとお粗末と言っていい。議長も例外ではなく、ミザリーの脅威度も古の魔王ギィの配下であるという点だけからの判断だった。

 

 無知ゆえにミザリーの存在に絶望しきることなく、議長がテスタロッサへと言い募る。

 

「ですから! あの魔王ギィ配下の幹部が、侵攻して来たとお伝えして欲しいのです。さすれば、我等をお見捨てにはならぬでしょう!」

 

 議長としても、それは甘い考えだと理解している。

 

 如何に人類との共存を望んでいるとしても、魔王ギィとの敵対を天秤にかければどちらに傾くかなど誰でもわかる。

 

 しかしそれでも、感情的で人間臭い魔王二柱であれば損得抜きで救援に来てくれるのではないかと―その考えが馬鹿げていると思いつつも―議長は願ってしまったのだ。

 

 そんな議長にテスタロッサは微笑んで告げる。

 

「ですから、私がここにいるのです」

 

 何を言われたのか、議長は理解出来なかった。しかし、すぐにその意味は判明する。

 

 テスタロッサの言葉に戸惑ったのは議長だけではない。

 

 ヨハンも同様であり、テスタロッサの余裕ある態度に我慢の限界を超えた。

 

「させると思うかね? ジラード殿、そろそろ彼等に現実を教えて差し上げたまえ」

 

 ヨハンがそう命じるも、ジラードは動けない。というのもジラードも混乱している一人だからだ。

 

 しかしその動揺はテスタロッサに因るものではない。

 

 ジラードはミザリーの召喚に成功して以降、撤退の機会を伺っていた。

 

 ミザリーがその力を振るえば、この場にいる者達を皆殺しにし、イングラシア王都を焼き尽くすことなど造作もない。そうなる前に、召喚に際して気絶したアインを回収して逃げ去る予定だった。

 

 この都市の民を“緑の使徒”の神たるミザリーへと捧げるという功績をもって、ジラード達は神の末席に加えられることになっていたのだ。

 

 だが、事態はジラードの思惑からかけ離れていく。

 

 ミザリーは現れてから一言も発さず、魔法の一つも行使せず、ただテスタロッサを見つめていた。

 

 そんなミザリーが、遂に口を開く。

 

「信じられないわ、ブラン。どうして貴女、受肉しているのですか?」

 

「あら、そんな呼び名は寂しくてよ。私、テスタロッサという素晴らしい名前を頂いているの。貴女も、ヴェールなんて呼ばれるのは嫌でしょう? ねえ、ミザリー?」

 

「名前、名前を……貴女が? そんな、まさか」

 

「そのまさかなの。せっかく挨拶に来てくれたのに悪いのだけど、今の私なら、貴女に負けないわね。それでも戦うというのなら、面白そうだわ。千年くらいの眠りをプレゼントしてあげてよ?」

 

 テスタロッサの挑発にミザリーは応じず考えを巡らせる。

 

 肉体と名前を得て悪魔公に進化したことで条件は五分。

 

 しかし、テスタロッサはとても好戦的な性格で、ウルティマやカレラと勢力争いに明け暮れていたため、ギィの配下として事務方をしていたミザリーと戦闘経験という点では水を開けられている。

 

 その上、テスタロッサから感じる魔素量はミザリーにも引けを取らないほどであり、受肉したてとは思えないほどだ。単身のミザリーに対し、テスタロッサの後ろにはモスもおり、テクトの存在を考えると彼も名無しのままとは考えられない。

 

 戦えば圧倒的に不利であり、本当に千年単位での眠りに陥る可能性も捨てきれなかった。

 

 ギィからの命令はイングラシアの王都で軽く暴れて人間に恐怖を刻むことで、戦闘は想定外の事態である。そのため、優先すべきは原初がもう一柱、テクトに与したという情報を持ち帰ることだと判断し、肩を竦めた。

 

「そんな挑発は不要ですよ、テスタロッサ。今日の目的は、貴女ではありません。王都の「結界」を破壊したことですし、目的は達成したと判断しましょう」

 

「あら、逃げるんですの?」

 

「ええ、私の命はギィ様のもの。勝手に捨てていいモノではないのです」

 

「そうですか。では、次の機会を楽しみにしていますわね」

 

「それはこちらのセリフ、と言いたいところですが、戦うことはないでしょう。かの御方はそれを良しとしないでしょうから」

 

 ミザリーの言葉にテスタロッサは寸の間キョトンとした表情を浮かべたが、ミザリーの指す御方が誰なのかを察してニッコリと笑った。

 

 しばし二人は睨み合っていたが、それは唐突にミザリーが転移したことで終了となった。

 

 あっけにとられたのはジラードとヨハン。

 

 特にジラードの動揺は激しい。“緑の使徒”にとっての万能の超位存在が美しいだけの議員に言い負かされたのだから、さもありなんというものだ。

 

 しかし、ミザリーからすれば、“緑の使徒”など使い捨ての道具に過ぎない。人間社会の監視と情報収集に使うための道具は他にもあるので、見捨てるのに何の呵責もない。

 

 それをどこかで理解しつつも、ジラードはそれを認められなかった。

 

「う、嘘だ! クソッ、お前のせいで、神が戻ってしまわれたではないか!」

 

 激昂したジラードはテスタロッサへと斬りかかる。

 

 Aランクオーバーの実力は伊達ではなく、常人には見えぬ速度で仕掛けるが、モスによってあっさりと剣を折られ、拘束された。

 

「殺しては駄目よ。そちらのお偉いヨハン殿も、ね」

 

「しかし、この者共はテスタロッサ様を侮辱」

 

 そこまで言ったところで、モスの片耳が飛ばされた。

 

「モス、私に二度も言わせる気?」

 

「滅相も御座いません! テスタロッサ様に具申するなどこの私が思い上がっておりました!」

 

 モスはその場に跪き、自身の失言を後悔する。

 

 最近はテスタロッサがご機嫌だったために油断していたが、彼女はとても我侭なのだ。

 

 それはテスタロッサだけでなくウルティマやカレラも同様である。

 

 “類は友を呼ぶ”というのが彼女達を正しく表す言葉であった。

 

「それを理解したのならば、今回も許しましょう。ああ、私ってなんて寛大なのかしら。ねえ、モス。そう思うでしょう?」

 

「はい、間違いなく!」

 

 モスはとても従順で、賢い。

 

 たまに失敗する事もあるが、こんなテスタロッサの従者を一万年以上続けている。その実績は、他の誰にも真似できない偉業なのである。

 

 かくして、ヨハン、ジラード、アインの三名と彼等に従った兵士は拘束された。

 

 ジラードは抵抗のしようもなくなったことで状況を俯瞰して見てしまい、原初二柱の会話からテスタロッサの正体へと思い至って発狂した。

 

 自我を失ったジラードと気絶したアインが連行され、残されたヨハンはこの短い時間でずいぶんと老け込んだ様子となっていた。

 

「わ、私は失敗したのか……。グランベル様の望みを、最後の頼みすら……」

 

「そうねえ、貴方は何も出来なかったわね」

 

 呆然と座り込み、ぶつぶつと呟いていたヨハンにテスタロッサが耳打ちする。そこに含まれた毒に思わず目を怒らせた。

 

「クソッ、クソが! お前さえ、お前さえいなければ計画は成功しておったのだ!」

 

「あらそう? それはごめんなさい。貴方の計画を邪魔する結果となったけど、これも運命だったと諦めて欲しいわね。さあ、後ろで待っている人もいるみたいですので、私からはこれで」

 

 テスタロッサはそう告げながら白い指でヨハンの顎を一撫でし、魔法審問官へとその場を譲る。

 

「い、嫌だ。来るな、私に近づくでないわ!」

 

 無言のまま取り押さえる魔法審問官に向けてヨハンは喚く。

 

「止めろ、おい、放せ! わ、私を誰だと思っておる! こんな真似をしたらどうなるか、貴様等、わかっておらぬのか!? 我が祖国が黙っておらん。国際問題になるぞ!」

 

 喚き散らすヨハンを助けようとする者は誰もいない。

 

 これだけの数の証人がいる以上、抗弁は無意味なのだ。

 

「泣いても喚いてもだーめ。きちんと罪を償いなさい。お友達もいるのでしょう? きっと、楽しいわね」

 

「クソがぁ!! この悪魔めが、地獄に落ちろ!!」

 

「ウフ、ウフフフフフ。いいわあ、それよそれ。負け犬の遠吠えって、どうしてこんなにも気持ちいいのかしら。でもねえ、貴方が私を恨むのは筋違いなのよ。ここ、評議会ではね、罪人の処遇も裁判で決められるの。そしてその罪が「国家転覆罪」や「外患誘致罪」のような内乱罪だとすれば、それは評議会の手を離れてイングラシア王国の管轄になるのよ。残念だわ。私にはね、貴方を処罰する権限がないのよ。正当防衛という手段もあるのだけど、貴方ではちょっと、弱すぎるわね」

 

 必死な様子のヨハンを見て、テスタロッサは楽しそうに笑う。

 

 やや挑発的なきらいはあるが、その発言は国際法に則ったものである。法を盾に、正論のみでヨハンを追い詰めたテスタロッサが正義であった。

 

 かくしてヨハンは逮捕され、二度と日の目を見ることのない運命を辿る。

 

 結果だけ見れば、テスタロッサが王国を滅ぼそうとした悪魔を撃退し、イングラシアのみならず各国の議員を救った形となった。

 

 この一件により、テスタロッサの評議会での地位は盤石なものとなった。

 

 頭脳でも、武力でも、人間では並ぶべくもなく。

 

 議長さえも重用するようになったことで、テスタロッサの名声は知れ渡り、テスタロッサに因る西方支配が完了する。

 

「こうなることを読んでいたのでしょうね。流石はテクト様。素晴らしい、実に素晴らしいですわ!」

 

「まったく、底知れぬ御方です」

 

「ええ、そうですわね。ギィ・クリムゾンにも手を打っているようですし、一体どこまでが手の平の上やら……私達のやるべきことは分かっているわね?」

 

「力を蓄えましょう。如何なる暴威であろうとも、彼の御方の道を阻むことなど許されないのだと、万人に知らしめる為に!」

 

「わかっているのなら、私は何も言いません。期待に背かぬよう、精進なさいね。ちゃんと、シエンにも伝えておくのよ?」

 

「承知で御座います、我がご主人様!」

 

 モスの即答にテスタロッサは満足そうに頷いて優雅に微笑んだ。

 

 北方の地でもシエンの活躍によりエルメシア麾下の魔法士団到着まで持ちこたえ、侵攻も本気のものでなかったために戦況の変化に伴い悪魔達は撤退した。

 


 

次回「遺志の成就」




感想・評価・お気に入り等ありがとう御座います。

まおりゅうSAOコラボ開催中!(圧倒的遅刻)

先週は別のことを考えて告知を忘れるミス。

来週は年始ということでもう一方の更新を予定しています。進捗は微妙ですが、頑張ります。
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