書き直している間に休日が終わってました。なるべく定期的に投稿できるようにしたいと思います。
魔王ゲルド討伐から一夜明け。
各種族の代表が
「では、議長リムル・テンペスト。始めてください」
(こういうのは苦手なんだけどな)
(がんばれ、リムル。それしか言えない)
シオンに抱えられ、リムルは冷や汗をかきながら開始を宣言する。その後ろに控えるテクトは表情には出さないものの心配そうにリムルへと視線を向けていた。
「えっと、こういった会議は初めてなんで、思ったことだけ言おうと思う。それをみんなで検討してくれ。最初に明言しておくが、俺は
リムルの一言に最も大きな反応を示したのは、他でもない豚頭族の代表として着席していた、
「被害の大きかった蜥蜴人族からすれば、不服かもしれないが、ひとまず最後まで聞いてくれ。そもそもの原因は飢饉にある。俺を含め、同じ立場に立ったとすれば、豚頭帝と同じ判断をするかもしれない…っていうのはただの建前なんだけどな」
「建前………では、本音のほうをうかがっても?」
蜥蜴人族の首領の要求を当然のものとし、リムルが答える。
「豚頭帝の犯した罪は他の豚頭族のものとともに俺が食った。だから、何か文句があるなら俺に言え」
「お、お待ちいただきたい。それはいくら何でも道理が」
「それが魔王ゲルドとの約束だからだ。彼が安らかに逝けるように、豚頭族を罪に問わせないことと、豚頭帝を失った後の安定を約束した。一度約束をした以上、私たちにはそれを履行する義務がある」
リムルの言葉に思わず立ち上がった豚頭族の代表にテクトが魔王ゲルドとの約束のことを話す。二の句を告げることのできなくなった豚頭族の代表はうなだれながら着席しなおした。
「しかし、それは少々ずるいお答えですな」
「魔物には唯一不変のルールがある。「弱肉強食」。立ち向かった時点で覚悟はできていたはずだ」
蜥蜴人族の首領の言葉にベニマルが応答する。首領はあっさりと引き下がった。どうやら反論に関しては織り込み済みであったらしい。
「鬼人のみんなは里を滅ぼされているけどそこはいいの?」
「何も感じていないといえば、うそになります。ですが、次また同じことがあるのなら、今回のような無様はさらしませんよ」
テクトが心配そうに問うとベニマルは自身ありげに答える。鬼人たちがうなずく様子から、見解は一致しているようだった。会話の切れ目を待ち、蜥蜴人族の首領が再び口を開く。
「一つどうしても確認しておきたいことがあります。豚頭族をどうするおつもりですか。豚頭族の罪を問わぬばかりか安定すら約束している。これは生き残った豚頭族をすべて受け入れるとおっしゃっていると同義です。どうやって受け入れるおつもりなのでしょうか」
彼の疑問も最もである。当初の軍勢から数は減っているとはいえ、十五万の豚頭族を支配領域が狭いテクト達が抱え込むなど、土台無理な話だからだ。
「確かに俺たちだけで十五万の豚頭族を何とかすることはできない。皆の協力を前提としてしまった考えになってしまっているのは申し訳ないが、ここにいる種族で協力体制を築くことができればと考えている。蜥蜴人族からは水資源と魚を、ゴブリンからは土地を、俺たちの村からは加工品を提供し、それを対価として豚頭族に労働力を提供してもらう。ジュラの森の各種族間で大同盟を結び、相互に協力関係を築く。多所属共生国家のようにできればいいかななんて考えている」
「我々がその同盟に参加させていただけると」
「帰る場所も行く当てもないんでしょ?」
「居場所は用意してやるからしっかり働けよ」
リムルの考えに驚いた豚頭族の代表が確認をとり、その返答に感極まったのか目を潤ませた。そのまま出席者全員で平伏し、リムルの言葉に恭順の意を示す。その姿に納得したかのように蜥蜴人族の首領も同盟への参加を表明し、トレイニーも参加の表明に加えて豚頭族への食料提供を約束した。このことに豚頭族は感涙し、再び頭を下げる。
「では、森の管理者として私、「トレイニー」が宣誓します。リムル様を新たな森の盟主として認め、「ゑ⁉」盟主リムル様の名のもとに、「ジュラの森大同盟」は成立いたしました」
その言葉に呼応して、テクトを含め全員が跪く。
「(俺、いつの間にか盟主にされたんだけど、トレイニーさんじゃないの⁉ あとテクト!! お前までなんで一緒になって跪いてるんだよ⁉)いいよ!! やるよ!! やってやりますよ!! じゃぁ、そういうことみたいなんで、みんなよろしく頼む!!」
辞退も考えたリムルだったが、雰囲気がそれを許さず、リムルがあきらめ気味に承諾し、冷や汗の止まらないリムルを置き去りにして同盟が成立した。
「何か役職を考えようと思うんだ」
「役職、ですか」
同盟における蜥蜴人族の代表となる首領に対し、不便だからという理由で名付けをしに行ったリムルから離れ、テクトと鬼人たちが話していた。
「正式に仲間になったわけだけど、鬼人のみんなは強いし、まとめ役になってもらおうかと思ってね。といってもやることが大きく変わるわけじゃないけど」
「こちらとしては異論ありません。配下となった以上、采配に関しては、テクト様とリムル様にお任せいたします」
そう話すベニマルにうなずき、役職を決めていく。
ベニマルは「侍大将」。軍事に関しての最高責任者となる。
ソウエイは「隠密」。外部からの間者への警戒が役割となる。
ハクロウは「指南役」。これまで通り希望者に訓練をつけてもらう。
シオンは「武士」。リムルの秘書兼護衛。
シュナは「巫女姫」。基本的には織物の生産を担当する。
クロベエは「刀鍛冶」。カイジンたちとともに工房で働いてもらう。
コウカは「執政官」。全体としての仕事の調整や進捗の確認などを行う。
スイレンは「見廻」。今は心因性の問題でリハビリ中だが、それが終わった後、可能であれば、警官のように巡回や警備を行う予定である。
「こんなところかな」
「申し訳ない。今、よろしいだろうか」
役職決めが終わり、息をついたところで話しかけてきたのは豚頭帝の側近をしていた個体だった。雰囲気から、自分に用があるわけではないと察したテクトが脇に移動しベニマルが応対する。
「何か用か?」
「弱肉強食とはいっても、憎しみはそう簡単に割り切れるものではない。我らが
そこで言葉が切れ、そのまま手をつき豚頭族が首を垂れる。
「詫びて済む話ではない、虫のいい話であることは重々承知の上だ。だが、どうか、この首一つでご容赦願えないだろうか」
顔を上げぬまま歎願する。同族に責が及ばぬよう自身の死をもって償いとしたいようだった。頭を垂れ、裁決を待つ豚頭族へベニマルが進み出ると、ゆっくりと口を開く。
「戦いの後これからもテクト様達とともにありたいと伝え、認められた。そして、先ほど役職を賜った。俺の役職は「侍大将」。軍事を預かる役どころということだ。そんな役になってしまった以上、有能な人材を俺の判断で消すわけにはいかない。我らが主に仇なす存在というなら容赦はしないが、同盟に参加し盟主と仰ぐのなら敵ではない」
「仇なすなど滅相もない。我々を救ってくださった方々だ。従いこそすれ、敵対するなどありえん」
「では、俺たちは同じ主をいただく仲間だ。精々お二人の役に立て。それを詫びとして受け取っておいてやる」
「…父王ゲルドの名に誓って」
豚頭族が鬼人たちに頭を下げ宣誓する。テクトは鬼人たちの考え方に感心していたが、これから地獄のような作業が待ち構えていることに気づいていなかった。
(…………今、どこまで行ってる?)
(…………もうちょいで「山」が終わるぐらいだな)
テクトとリムルは豚頭族に対して名付けを行っていた。普段から仲間には名付けを行っている二人だが、さすがに十五万通りの名前を考えることは容易ではないうえ、消耗は計り知れない。蜥蜴人族に対しても首領ぐらいにしか名付けを行っていないことから、本来ならまとめ役となる豚頭族にのみ名付けを行うのが妥当といえる。
にもかかわらず名付けを行っている理由は、繁殖を押しとどめるためである。
豚頭族は下位の魔物というわけではないが、いかんせん数が多すぎるのだ。新しい個体が生まれる頻度は高いとは言えないにしてもそもそもの母数が多いため増えるスピードは早い。
そのため進化させる必要に駆られた。進化することは種として強靭になることを意味している。各個体それぞれが死ににくくなれば、繁殖能力も落ちるということになるというわけである。
しかし、前述の通り十五万通りの名前は考えることはできなかったため、彼らは番号を使って名付けを行っていた。
名付けの後、豚頭族は各地に散りそれぞれの場所で生活、労働することになっているため、その居住地の区画、雌雄、何人目に名付けされたかを並べていく方式をとっている。例えば山側の居住区に住むことになる雄の豚頭族で一人目に名付けを受けた場合は「山-1M」というようになる。ちなみに魔素に関しては豚頭族のものを使っている。
最初はリムルの「捕食者」が豚頭帝の保有していた「飢餓者」を取り込んだことで変化した「
しかし、名付けをする豚頭族から魔素を回収、名付け、名付けの終わった豚頭族が橫に捌けて再び魔素の回収、というサイクルでは時間がかかる。そのため、効率の問題からテクトが行列の中から「
とはいえ、いくら効率化しても十五万の名付けには時間を要し、終わったのは十日後だった。
名付けを受けた豚頭族は
豚頭帝の討伐から一月ほどたったころ、街に一団がやってきた。
ガビルとその妹を含む蜥蜴人族達である。
ガビルは反逆罪に問われ、死罪こそ免れたものの蜥蜴人族から破門となり、テクト達の住む街を目指して移動してきたらしい。役に立ちたいというガビルに対して彼の印象が悪かったシオンが切ろうとするのをなだめ、彼らを受け入れることとして、洞窟内でのヒポクテ草栽培を任せることとなった。
「リムル、ガビルの妹さんとその配下四人を引き抜いてもいいかな? ソウエイの下につけて隠密部隊の増強をしたいんだけど」
「本人たちがそれでいいなら構わないぞ」
テクトが当人たちに目を向けると全員がうなずく。異論はないようなのでソウエイが連携や訓練をやりやすいように名前を付けていく。ガビルの妹に
「何を羨ましそうに見てるんだ? お前には「ガビル」っていう立派な名前があるだろ?」
リムルの言葉に反応し、魔素がガビルに吸収される。名前が上書きされ、ガビルの体が輝きだした。
(名前って上書きできるのかよ⁉)
「(あ~らら。これは厄介ごとになりそうだね)じゃぁ、リムル。私はソーカたちをソウエイに引き合わせてくるから、この場はよろしく」
「あ、おい⁉」
言うが早いかソウカたちを連れてテクトは去っていた。その後、残されたリムルは蜥蜴人族に名付けを行い、彼らは
その後、更にゴブリンがやってきた。ここで見逃すのは禍根を残すことになることを悟ったリムルによって受け入れることが決まり、猪人族同様に数字による名付けが行われた。彼らはのちに「
ちなみに名付けはすべてリムルが行った。カイジンたちが来た時と同様の理由でテクトが押し付けたためだった。ガビル達の件と合わせて、このことは覚えておこうと考えたリムルであった。
豚頭帝討伐から三か月がたつ頃、居住者全員に部屋がいきわたるくらいまで建築が進んでいた。
リムルの前世によるゼネコン由来の知識が役に立っていた。上下水道や各種族間の居住区をつなぐ道路など衛生、物流面での工事が進み快適に過ごせるように整備されていた。
各地に散った猪人族も問題なく技術を習得し、仕事に励んでいる。テクトとリムルは魔王ゲルドとの約束を守ることができたことに安堵しつつ、街を盛り立てるため邁進していく。
その一方でとんでもないものが迫っていることに気づくことはなかった。
次回「ドワルゴンとの同盟」
補足
同盟の盟主となったのがテクトとリムルの二人ではなくリムルだけなのは「暴食者」が存在するからです。
「暴食者」の権能の「受容」と「供給」を鬼人たちに対して適用する場合、テクトとの魂の回廊を通じて行うことになります。そのため全体としてリムル≧テクトという構図が無意識下で存在し代表を決める際にリムルが第一候補として挙がるようになっています。
なので、今後も基本的には代表がリムルになります。
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次回の後半はオリジナル展開の予定ですので悪しからず。
紅蓮の絆編は書いた方がいいのか
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書くべき
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書かなくてもいい