転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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文字数がいつもと比べて膨らみすぎて一度区切りました。

明日には投稿できるよう頑張るので許してください。


11話:ドワルゴンとの同盟

 「ジュラの森大同盟」成立後の移住者に対する名付けや、人員の再配置などが終了し、環境の基盤整備に完了のめどが立ったころにそれはやってきた。

 

 数百騎の天馬(ペガサス)に乗った騎士が街へと接近しているとソウエイから報告が入ったのだ。

 

 慌てて騎士たちが向かってくる方角へと向かっていく最中に次々と合流していき、テクト、リムル、ランガ、ベニマル、ソウエイ、ハクロウ、シオン、リグルド、リグル、そしてカイジンが軍勢に対面した。騎士たちがテクト達を取り囲むように周囲を飛び回り、彼らがその場から動かぬようにけん制する。

 

「ドワーフの英雄王、ガゼル・ドワルゴ」

 

「へぇ、あれがドワーフの王か。それでカイジンも来たんだ」

 

 テクトが戦闘員ではないにも関わらずカイジンが走ってきたことに納得していると、上空からガゼル王が下りてくる。

 

「リムル様。いかがいたしましょうか」

 

「敵対したくはないな。もし戦闘になったら住民の避難を最優先にする。その間は俺たちで時間を稼ぐ。いいな」

 

「ふむ、別に倒してしまってもかまわないんでしょう?」

 

「状況には合ってるけどやめてくれ。確か最終的に死ぬ奴だろ、それ」

 

 リムルがテクトの軽口に反応しつつ、油断なくガゼル王を見る。その横からカイジンが進み出て天馬から降りたガゼル王の前に跪いた。短く言葉を交わす両者の後ろからリムルが近づいていく。

 

「スライムか」

 

「最初に言っておくが、俺の名はリムルだ。スライム呼ばわりはやめてもらおう。これでもジュラの森大同盟の盟主なんでね」

 

 リムルは人間への擬態を行い要件について尋ねる。ガゼル王はリムルの人(?)となりを見極めに来たらしい。剣に手をかけながら決闘によって確かめると言い出したガゼル王に護衛のためについてきたであろう騎士たちが困惑し止めようとするが、本人はこれが一番手っ取り早いと一蹴する。

 

 決闘の申し出をリムルが承諾し、互いに剣を構える。内容はガゼル王の攻撃をリムルが受け切ることができればリムルの勝ちということに決まった。そこにトレイニーが現れ立会人となり決闘が始まった。

 

「どうみますか、テクト様」

 

「剣だけの決闘で条件なしなら、リムルが負ける可能性が高いと思う。ハクロウの訓練に参加しているといっても積み上げてきた時間が段違いだろうから。私だったら無理だね、勝てない。スキルとかなんでもありなら勝てるかもしれないけど」

 

 ベニマルの疑問に対し、テクトはあっさりと答える。そのことが以外だったのかわずかに目を見開くも視線をリムルたちに移し決闘を見守ることにした。

 

 リムルは攻めかかるも弾き飛ばされ、技量差がありありと示される。幾度か打ち合った後、再び距離ができたタイミングでガゼル王が剣を垂直に構える。

 

「行くぞ、リムルよ! 「朧・地天轟雷」!」

 

(なるほど。強いわけだ)

 

 テクトは構え方から剣を教えた相手を察しつつ、行く末を見守る。リムルは下からの一撃をかわし、返しの振り下ろしによる二撃目を水平に構えた刀で受け止めた。これに対してガゼル王が笑い、トレイニーがリムルの勝利を宣言する。確認は済んだようで邪悪とは感じないとのことだった。

 

 ガゼル王はリムルが最後の技を受け切ったことをほめ、そこからの会話で、ハクロウが以前ガゼル王に手ほどきをしていたことが判明し、ガゼル王はリムルが兄弟弟子であることを知り、より距離が近くなった。そこで不意にテクトへと視線が移る。

 

「ところでそこのお前、以前聞いたものと容姿が似ているが」

 

「これはご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私はテクト・テンペストと申します。容姿の差異は外交用の仮の姿であるとご理解くださいませ」

 

「やはりか。奴が随分悔しがっていたぞ。一から鍛えなおすと息巻いておったわ」

 

「それは重畳。また会いまみえる時を楽しみにしているとお伝えください」

 

 テクトは軽く御辞儀をしながら自己紹介を終える。ガゼル王は鼻を鳴らし言葉を切る。その後、ドワーフ達を街に案内し歓待することなった。

 

 

 

「なるほど。豚頭帝(オークロード)を倒した謎の魔物集団の調査だったと」

 

 戦闘の可能性がなくなり、皆が気分よく飲み食いしている中、ガゼル王と側近のドルフ、テクト、リムルは神妙な顔で話していた。

 

「リムルよ、聞きたいことがある」

 

「なんだ」

 

「俺と盟約を結ぶ気はあるか」

 

 考えてもみなかった提案に硬直する二人にガゼル王は考えを話す。

 

 この森をすべて掌握することができた場合、リムルの抱える国力はドワルゴンをしのぐほどになり、そのままでは軋轢が起きかねない。そこで、ドワルゴンが後ろ盾として名乗りを上げるとのことだった。魔物の集団を国として認めることによる問題があるのではと懸念するリムルに対し、ガゼル王は懸念については理解していること、双方に利益がある話だと断言する。

 

(テクト、どう思う?)

 

(断る理由はないね。そもそも、いずれ人間とも交流する予定である以上、他国に認めてもらう機会を逃す手はないよ)

 

「(だな)その申し出、喜んで受けたいと思う」

 

 リムルの返答にガゼル王がうなずき国の名前を問う。国を興すことを考えていなかったため二人の脳内で焦りながら決めていく。わずかに時間をとり、ジュラの森と共通名であるテンペストからとって「ジュラ・テンペスト連邦国」とした。

 

「では、国の名前は「ジュラ・テンペスト連邦国」。この町の名は中央都市「リムル」といたしましょう」

 

「うぇ⁉ ちょっと待て⁉ それはさすがに「中央都市「リムル」‼ 素晴らしい名です」

 

「そうだな。これほどふさわしい名はあるまい」

 

「意義ナーシ」

 

「おいこら、テクト!」

 

(まあまあ、次何か名前が必要になったら私の名前でいいからさ。ガゼル王を待たせることになるし、ここはスパッと決めたほうがいいでしょ?)

 

「むぅ」

 

 呻くリムルをよそに話がまとまり、「ジュラ・テンペスト連邦国」と武装国家「ドワルゴン」の同盟が成立した。

 

 この日、初めて歴史に「ジュラ・テンペスト連邦国」、そして中央都市「リムル」の名が刻まれたのである。

 

 

 

 

 

 そして同盟締結から二日後。

 

 再びガゼル王が現れた。同盟締結の翌日に帰っていった彼らが間を置かず再び来訪してきたことにいぶかしむテクト達であったが、ガゼル王曰く土産を持ってきたらしい。

 

 ガゼル王が目配せをすると騎士が布に包まれたものを放り投げる。地面に落ちた衝撃で中身があらわになり、そこから顔をのぞかせたのは、以前ドワルゴンで一悶着あったというベスターだった。

 

 ガゼル王曰く、有能な科学者であるベスターを遊ばせておくのはもったいない。だが、一度首にした彼を再び迎えることはできないため、盟約に基づいた技術供与の名目でテンペストへと連れてきたらしい。

 

 ベスターはガゼル王が自分を完全に見限ったわけではなかったことに感涙し、リムルとカイジンに謝罪、テンペストでの研究を志願してきた。

 

「優秀な研究者が増えて助かるってもんです。リムルの旦那、テクトの旦那。何かあれば俺が責任を取ります。ここは俺を信じてこいつをここにおいてやってくれませんか」

 

(どう思う? テクト)

 

(私は別に被害にあったわけでもないし、反対する理由はないよ。見た感じ毒気は抜けてるし、必死に研究に取り組んでくれると思う)

 

「(なら、決まりだな)カイジンがそういうなら、断る理由はないよ。ベスター、よろしくな」

 

「不肖ながら、精一杯務めさせていただきます」

 

 平伏するベスターの姿に納得し、ガゼル王は身をひるがえして去っていった。どうやらベスターを届けに来ただけだったらしい。

 

 ベスターはガビル達がヒポクテ草を行っている洞窟内に研究室を設けることとなり、これまでドワーフの技術では作成できなかった、完全回復薬の作成を行うこととなった。

 

 

 

 唐突なことではあるが、シュナはテクトの事を好いている。

 

 豚頭族(オーク)によって殺されそうになっていたところを助けられたことに始まり、テクトが最初期の服飾関係に関わっていたことから関りが多く、思慕の念は募っていった。このことはベニマルも気づいているし、応援している。

 

 そしてその思いは相手のどのような姿を見てもそうそう揺らぐことはない。

 

 そう、例えば周囲を配下に囲まれた状態で床に正座させられている姿を目の当たりにしたとしても………

 

 

 

 

 

 ドワルゴンとの同盟の締結、ひいては国としての成立から一週間が過ぎたころ。

 

 テクトは床に正座させられていた。正面には腕を組むリムル。その周囲にソウエイやベニマル、シュナのほかにリグルド、コウカといった内政を主とするメンバーがそろっていた。

 

 リムルはご立腹のようだがほかのメンバーは何とも言えない表情になっていた。ちなみに、現在のテクトの装いは操糸人形(ホワイトドール)である。操糸人形の状態で正座しても何の痛痒も感じることはないのだが、それを口にしようとしたところ、黙っていろといわれ口をつぐんでいる。

 

 しばらくの沈黙を破り、リムルが口を開く。

 

「で、なぜ正座させられているのか理解しているのか?」

 

「えっと、何か書物でミスを?」

 

「違う」

 

「じゃぁ、送り先を間違えてた?」

 

「違う」

 

「なら、お饅頭の試作品をリムルの分まで食べちゃったこと?」

 

「ちg……それに関しては後で別途話を聞こうか」

 

 テクトが心当たりを告げていくもすべて否定されていく。最終的にため息をつきながらリムルが質問する。

 

「お前、最後にまともに寝たのはいつだ?」

 

「? 昨日は日付が変わるぐらいに寝たけど?」

 

 不思議そうに答えるテクトに対し、リムルはため息をつきながら再び問いかける。

 

「聞き方を間違えたな。どれぐらい寝た?」

 

「一時間ぐらい?」

 

「みじけぇよ!」

 

 事の起こりは大同盟発足後、テクト達が街に戻ってきたころに巻き戻る。

 

 各地に散っていった猪人族(ハイオーク)の食事に関してはトレイニー達の協力もあり、問題はなかった。

 

 しかし、そこで従事する仕事の資材管理、教育を行うカイジンたち技術者のスケジュール調整、新たに移住してきた者たちへの仕事の割り振り、その後に起きたトラブルの解決および再発防止策の発布等々の様々な仕事を引き受けていたのがテクトである。

 

 豚頭帝討伐前から行っていた業務ではあるものの、人数が一気に増加したため日が暮れても作業することが多くなっていった。

 

 無論、ルグルドやレグルドといったゴブリンロードや猪人族の部族長等の各種族のまとめ役がある程度まとめてはいるが、これまで行ってこなかったことであるため不十分な点は多々あり、教育の手も足りないため効率化は先延ばしにされていたのだった。

 

 多少の残業であればリムルにも経験があるため理解ができる範囲ではあった。

 

 しかしその後、ドワルゴンとの同盟によって街道の整備やベスターの研究関係で事務作業が増加し、それに伴って作業時間が増加、最終的に睡眠時間が上記のようになっていった。

 

 そもそも少なかった睡眠時間をさらに削っていることを夜間警戒の際に見かけたソウエイは知っていたが、立場上強く言えない。そのためこれをリムルに相談し、これを聞いたリムルがテクトの無理を止めるために動いたというのが現在である。

 

「問題ないって。「高速回復」で十分に疲労は抜けてるし、やらないとたまっていく一方だし…………」

 

「エクストラスキルの効果を前提として仕事すんなよ」

 

 テクトの言い訳に頭を押さえながらいさめるリムルが決定を口にする。

 

「とにかくだ、この際強制的にお前を休ませることにした。二日だ。明日と明後日は仕事をすることを禁止する」

 

「二日⁉ というか、そもそも急に休んだらやばいって‼ もう少ししたら量も減りだすはずだから、もう少し待ってからでも」

 

「だめだ。お前、ソウエイに気づかれてからずっとそういってたらしいじゃないか。今更信じられない」

 

 テクトの抵抗をリムルが一蹴し、話を打ち切る。ほかの者たちも異存はないようで、そのままテクトの休暇が決定された。覆すことはできないと悟り、反論はしなくなったものの不安そうにしているテクトにリムルは声をかける。

 

「心配すんなって。俺も普段やってることの量が増えるだけだし、ベニマル達幹部連中の経験にもなるしな。リグルドにも事務作業できそうなメンツを連れてくるように言ってるから手が足りないってことはないだろ。(最悪「思考加速」で思考時間を圧縮すれば大して時間もかからないだろうしな。ほかのメンバーに「供給」で分けてもいいんだし何とかなるだろ)」

 

「そうかなぁ」

 

「あ、そうだ。シュナ、お前には一つ任務を与える。テクトの世話と監視だ。普段の仕事はしなくていい。いいか、絶対に仕事をさせるなよ」

 

「はい。承りました」

 

 こうして、これまでろくに休みを取らなかったワーカホリックの休日が決定した。

 

 


 

 次回「テクトの休日」

 

 




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紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

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