転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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お待たせいたしました。

今回またオリキャラ登場となります。種族もオリジナル(多分)ですので、説明文を文末に載せてあります。



12話:テクトの休日

 テクトの休日。一日目。

 

「おはようございます。テクト様。朝食のご用意ができてますよ」

 

 リムルによる強制的な休日の始まりはシュナによるモーニングコールから始まった。

 

 世話を任されたこともあり、徹底的にやるつもりらしい。リムルのものと同時期に作られてはいたが、これまでほとんど使っていなかった庵での朝食を終え、予定に関して考えを巡らせる。

 

「しかし、何をしようか。何しろ急なことだからなぁ」

 

「テクト様は働きづめでしたからゆっくりするだけでも良いかと思いますが、ご趣味などありましたらそれをするのもいいかもしれません」

 

「趣味、ねぇ」

 

 趣味といわれて真っ先に思いつくのはアニメではあるがこの世界には存在していない。ならば他のことをと考えていくつか思いつくのだった。

 

「思いついた。けど、すぐにできることじゃないんだよなぁ」

 

「でしたら、ひとまず街の様子を見て回るのはいかがでしょう?」

 

 テクトはシュナの提案を受け入れ、街を見て回ることにした。普段街に出てくることのないテクトが歩いていることに住人たちは驚いた様子だったが、すぐに活気づいていった。

 

「みんな張り切ってるな」

 

「テクト様に見ていただけますから、自然と気持ちも乗るというものです」

 

 テクトは自身が姿を見せてから、より活気づいた街を見ながら、やはり頑張っていてよかったと顔をほころばせる。

 

 そうして一通り街を見て回った後、工房へと顔を出した。クロベエに一つ依頼を出し、しばらく話してから工房を後にする。

 

 次に訓練場へと足を向けた。久しぶり見る訓練風景だったが、訓練場を視界に入れた瞬間にゴブタが吹き飛んでいった。いつも通りの風景だ。

 

「おや、テクト様に姫様。いかがいたしましたか」

 

「少しゴブタに用事がね。急ぐものじゃないから明日の訓練後にでも呼ぶよ。今日は色々見て回ってるだけだから」

 

「さようですか。よろしければテクト様も訓練をしていきますかな」

 

「今日明日は休むように言われているからね。今後は時間が取れるようにされるだろうし、その時にしておくよ」

 

 ハクロウの提案を断り、倒れ伏したゴブタたちが立ち上がれるまで談笑する。その最中ふとテクトが顔を上げた。

 

「テクト様、どうかなさいましたか?」

 

「「魔力感知」に何か引っかかったんだけど、大きさの割に反応が弱いな。怪我でもしているのかもしれないし、いってみようか」

 

「はい。お供させていただきます」

 

 テクトはアラクネに変体するとシュナを乗せ、訓練場を後にする。森に入り見つけたのは傷だらけの狼型の魔物だった。息はあるものの呼吸は荒く、長くはもちそうにない。

 

「私たちの町のものではありませんね」

 

「ひとまず治療して話を聞こうか。「薬合成」」

 

 テクトが薬を生み出し治療する。傷が癒されしばらく待つと狼は目を覚ました。

 

『ここは……私は、確か』

 

「意識ははっきりした? 体に不具合はないかな?」

 

『あなたは?』

 

「私はテクト・テンペスト。こっちはシュナ。傷だらけだったから治療したんだけど何かあったのかな」

 

 狼は体を起こし、自身について説明する。

 

 狼の種族は「魔狼族」といい、牙狼族のように平原で群れを成して生活していたらしい。にもかかわらず森で一体だけの理由は、つい最近族長が倒れ、新しく族長となったものに排斥され、同族に攻撃を受けながら命からがら森へ逃げ込み、さまよっていたということだった。このことにテクトは魔狼族に対し怒りを覚えていた。

 

「排斥って、いったい何が?」

 

『色です』

 

「色?」

 

『魔狼族は本来、黒い体毛をしています。ですが、私は生まれつき白い体毛で生まれました。生まれた当時の族長は私を排斥するようなことはありませんでした。しかし、新しく族長となったものは私の存在を許さなかった。死に瀕していた私を助けていただいたことには感謝いたします。しかし……』

 

「行くところがないなら私たちの街に来る?」

 

 事情を説明し終え、口ごもる魔狼族に対し、提案をするテクト。ハッとした様子で顔を上げる。少し考えたのちに、回答する。

 

『よろしいのでしたら、私をあなた様の配下に加えていただければと思います』

 

「わかった。なら、名前を考えないとね」

 

 テクトの言葉に驚き、魔狼は名付けを止めようとするが、いつものことであるためシュナも止めることはなかった。

 

「(排斥されたらしいし、ほかの魔狼族のことは考えなくてもいいかな。だとすると完全に固有名でいいわけだ。狼か……なら、アレからもらおうかな)よし、君の名前は「フェル」だ」

 

 テクトから魔素が移動し、名付けが行われる。流入した魔素により魔物としての格が上がり進化が始まる。

 

 体が輝き、毛が生え変わっていく。光が治まるころには、元どおりの、排斥される原因となった純白の毛皮を纏った狼が現れた。

 

「綺麗……」

 

「だね。他と違うから排斥するというのは、やはりよくないことだと実感するよ」

 

 シュナとテクトが口々にほめ、フェルは顔をそむける。尻尾が触れているあたり喜んでいるのだろうが、やはりこれまで自身が非難される原因であった容姿をほめられるということに慣れていないことがうかがえる。

 

(そういえば、進化したみたいだけど、どんな種族名になるの)

 

≪解。個体名「フェル」は「魔狼族」から「炎魔狼族」に進化しています≫

 

(その辺は私の知識がもとになってるんだね)

 

 テクトは進化内容に納得し、思考を打ち切った。

 

 その後はシュナとともにフェルのことを愛で、街の住人に紹介して夜を迎えた。フェルはひとまず星狼族とともに過ごしてもらうことにし、テクト達は庵へと戻ってきた。

 

 シュナの用意した夕食を食べ終え、一日目が…………終わらなかった

 

 

 

「シュナ! 待とう! 少し冷静になるんだ!」

 

「いいえ! 私は冷静です! 何も問題ありません!」

 

「むしろ問題しかないよ⁉ 絶対にダメだって! ……お風呂は!」

 

 ことの起こりは夕食後、就寝を考える時間となったころである。

 

 当初テクトはシュナが一度帰り、翌朝また来るものだと考えてもいた。そのため、自身の布団を用意してシュナをねぎらい、本日は解散としようとしたところ、彼女もテクトの庵に泊まるといい始めた。

 

 理由は「テクトが転移などで執務室まで移動をしかねない」とのことらしい。休暇を告げられた際にその場にいた全員に仕事の禁止を言い渡されたため、転移までして仕事をするつもりはなかったが、そこまで信用を無くしていたことに愕然とし、シュナの滞在は諦めざるをえなかった。であれば、女の子であるシュナはお風呂にとなったところで、シュナが入浴中に仕事をされては困ると混浴を提案してきたのだ。

 

 ここまででも理解できるであろうが、シュナは著しく平静を欠いていた。シュナはテクトに対し好意を持っている。しかし、これまでシュナが見たことのあるテクトとは、もっぱら仕事中のテクトであり、プライベートでのテクトを知る機会はテクトのワーカホリックが災いし存在しなかった。この日幾度となく見た普段とは違う表情、そして昨晩の就寝前にあった兄からの焚き付けが彼女から冷静さを奪い去っていた。

 

 テクトの庵にも風呂は備え付けてあり、掃除もしているため使用は可能である。が、そもそも蜘蛛であるテクトに入浴は必要なく脱皮を行うのが常である。また、混浴は不自然である点を話してもシュナの暴走は止まらなかった。

 

 その後も説得は続き、最終的に糸をつなぎ、常に魔力を纏わせ続けることでその場にいることを示すという形で決着した。

 

 就寝の際も同じ部屋で寝ることになり、休むはずなのに気の休まらない夜になった。

 

 

 

 一方、リムルは。

 

「やっと終わった…………」

 

「長かったですね…………」

 

 テクトが眠ろうとしていたころ、ようやく仕事が終わったのだった。人数は増えたものの、仕事に不慣れなものが多く、さしたる効率化にはならなかった。結果として夜中までかかってしまっていた。効率化のために教育はこれからしっかり行おうとリムルは決意した。

 

 

 

 

 

 テクトの休日。二日目。

 

「お、おはようございます。テクト様」

 

 結局あまり休まることはなく、朝を迎えることとなった。昨日同様にシュナの用意した朝食をとり、前日に考えていた予定を実行することにした。シュナの昨夜の暴走も、一夜明けたことで時間とともに収まったようで、気恥ずかしそうにしていたが、離れるつもりはないようだった。

 

 気まずい雰囲気を払しょくするためひとまず行動を始めるテクト達。緩衝材となる存在を欲してフェルを迎えに行き、案内と今回の予定の準備を兼ねて、再び街をめぐっていった。

 

 一通り案内を終え、テクトは調理場に来ていた。シュナとフェルは食堂近くの部屋で待機している。昨夜のお風呂騒動の際と同じ方法で存在確認をとっていた。

 

 持ちうるスキルをすべて行使して、自身の行動が誰の目にも留まらないことを確認したテクトは標的が来ることを待ちながら、準備に取り掛かるのだった。

 

 そうしてしばらく後、今回の標的となる存在がやってきた。名をゴブタ。本日の訓練を終え、食事を求めて食堂へとやってきていた。

 

「あ、ゴブタ。ちょうどいいところに来たね。急なこととはいえ、せっかくの休日だから試しに調理場に立ってみたんだ。これから食事のようだしよかったら食べてみてくれない?」

 

「へ? いいんすか? テクト様から食事に誘われるとは思ってなかったっすよ」

 

「たまには私も料理というものをしてみたくなってね。感想が欲しくなったんだよ」

 

「へへっ、そういうことならご相伴に預かるっすよ」

 

 テクトの企みなど考えることはなくあっさりと席に座るゴブタ。テクトは調理場から一膳の食事を持ってきた。持ってきたのはご飯と魚の焼き物、お吸い物と和食である。空腹であったため、すぐに食べ始めるゴブタ。

 

「お、うまいっすね。なんか意外っす」

 

「正直に言ってくれるなぁ。気持ちはわからないでもないから何も言わないけど。しかし、なるほど、味は問題ないみたいだね」

 

 感想に加えて余計なことをいうゴブタに怒ることはなく、好評であることに安堵するテクト。ゴブタは箸を止めることはなく、そのまま完食した。

 

「そういえば、師匠から昨日おいらのこと探してたって聞きましたけど、なんかあったんすか?」

 

「ああ、これだよ。ほら、ゴブタは「毒耐性」持ってるし」

 

「これ、何使ったんすか………」

 

「ほかの人にも食べさせてみたいから秘密にしとくよ」

 

「ほんとに何使ったんすか⁉」

 

 その後もゴブタは材料を聞き出そうと粘るが、テクトは何も伝えることはなかった。

 

 そして夜。

 

 シュナも暴走することはなく自室へと戻っており、テクトは庵で一人座り込んでいた。

 

「いきなり休めとか言われてどうなることかと思ったけど、案外楽しかったな。リムルたちには感謝しないと」

 

 明日以降の業務に向けて意気込みつつ昨日と同じように早めに就寝するテクト。寝顔は安らかだった。

 

 一方リムルは。

 

「どうだ…………」

 

「はい、これで終わりです…………」

 

「これは、このままで問題ないな…………よし、終わりだ」

 

 ベニマルの差し出した書類に判を押し、残っていた業務が片付く。その場にいた全員の気が緩み、何人かは机に突っ伏した。

 

「なんつーか、テクトの穴を埋めるだけのはずが、ある分を全部やっちまったな」

 

「まぁいいじゃないですか。確かに大変ではありましたが、これでテクト様も気軽に休めるようになるというものです。どんな器量よしでも仕事以外で話す機会が少ないんじゃどうにもなりませんからね」

 

 ぼやくリムルにベニマルが言葉を返し、しばらく談笑したのち解散した。

 

 


 

 次回「機嫌を損ねて電撃を食らい文句を言っている彼に言ってやりたい。「本物の魔王はそんなもんじゃすまないんだぞ」と」

 

 

 

 おまけ:翌日の執務開始時

 

「自分らは無理するなって言ったくせに」

 

「みんなが「テクト様が気兼ねなく休めるように」って頑張っちゃった結果なんだ。許してやれ」

 

「それはとやかく言いづらいなぁ」

 

 

 

 魔狼族

 

 ランク:C-

 

 黒い毛並みの魔素を糧とする狼。

 

 

 

 炎魔狼族

 

 テクトが群れからはぐれた個体に名付けをしたことで進化した特異個体。

 

 その名の通り炎を操るが、氷も出せる。某死に戻り主人公のヒロインと行動を共にする猫と同じような理由。

 

 名前の元ネタが火を噴くので、その知識から進化が行われている。

 

 




感想・評価・お気に入り等ありがとうございます。

名付けの元ネタは分かりやすいと思います。元ネタは本来火を噴くんですが、同郷に世界を焼き尽くす巨人がいたり、ゲームで氷属性で実装されたりと炎のイメージついてないんですよね。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

  • 書くべき
  • 書かなくてもいい
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