転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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前回は誤字報告を結構な数いただきました。ご報告ありがとうございました。

全て確認し修正しましたが、読みづらくしてしまい申し訳ありません。

今回は多分大丈夫だと思います。


27話:規格外で想定外

 リムルが子供たちの境遇について話し終えるころには子供たちは妖精たちと菓子をほおばっていた。ラミリスは子供たちの話を聞いて、子供たちを眺める。

 

「なるほどねぇ。この子たちも苦労してんのね」

 

「だろ? だからさ、精霊女王とやらに紹介してほしいんだよ」

 

「ああ、言ってなかったっけ? 精霊女王ってのもアタシのことだよ」

 

「はぁ? そんな冗談言ってる場合じゃないんだけど?」

 

「失礼な! 冗談じゃありませーん! 本当ですー!」

 

「ラミリス、落ち着いて。えぇっと、なんだったっけ、確か精霊女王から魔王になってるから兼任している状態なんだっけ?」

 

「そう! その通りよ! だから、アタシが精霊女王なのよ!」

 

 ラミリスの反応からいけると見たリムルが精霊女王への橋渡しを頼むがラミリスの返答に真顔になる。その反応にラミリスが怒り出すがテクトがとりなし、ひとまずリムルは信じることにした。

 

 しかしていまだ興奮状態にあるラミリスがレオン・クロムウェルについて漏らしたことで話はそれ、レオンの話になった。

 

 曰く、当時レオンは人間であったにもかかわらず、ラミリスの扱う「精神支配」も幻覚魔法も通じることもなく、逆に操られそうになったという。この一件の反省をもとに物理的な抵抗のために聖霊の守護巨象(エレメンタル・コロッサス)を作ったとのことだった。壊したことに関する恨み言が再び発生し始めたのでテクトが慌てて菓子を与えてふたをし、レオンの話へ戻した。

 

 レオンに完敗したラミリスは仕方なしに協力したところ、その際に呼び寄せた精霊と契約を結んでしまったらしい。その精霊はラミリスの腹心とも言える光の精霊であったがあっさりと鞍替えしたことに憤慨していた。どうしようもなく、光の精霊と契約したレオンを「勇者」と認定し、精霊の加護を授けたらしい。

 

 その後、レオンは精霊の知識を借りたものの望んだ結果を得られなかったらしく、腹いせに炎の上位精霊を奪っていったらしい。調べ物の内容は特定の人物の召喚ができないかというものだったらしいが、ラミリスが言うには不可能だそうだ。

 

 ラミリスの愚痴が通り過ぎると、話をもとに戻す。どうやらまた腹いせに上位精霊を奪って行ったりしないか警戒しているとのことだったので、決してしないと約束することで協力する気になったようだ。

 

「それじゃ、さっそく精霊の棲家に案内してほしいんだが?」

 

 リムルが促すのに応えるようにラミリスはまじめな顔になると、子供たちの顔を一人一人見て回り、魔王らしからぬ慈愛に満ちた表情を浮かべ、先ほどまでの子供のようなしぐさが嘘のような、威厳のある姿で宣言する。

 

「アタシはね、魔王であると同時に、聖なる者の導き手。「迷宮妖精」であり、「精霊女王(エレメント)」でもあったの。レオンにそうしたように、勇者に聖霊の加護を授ける役目も担ってるんだよ。だから、安心するがいいさ。公平だからね、アタシは。アタシが、アタシこそが! 世界のバランスを保つ者なのだよ!! いいよ。召喚に協力してあげる! 精々、すごい精霊を呼び出すといいさ!」

 

 

 

 精霊の棲家へと移動する前にラミリスから精霊の講義が入る。

 

 今回必要な情報は要するに、上位精霊には意思があり、呼び出しに応じるかは気分次第であること。応じてくれなかった場合は大精霊からエネルギーを切り取り、新しい上位精霊を生み出せばいいとのことだった。

 

「上位精霊が応じてくれるかが肝だな」

 

「大丈夫だって、リムルが喰って、混ぜて、与えれば解決だろ」

 

「いや、そんなこと簡単にできるわけ「それなら行けそうだな!」できるんかい!」

 

 テクトの出した雑な解決案をラミリスが否定しようとするが、言い切る前にリムルが肯定することで思わず叫ぶ。このやり取りで緊張がほぐれたのか、子供たちの表情はやや明るくなった。

 

「よし、じゃぁ、行くか!」

 

 リムルの号令に子供たちが元気よく返し、ラミリスの案内で精霊の棲家へと歩を進めた。

 

 ラミリスに案内された扉の先に進むと、幅一メートル、長さ二十メートルほどの光の通路の先に直径五メートルほどの円形の足場が存在していた。足場の上で精霊に呼びかけると興味を持った精霊が出てきてくれるらしい。

 

「よし、基本的には精霊が来てくれるのを待って、最終的にはテクトの案に沿う形でいくぞ」

 

「広さ的にも一人ずつがいいだろうね。誰から行く?」

 

 子供たちは順番を決めるための話し合いが行われ、ゲイル、アリス、ケンヤ、リョウタ、クロエの順に決まった。

 

 一人目のゲイルがリムル、ラミリスとともに足場へと進んでいく。テクトが見えない足場に怖がるゲイルに糸を結んで命綱を作ることで安心させる中、アリスが話しかける。

 

「ねぇ、うまくいくわよね?」

 

「大丈夫。もし何かあったら、悪魔でも何でも従えて解決するさ」

 

「うわぁ、悪い顔」

 

 アリスの不安を安心させるように別の解決案でも打ち立てるとテクトが言うのに、子供たちが苦笑いする中、ゲイルが祈り始めた。

 

 暫く時が流れると、天から光の粒が湧き出てゲイルの近くに舞い始める。この光の粒は意思のない小精霊であり、寄り集まって自我を持つと上位精霊になるらしい。そこから時がたつが、これ以上は待っても上位精霊がやってくる気配がないことを察し、リムルが動く。

 

 小精霊を喰い、統合して、イフリートから解析して作成した疑似人格を付与、完成した疑似上位精霊をゲイルに統合する。無事統合された疑似上位精霊が役目を果たし、ゲイルの魔素の暴走がきれいに治まった。

 

「よし、成功だ!」

 

 観察していたテクトが思わず声をあげると子供たちも歓声を上げて喜ぶ。リムルが全員が成功してからだと諫めると子供たちはひとまず落ち着いたが、その表情に不安はなく、やや浮足立っていた。

 

 つぎはアリスの番、となったところでややもめることとなった。アリスがテクトといくことを希望したのだ。アリス曰く、足元が透けているのが怖いとのことだったが、テクトでは小精霊の回収は可能だが、その後の統合や疑似人格の付与はできず、助けることはできないのだ。それを理由にテクトは断るが、アリスは不満たらたらだった。最終的にイングラシアに戻った後のスイーツを条件に出してアリスが矛を治めると、あっさりと広場に向かって歩いていった。

 

「さっき怖いとか言ってなかったっけ?」

 

「先生、それはないわ」

 

「ほんとにね」

 

 やや不機嫌になったアリスがあっさりと広場に向かっていくのを不思議そうにするテクトに非難が飛ぶが、テクトは少し考えた後、子供たちから目を逸らしながら乾いた笑いを浮かべていた。

 

 テクトの心情を他所に作業は進み、アリスも統合がうまくいくと、戻って喜びを分かち合う。

 

 ケンヤの番となり、手を振りながら進んでいく。ケンヤが足場にたどり着くと、祈る間もなく変化が起こり始めた。光の上位精霊が現れ、リムルたちといくらか話すとあっさりとケンヤに宿り、皆あっけにとられることとなった。

 

 リョウタの番の前にリムルが統合で消耗した魔素をテクトから補充し、広場へと戻る。

 

 四人目というだけあって何の迷いもなくリョウタが祈り始めると、小精霊が湧き出し、リムルがサクサクと回収、統合する。なんの問題もなく解決したことを確認するとリョウタも皆のもとに戻り、喜びあっていた。

 

 最後の一人であるクロエをリムルが抱えて広場に連れていくのを見て、アリスが不機嫌そうにテクトのほうをちらりと見るとテクトは目をそらしていた。アリスがジト目でテクトの人形の足をぐりぐりと踏むと鼻を鳴らして広場の方へと向き直った。

 

 テクトは顔を覆い、唸り始めた。アリスのことをどうしたものかと考え始めていたのだが、少なくともクロエのことは問題視していなかった。

 

 そしてその時、変化が起きた。

 

 ケンヤの時に光の精霊が現れたときとは比べ物にならない重圧と銀光をまき散らし、鮮烈な聖気を纏った、長い黒銀髪の美しい女性が現れた。

 

 精霊と同じ精神体(スピリチュアル・ボディー)でありながら、精霊ではありえない存在力(エネルギー)。その存在力の上限はテクトとリムルでは即座に測ることはできなかった。

 

 その女性はリムルに近づくと抱き着き接吻する。リムルはその行為に驚くが、本人に実態がないからかすり抜けた。女性は残念そうにリムルを見つめると、クロエに触れようとする。

 

「待て! させないよ、アンタの好きにはさせない!」

 

 その間にラミリスが立ちふさがり、攻撃態勢に入る。その尋常でない様子にテクトが飛び出し、広場に近づくと糸をふるう。その攻撃をあっさりとかわすと女性はテクトを視界にとらえると、目を見開いて停止した。

 

「って、おい! お前ら何やってんだよ⁉」

 

「煩い! そいつはヤバいんだよ! 見て分からないの!」

 

「わかるわけないだろ⁉ 何がヤバいんだ?」

 

「とりあえず、近づけなきゃいいんだろ。当たんなそうだけど」

 

 テクトたちが言い合いをするうちに女性は衝撃から抜け出したのか、再び動き出す。言い合いをしていたリムルとラミリスは反応しきれず、テクトも糸を振るうも、三人が邪魔となってうまく糸を振るえず、あっさりと回避されて、クロエに宿る。

 

「あ──! もう手遅れだ。やめやめ。アタシは知らないからね⁉」

 

 頬を膨らませてラミリスが叫ぶ。テクトとリムルが慌ててクロエに「解析鑑定」を行うが、女性から感じていたような膨大な存在力は消え失せ、クロエの魔素の暴走も収まっていた。

 

 クロエ自身にも特に問題はないように見えるため、崩壊する危険性は去っているように見えるが、宿ったのは正体不明の存在だったのでラミリスに問い詰めるも、ラミリス自身にも理解できなかったようだ。未来で生まれたものだとか、時の大精霊の加護がだとか言いつつ思考にふけるラミリスをいったん放置し、クロエが助かったことを喜ぶことにした。

 

「よかったな、クロエ。計画通りだ! お前も無事に危険を回避したぞ!」

 

「本当に計画通りなの?」

 

「あ、ああ。もちろんだとも!」

 

 リムルがクロエを抱き上げて笑顔を向けて祝いを告げると、クロエからの突っ込みが入る。リムルが言葉に詰まりつつも断言するとクロエは微笑んだ。

 

「ま、いいけどね。その子に宿った時点で、すでにアタシの手に負えないし」

 

「まぁ、解決したみたいだしいっか。とりあえず、みんなのところに戻ろうよ」

 

 テクトが落ち着いて話をするために子供たちのほうに戻ることを提案しつつ広場に足を踏み入れると、再び変化が起きる。

 

 先ほどの正体不明の女性ほどではないが、明らかに大きな重圧感が生じる。空気の変化を感じクロエがリムルにしがみつく中、一柱の精霊が出現した。

 

「ふむ。資質の気配にひかれてきてみれば、なかなか面白そうなことになってきたな」

 

「へ? あんた何しに来たのよ?」

 

「何、資質を持ったものの気配を感じたから見に来たまでさ」

 

「資質? 持ってる奴ならもうあいつが宿っていっちゃったけど?」

 

「いるじゃないか、そこに」

 

 現れた精霊とラミリスが話し始め、精霊が見に来たという資質があるものを指し示す。

 

 その指の先には後ろにいる子供たちを見るテクトがいた。

 

「ほら、君だ。そこの「もう一人資質のある子がいたのか。だったら最初から出てきてくれれば簡単に終わったのに」とか考えている魔物」

 

「おれぇ⁉」

 

 精霊が誰を指さしているのか示すとテクトが素っ頓狂な声をあげながら振り返る。

 

「ああ、君だ。魔物に資質があるなど初めてだが、いや、そもそもここまでくる魔物がまれだからな。もしかしたらほかにもいるのかもしれないな……まぁ、面白そうだし、君についていくとしようか」

 

「あ、っちょ」

 

 あっけにとられたテクトが反応する隙もなく精霊が人形の胸部に収まるテクトに触れ、宿ってしまった。

 

「宿っちゃった」

 

「え? これ、どうすんの?」

 

「まぁ、なるようになるしかないわね。宿った以上は手の施しようないし。せっかくだから勇者の認定受けとく?」

 

「いや……いらない……」

 

『大丈夫だ。きっと楽しくなる』

 

 がっくりと肩を落とすテクトだったが、子供たちの前であまり暗い雰囲気でいるわけにはいかないと、ひとまず考えることを後回しにした。

 

 こうして、ゲイル、アリス、リョウタがそれぞれ地、空、水風の属性の疑似上位精霊を、クロエが時の大精霊がかかわっているらしい存在を、そして、ケンヤとテクトがそれぞれ光と闇の上位精霊をその身に宿し、子供たちの危機は去ったのだった。

 

 

 

 子供たち全員の問題が解決し、テクトが問題を抱え込んだのち、試練を行った広間に戻ってきていた。

 

「さてと、あとはこっちが出した条件を達成するだけだね」

 

「あれ? なんかあったっけ?」

 

「ちょっと⁉ アンタ、マジで忘れてるんじゃないでしょうね!」

 

「なんだよ。急にイチャモンつけやがって」

 

「精霊の守護巨象の代わりを用意するって話だったじゃん」

 

「あ……」

 

 テクトの言葉にリムルが不思議そうにし、その態度にラミリスが突っ込む。なおも首を傾げるリムルにテクトが理由を告げると、リムルはやっと思い出したのか言葉を漏らし、テクトとラミリスから目を逸らした。

 

 ラミリスが食って掛かり、テクトがため息を吐くのを見て、子供たちの目も冷ややかなものになる。

 

「さてと、どういうのを作ったもんかね」

 

「ラミリスも精霊の守護巨象みたいにでかいのじゃなくても、強ければいいて言ってたし、精霊が憑依して動かせる人形でも作ればいいんじゃない?」

 

 テクトのセリフをもとに「大賢者」が検索をかけると、「創造魔法(クリエイト)魔人形(ゴーレム)」が見つかった。この魔法で作られる魔人形の強さは素体の材料と憑依させる精霊か悪魔によって変動するという。

 

 守護者とするなら自由気ままな精霊よりも契約に厳格な悪魔のほうが好都合であると考え、魔鋼で素体を作り、悪魔を憑依させることにした。

 

「そうだ、俺も魔人形を作るからさ、精霊工学について教えてほしいんだけど」

 

「何よ、急に?」

 

「俺たちの町に精霊の守護巨象のもとになった魔装兵計画に携わっていたドワーフの職人がいるんだ。一人でやるよりも共同研究者がいたほうがいいんじゃないかと思って」

 

「へぇ、それってどんな奴にすんの?」

 

「理想としてはこんな感じのやつかな? 中に乗って動かせると面白いと思うんだけど、どう?」

 

「やる! 任せて頂戴。すっごいの作ってみせるわ!」

 

 テクトがカイジンたちにも精霊工学について教えてもらえないか伝えるとラミリスも興味を示す。テクトが一例として糸を使って、前世では超有名な緑色に紫の一つ目のロボットを形作ると、活発なケンヤだけでなく内気なリョウタも興味を示し、ラミリスも目を輝かせ研究への意気込みをあげた。

 

「なぁ、テクトが魔人形作るんなら、俺は作んなくてもいいんじゃ」

 

「リムルのは精霊の棲家への道を開くことに対する代価だろ。踏み倒すのはどうかと思うよ」

 

 あわよくば人形作りをさぼろうとしていたリムルは撃沈し、渋々ながら人形作りを始める横で、テクトは予備の「操糸兵隊人形(ホワイトアーミードール)」を取り出し、顔の造作を作り変え始めた。

 

「おいおいおいおい! お前はそんな楽すんのかよ!」

 

「糸だけで作ったら性能面で不安が出るからね。そもそも俺は素材になりそうなもの持ってないし。それにこのままで渡すわけじゃないよ。ちょっとばかし手も加えないとね」

 

 リムルはテクトの圧倒的な作業量の少なさに文句を言うも、動じないテクトに二の句が継げなくなり、魔鋼を使ってせっせとパーツを作っていくのだった。

 

 

 

「よし、完成だ!」

 

「お~、おつかれ」

 

「ったく、お前らは楽しみやがって。……なんだ? その髪の生えたドムとザク」

 

「ポリキ。アだよ。知らない?」

 

「生憎と、はじめましてだ」

 

 リムルは自分が人形の作成をしている間、自分の作業をとっとと終わらせ、精霊工学で作成する目標であるロボットの模型を糸で作って、ラミリスたちと談笑していたテクトに文句を言おうとしていたが、ひときわ異彩を放つ人形に言葉を失う。人形の解説を始めるテクトをいなし、リムルが悪魔の召喚準備を始めるのを見て、テクトも解説を諦めて準備を始めた。

 

「さて、今から悪魔を召喚して人形に憑依させるわけだが……いいか、絶対に悪用すんなよ!」

 

「…あくまでも、防衛戦力だってことを忘れないようにね。念のために製作者命令(マスターロック)はかけておくから変なことはできないと思うけど」

 

「わーかってるってば、アタシだって変に手を出して攻めてこられるのはごめんだし」

 

「まぁ、迷宮内では好きにしていいぞ。ただし、かなり強くなるだろうから、あんまりふざけてると怪我するからな……ほら、テクト、むくれてないで召喚始めるぞ」

 

「……はぁ、わかったよ」

 

 リムルの声にため息をつき、テクトが適当な呪文を唱え始める。リムルも肩をすくめるとテクトと並んで詠唱をはじめ、作り上げられたそれっぽい雰囲気の中、上位悪魔(グレーターデーモン)が召喚された。

 

「「お呼びでございますか、召喚主(マスター)よ」」

 

 召喚された悪魔はテクトが白、リムルが黒の肌をしており、恭順するかのように頭を垂れている。それぞれが古びてはいるものの上質な布の服を纏っていることから長く生きている個体であることを確認した二人は、契約を始めることにした。

 

「君たちを呼び出したのは、魔人形を創るためだ。ここに用意してある人形に憑依してもらいたい。代価はそれぞれの召喚者の魔素、契約期間は百年。それが過ぎればその人形は君らの肉体としてくれてかまわない。こんな感じでどうかな?」

 

「「願ったりでございます、わが主よ! そして、代価はすでにいただいております」」

 

 テクトの話した契約に悪魔達は快く了承した。子供たちの精霊召喚にあまり関わらなかったテクトは言わずもがなだが、リムルも途中でテクトから補充したこともあって余力十分であったため、召喚時にも魔素を奮発したのがよかったようだった。

 

 契約が成立したことで受肉に移ることとなった。リムルの用意した人形は仮面をかぶっていたために問題はなかったが、テクトの用意した人形はテクトの悪魔へのイメージをもとに男性的な特徴を前面に押し出したものであったためか、悪魔側からリテイクが入った。本人的には女性的な方が好ましいらしく、悪魔の意見を取り入れつつ糸を張り直し、スレンダーな女性形へとモデルチェンジを果たすことで、やや不満そうにしつつもテクトの召喚した悪魔も受肉へと至った。

 

「どう? 違和感とかない?」

 

「はい、なんの問題もありません。特に骨格と繊維の強度は素晴らしい。通常の肉体と遜色なく動かせるにもかかわらず、物理的な防御力は並みの防具を超えるときている。これほどまでのものはそうお目にかかれませんでしょう。しいて言えば、いましばらく肉付きが欲しいところですが」

 

「「技能付与」で全体に「気力付与」と「超再生」をかけてあるから強度を上げることもできるし、ちょっとした損傷なら魔素を集中させれば治るはず。骨格は魔鋼製だからこっちも問題ないと思うよ。肉付きに関してはこっちの技術不足だから申し訳ないけど」

 

「なるほど、まだ能力を高めるすべがあるとは、感服いたしました。ぜひ活用させていただきます」

 

 受肉が終わり体の調子を確かめた悪魔にテクトが人形の機能を説明する。それらも試し、機能に問題がないことを確認すると悪魔はテクトに跪いた。

 

「召喚主よ。先ごろいたした契約、この身体に誓って、しかと勤め上げてごらんに入れます。そして、契約が終了した暁には召喚主の配下に加えていただけないでしょうか」

 

「う~ん、そのあたりのことは契約が終わってから考えようか。契約上はラミリスに従うことになるわけだから、こっちの事情を気にして守護がおろそかになっても困るし。契約満了して、それでも俺の配下になりたいって思うようなら、その時は受け入れるよ」

 

「なるほど、ではあの妖精がどれほどのものなのか、見定めるとしましょう」

 

 テクトは悪魔の提案を保留することにした。悪魔に対して不満があるわけではないが、ラミリスに対して二君に仕えずというほどに信を置いた場合を考えると安易に契約することはよろしくないと考えたからである。悪魔もそれを理解し、ラミリスを自身が仕えるべき主としてふさわしいか確認することにしたのだった。

 

「ん? ああ、リムルが名付けをしたのか。なら、君にも名前を付けよう」

 

「よろしいのですか? 召喚主に仕えることが決まったわけではありませんが」

 

「片方は名前があるのに、もう片方にはないなんてあんまりだろ?」

 

「は、はぁ……」

 

 悪魔はあっさりと自身の召喚した悪魔に名前を付けたリムルと、それに習おうとするテクトに若干引きつつも自身にも名をつけようとするテクトを止めようとするが、竜種にすら名前を付けるテクト(世界に類を見ないアホ)が止まることはなく、名前を考え始めるのを見て悪魔はそれ以上反対できなくなった。

 

「よし、お前に「マウザー」の名を与える。ラミリスをしっかり守ってやってくれ」

 

 リムルが悪魔に「ベレッタ」と名をつけたことになぞらえて、前世でテクトが好んでいたKar98kの製造所をもとに名をつけることにした。

 

 テクトの魔素をごっそり持っていきマウザーの進化が始まる。

 

 身体を構成する糸が一部その質を変え、体つきが変わる。肌がより滑らかになり、目や爪、髪といった部分がより光沢を帯びた。最後に服装がメイド服へと変わり、変化が完了した。

 

 輝く長い白髪に銀に輝く瞳、女性らしい起伏が十分にある肢体に汚れ一つないメイド服。見た目は完全に人間の女性にしか見えないが、その身から漂うオーラが人間でないことを示していた。

 

 進化が終わるとゆっくり立ち上がり、スカートを広げて恭しく頭を下げる。

 

「私は「魔将傀儡(アークパペット)」マウザー。召喚主の望むままに、ご命令を遂行いたしましょう」

 

 一方は仮面に銀の髪。人形であることがはっきりわかる関節。

 

 もう一方は美しい容貌に白の髪。人形であることを悟らせないきれいな肌。

 

 あまりにも正反対の容姿であるラミリスの守護者が完成したのだった。

 

 ラミリスの守護者二人が完成するころには子供たちは眠っていた。

 

 その寝顔は安らかであり、これまで直面していた命の危機から解放されて緊張がほぐれた結果であることがわかる。

 

 そんな子供たちを起こすことはできず、迷宮内で休憩することにしたのだった。

 


 

 次回「嵐の前の……」

 

 

 

 マウザー

 

 

 

 魔将傀儡 アークパペット

 

 

 

 テクトが予備として保管していた操糸兵隊人形に上位悪魔を宿らせ完成したラミリスの守護者。本人の希望もあって女性らしく見えるように一部増量されている。

 

 受肉による同化と進化に伴い、目のハイライトや肌や髪の質感がより人間らしくなっているため、一見すると人間にしか見えない。

 

 基本的にはメイド服を着ており、スカートには小型の暗器が仕込まれているが、時折明らかにサイズ違いなものを取り出すこともある。

 

 

 

 リムル「なんか、いつものお前より人間らしくないか?」

 

 テクト「ほっといて……」

 

 




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ポリ〇ュアは某専業主夫とは関係ありません。薄幸借金執事のほうです。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

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