「スマホでの長文入力が苦手なら、キーボードをスマホに繋いでしまえばいいのでは?」という趣旨のアドバイスを受けました。
実践した結果、PCほどではないですが制作に充分な環境であると感じましたので、頑張って制作していきたいと思います。
テクトがヨウムを引き連れて会議室に入ると、集めるべき人員はすでにそろっていた。
「すまない、遅れたな」
「いや、必要なことだったんだ。気にするな。さて、全員が集まったところで、シオン達を復活させるための会議を始める」
リムルが音頭をとると集まっていた面々がざわめく。テクトが手をあげ、ひとまず静まったところで、人間に対する意見を問うと、口々に回答が上がる。
総合すると「卑怯な不意打ちをしでかした人間が許せない」というものだった。一部は「人間にもいいやつもいるのでひとまとめにするべきではない」という意見もあり、大筋では先ほどのものとの二つが主だった。
これほどのことがあってなお、人間との共存を考えられる配下にうれしく思いつつも、覚悟を決めてテクトとリムルが告げる。
「みんな、聞いてくれ。俺たちは元人間の「転生者」だ」
リムルが告げた瞬間その場にいる大半のものがざわめきだす。しかし、最後まで話を聞こうとする雰囲気であるため、テクトが口を開いた。
「いわゆる「異世界人」と呼ばれるものと、同じ世界の人間だと考えられる。あちらの世界で死んで、この世界で生まれ変わった。俺が蜘蛛として、リムルがスライムとして。前世が人間ということで二人で過ごしていたが、お前たちという仲間ができた。名付けによる進化に際して人間に近い姿になったのは俺たちの望みが影響したのかもしれない」
「俺たちの定めた「人間を襲わない」というルールも、そういう理由で作った。人間が好きだといったのも、元人間だったからだ。そのルールが原因でお前たちが傷つくのは俺の望みではなかったんだよ……俺たちは魔物だけど、心は人間だと思っていた。だから人と交流したいと思って、人間の街に長居してしまった。子供たちを救えた時点でさっさと帰還していれば」
「いえ、それは違います」
自責の念に駆られ、自らを責めるように言葉を紡ぐ二人の言葉を遮ったのはベニマルだった。
「今回の惨劇は、俺達にはいつでもお二人の庇護があると考えてしまっていた甘えがあったからです。「思念伝達」が途絶えたとき、常に感じていた万能感が消え去り、心細さが胸の内に広がりました。俺たちの、いえ、俺の油断が今回の惨劇の原因なのだと」
「待ってほしい、ベニマルさん。それを言うなら警備責任者である俺の責任だろ」
悔しそうにするベニマルの言葉をリグルが遮り、自身の責任だといい始めると、リグルが言い切る前に別のものが同じように遮って自身の責任だといい始める。
それを押しとどめてテクトが自分たちが感情を優先した結果だと告げると、全員が押し黙ってしまった。
しばらく静かになっていた皆だったが、ハクロウが重苦しく口を開く。
「お二人が自分の思いを優先したからと言って、何の問題もございませんぞ。ベニマル様が申して居る通り、今回の件はワシ等全員の油断ですじゃ。そして、ワシ等の弱さが原因なのです。この国をリムル様とテクト様より預かっておきながら、あのような不埒者共に好き放題されてしまったのは、ワシ等の怠慢であろう。違うか、皆の者?」
ハクロウの言葉にその場の全員が間を置かずに頷き、空気が緊張する。まるでテクトとリムルの前世が人間であることなど気にしないかのような物言いにリムルが思わず質問する。
「は、いや、元人間が主とか、嫌じゃないのか?」
「え? リムル様はリムル様っすよね?」
リムルの質問にはゴブタをはじめ、前世を気にしないという旨の回答が相次ぎ、二人の心配が杞憂だと伝えてくる。
「リムル様、テクト様、皆の気持ちは同じです。そのようなことを気にするものなどおらぬので、もっと自由になさってください。我らはただ、従うのみですぞ!」
というリグルドの力強い宣言によって締めくくられた。
「納得しないやつがいたら復活までは協力させてもらって、そのあとは何処か誰にも感知されないようなところで自刃でもしようかと思ってたんだが、杞憂だったか」
彼らの言葉を聞き、テクトがこぼしたことで騒然となったが、元凶であるテクトの尽力によって鎮静化した。
場が落ち着いたところでカイジンが人間への対応について問いただすと、完全に静まり返り、テクトとリムルの回答を待つ形となった。
少し間を開け、リムルが口を開いた。
現段階では人間たちと手を結ぶには時期尚早だということ。
なので、まずは他国へ向けて魔国連邦の存在とあり方を示すことで、人類にとって無視できない存在としての地位を確立させること。
魔王としての力により、武力を用いた交渉では不利であることを悟らせつつ、他の魔王に対するけん制を行い、人類に対する盾だと印象付けること。
魔国連邦について知ったものが友誼を望むなら歓迎し、敵対する者には徹底的に戦う。そういった鏡のような接し方を続け、時間をかけて友好的な関係を気付けるようにしていきたい。
リムルが考えを語り終えると、最初に反応したカイジンは甘い理想だと評したが、皆が口々に賛同するのを聞き、笑みを浮かべる。
「悪いな、これからも、俺たちのわがままに付き合ってくれ!」
テクトの声に異口同音に肯定の声をあげる皆の言葉で方針の会議は締めくくられた。
「さて、改めて敵軍の詳細をまとめよう。といっても、聞いてないのはヨウムたちとリムルぐらいだけどな」
テクトの言葉にリムルが顔をゆがめ、ベニマルが苦笑いを浮かべる。リムルの動かなかった三日の間に戦力分析は済んでいたのだ。
ソウエイからの情報では今回の侵攻の戦力はファルムス王国と西方聖教会の連合軍。
西方聖教会からの戦力は
ファルムス王国は所属する騎士が一万七千に、傭兵団が一万二千。そこに魔法使いが三千ほどが加わっている。
総数にしておよそ四万にも上る大軍勢がそろっているのだ。
とはいえ、テクトとリムルからすれば数は大した問題ではない。聖騎士団のような実力の高いものがいないのなら、生贄が増えただけなのだ。
「どういう分担で行きますか?」
「やはり、正面は俺の部隊が受け持つほうがいいな」
ゲルドが軍の編成を問うと、ベニマルをはじめとして戦いに前向きに考えていたが、それをテクトが制する。
「悪いが、今回の連合軍は俺とリムルで殲滅する」
「それはどういう意味ですか?」
「俺たちが「真なる魔王」になるのに生贄として一万人分の人間の魂が必要になる。だが、力を示すのならば数が多いほうがいいからな。俺たち二人で殲滅しておきたい」
実際にはすべて自分で手を下す必要はなく、名付けなどによる魂のつながりがあるものなら条件が厳しくなるものの、配下によるものでも問題なく要件を満たすことができるらしい。
しかし、今回は自分たちが暴威をまき散らす姿を見せたくないということと、自身への戒めを兼ねて二人での殲滅としたかった。
「了解です。今回はお二人に託します」
テクトの言葉と二人の表情から二人の心情を読み取ったのか、ベニマルは渋々ながらうなずいた。
「お前たちには任せたい仕事がある。四方を囲む魔法装置の排除だ。東をベニマル。南をガビルとその配下。北はソウエイ達。そして、西はハクロウ、ゲルド、ゴブタ、リグルに行ってもらう。予備戦力としてランガとフェルを置く。あちらもそれなりの戦力は置いているようだから、町の結界を抜ける人数は最小限にとどめる。が、お前たちなら勝てるはずだ。頼むぞ」
『ハッ!』
テクトの采配に即応し声をあげる配下に頷くと、コウカへと顔を向ける。
「コウカ、ベニマルたちが弱体化の結界を解除したら、代わりに魔素の拡散を防ぐための結界を頼む。今俺たちの力を削いでいるこの結界こそが、あいつらの生存確率をあげているはずだ。その代わりをしてほしい」
「シュナ様やシオン達を助けるために力を尽くす所存ではありますが……私一人では力不足かと……」
「大丈夫だ。術式は用意しているし、助っ人もいる。頼むぞ、ミュウラン」
「何も言われなければこちらから頼んでいたところです。全力で事に当たらせていただきます」
コウカが自信なさそうにするのを見て、テクトがミュウランに水を向けると即応するのを見て頷く。
「リグルド。残ったものをまとめてコウカたちの護衛を頼む。今回の策の要だ。頼むぞ」
「お任せください!」
リグルドに対する指示に続き、ヨウムやグルーシス、カバルたちが声をあげる。それを見つつ、テクトはスイレンへと目を向けた。
「スイレン」
「……ハッ」
「お前には一つ仕事がある。最期の仕事だ。心してかかれ」
「御意」
「さて、あちらさんは決戦が四日後だと考えているだろうが、俺達には関係ない。我らはこれより、敵の殲滅行動に移る。各員、役目を全うせよ!」
『ハッ‼』
テクトの号令に全員が声をあげる。それぞれに必要な情報を共有し、皆が行動を開始した。
東方面の魔法装置設置場所にベニマルは堂々と歩いて進んでいた。
『悪いな、俺たちの都合で小規模の敵の相手をさせることになってしまって』
思い返すのは情報共有の際に掛けられたテクトの言葉。申し訳なさそうにするテクトに否定をしたことは覚えていた。
『加減は必要ない。存分にぶつけてやれ』
胸にこぶしを突き付けられ告げられた言葉に抑えるものがなくなった殺気を膨れ上がらせながら森を進むと、一人の騎士が気付き、構え始めた。
「悪いが、俺は今気が立っていてな……せいぜい苦しんでいってくれ」
ベニマルと騎士たちが接敵して決着まで三十秒足らず、何の感慨もなくすべてを切り伏せたベニマルは、無造作に魔法装置を破壊する。
「こんなものでは何の慰めにもならんな……どこかの隊が情けなくも困ってたりしてないだろうか」
ベニマルは呟きながらほかの隊の様子をうかがい始める。ベニマルが燃やし尽くした跡だけが、その表情を見ていた。
南方面の魔法装置設置場所にはガビル達が空中から向かっていた。
いつも通り騒がしくしつつも、空中から攻撃を仕掛け始める。一方向を任され張り切るガビルとその配下は切られて怪我をするものもいたが、回復薬ですぐに復帰し攻撃を再開する。
幾度となく繰り返される攻勢にガビルが指揮官を討ったこと加わり、趨勢が決したのだった。
北方面の魔法装置設置場所では混乱のるつぼの中であっという間に決着した。
ソウエイによる影移動からの一撃で指揮官の首が落ち、動揺の中で姿なき暗殺者たちに抵抗することはできず、あっさりと騎士たちは殲滅された。
そして、西方面の魔法装置設置場所に進むハクロウたちもまた、テクトとの会話を思い出していた。
『西側には異世界人がいる可能性が高い。なぜなら、西側が一番道が整っているからな。そこを逃げる商人たちを急襲するために多くの戦力を投入したいだろう。だからこそ、お前たちに任せる。やられた分、きっちり返してやれ』
信頼を前面に押し出したテクトの顔を思い返し、ハクロウたちの身にも力が入る。そこに、騎士たちが隊列を整え向かってくる。
ゴブタがさやに仕込まれた狙撃用の機構を使い、騎士隊長を打倒したことを皮切りに、西側での戦闘が始まった。
ゴブタとリグルが連携して攪乱し、ゲルドが地を揺らして動きを止め、隙をさらす騎士たちを二人が狩っていく。そうして次々に数を減らしていくゴブタ達の前に、黒髪の青年が進んでくる。
「ひゃあっはっはは──! いいねぇ。やるじゃねーか! 面白い、おれがあいてになってやるぜぇ!」
凶悪な笑みを浮かべ、ゴブタへと向かう異世界人―
異世界人との戦いが始まった。
一方そのころ、戦場から少し離れた場所でハクロウと
「へぇ、生き残ったんだな、爺さん。せっかく死ななかったんだから、しっぽを巻いて逃げればよかったのに。爺さんの腕なら逃げるなんて簡単だったろうに」
「フォッホッホ。こう見えてワシは負けず嫌いなんじゃよ。それにな、まだ本気も見せておらぬのに、若造が天狗になっておるのも不愉快じゃし、のう」
「へぇ、それって僕のことじゃないだろ?」
「そう聞こえなんだか? それはスマンかったな。お主が性格だけでなく、頭も悪かったとはのう」
「はは、一度斬られただけじゃ理解できないか? それとも呆けているのか?」
互いに言葉を交わす中、突如斬りかかったキョウヤの剣をハクロウが見切り、仕込刀ではじいた。
「短気じゃな、お主は。じゃがのう、おあいこじゃ。ワシも、怒りを我慢するのが限界じゃからのう」
「笑わせるぜ。この僕の剣に、この前は手も足も出なかったクセに。粋がるなよ、爺が!」
ハクロウの言葉に寒気を感じ、思わず後ずさったキョウヤは、気圧されたことを認めたくないかのように叫ぶ。表面上は冷静なハクロウは静かに返す。
「剣、ではなく、その力に、じゃな。リムル様が言うには、その力は空間属性らしいのう。それでワシに受けることができなかったわけじゃが。しかし、タネがわかれば対処は可能じゃぞ?」
「面白いじゃん。それじゃあ正々堂々と、僕と剣で勝負しようじゃないの」
「よかろう。お主に剣の真髄を見せてやろう」
ハクロウの言葉を受け、剣を請願に構えるキョウヤに応じ、ハクロウも下段に刀を構える。その様子にキョウヤの顔には笑みが広がっていった。
「じゃあ、いくよ?」
キョウヤはその場から動かず、剣を振り上げ、そのまま振り下ろす。それにより、剣の刀身が柄から外れて射出され、無数の目に見えぬ破片となってハクロウへと迫る。ユニークスキル「
「ひゃっはっは! 馬鹿が、また騙されやがったぜ!」
「ふむ。そんなつまらぬだまし討ちが主の手じゃったか。どうやら主を買い被っておったようじゃ」
「嘘だろ⁉ ジジイ、今、何をした⁉」
興覚めというように呟くハクロウは全くの無傷だった。信じられないといったような表情のまま問いただすキョウヤに、ハクロウは挑発交じりに返す。
「ふむ、そうか。やはりお主には見えなんだか。所詮は、二流以下といったところじゃのう」
「なんだって?」
「二流以下といったのじゃよ。所詮お主の剣筋なぞ、見えてしまえば他愛ないものじゃ」
「舐めるなよ、クソジジイが!!」
「さて、ワシの剣の真髄を見せるという約束じゃったな。刮目し、受けるがよい!」
「黙れ、雑魚のくせに偉そうにしやがって!」
ハクロウの挑発に乗り、冷静さを欠いたキョウヤは状況の変化にも気づかず、新たに「切断者」による不可視の剣を生み出すとハクロウへと斬りかかる。しかしその攻撃は、妖気をほとばしらせ、第三の目であるエクストラスキル「天空眼」を見開いたハクロウに紙一重で躱されていく。
「大口を叩いても手も足も出ないんだろう? どうやっても無駄さ。この見えない剣に、ただ切り裂かれて死ね!」
「頃合いよな。そろそろお主の「天眼」にもワシの動きが追えるじゃろうて」
「は? 何を言って」
ハクロウの言葉を聞き、意味は分からないまでも気味の悪さを感じてキョウヤが一歩下がるが、すでに手遅れだった。
ハクロウの放った剣技:朧流水斬をキョウヤの「天眼」がはっきりとらえ、その軌道がゆっくりとその目に映る。
しかし、キョウヤが捉えた剣筋を躱そうとする動きはひどく緩慢であり、思考に動作が追い付いてなかった。
滑らかに、しかし、ゆっくりとした動きで迫る剣を躱せないことをキョウヤが理解できないままに、刃が首に触れ、胴体と泣き別れにする。返す刀でキョウヤの心臓が貫かれ、落下していく頭は地面に着く寸前にハクロウによって掴まれた。
この間、一秒足らず。
『終わりじゃよ。千倍に引き延ばされた時間を有効に使い、十分に反省するがよいぞ』
このハクロウの「思念伝達」が、キョウヤの聞いた最後の言葉となった。
ハクロウは殺すつもりで戦っていれば、結界が張られる前に決着はついていた。敗北したのは偏に主からの命令に従ったが故である。
ハクロウはキョウヤの「天眼」が最大の効果を発揮するのを見計らい、自身の剣技を見せつけることで、格付けをはっきりさせたのだった。
次回「誰が為にそれを為す」
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紅蓮の絆編は書いた方がいいのか
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書くべき
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書かなくてもいい