本話がアニメでいえば二期前半修了時点といったところなので、アニメ三期の内容に入るのはだいぶ先になりそうです…
《告。「無限牢獄」の「解析鑑定」が終了しました》
リムルがベスターからこの世界における戦争について学び、捕虜の扱いについてある程度の道筋を立てる。
ベスターにドワルゴンとの連絡を任せ、捕虜に関してはテクトと相談しようとしていたところに「
ヴェルドラを開放すべく、付き添いを断り、封印の洞窟へと転移すると、ガビル達にも近づかないように言っておいた最奥の空間へと向かう。
たどり着いた、かつてヴェルドラが封じられていた場所で、復活後のヴェルドラの依代として「強化分身」を生み出して、進化により成長した自分の容姿に唸っていると、空間が歪み、テクトが現れた。
「ごめん、遅れちゃったかな」
「いや、これから始めるところだ……じゃ、いくぞ!」
リムルの言葉と同時に魔素が吹き荒れる。
ヴェルドラが消えてからの二年で薄まり始めていた洞窟内の魔素濃度が一気に上昇し、魔国連邦の魔物でも大半が死亡するほど濃さになる。一瞬だけリムルの体外に飛び出した心核が依り代として用意されたリムルの分身へ入り込み、変化が生じる。
身長が伸び始め、筋肉がついていく。肌も褐色に染まり、髪は金色に。最終的にリムルの面影をどことなく残す、二メートル近い美丈夫へと変わり、高らかに笑い出した。
「我、暴風竜ヴェルドラ、完全復活! 逆らうものは皆殺しだぁ! グワァーッハッハッハ!」
「なんでそのセリフ知ってるんだよ」
「ああ、それはな、リムルの中にいる間暇だったので、記憶の中から漫画とやらを読み取っておったのだよ」
「はぁ」
「更に、もはや将棋の腕は名人級、否ッ! 暴風竜だけに竜王級である!」
「将棋? 詰将棋でもしてたのか?」
「いや、リムルの取り込んだイフリートを相手にしておったのだ。やつもなかなかの腕前に育ったぞ。まぁ、この我ほどでは無いがな」
なにもない空間に一人だったと思えば、案外この二年間をエンジョイしていたらしく笑い合っていると、ふとリムルが口を開いた。
「ん? ちょっと気になったんだが、俺の記憶の解析とか将棋に集中してたから解析が遅れた、なんてことはなかっただろうな?」
「えっ?」
「え?」
「えぇ……」
リムルの言葉にヴェルドラが僅かに身体をはねさせ、視線をそらす。その反応にリムルの視線が冷え込み、テクトの視線が呆れに変わる。
そんな微妙な空気を払拭するかのように咳払いを繰り返し、ヴェルドラが語りだした。
「それにしても、ずいぶん早かったな。我の「
「魔王への進化に応じて俺達のスキルも進化してな。お陰で解析速度も上がったってわけよ」
「二年足らずで魔王になるとはな。覚醒魔王は我でも手こずる強さだというのに、無茶をしたものだ」
ひとまず漫画と将棋の件を脇に置き、ヴェルドラが想像以上に早い開放を不思議がる。その一因となった魔王への進化とともにこぼした名付けに関して、二人が無事だった要因はヴェルドラから強制的に魔素を徴収した結果だと知り、自分たちも解析を遅らせる要因を作っていたことに気づき、解析の期間については何も言わないことに成った。
「そういえば、ヴェルドラには何か変化はなかったのか? 町の皆は何かしらあったみたいなんだが」
「よくぞ聞いてくれた! 我のユニークスキル「究明者」が究極能力である「
ヴェルドラが語り始めたのを聞き流していると、リムルの「智慧之王」から報告が入る。なんでも「胃袋」に残っていたヴェルドラの残滓を「
「暴風之王」の権能は「暴風竜召喚、暴風竜復元、暴風系魔法」となっており、「暴風竜召喚」がどこにでもヴェルドラを呼び出す権能、「暴風竜復元」がヴェルドラをリムルの中でバックアップをとっておき、何らかの要因で死亡した場合再召喚を可能とする権能、「暴風系魔法」は「死を呼ぶ風」「黒き稲妻」「破滅の嵐」という魔導書にも載っていない魔法を操る権能となっている。
リムル一人と戦っているはずが、唐突にヴェルドラが参戦したり、仮にヴェルドラを倒しても無傷のヴェルドラが間をおかず現れたりするようになるという権能にリムルを仮想敵とした場合の絶望感を覚えつつ、それを元にしたスキルを開発しているという「叡智之神」に引いていると、語り終えたヴェルドラが二人に向き直った。
「―というわけだ。む? お前達、ちゃんと聞いていたか?」
「おお、大丈夫だ」
「いやー、流石暴風竜だね、すごいスキルだ」
「そうであろう? クワーッハッハッハ!」
さほど真面目に聞いていなかった二人だが、「究明之王」に関しては後でそれぞれの相棒に改めて聞くことにしてヴェルドラを褒めると得意げに笑い出した。
「さて、そろそろ町に戻りたいし、ヴェルドラにはやってもらいたい事があるんだが」
「む? なんだ?」
「そのあふれるオーラを抑えてほしいんだよ。そのままだと町にいる魔物たちも大半が死んでしまうからね。このままだとヴェルドラをここに置いていくしかなくなる」
「せっかく復活できたのに、また洞窟暮らしはつまらんな。良かろう、その程度、この我にはお茶の子さいさいだ!」
テクトの言葉にヴェルドラは妖気を抑え込もうとするが、復活したばかりだからか多少小さくなった程度で、人間ではひとたまりもない濃度で溢れ続ける。テクトとリムルがアドバイスを送るもなかなかうまくいかなかったのだが、ヴェルドラが漫画の知識を基に妖気のコントロールをこなし始めた。
徐々に抑え込まれていく妖気を眺めていると、再び「智慧之王」から報告が入り、「暴食之王」の「食物連鎖」によって集約された配下のスキルの情報が出揃ったらしく、それらをいつの間にやら獲得していた「無限牢獄」と組み合わせ、究極能力「
「誓約之王」にはリムルの持っていたエクストラスキルも統合されたらしく、スキルの総数は減ったものの、究極能力が四つとなったことで大幅に強化されたと判断していた。
と、そこに「叡智之神」からも報告が入った。
《告。魂の回廊を通じ、入手した情報を基に究極能力「
「竜達之友」の権能は「暴風竜召喚、白氷竜召喚、暴風系魔法」となっていた。
「暴風竜召喚」はリムルとテクトどちらかが召喚した際には元いた個体は消失するらしく、同時に二体のヴェルドラを召喚することはできないらしい。
「白氷竜召喚」は「暴風竜召喚」のヴェルザード版というもののようだが、「竜達之友」には「暴風竜復元」のような万が一のためで復活に関与できる権能は無いので、テクトは召喚を控えることにした。
「俺も「暴風竜召喚」と「暴風系魔法」は使えるようになったみたいだ」
「「暴風竜復元」はないのか?」
「ないみたいだ。でも、ヴェルドラがやられることがあっても、リムルがやられることはないでしょ。俺がさせないからね」
唐突なテクトの言葉にリムルの表情が崩れる。血液を必要としない身体のため顔が赤くなることはなかったが、不覚にもときめいたリムルは久しぶりにスライムであることに感謝した。
「お、おう……」
「うむ、頼むぞテクト。まぁ、そもそも我が敗れることなどありえんがな」
「それを言ったら台無しじゃんか」
「む、すまんな。だが、我が最強であることは事実であるからして」
そうして談笑する内に、妖気の流出が耐性のある人間であれば周囲にいても問題ない程度の規模へと収まり、洞窟の外へと出ることになった。
ヴェルドラが数百年ぶりに世に解き放たれるときが来たのだった。
テクト達が洞窟の外に出ると、魔国連邦では混乱が起きていた。
ヴェルドラの復活に気づいたものもいたようで、同時期に何処かへと向かったテクトとリムルへの連絡が取れないこともあり、救出に向かう派と命令を待つ派に分かれていた。ちなみに前者が獣人中心、後者は魔国連邦の魔物が中心になっていた。
彼らの会話から三日が経過していたことを知り、心配も当然かと思いながら仲裁へはいることにした。
「ああ、皆。心配かけたようでスマン」
「ごめん、遅くなっちゃったね。連絡するべきだった」
「「「リムル様! テクト様!」」」
言い争うスフィアとディアブロの横から声をかけると、その声で二人に気づいた者たちが声を揃えて驚く中、リグルドが近寄ってきた。
「リムル様、テクト様! ご無事でしたか、心配しましたぞ! 突如、暴風竜ヴェルドラ様の気配が復活されたとの知らせを受けました。お二人が封印の洞窟へ向かわれたと聞いておりましたが、大丈夫ですか?」
「ああ、うん。問題ない。獣人の皆も心配かけちゃったね。ごめん」
テクトの謝罪に三獣士はホッとした様子になる。カリオン救出には魔国連邦の協力が不可欠であると理解しているため、その分必死だったのだろう。
復活したヴェルドラの気配が消えたことで緊急を要することはないとは感じつつも、どういう状況だったのか気にしている者たちを抑え、リムルは後ろにいた美丈夫を前へと押し出した。
「皆が気になっていることを説明する前に、紹介しておこう。こちら、ヴェルドラ君です。ちょっと人見知りだけど、仲良くしてあげてください!」
「待て、リムルよ。我は人見知りなどではないぞ! ただ、生きて我の前までたどり着けるものが少なかっただけだ!」
リムルの紹介が不満だったのか、ヴェルドラが食ってかかる。名前に関して否定しなかったことと、その身から漏れる妖気で正体を看破した魔物達も、暫く信じられなかった様子だったが、理解が追いつくと一斉に跪いた。
真っ先に声をかけたのはトレイニー達だった。
「我らが守護神ヴェルドラ様、ご復活を心よりお祝い申し上げます」
「おお、ドライアドか。我が森の管理ご苦労であった」
「もったいないお言葉です。精霊女王よりはぐれた私共を拾って頂いた御恩は、この程度で返せるものではございませんから」
「まぁ、気にするな。今はリムルとテクトの手助けをしておるらしいな。今後は我も世話になるつもりだから、よろしく頼むぞ」
「は、はい。それはもちろんです。それで」
「あの、御三方はどのようなご関係でしょうか」
突然に世話になる宣言をするヴェルドラにテクトはミリムを思い出し、リムルは後で話し合いが必要だと考えていた。一方で魔物たちはドリスの問を聞きつけてその答えを知るために静まり返り固唾をのんで見守る。
「クックック、知りたいのか?」
「是非に!」
もったいぶるヴェルドラは興味津々といった様子の魔物たちを見て、得意げな顔になるとドヤ顔で言い放った。
「友達だ!」
その言葉にテクトは苦笑いし、リムルが恥ずかしそうに顔を覆う。盛り上がる魔物たちの声にヴェルドラは鼻高々といった様子だった。
「それで、その……ヴェルドラ様のその御姿は?」
「む? これか? リムルが依代にと用意してくれたのだ。お前達と会話しても問題ないように妖気を抑え込む修行にも付き合ってくれた。どうだ、格好いいであろう?」
再びの問に対する答えにトレイニー達が賛辞を送り、ヴェルドラが高笑いをする。
魔物たちも三日間の不在は、ヴェルドラの修行を手伝っていたということが理由だったことを知り気持ちに余裕が生まれ、テクトとリムルが姿を現した時期から繋がりにも納得している様子だった。
「秘密にしていたんだ、ヴェルドラの開放まで数百年はかかる予定だったし、俺の中にヴェルドラがいると知れたら狙ってくる奴がいるかもしれないからな」
リムルの言葉に幹部たちも頷き、ヴェルドラはあっさりと受け入れられる。
とそこにソウエイが「空間移動」で帰還してきた。
「只今戻りました。何か御座いましたか?」
テクトを目標に転移したソウエイだったが、幹部や三獣士だけでなく、多くの獣人や魔物達まで揃っていることで事件かと訝しんだのだった。
「おかえり、ソウエイ。あ~、あそこのソウエイには見覚えない男なんだけど、彼がヴェルドラだ。封印されていたのをリムルといっしょに解析してて、少し前に封印の解除に成功してね。開放時の妖気で騒ぎになってたから紹介してたとこなんだ」
テクトの言葉にソウエイは僅かに目を見開いたが動揺を大きく出すことはなく、落ち着きを払って情報を飲み込むと頷いた。
「それで、クレイマンの調査は終わった?」
「はい。しかし……」
「そうだね。ここだと皆もいるから場所を移そうか。幹部とカバルやヨウムたちにも連絡を」
「御意」
「リムル! ソウエイも帰ってきたし、会議を始めよう。三獣士も出席してくれよ」
テクトの声を受け、魔物たちが移動していく。
そんな魔国連邦に様々な思惑を持った者たちが迫っていた。
次回「訪れる者達」
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紅蓮の絆編は書いた方がいいのか
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書くべき
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書かなくてもいい