転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

41 / 113
アニメ三期が始まりました。

早く本編でのシュナを見たいですね。


40話:訪れる者達

 クレイマンに動きがあったことで報告に戻ってきたソウエイの話しを聞き、今後の方針を本格的に話すため、幹部と三獣士を伴い、会議室へと向かおうとした時、五十人程の人間が魔国連邦へと接近していることに気づいた。

 

 その反応から、一団の中にフューズがいることに気づき、待っていると、草間から息せき切らせたフューズが駆け寄ってきた。

 

「お久しぶりです、リムル殿、テクト殿。間に合ってよかった。ブルムンド王国と魔国連邦の安全保障条約に従い、馳せ参じました。間に合わないんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ」

 

「ギルマスなのに、なんでこんなところに?」

 

「ハハハ、テクト殿。そう言わんでくださいよ。後のことはジーギスに任せてきた。この町の状況は商人たちから聞いている。ファルムス王国と事を構えることになったんだとね」

 

 どうやら、ブルムンドへと避難させた商人達から戦争間近と聞きつけ、慌てて用意をしてきたらしい。

 

 事情を理解し、言いづらいと思いつつも、もう戦争は集結したことを伝えようとするが、ヒートアップしたフューズは止まらない。

 

「今から防壁を用意するのは間に合わないだろうが、周囲に兵を配置して守りを固めるべきだ。ファルムスの本隊はまだ到着していないようですが、先遣隊がいつ攻めてくるかわからない。奴らが宣言した期日は既に過ぎているんでしょう? それとも、まさか打って出るつもりなんですか? それは無謀と言わざるを得ません。こちらの掴んだ情報では、相手は四万近い軍勢とのことです。正面から戦って勝てる数ではない。実は知り合いじゅうを駆け回って冒険者を三百人ほど集めて待機させている。ここは持久戦を覚悟して、森という地の利を活かしたゲリラ戦を展開するべきです。獣人の皆さんも味方というのも活かしやすいですしね」

 

 フューズは三獣士を視界に収め、納得したように頷くのをみて、更に言い出しづらくなる。あまりに熱く語るフューズにテクトとリムル以外はキョトンとしており、援護は望めなかった。

 

「ここはいい街だ。美しい町並に丁寧な造りの家々、石畳で舗装された道路。認めるのは悔しいが、ブルムンド王国よりも立派だ。ここを戦場にしたくないという気持ちも理解できる。ですが、ここは耐え忍び援軍を待ちましょう。ブルムンド王も騎士団を動かすと約束してくれた。時間はかかりますが」

 

「あー、フューズ君! ちょっと待って欲しい!」

 

 フューズの言葉に先程までよりも強い口調で割り込むことで、ようやくフューズが止まる。先程までの静止が届いていなかったフューズは止められたことを訝しみつつも、冷静さを失っていた事は理解していたのか一呼吸おいて落ち着いた。

 

「なんですかリムル殿。まさか既に作戦が?」

 

「ああ、いや作戦というか……」

 

「テクト殿、まさか、我々には秘密の作戦ということですか? 敵も人間ですから疑う気持ちはわかりますが、一大事なのです。そこは信用して」

 

「いや、違うんだよフューズ君! 気持ちは嬉しいんだがそれはもう終わったから!」

 

「は? 終わった? どういう意味ですか?」

 

「いや、まぁ、簡単に言うと、もう全滅させちゃったんですよね」

 

「は? 全滅? 何をです?」

 

「ファルムス王国の軍勢なんだけどね。俺達でもう全滅させちゃったんだよ!」

 

「は? はぁぁあぁぁ⁉」

 

 最初は歯切れの悪かった二人にフューズが問い詰めていき、事実が明るみになる。

 

 ファルムスの軍勢が全滅しているという事実を飲み込めず、一度間抜けな声を出したフューズだったが、すぐに理解し、今度は叫び声を上げる。

 

 そんなフューズの肩をヨウムが労うように叩き、カバル達が同情に満ちた声をかける。

 

 フューズも警戒が薄かったことで不審には思っていたようだが、主要な面々は揃っていたので無謀な攻勢に出ようとでもしているのかと慌てたらしい。

 

 近くにファルムス軍がいないのも到着が遅れているだけだと考え、まさか宣戦布告から数日で終結したとは考えつかなかったらしい。

 

 戦争が既に終わったことを知り、後ろに控えていた者たちも緊張の糸が切れたのか崩れ落ち、皆、疲労をにじませていた。

 

 一応、リグルを戦争終結を伝える使者としてブルムンドへと送っていたが、街道を通るリグルは、ファルムス軍との遭遇を避けるため、獣道などを通っていたフューズ達と遭遇することはなく、すれ違いとなったようだった。

 

 ひとまず疲労困憊の戦士たちを休ませるため、宿へと案内をさせ、フューズにも休息を促していると、上空から別の客が来訪した。

 

 上空の客はガゼル・ドワルゴを先頭にした三十騎の天馬騎士だった。

 

「久しいな、リムル、テクト。魔王になったらしいな」

 

「まあね、ガゼル。色々あって魔王になることにしたんだ」

 

「お久しぶりです、ガゼル王。これより今後の方針について会議を行うところなのですが、どこかでお待ちになりますか?」

 

「いや、ちょうどいい。俺もその会議に参加するとしよう」

 

 真っ先に天馬からおりたガゼルの言葉にリムルが気さくに、テクトが礼とともに応じると、ガゼルは当然のように会議への参加を表明する。そこに血相を変えて割って入ったのはフューズだった。

 

「魔王⁉ 一体なんの話しですか? リムル殿、いまのは聞き捨てなりませんよ? テクト殿、顔ごと目をそらさないで頂きたい。俺には魔王になったと聞こえましたが?」

 

「震えてどうした? 小便か? そうそう、ここのトイレは」

 

「違うよ! 誰もトイレの話なんざしていませんよ! 魔王って、一体どういうことなんですか⁉」

 

 聞こえた内容の真偽を確かめようとするフューズはぷるぷると震えていた。その様子に茶化してごまかそうとしたリムルにフューズは噴火した。

 

「ああ、魔王だろ? なったけど?」

 

「ハハハ、冗談でも笑えませんな。真面目に答えて頂きたいのですが」

 

 さも当たり前という雰囲気のリムルにフューズは真剣な顔で詰め寄る。

 

 説明を面倒がったリムルだったが、ガゼルも聞きたそうな顔をしているのをみて、諦めてざっと説明を始めた。

 

 そして、リムルの話が終わるとフューズは虚空を見つめ、ブツブツとつぶやき始めた。あまりの内容に現実逃避に入ったらしい。

 

「ところで、ガゼル王。王自らここに来ていて問題ないんですか?」

 

「ふん、ちゃんと影武者が居るわ!」

 

「なんか使い方間違ってません?」

 

 虚空を見つめるフューズを置いて、テクトがガゼルに問いかけると、ガゼルが鼻を鳴らして返す。その内容に釈然としない気持ちになったが、護衛の顔ぶれにひとまず納得することにした。

 

 そうしてテクトが自分を納得させていると、ガゼルは目つきを変えて話始めた。

 

「それよりもだ。三日前のベスターの報告に間違いはないのだろうな」

 

「ああ、俺とテクトで四万の」

 

「待て、リムル。ファルムス軍が行方不明と聞いたが、何があったのだろうな?」

 

「へ? 行方不明? いや―んがっ」

 

「ええ、こちらとしても不思議に思っていたところです。奴らの宣言を信じることもなく、非戦闘民の避難と戦闘員の編成を早急に行い、待ち構えていたのですが、どこへ消えたのやら……連中の行方は現在も調査中ですが、おかげで急いでくれたフューズ殿は骨折り損というものです」

 

 ガゼルの話に正直に応えようとしたリムルを押し留め、テクトがガゼルの思惑に乗るために話を合わせる。そうして名を呼ばれたことで現実逃避から復帰したフューズに視線を向けた。

 

 ガゼルの思惑とは、早い話が生存者がほとんどいないことをいいことに、テクトとリムルの殺戮劇を有耶無耶にしようというものである。

 

 テクトの反応でリムルもガゼルの思惑に気づいたものの、そうなると困るのは先程の発言だった。既にフューズ含め五十名程に実際に起きたことを聞かれている。どう誤魔化したものかとフューズへ視線を向けるとちょうど目があった。

 

「あ、あー、フューズ君」

 

「俺は何も聞いちゃいない。勿論、宿にいる俺の部下たちも何も覚えていないだろうぜ。どうも強行軍の疲れが出て、幻聴が聞こえたようだ」

 

 気まずそうに声をかけるリムルに、フューズは両手を上げて暗に流れに乗る事を告げる。

 

「では、私が確認して参りましょう」

 

「頼むぞ、ディアブロ。くれぐれも()()()な」

 

「無論です。何もご心配はいりません」

 

 リムルがフューズの言葉にホッとしていると、すぐ隣にディアブロが立っていた。

 

 笑顔のディアブロにテクトが頷くと、すぐにその場から消えていく。

 

 テクトが「丁寧に」と強調したことで、何をしようとしているのか理解したフューズは苦い顔をしていたが、事実を知る者は少ないほうがいいということは理解しているので、止めることはなかった。

 

「部下のことは何も言いませんが、俺も会議に参加させてもらいますよ」

 

「ああ、俺達が人間に敵対するつもりがない事を理解してもらいたいし、会議への参加を拒んだりしないさ」

 

 これだけは譲れないという様子のフューズに、テクトとディアブロのやり取りに苦笑いを浮かべていたリムルも真面目な顔で返す。

 

 フューズやガゼルたちも参加する事になり、大会議場の用意が必要となったため、そのセッティングが終わるまで休めるようにフューズを控室に案内させるとガゼルが話しかけてきた。

 

「あの男は信用できるのか?」

 

「ああ、それは大丈夫」

 

「ならば、問題はそちらの者共よな」

 

 フューズを疑う言葉にリムルが信用を返すとガゼルはリムルの後方へと覇気を向ける。その反応にリムルが慌てて顔を向けると、見慣れぬ者たちが立っていた。

 

 先頭の糸目の男の後ろと左右を高級武官と思しき者たちが守っており、その立ちふるまいから武官たちの力量の高さが伺えた。

 

「何者だ? お前達」

 

 謎の一団へ声をかけたのはガゼルだった。本来なら魔国連邦のものが問いかけるところだが、進化により増えた感知能力による情報量を、面倒だからと意図的に削減していたリムルと、リムルが反応せず、一団が不意打ちをする様子もなかったため警戒が薄いテクトをみて、幹部たちが出遅れたのである。

 

「これはこれは、地底に隠れ住むのが好きな帝王ではありませんか。意外ですな、臆病な貴方が魔王に肩入れなさるとは……」

 

 先頭の男はガゼルの覇気を受けても飄々とした態度を崩さず、むしろ煽るような言動を取る。周囲の武官がため息でも吐きそうな顔をしているあたり、よくあることなのだと察せられた。

 

「お前か、馬鹿みたいに高いところの好きな耳長族(エルフ)末裔(すえ)よ。神樹に抱かれた都市よりおりてきたか」

 

 ガゼルも男の言動から正体を察し、警戒を解くと挑発仕返し始める。

 

 明らかに知り合いとわかるやり取りにテクトの視線が向いているのに気づいたガゼル曰く、魔導王朝サリオンの者達らしい。

 

 ガゼルにエラルドと呼ばれた男は気さくな感じだったが、リムルの名を聞いた瞬間、糸目を見開いた。

 

「貴様が私の娘をたぶらかした魔王かぁ!」

 

 エラルドはそう叫ぶと、飛び退り、起動した魔法の詠唱を始める。

 

 詠唱している魔法は超高等爆炎術式であり、魔導師以上の実力のないものでは知ることすらできない軍用魔術である。

 

 字面からもわかるようにとてつもない威力を発揮することが出来る術式だが、当然町中、それも魔物だけでなく、他国の王がいる場で使っていいようなものではない。

 

「ちょっと、パパ! 何しに来たのよ!」

 

 テクトたちがエラルドの言動の真意を計りかね、対処に困っていると、横合いからの一撃で詠唱が中断された。

 

 気持ちの良い音の一撃を放ったのはエレンだった。

 

 張り倒されたエラルドもエレンの姿をみて落ち着いたのか、朗らかに挨拶し、それがエレンの怒りの火に油を注ぐ。

 

 エレンの説教の後、事情を聞くと、エレンについての報告を聞いた親ばかの暴走ということで纏まった。

 

 エレンから改めてが紹介され、改めて使者としての礼をするエラルドだったが、先程までの行動を見ていた者たちからの反応は芳しくなかった。

 

 むしろ、エラルドが皇帝の叔父にあたる大公爵家の当主というところから、エレンがかなりのお嬢様だったことがわかり、そちらのほうがリアクションが大きかった。

 

「で、要件はエレンさんの件だけですか?」

 

「そんな訳はない。今後、君たちの国との付き合い方を考える上でも、自分の目で見ておきたかったのだよ。娘が気に入った、貴殿という人物をな。その堂々たる盟主ぶりを見れば、貴殿がスライムだなどと信じ難い。だが、貴殿たちの実力は見極めさせてもらったとも」

 

 先ほどエラルドが行使しようとした術式は最低限必要となる魔素量に足りていなかった。それを指摘され、エラルドは面目なさそうに苦笑する。

 

 更に今の身体が本来のものでなく人造人間(ホムンクルス)に憑依した状態であることも言い当てられ、降参とばかりに首を振るエラルドに、リムルは護衛の数の少なさの理由を納得しつつ、ガゼルが異常なのだと認識を改めた。

 

 付き合い方を見極めるというエラルドにも会議への参加を促していると、ゴブタが会場の用意が決まったことを知らせに来たため、そのまま移動を始めるのだった。

 

 

 

 会場にたどり着くと、リムルが最奥に、テクトがその隣に座り、それに従って各々が案内された席に座った。

 

 出席者は以下の通り

 

 獣王国ユーラザニアからは三獣士

 

 武装国家ドワルゴンからは国王であるガゼル・ドワルゴ

 

 ブルムンド王国からは自由組合支部長のフューズ

 

 魔導王朝サリオンからはエラルド

 

 魔国連邦からは各部門の幹部に森の管理者である樹妖精のトレイニー

 

 最後にヨウムとミュウラン、グルーシスの新国家樹立予定組

 

 紹介が終わるとシュナ、テスタロッサ、シオン、ディアブロが会釈をし、会談も始まったのだが、遅れてヴェルドラがやってきた。

 

 会談に参加するのに、依代に宿ったときに変えた半裸に近い状態ではいかがなものかという話になり、衣装を見繕わせていたのだった。

 

 遅れてきた美丈夫に正体を知らぬものは不思議そうな顔になり、正体を知るものがつばを飲む。

 

 空気が変わる中、軽く流される事を期待しながら、リムルがヴェルドラを紹介した。

 

「来客の皆さんにも紹介したい。多分、名前だけは聞いたことがある方もいると思うが、どうか驚かないで欲しい。俺達の盟友のヴェルドラ君だ」

 

「ヴェルドラである! 我のことを暴風竜と呼ぶ者もおるようだな。まぁ、我と話すことが出来たものは数える程しかおらぬ故、貴様たちは幸運であると言えるだろう。光栄に思うが良いぞ!」

 

 紹介を受けたヴェルドラが尊大に自己紹介をする。

 

 念の為、ヴェルドラに会議の邪魔をしないように伝えていると、フューズが現実逃避気味に気絶し、ガゼルがリムルとテクトを怒鳴るように呼びつける。

 

 魔物達が改めて平伏し、混乱のるつぼと化した会場でテクトは空を仰いで息を吐くのだった。

 

 そこに改めてガゼルから話があると告げられ、会議は始まる前に中断されたのだった。

 


 

次回「人魔会談」




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

  • 書くべき
  • 書かなくてもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。