転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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前回の投稿から、かなりの数の誤字報告を頂きました。

本当にありがとうございます。

並びにお見苦しいところをお見せして申し訳ありません。


42話:ラミリスの報せ

 魔国連邦と魔導王朝サリオンの国交が樹立し、会談もまとめに入ろうとした時、会議室のドアが勢いよく開かれた。

 

「話は聞かせてもらったわ! この国は、滅亡する!」

 

 飛び込んできたのはラミリス。

 

 その小さな身体でどうやってあの勢いでドアを開けたのかとテクトが疑問に感じていると、扉に異常がないか確認しつつ、静かに閉めるベレッタがいた。

 

 ざっと室内を見回し、リムルとテクトを見つけると、まっすぐに向かっていくラミリスだったが、テスタロッサによって羽を摘まれ、あっさりと捕獲された。

 

 手足をばたつかせ、騒ぐラミリスへとテスタロッサが冷たい目を向ける。

 

「テクト様、この不遜な羽虫はいかが致しましょうか? この国が滅ぶなどという世迷い言を吹聴する塵芥虫(ゴミムシ)は、処分するのが妥当かと存じますが」

 

 会話の中で怒りが加熱したのか、テクトへの上申中に更にラミリスの評を下げるテスタロッサに、テクトは苦笑いを返すことしか出来なかった。

 

「このアタシの全魔力をもってしても逃げ出せないなんて⁉ こいつ只者じゃないわね?」

 

 騒ぐラミリスに対する視線が絶対零度へと近づいていくテスタロッサにまかせておくのはラミリスの身が危ないと感じたテクトが手を差し出すと、テスタロッサは僅かに不満を漏らしながらもテクトの手にラミリスを乗せる。

 

 捕獲されていた状態から開放されたことでやれやれと言った様子で額の汗を拭うラミリスに、テクトが小さくため息を吐いていると、フューズが口を開いた。

 

「テクト殿、その妖精は知り合いですか?」

 

「この子はラミリス。十大魔王の一人、「迷宮妖精(ラビリンス)」のラミリスなんだけど……」

 

「魔王……?」

 

「本当ですか?」

 

 テクトの説明にリムル以外の全員が疑わしそうな顔になる。

 

 そんな反応が気に食わないのかラミリスが喚き出した。

 

「ちょっと、どういう意味よ! これでもアタシはね、十大魔王中最強と恐れられているんだからね! 何でそんなにあっさりとした反応なわけ?」

 

「いや、だってなあ……リムル殿とテクト殿も魔王だし、知り合いに魔王がいても納得できるというか……」

 

「というより、暴風竜復活の方が驚きで、大抵のことでは驚かないというか……」

 

「はあ? 暴風竜? ヴェルドラが復活したですって? そんなことあるわけないでしょ? ヴェルドラはアタシがワンパンで沈めてやったんだからね! 口程にもない奴だったわよ。まあ、あいつの時代は終わったってわけ。畏れ敬うなら、あんな「そよ風竜」じゃなくて、このラミリス様にすればいいのさ!」

 

 そう言うとラミリスは高笑いを始める。

 

 そんなラミリスにリムルはため息を吐くと、テクトからラミリスを受取り、ヴェルドラの下へと運ぶ。

 

 ラミリスを任せようとするリムルへ、推理漫画の犯人探しを理由に断ろうとするヴェルドラだったが、返しの容赦のないネタバレに絶句し、動きを止めた。

 

 リムルはそこにラミリスを置き、ヴェルドラの存在を認知した彼女が気絶したのを見て一つ頷くと、「あとは任せた」と軽い調子で告げ、戻ってきた。

 

 場が静かになったことで、会議は詰めへと戻す事が出来たのだった。

 

 

 

「さてと、話を戻そう。ベニマル、敵はクレイマン。叩き潰すぞ!」

 

「待っていましたよ、その命令を!」

 

 テクトの声にベニマルが不敵に笑い、瞳を妖しく煌めかせる。

 

 テクトはその回答に頷くと、三獣士へと目線を向ける。

 

 視線を受けて三獣士が頷くのを見て、テクトも口角を上げた。

 

「テクトよ、それで、勝てるのだろうな?」

 

「勝つ。あいつは俺達を怒らせた」

 

「そうか、では俺は貴様らを信じるとしよう」

 

 ガゼルは自身の問いかけに、普段の外向きの態度を取ることもなく答えるテクトに鼻を鳴らすと苦笑した。

 

 沈黙したガゼルに代わり、エラルドが心配そうに口を開く。

 

「しかし、クレイマンといえば、油断ならぬ魔王ですよ? 数多の魔人を配下に擁し、東の帝国とも繋がりがあると噂されておりますし……」

 

「関係ない。立ち塞がる者は何であれ消し飛ばす。戦いは数ではなく、質だ!」

 

 エラルドの心配をテクトが一笑に付し、堂々と非常識な理屈で黙らせると、エラルドは呆れたようにする。

 

「やれやれ、自分の常識が崩れる音が聞こえそうです……」

 

 エラルドは呆れたような声音だが、その顔には興味が浮かんでいた。

 

「まぁ、戦に関してはこちらの問題だし、信用して任せてもらうとして……ヨウムを英雄王とするための計画の話に戻ろう」

 

 いまだ息の荒いテクトを諌めるようにリムルが前に出て、一旦話題をヨウムの件へと変える。

 

 ヨウムが王を救出したという演出をする際、その保護先をミュラー侯爵とするため、フューズを間に挟んで連絡を取り、日程を調整することになる。

 

 その話をする最中、ようやく収まりのついたテクトがふと口を開いた。

 

「そうだ、シオン、捕虜の取り調べはどうなった? 何か情報は得られた?」

 

「フッフッフッ、勿論ですともテクト様!」

 

 テクトの問いかけにシオンが得意げに断言する。

 

 その反応に嫌な予感を覚えたテクトとリムルが取り調べに同行させていたヨウムとミュウランに視線を送ると、二人揃って目を反らした。

 

「ああ、その、なんだ……取り調べ? 尋問? とりあえず、情報は喋ってたぜ」

 

「ええ、そうね……でもあれは、取り調べではなかったわ。尋問と呼ぶのも烏滸がましい何かだったけど……」

 

 二人の答えにテクトは顔を伏せるとゆっくりと首を振り、それ以上の説明を止めさせる。

 

 暴走を止めるための同行者だったが、接触出来ない状況を作り上げたのはテクト達であったため、特に何も言うことなく、まずはシオンから調査結果を聞くことにした。

 

「まず、エド、エドノヨル? エド……」

 

「エドマリス国王では?」

 

 報告が始まって早速シオンが言葉に詰まり、見かねたシュナがフォローする。

 

 早速雲行きが怪しくなってきたと不安になるテクト達だったが、報告を止めることはなく続けさせる。

 

 エドマリス国王に接触した商人がいたらしく、その商人が魔国連邦産の絹織物などを持ち込み、王の欲を刺激したらしい。

 

 その商人が意図的にエドマリスを動かせそうにみえるが、商人の正体はわからないようだった。

 

「教会関係は何かわかった?」

 

「はい! 黒幕が判明しました。その名は」

 

 テクトの問に得意げに答えたシオンだったが、中々続きが出てこない。しばらくしてシオンの視線がミュウランへと向き、それを受けたミュウランが答えを提示した。

 

「元凶は、ニコラウス・シュペルタス枢機卿だそうです」

 

 ここまでの報告からシオンに情報収集は向かない事を再確認しつつ、報告の続きを聞くと、ニコラウスは「魔国連邦を神に対する明確な敵対国として討伐する予定だ」と言っていたらしい。

 

「なるほど。レイヒムは神敵討伐の栄誉をもって、中央に対する評価を得ようとしていた、と」

 

「どちらにせよ、まだやりようはあるな。西方正教会は、決定的な判断を下す前だった。ならば、交渉によっては敵対を避ける道もあるやもしれぬ」

 

「ならば、交渉は俺が」

 

 交渉に関してはフューズが名乗りを上げる。

 

 曰く、ブルムンドが評議会で魔国連邦を正式に国家として認めるべきだという声明をだし、西方正教会へと揺さぶりをかけるとのことだった。

 

 評議会で宣伝することで、魔国連邦を交易の中継地点としての注目を集めさせる。

 

 町の住民が魔物であることは問題だが、交流をもてる存在であることはすでに証明出来ている。

 

 そのため、時間をかけていけば、最終的に人に近い亜人種のような認識へと落ち着いてくれるのではという見解である。

 

 これを援護するべくドワルゴンでも動くようで、魔国連邦との貿易の活性化をするらしい。

 

 西方正教会の教義的には受け入れ難い話ではあるが、すでに樹立している国交と取り消させることは不可能である。

 

 人類国家と堂々と関わりを持つ魔物の国は否が応でも興味を引き、そこにサリオンの国交樹立の宣言でもって畳み掛けるという形になる。

 

 魔国連邦と関わりを持つ国の中で、唯一西方正教会の影響があり、小国故他国からの圧力の影響を受けるブルムンドの代表であるフューズは緊張をにじませていたが、ガゼルがそれを一蹴する。

 

 ドワルゴンとサリオンの交流の中継地となる魔国連邦と交流を持つということは、それらと交流を持つことにつながる。

 

 将来的には技術交流の結果生まれた最新技術を取り入れることもできるため、利益は莫大なものになるのだ。

 

 最終的には総合商社のような役割をになってもらう予定である事をリムルとテクトでざっくりと伝え、十分な理解とはいかなかったものの、フューズは一応の落ち着きを見せた。

 

「まぁ、俺はそういう経済の話に明るいわけではありませんし、王に伝えて、面会予約を入れておきます」

 

「ああ、頼んだ。とはいえ、話を進めるのは俺達がクレイマンを倒して、ヨウムが新国家を樹立したあとになるけどな。俺達が影響力で西方正教会に対抗できるまでは情報操作での牽制に努めてもらうことになる。ひとまずヨウムたちと捕虜三人を……ん?」

 

 フューズの言葉にリムルが頷きつつ、話を進めようとしたところで唐突に言葉を切る。不自然な言葉の切り方に衆目が集まるなか、僅かな思考の後シオンへと視線を向けた。

 

「シオン、捕虜は三人だっただろ? 最後の一人はどうだったんだ?」

 

「ああ、あの酷く怯えていた男ですね」

 

 リムルの言葉にシオンも存在を思い出したのか捕虜の様子を告げる。

 

 リムルの攻撃から生き残ったとのことで警戒するべきかと思っていたが、怯えていたとのことでテクトの中での評価があやふやになる。

 

「生き残った最後の男か。察するに騎士団長フォルゲンというところか?」

 

「ディアブロが捕らえたんでしょ? どんな奴だった?」

 

 他国の王であるガゼルが名を上げる人物ということで、テクトが警戒をにじませつつディアブロへ問うが、当のディアブロは笑顔のままだった。

 

「何の問題にもならぬ小物でした。人間にしては、それなりに魔法を操れたようです」

 

「シオン、その男の名前は聞いてる?」

 

「はい! ラーメンです!」

 

 ディアブロの答えを受けて、騎士とは程遠い人物像が浮かび上がり、名前から情報の幅を広げようとしたテクトだったが、帰ってきたのは故郷の料理の名だった。

 

 テクトとリムルが思わず望郷とその再現への執念を燃やしていると、各国の代表が話を進めていた。

 

 ファルムスには魔人ラーゼンという人物がおり、その名は獣王国にも届いているらしい。

 

 ここまでのシオンの固有名詞の覚えの怪しさからテクトの中で暗雲が漂い始めた。

 

「シオン、そいつの名前、ラーメンで間違いないんだよね?」

 

「は、ええと、多分……ですが、若造でした! この町を襲撃した者の一人でしたし、皆がいっているような魔法使いではありません!」

 

 似たような名前が各国の代表の口から出て、不安がっていたシオンだったが、容姿は間違いなく魔法使いではないと断言する。

 

 他のものにも話を聞くが、捕らえられた男は襲撃してきた異世界人であることだと断定され、その異世界人は魔法使いではないという裏付けが取れた。

 

 整合性の取れない話に疑問が広がるが、ふとテクトがハクロウへと話を向けた。

 

「そういえば、ハクロウ。異世界人と魔法使いが逃げたっていってたよね? 名前を呼び合ったりしてなかった?」

 

「ふむ、思い返してみれば、ディアブロが捕らえたという男は「ショウゴ」、魔法使いは「ラーゼン」 と呼ばれておりましたな」

 

「ディアブロ」

 

「確認して参ります。しばしお待ちを」

 

 ハクロウの回答にテクトの目が細くなる。名を呼ぶ一言で察したディアブロが転移で消え、捕虜の名はラーゼンで確定し、対象に自分の記憶を焼き付け、魂を宿らせる事で肉体を乗り換える、大秘術:憑依転生(ポゼッション)を用いた結果であるという証言が得られた。

 

 名前の件に関してはシオンに尋問を任せたテクトたちの落ち度であったため置いておくことにし、周囲を見やるとラーゼンを一蹴したディアブロの実力に絶句していた。

 

 そんな様子を見たリムルは一つ頷くと、ヨウムへと顔を向ける。

 

「ヨウム、捕虜三名を連れて行動を起こしてもらう訳だが、ディアブロも連れて行け」

 

 その言葉にディアブロが慌て、シオンが得意げに笑う。

 

 ディアブロの有能さに嫉妬していたシオンの心情が手に取るようにわかったテクトは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「元々ヨウムには誰か付ける予定だったんだ。実力はあっても移動に難があったり、容貌が人とは違って目立ちすぎたりして人選に難儀していたが、ディアブロなら適任だ。厄介そうなラーゼンの対応も問題なくできそうだし、お前に頼みたい」

 

「で、ですが、テスタロッサでも」

 

「そっかぁ、俺としても、是非ディアブロに頼みたいところだったけど、そこまで言うなら、テスタロッサに」

 

「何も問題は御座いません。この程度の些事、すぐに終わらせてご覧に入れます」

 

 リムルのそばを離れたくなさそうに抵抗していたディアブロだったが、リムルだけでなく、テクトからの期待と、テスタロッサに見せ場を取られまいと快諾する。

 

 思惑通りに進んだことでテクトが満足そうにしていると、エラルドが手を上げた。

 

「何でしょう?」

 

 テクトが何か疑問点でもできたのかと声をかけると、エラルドが話し始める。

 

 やや婉曲に話していたが、要するにサリオンと魔国連邦の間での街道整備をして欲しいということだ。

 

 これに口を挟んだのは、意外にもガゼルだった。

 

「エラルドよ、それは虫が良すぎるというものだぞ。リムル達とて、そんな重大な仕事を軽々と引き受けることなどできまいよ」

 

 言葉こそ魔国連邦を慮ったものだったが、ドワルゴンとの街道整備は魔国連邦が行っており、まさしく「お前が言うな」という状況だった。

 

 エラルドもそれを知っているのか声を荒げ、リムルも苦笑いを浮かべると、テクトへと視線を向けた。

 

 その視線を受け、テクトが口を開いた。

 

「エラルド公の言い分はわかりました。街道の件はこちらで引き受けても構いません。ですが、街道上の警備及び宿屋の運営もこちらで行わせて頂きます。勿論、それらの維持・整備等の経費を乗せた通行税も頂くことになります。いかがですか?」

 

「なるほど、流石。それは当然の要求でしょう。ただし、その通行税に関しては、何年かに一度の交渉権が欲しいところですな」

 

「では、決まりということで」

 

 あっさりと決まった大規模事業にフューズが驚くが、誰も気にせず話が進む。

 

 話を振られたゲルドが意気揚々と請け負い、後に人魔会談と呼ばれる会議は終了した。

 

 

 

「あれ? そういえば、ラミリスは何しにきたの?」

 

 各国との調整も兼ねた会議が終わり、改めて対クレイマンのための会議へと移ろうとした時、テクトがラミリスを思い出し、視線がヴェルドラの方へと向く。

 

 ずっと静かだったため、いまだ気絶しているのかと思われたラミリスだったが、一心不乱に漫画を呼んでいた。

 

 声を掛けるも突っぱねられ、大事な用だったのではと首をかしげていると、給仕をしていたベレッタが礼をする。

 

「この度は魔王への進化おめでとう御座います。ワレもリムル様の進化のお裾分けを頂きましたこと、お礼を述べさせて頂きたく思っておりました。お陰様で魔将人形より進化し、聖魔人形(カオスドール)へと至った次第です」

 

「ベレッタも進化したんだ。というか、マウザーは?」

 

「マウザーは迷宮の守護のため残りました。それと、「行かないほうがいい気がする」と怯えておりましたが、彼女の勘は当たったようですね」

 

「? まぁ、いいや。それで、君等何しに来たの?」

 

 テクトがマウザーの言葉には引っかかりを覚えつつも、再度目的を問うとベレッタが狼狽え、ラミリスへと語りかける。

 

 漫画を読む邪魔をされたラミリスが当たり散らすのを見かねたリムルによるネタバレ宣言(脅迫)に屈し、ラミリスが飛び上がった。

 

 魔物同士での戦争の話ということで、帰支度を始めていた者たちも注目しだしたのにラミリスは満足そうにすると、やや勿体つけて話しだした。

 

「もう一度いうわ! この国は、滅亡する‼」

 

「「な、なんだってー」」

 

 ラミリスの言葉にテクトとリムルが棒読みで相槌を打つ。

 

 棒読みであることには気づかず、反応があったことで調子に乗ったラミリスが恩着せがましそうに言葉を続ける。

 

「フフン! まあ、アタシもそれは望まないワケ。それで、わざわざ知らせに来てあげたのよ。感謝しなさいよね!」

 

「それで、何で滅ぶことになるの?」

 

 ラミリスをそのままにすると本題まで時間がかかると判断し、テクトが単刀直入に聞く。

 

 ラミリスは真面目な顔になると、ガゼルたちを見回して少し思案すると、一つ頷いた。

 

「まあ、人間にも関係ないわけじゃないか。いいわ、一緒に聞きなさい。魔王クレイマンの提案でね、魔王達の宴(ワルプルギス)が発動されたのよ!」

 

「ワルプルギス?」

 

「ええそうよ、魔王達の宴。全ての魔王が集う、特別な会合なの」

 

 詳しく聞くと、魔王達の宴とは魔王間の協定での決め事であり、三名以上の魔王の承認によって発動され、全員参加が強制されるらしい。

 

 全権を委任したものを派遣する者もいるようだが、不参加は許されないという。

 

 人類国家では千年前の文献にも記述があり、魔王達の宴を契機として大戦が起きたそうだ。

 

 その際に西方正教会が魔王達の宴と命名し、「世に混乱と破滅を齎す魔王の宴」として知れ渡ったのだという。

 

 大戦とは五百年周期で発生する「天魔大戦」を指し、天使族(エンジェル)が発展した都市を目の仇にするように襲うらしい。

 

 ドワルゴンが地下にあるのもそれが理由らしく、サリオンもまた身を隠すかのように神樹の洞に都市を築いているとのことだった。

 

 西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)が制定されたのは魔物に対抗するためであると同時に大戦を生き抜くという目的があるという。

 

 大戦時の敵は天使族だけというわけではない。

 

 天使族の侵攻に呼応するように魔物も活性化し、魔人の動きが激しくなる。

 

 魔王の中には大戦を利用して人類国家への侵攻を企てる者もいるらしく、千年前にはかなり悲惨な状況になったそうだ。

 

 更に、東の帝国―ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国は西側諸国が弱ると見ればすぐに牙を剥く覇権主義国家であり、大戦時にも油断ならない存在となっている。

 

 そんな大戦の話を聞き、都市防衛機構の充実を考え始めたテクトとリムルだったが、今は魔王達の宴だと一旦脇におくことにした。

 

「大戦と魔王達の宴があんまり関係ないってことはわかったけど、今回の魔王達の宴の目的って何なの?」

 

「とりあえず、勘違いしている奴もいるみたいだから言っとくと、魔王達の宴って結構開催されてるのよ。十名の内三名以上の同意で発動だから、簡単なのよね。昔はアタシとギィとミリムの三名だけでのお茶会みたいなものだったんだけどね。早い話、魔王達の宴ってのは、魔王が集まって近況報告や面白い話題を話し合う場ってワケ。人間が知らないだけで、そんな大層なものじゃないんだよ」

 

「それで、何でお茶会で魔国連邦が滅ぶのさ」

 

「違うって! 問題なのは魔王達の宴そのものじゃなくて、その議題なのよ!」

 

 ここまでの話題で危機らしいものがないと感じたテクトの声に緊張感がなかったからか、ラミリスが慌てて言い返す。

 

 今回のクレイマンの発議に賛同したのは魔王フレイと魔王ミリム。

 

 そして議題は「ジュラの大森林に新たな勢力が誕生し、その盟主が魔王を僭称した」というものだ。

 

「で、どっちが魔王を名乗っちゃったワケ?」

 

「リムルだね」

 

「一応言っておくが、反省も後悔もしてないぞ?」

 

「ふーん、色々と面倒が起きると思うけど、それだけの実力があればいいんじゃない? テクトもいるし、なんとかなるでしょ」

 

 ラミリスの言葉が他人事そのものではあるが、実際にその通りである。

 

 魔王達との軋轢も覚悟の上なので、テクトとリムルには動揺はなかった。

 

「ミリムも前に言ってたし、今回も制裁が目的?」

 

「名目はね。制裁するならご自由にってのが、我々の業界の暗黙のルールなの。今回わざわざ魔王達の宴を提案した理由は、カリオンの裏切りと配下のミュウランって魔人がジュラの大森林の勢力のものに殺されたってことで、クレイマンが騒いでるの」

 

 ラミリスの言葉を聞き、クレイマンの目的をユーラザニアと魔国連邦の制圧と判断しつつ、ミュウランの偽装殺害がうまくいっていることでテクトがほっと息をついた。

 

 それを見てラミリスが騒ぎ始める。

 

「アンタらねえ! そんなに落ち着いてるけど、これって大事なのよ⁉ アタシの所に届いた報せでは、カリオンはミリムに倒されちゃったらしいし。それにクレイマンも、配下の魔物を動かして軍事行動を起こすつもりみたい。つまりこれはもう制裁とかじゃなくて、戦争なのよ! クレイマンは難癖つけて、アンタ達全員を始末しようとしてるってことなんだから!」

 

 ラミリスの言葉に人間たちは魔王間のバランスが崩れることを危惧し、主を貶められた三獣士が憤る。

 

 主を裏切り者扱いされた三獣士の怒りは凄まじく、飛び出さんばかりの雰囲気だが、何とか踏みとどまっていた。

 

 一方で、魔国連邦の者たちは落ち着きを払っていた。

 

「落ち着いてよ、ラミリス。確かにリムルが魔王を名乗ってるけど、ミュウランは死んでないよ」

 

「どういうこと?」

 

「どういうも何も、ほら」

 

 いまだ騒ぐラミリスへとミュウランを差し出し、話と食い違った現実にラミリスが混乱する。

 

 しばらく唸りながら動き回っていたが、結論が出たのか得意げに話しだした。

 

「わかったわ! 犯人はクレイマンで決まりね!」

 

 この場にいた誰もが理解していた結論に辿り着き、鼻高々なラミリスが胸を張り高笑いする。

 

 そんな様子に呆れつつも、情報収集をすることにした。

 

「ところでラミリス。他の魔王の動向ってわかったりする?」

 

「知らないわよ。こういう内容で開催するから参加してねって言われただけだし?」

 

「なら、魔王達の宴の日時は?」

 

「あれ、言ってなかったっけ? 確か、三日後の新月の日の夜だね」

 

 ラミリスの答えにテクトとリムルはそれまでにクレイマンを叩き潰せるか思案する。

 

 答えは否。

 

 いくらなんでも魔王をどうにかするには時間が足りなさすぎた。

 

 リムルがラミリスの来訪の理由を尋ねると、二人が殺られた場合にベレッタとマウザーがどうなるか不安だという答えが返ってきた。

 

 味方をするから迷宮の入口を創るというラミリスと口論を始めるリムルを放って、テクトは客人への対応をし始める。

 

 フューズとガゼルは一泊して帰国、エラルドはエレンに構うために数日の滞在を決め、それぞれ案内をされて去っていった。

 

 

 


 

 次回「開宴準備」




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

アニメでもシュナが登場しました。

嬉しいことです、が、本作のメインヒロインに据えているせいか、リムルにくっついているところを見ていると、頭の大事なところが軋むような気がします。

不思議だね。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

  • 書くべき
  • 書かなくてもいい
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