転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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47話:踊る傀儡師(アリア) Side−R

 開会の宣言の後はクレイマンの独壇場だった。

 

 俺を含む魔王達を見回して満足そうにしながら、得意げに演説を始める。

 

 曰く

 

 

 

 一つ、魔王カリオンが俺を唆し、魔王を名乗るように仕向けた。その証拠として、カリオンの軍勢が俺達の町に滞在している。

 

 一つ、ファルムス王国を焚き付け、ジュラの大森林へと侵攻させた。それを迎え撃つべく俺達に協力を申し出て、それを理由に人間へと手出しした。

 

 一つ、ファルムス王国に勝利した俺が魔王を僭称し、カリオンが裏でそれを支援する。

 

 

 

 この様な勝手な真似は、魔王間の協定違反である、という訳だ。

 

 クレイマンの言い分は時系列を完全に無視したイチャモンなのだが、それを証明するのは難しい。思った以上に理論武装されていた。

 

 しかも、こうした一連の動きが魔王間でのジュラの大森林への相互不可侵条約撤回と同時であり、これは言い逃れできぬとほざいている。

 

 こちらとしてはそんな事情は知ったことではないのだが、更にクレイマンは言い募る。

 

「とこのように、私は証言を得たのです。ですが、それを知らせてくれた私の配下ミュウランは、そこのリムルという痴れ者によって殺されました。そこで私は復讐を決意したのですよ」

 

 まさに名演とでも言うべきクレイマンの熱演に、俺までほろりと―なるわけがない。ミュウランは生きてるし。

 

「そこのリムルは、カリオンと共謀して私を殺そうとしていました。ミュウランが最後の力で、私に「魔法通話」で知らせてくれたのです」

 

 そう言って、クレイマンは感極まった様な仕草をする。ハンサムなので絵にはなるが、見ていて腹の立つ演技だった。

 

 それにしても、俺がクレイマンを殺し、魔王の座を奪おうとしていた、か。

 

 それを企画したのがカリオンだなんて、そんな話をよくぞ思いつくものだ。カリオンは武人という感じだったから、本人を知るものからすれば失笑ものの詭弁だろうに……

 

 その後もクレイマンの話は続いた。

 

 なんだかんだと言っているが要するに、カリオンが裏切った。それに激怒したミリムが獣王国ユーラザニアを滅ぼし、カリオンは死亡したと語っている。

 

 カリオンが死亡? 行方不明ではないのか? やはり不自然だが、今はクレイマンの話をきこう。

 

 ミリムの行動はクレイマンを思ってのことだったが、証拠もないのにそれは不味いとクレイマンが窘めたのだという。それ以降ミリムはクレイマンを慕い、頼りにしてくれるようになったとかなんとか……

 

 気の所為でなければテクトが不機嫌になっている気がする。

 

 身体が仮初のものでないままに人間の形を取れるようになったことで感情を隠すのが下手になった気がするが、これもテクトの一面なのだろう。

 

 感情が漏れているのに気付いたのかゆっくりとテクトの雰囲気が戻っていく。

 

 気持ちはわかるから何も言わないが、修羅場は勘弁してほしいものである。

 

 意識をクレイマンの話に戻すと、俺とカリオンが繋がっていたという証拠を確保する為に、部下を殺されたクレイマンが出兵した、そういう話だった。

 

 ついでに、自分を殺して魔王を名乗ろうとした俺が気に食わないらしく、この宴での処分まで提案する始末。

 

 ここまで自分に都合の良い筋書きを、よくぞ描けたものだと感心する内容になっていたのである。

 

 本当にクレイマンの話は長かった。

 

 主張を聞いたうえで筋道立てて反論し、無実を証明したうえで正当性を得てから叩き潰そうと思っていたが、大半がクレイマンの忠臣という薬指のミュウランからという証言以外の証拠もない穴だらけの話を聞くのも限界だ。

 

 実際シオンは半分寝ていてテクトがそれがバレないかヒヤヒヤしている。

 

 船を漕いでいるタイミングが相槌の様になっているのが俺達の緊張感を削いでいた。

 

 いざとなれば信頼に足る戦力なのだが、本当に残念な秘書である。

 

「以上で、私の話は終わりです。これで皆様にも御理解頂けたと存じますが、そこのリムルなる卑小な魔人は、魔王を僭称する愚か者。粛清するのが宜しいかと」

 

 そう言ってクレイマンは偉そうに説明を締めくくった。

 

 発議者が説明を終えるまでは全員黙って聞くのがルールらしいが、魔王達も気が長いものである。寝ているものもいるようだが、邪魔しなければいいらしい。

 

 本来なら、ここで初めて魔王達が自由に意見を言えるようになるらしいが、今回は来客として当事者の俺がいる。

 

 司会を任されているのかレインというメイドが俺に視線を向けてきた。

 

「それでは次に、来客よりの説明となります」

 

 俺に対する侮辱があったことでシオンも覚醒したし、俺のターンだ。

 

 今まで我慢していたが、道化の相手も終わりである。

 

「クレイマンだっけ? お前、嘘つきだな」

 

「何ぃ?」

 

「ぶっちゃけ、俺は魔王なんざどうでもいいんだよ。カリオンさんが俺を唆したってのも出鱈目だし、ファルムス王国は勝手に欲をかいて攻めてきただけだしね。この二つには、何の関連性もないんだ」

 

 俺の言葉にクレイマンはイライラしたようにこちらを睨んだ。

 

「ハンッ! そんな言い訳だけで、誰が信じるというのだ。こちらは手下を殺されているのだぞ?」

 

「ミュウランだろ? 彼女は今も生きているよ」

 

「ハッ! 何を言うかと思えば」

 

「まぁ聞けよ。お前の言い分はさ、ほとんどが証言とお前の推測でしかない。格下の者が相手ならそれでいい通せたのかもしれないが、俺には通用しないぞ。お前の言う証言をしたっていうミュウランは、俺の保護下にある。だから手出しは許さんし、お前の証言の信憑性など無きに等しい」

 

「フフッ、そこまで卑劣な真似をするか。ミュウランの死体に細工し、悪霊でも取り憑かせたか?」

 

 クレイマンはあくまでも認める気はないのかとっさに俺の言い分を潰してきた。

 

 確かに魔法を使えば証言の偽装はできるため俺の発言を貶めるには十分だ。

 

 機転は見事だが、その言葉がそのまま自分の言葉の信ぴょう性を薄れさせるということには気付いていないらしい。

 

「まあ、お前が何を言っても信じないとは思っていたさ。だから直接ぶちのめそうと思っていたわけだが、少し気が変わった。この宴が始まるまでに、俺の仲間が証拠を集めてくれたんでね」

 

 俺がそう言って見下す様な笑みを浮かべて見せると、クレイマンは激昂した。思ったより単純な奴だ。

 

「何がいいたいのです? それ程死にたいのならそう言えば」

 

「だから慌てるなよ、クレイマン。証拠があるって言っただろ?」

 

 俺はクレイマンの言葉を遮り、懐から幾つかの水晶球を取り出し、円卓の中央へと送るとその効果を発動させる。

 

 それらは映像を記録する水晶球であり、先程終結した戦場での出来事や、ゲルミュッドの視点での映像まであった。

 

 明らかに身体を操られた様子で許しを請いながら暴風大妖渦(カリュブディス)のなり損ないへと姿を変質させるクレイマンの配下や、ゲルドやフォビオの前でクレイマンと中庸道化連の繋がりを示す会話をする道化達。

 

 道化達の会話で出てきた「あの方」という呼び名から察するに、俺達とヒナタを戦わせるよう暗躍していた何者かはクレイマンをも操っていたらしい。

 

「これが証拠ってもんだよ、クレイマン」

 

 証拠となる映像の確認を終え、勝ち誇った笑みを浮かべてやると、クレイマンは怒り始めた。

 

「ば、馬鹿なっ! こんなものは出鱈目だ! 魔法で作った偽の映像をハッタリに使うなど、程度の低い真似をするなよスライム‼」

 

「ハッタリじゃねーよ。お前の軍は潰したぞ。次はお前の番なんだよ」

 

「み、皆様、騙されては駄目ですよ! このリムルというスライムは、ハッタリを得意としてるのです。ヴェルドラの封印を解いてファルムス軍を滅ぼしておきながら、それを自分の力として誇示しているだけの小者なのですよ! こんな奴に、栄光ある魔王を騙らせるなど言語道断でありましょう!」

 

 必死に熱弁するクレイマンだが、こんなときにも他力本願とは、こいつの方こそ真性の小者だろう。

 

「おい、クレイマンよ。貴様はさっき、そこのリムルがファルムス王国を焚き付けたと言っておっただろう? ヴェルドラの復活が事実として、何故そんな回りくどい真似をする必要があるのだ?」

 

「そ、それはですね……」

 

 思わぬところから質問が来た。

 

 ダグリュールが重々しく問いただすのに、クレイマンは一瞬悩む素振りを見せたが、覚悟を決めたのか口を開いた。

 

「いいでしょう。では、説明しようではありませんか」

 

 そしてクレイマンは、身振り手振りを交えて大仰に、その理由とやらを説明し始めた。

 

人の魂を集めることで、真なる魔王へと覚醒する

 

 他の魔王に抜け駆けされたくなかったのか秘匿したい情報だったようだが、ダグリュールに問われたことで、納得させるには開示するしかないと説明に踏み切ったのだろう。

 

「この物を知らぬ下等なスライムは、幸運にも魔王の種を得たのでしょう。それで調子に乗って、人間の世界でその真実を調べたのだと思われます。そして自分勝手にも人間達と戦争まで引き起こし、封印されていたヴェルドラを利用して大虐殺を行った。この様な者を野放しにしては、我等の魔王としての格も落ちるというもの。粛清せねばならぬと考えますが、如何に⁉」

 

「だからよ、証拠を出せよ。出せないだろ? お前のはな、だったらいいなっていう願望なんだよ。そんなんじゃあ、誰も納得しないって言ってるだろ?」

 

 憎々しげにクレイマンが俺を睨んでくるが、そんな事は関係ない。

 

 俺はクレイマンの詭弁に付き合うのは飽きたのだ。

 

「クッ……舐めるなよ、邪竜の威を借るスライムが! 貴様如きが魔王になれる訳がないのだ‼」

 

「スライムがどうとか関係ないし、ヴェルドラは友達だし。お前のクソつまんねー話を聞きに来てるんじゃねーんだよ。そろそろいいだろう? 認めろよ、お前の指示で暴風大妖渦を復活させた証拠は、そこに映っているフォビオって魔人が証言してくれるぜ? あの道化達から提案された、ってな。そして今、お前の配下が暴風大妖渦へと変身して暴走した。これが、明確な証拠ってもんだ。ハッタリと思うならそれでもいいさ。そう思ったまま、死ね」

 

 俺は隣の空席の椅子を蹴り上げて立ち、クレイマンに凄む。

 

 そして何気ない動作で目の前の円卓の一部に触れると、一瞬にして大きな円卓が消え去った。

 

 蹴り飛ばされた椅子がクレイマンの後方の壁に激突し大きな音を立てる。

 

 魔王達は平然としたものだったが、クレイマンは動揺していた。

 

「皆さん、こんな奴の暴挙を赦してもいいのか⁉こいつは魔王を舐めている。全員で制裁するべきではないですか⁉」

 

 全員で、ときたか。

 

 思った通り、真性の小者だったようだ。

 

 俺はゆっくりと椅子に囲まれた円形の空白の中心部へと進む。

 

「確かにな。さっきも言ったけど、俺は魔王なんざどうだっていいんだ。俺は俺が楽しく過ごせる国を作りたいだけでね。それには人間の協力が必要不可欠だし、だから人間を守ると決めた。それを邪魔する者は、人も魔王も聖教会も、全て等しく俺の敵だ。クレイマン、お前のようにな」

 

 そしてクレイマンよりも熱心に、魔王達の前で理想を語る。

 

「何を」

 

「ところで、ギィ。先程魔王クレイマンは暴挙と言っていたが、魔王達の宴(ワルプルギス)では、相手に精神支配を掛けながらの応対をするのはありなのか?」

 

 一瞬理解が遅れた。

 

 俺の言葉に反論しようとしたクレイマンを遮ったのはテクトだった。

 

 何やってんのぉぉぉ⁉

 

 テクトの今の立場は自称魔王の従者の一人。この場での発言権はないに等しいにもかかわらず、タメ口。しかも、明らかにこの場でも別格のギィに対してである。

 

 俺以外の魔王だけでなく、従者も全員が驚愕をあらわにしており―いや、シオンは違った。ドヤ顔している。ところどころ居眠りするだけあって肝が太い。―それがどれだけ異様な光景かが察せられた。

 

「そうか、そういえばお前には、そういう類のものは効かないんだったな。お前の質問に答えるなら、答えは否だ。この場では全員に公平なように、自分の言葉でのみ、相手に訴えかける事を是としている」

 

 一方でタメ口を叩かれたギィは面白そうに答える。

 

 まさかコイツ等知り合いだったのだろうか? 

 

 いや、だとしてもこの場で一番ヤバそうな奴にタメ口を叩くのはどうなんだ。

 

「ギィよ、この様な小者にあの様な口の利き方を許すと言うのか⁉」

 

「俺が誰にどういうふうに話させようがお前には関係ないだろう?」

 

「何を……あの様なものに舐められては魔王としての威厳が」

 

「喚くなよ。クレイマン。俺達が気に食わないって言うなら、これは俺達とお前の問題だろ?」

 

 テクトが威圧を全開にしながら俺の横まで歩いてくる。

 

 この日のために誂えた軍靴がコツコツと音を響かせ、より強くその存在を演出した。

 

 今までろくに妖気を感じなかったテクトの豹変ぶりに魔王達が瞠目していると、ギィが口の端を歪めたまま話し始めた。

 

「その通りだな、クレイマン。お前も魔王なら、お前自身の力でもって、そいつ等を倒してみせよ。そして、リムルだったか。魔王を名乗るつもりはあるのか?」

 

「ああ、既にジュラの大森林の盟主を引き受けているし、人からすれば魔王だからな」

 

 ギィの問いかけにはなんとかどもらず答えられた。

 

 智慧之王(ラファエル)さんも動揺しているし、こういう事をするなら事前に伝えてほしいものである。

 

「ならば良し。丁度ここには見届け人が揃っている。オレ達の前でクレイマンに勝てたなら、魔王を名乗ることを許そう」

 

 ちょっと予想外のこともあったが、これでクレイマンに勝つだけで、全てに片がつく。

 

 望んだ通りの展開となったのだ。

 

 

 

「クックック、やれやれです。策を弄して、自分の手を汚すことを嫌ったばかりに、余計に面倒なことになってしまった。本当に失敗でした」

 

 テクトの言動に動揺していたクレイマンだったが、急に冷静さを取り戻したように払いながら告げる。

 

 なにか吹っ切れたのか? 

 

 訝しむ俺をクレイマンは薄く酷薄な笑みを浮かべて見ると、静かに口を開いた。

 

「出番ですよ、ミリム」

 

 その一言に場が緊迫する。

 

 クレイマンが戦闘による決着となって急に冷静になったのは、ミリムを操っているからだったのだ。

 

「よく言うよ、お前。それだけ言っておいいて、結局は他人頼りか? しかも、従わせる為に殴ったりしたミリムまで巻き込むとはね」

 

 そんなふうに言ってクレイマンを挑発してみたが、流石にクレイマンは、これに乗るほど愚かではなかった。

 

「下らんな。勿論だが、私も戦うさ。ギィよ、文句はあるまいな?」

 

「構わないさクレイマン。ミリムが自分の意思で君を手伝うというのなら、オレが止めることはしないとも」

 

 非常に不味い。

 

 クレイマンはともかく、ミリムはヤバい。

 

 ギィもあっさりと許可を出したし、ミリムとの戦いは避けられそうもないな。

 

 テクトがいるとはいえ、ミリムが相手では、今のオレでも分が悪い。

 

 だが、ミリムを助けたいという気持ちは俺もテクトも一緒のはずだ。

 

 二人がかりならなんとか助けられる。

 

 いや、助けるのだ! 

 

「まあいいさ。俺としてはミリムを助けるつもりだったし、力ずくでもお前の洗脳を解くとしよう」

 

「ほざくなよ! お前は絶望して死ぬんだ!」

 

「死ぬのはお前さ、クレイマン。どうせお前相手じゃ、俺の部下ぐらいがちょうどいい相手になるだろう。俺が出たんじゃ、弱いもの苛めになるからな」

 

 俺の言葉にクレイマンが顔を引き攣らせる。

 

 怒り故か、どす黒い妖気を漂わせ始めた直後、俺の目の前からクレイマンが消えた。

 

神糸戦槍(グングニル)

 

 そんな声が聞こえたのはすぐ隣から。

 

 見れば、テクトが据わった目で一点を見つめており、その先にはクレイマンが腹に大穴を開けて壁に磔にされていた。

 

 クレイマンの腹の穴からは血が流れていたが、吹き出すわけではなくにじみ滴る様子だった。

 

 よくよく観察してみれば透明な束ねられた糸がクレイマンの身体を貫いており、滴っていたのは糸とクレイマンの断面から溢れたものだった。

 

「思っていたより、脆いな。俺でも弱い者苛めになりそうだ」

 

 そう言うとテクトが腕を一振りし、それに応じて不可視の糸がクレイマンを床へと叩きつけた。

 

 クレイマンは腹から血を吹き出させていたが、しばらくするとそれも収まり、立ち上がる。

 

 高級そうなスーツは見るも無惨なほどに大穴が開いていたが、そこから見える身体には傷が残っていないことから、「超速再生」を持っているらしく、腐っても魔王ということだろう。

 

「クッ、クソ……殺してやる!」

 

「お前の相手など、俺には役不足も甚だしい……シオン」

 

 いきなりの攻撃に激昂するクレイマンだったが、テクトは冷淡に返し、静かにシオンを呼ぶと、クレイマンを任せた。

 

 一応俺の部下という扱いではあるが、やりようによっては俺より強いテクトだと役不足の意味も正しいと言える。

 

 というか、冷静さを奪ってその隙に攻撃させるつもりだったんだが、必要ないのね……

 

 今もシオンがクレイマンをボコボコに殴りつけ、再び地に伏せさせている。

 

 元々血の気が多いシオンが飛び出すかと思えば先に動いたのがテクトとは、やはりずいぶんと切れているようだ。

 

 テクトが俺の前で切れていることなど今回の件以前ではなかったので、元々気が長い方なのだろうが、その分怒らせると大変なことになるらしい。

 

 普段怒らない奴ほどいざ怒ったときが怖いというのは真理だな。

 

「がッ……クソ! 九頭獣(ナインヘッド)!」

 

 クレイマンの声に奴が入場のときに抱えていた狐が巨大化し、シオンとの間へ割り込む。

 

 シオンは不意打ちを食らいそうになったが、テクトが糸で退避させていた。

 

 あれが母指の九頭獣だったのか……

 

 更にクレイマンは影から人形を出現させた。

 

 クレイマンと二体の従者にシオンとテクトが向かい合い、俺の前にはミリム。

 

 って、ミリムの参戦でこっちが数で負けてるじゃねーか⁉

 

 ミリムは俺一人では厳しい相手だし、正直テクトにもこっちに来てほしい。

 

 が、シオンに三対一を強いるわけにはいかないのでせめてベレッタに応援をと考えラミリスの方を見ると、既に空間が隔絶され、入ってこれないようになっていた。

 

「ミリム! そいつを殺せ!」

 

 クレイマンの声に従い、ミリムが俺に迫る。

 

 間違いなく必殺となる一撃を、「思考加速」による百万倍の体感時間と「智慧之王」の性能をフル活用してギリギリで躱せた。

 

 「万能感知」で周囲を探ると、テクトはこちらを気にしつつも、シオンを完全に一人には出来ないようで援護は望めそうにない。

 

 シオンをこちらによこすのは論外だ。

 

 その上、九頭獣の二本の尾がそれぞれ獣となり、五対二になる。

 

 ここまで来ると、どうしようもない。

 

 俺がミリムにかけられた洗脳を「解析鑑定」しきるまで耐えるしかなさそうだ。

 

 こうして不利極まりない戦いが幕を開けたのである。

 


 

 次回「ミリムの計略(クライマックス)




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紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

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