転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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 アニメ三期も十二話目の折り返し、新しいOPとEDも始まりました。

 新EDのクレーンゲームで笑顔のシュナが可愛いです(小並感)


48話: ミリムの計略(クライマックス) Side-T

 戦況は優位に進んでいる。

 

 リムルは絶賛ミリムとの生死のかかった戦闘(遊び)の最中だが、全体として見れば、割と余裕があった。

 

 九頭獣(ナインヘッド)と尾から喚ばれた二体の獣は糸による拘束でほぼ無力化し、助けを求める九頭獣にかけられた呪法の解析を待つばかり。

 

 クレイマンと影出てきた人形―ビオーラというらしい―の攻撃はこちらも攻め手には欠けるがあちらの攻撃もシオンに対する決定打にならず、九頭獣の方が解決すればすぐにでもビオーラは対処できる。

 

 シオンならクレイマンとの一騎打ちで負けることはないし、時間の問題だ。

 

 ミリムも楽しみつつもリムルを殺す程には至らなそうなので、手加減がうまくなったものである。

 

 まぁ、相手にしているリムルは必死だろうが。

 

 そうこうしていると、ギィが結界に穴を開けそこからベレッタが入ってくる。

 

 リムルの指示を受け、こちらへと走ってきた。

 

「テクト様、お待たせしました」

 

「ベレッタ、あの魔人形(ゴーレム)の相手を頼む。俺は九頭獣をなんとかしたら、リムルの方に行くから」

 

「御意」

 

 言葉少なにベレッタが行動を開始する。

 

 そのタイミングで九頭獣にかけられた呪法の解析も終了した。

 

《告。支配の呪法(デモンドミネイト)です。解呪しますか?》

 

 無論解呪一択だ。

 

 あっさりと解呪が終わると、二体の獣が消えて尾へと帰り、九頭獣が元の子狐へと戻ると気絶した。

 

 子狐を抱え、結界の端へと歩くと、結界を叩く。

 

 その正面にはギィが座っていた。

 

「ギィ、この子預かっといてくれ」

 

「はぁ? なんで俺がそんなことしなきゃいけねーんだ?」

 

 突然の子守の要請にギィが憮然とした様子だが、俺が遠慮しないといけない理由はない。

 

「だって席についている連中でお前とラミリス以外の知り合いないし、この結界お前のだろ? 干渉出来るのお前だけだし、せっかく無事なのに巻き添え食らったら可哀想じゃん? というわけで、後は任せた」

 

「あ? おい! ……ったく」

 

 俺はまくしたてると、「狡知之神(ロキ)」をフル活用して結界に穴を開け、そこから子狐を放る。自身の結界が目の前で一部とはいえ消されたことに驚いているギィの膝に子狐を乗せ、さっさと戻る。

 

 俺達を相手に同じ結界は二度も通じないのである。

 

 あまり長くいるとミリムが拗ねるしな。

 

 

 

「ねぇ、ギィ。アンタそんなに手を抜いた結界張ってたの?」

 

「別に手を抜いてたわけじゃねぇがな……正直予想外だ」

 

 結界に穴が空いた瞬間を見ていたのはギィの他にはレインとミザリーそしてベレッタを参戦させるために抗議に来てそのままだったラミリスだった。

 

 ラミリスの問にギィは肩を竦めると、駆けていくテクトの背を面白そうに見つめていた。

 

 

 

神糸縛鎖(グレイプニル)!」

 

 神識糸で編んだ鎖がミリムの動き出しを捕らえ、拘束する。

 

 拳をくらいそうになっていたリムルはその隙に離脱し、隣へとやってきた。

 

「た、助かったよ、テクト」

 

「攻めっ気を出すのはよくなさそうだね。しかし、さすがミリム。もうちぎられた」

 

 短い会話の間にミリムの身体を縛っていた糸が引きちぎられ、破片が光を反射してきらめく。

 

 もっと柔軟で、強靭な糸を編むことができれば拘束時間を伸ばせたかもしれないが、正気のミリムを傷つきかねない強度で縛るのに少し気が引けたのである。

 

 さてどうするか。

 

「マズイぞ、テクト。ミリムに呪法を見つけられない。あっちが先に片付くのを待ったほうがいいかもな」

 

「シオンがクレイマンに負けることはないだろうし、あんまり時間はかからないと思うよ。それまで精々必死にミリムの遊び相手になろうじゃないか」

 

 どうやらリムルもミリムが元々正気で、今は俺達と遊ぶつもりなだけだと気付いたらしい。

 

 正直遊び相手も遠慮したいが、ミリムの目的も何の進展もしてないだろうし、やむを得ないだろう。

 

 こちらの話が終わったと見たのか、ミリムが一気に距離を詰めてくる。

 

 「思考加速」による長い一瞬の中で拳を横から叩いて受け流し、その隙にリムルが「暴食之王(ベルゼビュート)」による魔素を奪い去っていく。

 

 って熱っ!

 

 見ると手を防御する妖気(オーラ)が足りなかったのか手のひらが拳とこすれて赤く熱を持っており、見て驚いていると、ミリムが後ろへ下がった。

 

 ミリムは俺が生身だと気付いていなかったようで、俺の手を見てやや狼狽している。

 

 すぐに治るから気にしなくていいし、バレる可能性が上がるから表情を保つのに集中してほしい。

 

 俺がクレイマンへと視線を向けるとミリムも察したのか無表情を作り、わずかに前に出ていたリムルへと殴りかかった。

 

 回避は現実的ではないとこれまでの攻防でわかっているのか、リムルが受け流す準備をしていると、リムルの目の前の空間が歪み、拳が思いっきり身体を殴りつける音が響いた。

 

「グオッ⁉ いきなり何をする⁉ 酷いではないか!」

 

 音の発生源はヴェルドラの後頭部。

 

 突如としてリムルの前に現れたヴェルドラがミリムの拳を受け止めたのだった。

 

 けっこうな音が鳴ったが、大したダメージはなさそうだ。

 

 さすが竜種である。

 

 ヴェルドラがここに現れたのは、リムルの「暴風之王(ヴェルドラ)」の権能の一つ「暴風竜召喚」の召喚経路を逆走してきたらしい。

 

 つまり、下手を打つと、ヴェルザードが逆走してくる可能性があるのか……俺が召喚する時以外経路を塞げないか試してみよう。

 

 で、逆走までしてきた理由だが……どうにも原因はリムルのイタズラらしい。マイペースに漫画のページをめくる音で幾度となく雰囲気をぶち壊されたことに対する意趣返しに、ある漫画の最終巻のカバーを被せた別の漫画を忍ばせていたらしい。

 

 丁度読んでいた漫画の最終巻がそのシリーズだったらしく、最終巻を求めてやってきた、と。

 

 うーん、これは……まぁ、リムルが悪いな。

 

 今ヴェルドラが持っている最終巻のカバーのシリーズは俺も大ファンだ。

 

 「転生したらスライムだった件」を含め、幾つかはリムルの世界に存在しないが、有名どころは概ね共通しているのだ。

 

 あんな良いところでこんなイタズラをされて怒るなと言うのが無理な話なのである。

 

「よし、続きを渡す前に一つ頼みがある」

 

「む? なんだ?」

 

「そこのミリムと、少しの間遊んでやってくれ。ただし、絶対に怪我させないようにな」

 

「ミリム? おお、我が兄の一粒種か。会ったのは初めてだが、まだまだ子供だな。良かろう、我に任せよ!」

 

 どうやらリムルはミリムをヴェルドラへ押し付けることにしたらしい。

 

 まぁ、俺達よりも遠慮なく遊べるだろうし、ここは任せよう。

 

 ミリムも楽しそうだし。

 

 そうして軽く手を振り、シオンの様子を見に戻るのだった。

 

 

 

 ベレッタの方は既に終わっていた。

 

 ビオーラは解体され、特質級(ユニーク)の武具がまるで見本の様に並べられ、ベレッタがそれを得意げに磨いていた。

 

 ベレッタには傷一つなく、圧勝だったようだ。

 

 特質級の武器にも目立った傷はなさそうだ。破壊すればもっと楽だったろうにこうしている理由は、回収した武具をリムルへと献上し、ラミリスが魔国連邦に移住する許可を得る一助になればと考えてのことらしい。

 

 なんでも、隔離空間に入る際、ギィに主を決めるように迫られ、ラミリスに会えた恩を返すためにリムルを助けた後は、ラミリスのみに仕えると宣言したそうだ。

 

 その宣言自体に否はない。

 

 ギィからすれば、古い友人であるラミリスのそばに、彼女に一番の臣をいていない者がいるのは不安なのだろう。

 

 で、話を戻すと、抜け道としてラミリス共々魔国連邦に移り住み、ラミリスの望みを叶えるという形でリムルを助けるという方法を取りたいらしい。

 

 詭弁もいいところである。

 

 というか、マウザーは大丈夫だろうか? 

 

 アイツは初手からラミリスよりも俺の方に仕えたいとか言っていたし、これが終わったら一度話し合う必要がありそうだ。

 

 リムルは回答を保留し、ベレッタも引いたので、意識をシオンへと移すと、決着は間近だった。

 

 魔素量こそ拮抗しているが、そもそもが策を弄して優位な状況を作る事を常とするクレイマンと、前線で武器を振るう事に特化しているシオンではタイマンでシオンが有利なのだ。

 

 クレイマンも俺が九頭獣を預けているあたりで「踊る人形達(マリオネットダンス)」という魔人たちの魂を封じた物質体を再生可能な上位魔人クラスの力を持つ五体の人形を放っていた。

 

 しかし、精神面での防御術式がなかった人形達はシオンの「剛力丸・改」に備わった魂喰い(ソウルイーター)の能力によって砕かれていた。

 

 大太刀を渡す際に手加減が必要になったときのことを考え、念入りに効果の説明していたことが功を奏したのだろう。

 

 たどたどしいものであったが、人形達が復活しない事を訝しんだクレイマンへの説明がうまくいき、俺がミリムの動きを止める頃には、クレイマンが剣の能力のおかげで互角に戦えていたのだと勘違いを始めていた。

 

 クレイマンは「操魔王支配(デモンマリオネット)」という禍々しい黒糸状の光を放ち、シオンを包みこんだ。

 

 「魔王すら支配する究極の呪法」と豪語したあたり、ミリムへと仕掛けた呪法も同じものだったのだろう。

 

 何故か回避しようとしなかったシオンを絡め取ったことでクレイマンは得意げにしていたが、「完全記憶」の副次結果により精神支配系の効果が無効化されたシオンは暫く戸惑っていた。

 

 しかし、いくら待っても自身に何の効果もない事を察して妖気を放って呪法を吹き飛ばすと、様々な耐性を持つガビルでさえ支配されそうな呪法を「下らない小手先の技」と断じた。

 

 魔王に値しないと言い切ったシオンを前に吹っ切れたクレイマンは穴の空いていたスーツを脱ぎ去り、上半身裸になると背中から二対の腕を生やした。

 

 俺達がヴェルドラにミリムを任せた頃、笑みを象る道化の仮面を被ったクレイマンとシオンが互いに「喜狂の道化(クレイジーピエロ)」、「魔王リムルの近衛秘書」と名乗り、激突していた。

 

 本気を出したクレイマンは確かに強かったが、やはりシオンには敵わず、新たに生やした腕をへし折られ、仮面を砕かれつつ地に伏せた。

 

 そしてこのタイミングでベレッタとの話も終わったのである。

 

「リムル様、トドメを刺しても宜しいですか?」

 

「く、クソッ‼ ミリム、ミリムは何をしている⁉ そんなヤツ、さっさと倒して」

 

 シオンがクレイマンを睥睨しつつ、リムルへと確認を取る。

 

 このままでは長くない事を理解したクレイマンは慌てたように周囲に目をやり、絶句した。

 

「波動拳! 波動拳! 波動拳! 波動拳!」

 

 そこには俺達の見知った動きで魔素の塊を射出するヴェルドラと、それを楽しそうに弾くミリムの姿があった。

 

「な、何者だ……? な、なんだ? な、なんなのだ、あの桁外れの力はッ⁉」

 

「人の姿をしているけど、ヴェルドラだよ。言っただろ、俺と友達だって」

 

「鉄山靠! 昇龍拳! からの〜、竜巻旋風脚! かー、めー、はー、めー、波ァァァァ!」

 

 クレイマンはリムルの言葉を否定したいのだろうが、ヴェルドラの放つ妖気と派手な攻撃に認めざるを得ない様子だ。

 

 しかし、ミリムが楽しそうにしているのが実に不安だ。まぁ、肝心要のクレイマンはヴェルドラの存在に驚愕して気付いていないし、問題はなさそうだが。

 

「ふ、フレイ! フレイ、何をしているのです⁉ 貴女とは運命共同体なのだから、さっさと私に手を貸しなさい!」

 

「あら、悪いわねクレイマン。この結界は、ギィが認めないよ通れないのよ。本当に残念だわ」

 

 必死にすがるクレイマンに対するフレイの返答は心のこもっていない返事であり、ギィの戦闘開始前の言葉と合わせて考えれば、味方をするつもりはないという宣言に他ならなかった。

 

 クレイマンは忌々しそうに舌打ちすると、ミリムへと振り返った。

 

 その目は理性を失ったように痙攣し、完全に狂気を宿している。何を思いついたのか、狂気に染まった笑みを浮かべていた。

 

「クハ、クハハハハ! ミリム、ミリムよ! 私の命令に従い「狂化暴走(スタンピード)」しなさい‼この場にいる全員を殺し尽くすのです‼」

 

 とんでもない事を言い出すものである。

 

 ミリムが全開になってもヴェルドラなら問題なく対応出来ると思うが、こっちは余波だけで死ねる。

 

 これにも従うなら全力で撤退するところだが、本格的に動く前にミリムが口を開いた。

 

「なんでそんな事をする必要があるのだ? この場にはテクトがいるのだぞ?」

 

 とニンマリと笑みを浮かべて宣言する。

 

 もう演技はいいらしい。

 

 しかし、俺を名指しかぁ……せめてリムルにも言及してほしかった。

 

 おかげで視界の端で子守を押し付けられて憮然としていたギィがめっちゃいい笑顔だもの。

 

 決めた。修羅場の会場は白氷宮にしよう。

 

 当分猛吹雪で野ざらしになりやがれ。

 

「ミリム⁉ ちょ、お前、操られていたんじゃ……?」

 

「わ──っはっはっは! 見事に騙されてくれたようだな、リムルよ! ワタシがクレイマンなんかに操られる訳がないであろう?」

 

 そうしてギィの心労を増やす事を決めているとミリムは踏ん反り返っていた。

 

 ……どうやらリムルは気付いていなかったらしい。

 

 どうりで余裕がなかったわけである。

 

 リムルも慌てていたのだろう。俺が気付いた時点で伝えておけばもっと余裕があったかもしれないな。

 

 とそんなふうに俺がコミュニケーションの重要性を再認識している内に話が進んでいく。

 

「お前、クレイマンに支配されていなかったのか?」

 

「そ、そうです。貴女は「あの方」より授かった支配の宝珠で、完璧に私の支配下にあったはず……私の命令で、カリオンを殺したではないですか⁉」

 

 あ、クレイマンが動揺のあまり自白してしまった。

 

 これでこっちの正当性は揺るがないものになっただろう。

 

 何の憂いもなくクレイマンを殺せるというものである。

 

「そう、それだ! ワタシはそれが聞きたかったのだ。答えよ、クレイマン。「あの方」とは、一体誰のことを言っておるのだ?」

 

 ミリムはクレイマンの疑問を完全無視、いっそ清々しい程に暴君だ。

 

 そんな事を考えていると、カリオンが覆面を脱ぎ始めた。

 

「おいおい。誰が死んだって?」

 

 妖気の偽装をなくし、羽をしまうと本来の顔をさらす。

 

 そのことにリムルは動揺を見せていた。

 

 え? これにも気付いていなかったのか? 

 

 どうしよう、魔王への進化の際に頭のネジを何本か落としてしまったのだろうか……早くなんとかしないと……

 

「無事だったんだな、カリオンさん」

 

「よお、リムル。無事、とは言えないがな。それはいいが、俺の部下達が世話になった」

 

「いいって」

 

 カリオンは礼を述べるとクレイマンを見てニヤリと笑う。

 

「な、そんな……では、本当に……? だが、フレイの報告では……そうか、フレイも。貴様も裏切っていたんだなぁ──‼」

 

 ようやくすべてを理解したのかクレイマンは発狂したように声をあげ、フレイを睨みつけた。

 

 しかし、フレイはどこ吹く風だ。

 

「あら? いつからワタシが貴方の味方になったと錯覚していたの?」

 

 正直わかりきっていたところだが、フレイはミリムとグルだったようだ。

 

「ふ、ふざ、ふざけるなよ⁉ き、貴様ら……許さん、断じて許さんぞ‼」

 

「シオン」

 

「お任せを!」

 

 クレイマンが絶叫とともに動こうとしたが、俺の言葉に呼応したシオンが一刀のもとに斬り伏せた。

 

 防御しようとした三対の腕ごと斬り伏せられたクレイマンは言葉もなく倒れ伏した。

 


 

 次回「計略の功罪(フィナーレ)




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

UAが90,000、お気に入りが900件を越えました。ありがとうございます。

次回からは魔王達の宴前と同じ型式に戻ります。

思い付きにお付き合い頂きありがとうございました。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

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