転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

63 / 113
ドレス姿のシュナも可愛いですが、羽目を外し過ぎない様に警告する姿もイイですよね。

私事ですが、最新のシュナの取得はできていませんが、アイマスコラボ直後のシュナが偶然にも取得できました。可愛いですね。


59話:聖魔激突

 ヒナタ出撃からおよそ二週間。

 

 ヒナタ達は魔法で短縮するでも、街道をそれて隠密に徹するでもなく堂々と宿屋を利用しながら魔国連邦へと向かってきていた。

 

 隠密を徹底している別働隊の存在もあり、ヒナタ達の存在を陽動ではないかと疑う中、シオンから別働隊が散開しようとしたため交戦を開始したという報が届く。

 

 展開されていた魔法通話をリムルが遮断すると同時にヒナタも街道を逸れ、事態が動き出した。

 

「さて、戦端は開かれた。ひとまずこの場を治めようか」

 

 テクトの号令にリムル、ベニマル、ソウエイ、アルビス、スフィアが応じ、リムルの「空間支配」によってシオンの近くへと転移する。

 

 それを見送るとテクトも「空間支配」で首都リムルの上空に陣取り、周囲への警戒を開始した。

 

 そして、別働隊と紫克衆(ヨミガエリ)の戦いだが、戦況は紫克衆へと傾いていた。

 

 散開直前に奇襲をかけたものの、実力差の開きがあり紫克衆が押し返される。

 

 だが、不死者(アンデット)でないにも関わらず重傷からも復活する紫克衆に驚き、聖騎士の統率が乱れ、一瞬の逆転が成功する。

 

 とはいえ退魔物のプロフェッショナルである聖騎士は建て直しも早く、紫克衆が追い詰められていく。

 

 紅炎衆(クレナイ)が間に入り、回復と戦線の維持が始まったとき、それは起こり始めた。

 

 突然聖騎士たちが崩れ落ち始めたのだ。

 

 それを確認し、テクトが口を端を吊り上げていた。

 

 紫克衆が使っている武器にはテクトの精製した毒が塗られていた。

 

 その効能は絶大であり、訓練によって様々な耐性を獲得した紫克衆でさえ、僅かな傷で体の自由を奪われる程である。

 

 崩れ落ちた聖騎士は紅炎衆によって回収されていき、戦線から離れた場所で拘束される。

 

 一気に三分の二近くの戦力を喪失した聖騎士だったが、紫克衆にとって格上であることには変わりなく、予定通りの持久戦になるかと思われたが、シオンの命により突撃が敢行され、混戦の様相を呈し始めた。

 

 二、三人の紫克衆と一人の紅炎衆が聖騎士に迫り、応戦する聖騎士が徐々にその数を減らしていく。

 

 そこにたどり着いたリムルに一言告げてシオンも後方に控えていた隊長格と思しき相手へ突撃していき、そこで四人の聖騎士を伴ったヒナタが視界に入る。

 

 そして、テクトも動き出した。

 

 他国の情報部と思しき気配を分身も駆使して確認し、次々に無力化していく。

 

 どちらが勝つにせよ、この戦いの勝敗を伝えさせないために持ちうる権能をフルに活用して自身を認識させずに気絶させていった。

 

 そうして幾人もの不審者を排除していくと、複数人のグループに囲まれた。

 

 明らかに怪しい風体だが、組織だった行動から彼らも教会の関係者かと考えなるべく優しく捕らえようと考えていたテクトだったが、同じ反応が町の四方に存在する事を感知し目を見開く。

 

 それぞれが集まっている地点は前回からは僅かに違う。また、魔法装置を用意しているわけでもない。

 

 だが、等間隔に陣を張り、そこで発動しようとしている魔法はテクトのトラウマを刺激するには充分なものだった。

 

 「聖浄化結界(ホーリーフィールド)」―かつて自身が囚われ為す術もなく敗北するに至った結界。発動すれば町の住民の大半が死亡してしまう魔物の生存を許さぬ神聖魔法の結界を発動させじとテクトは全力で排除を決定した。

 

「全ての「強化分身」と万能感知を同期……「万象補足」を確定……」

 

 テクトは襲ってきた者達を糸で捌きながら準備を進める。

 

5()……10()……15(西)……20()……28(正面)……近似の反応なし。捜索を終了」

 

 テクトの呟きの意味を襲撃者は理解しきれない。

 

 仮に理解できたとしても何の抵抗もできなかったが、テクトが一瞬漏らした「畏怖」の効果に怯んだ隙に絡め取られ、次の瞬間には消滅した。

 

「消え失せろ! 終焉の呪眼(メスティッシュ・ディワッド)!」

 

 「叡智之神(オーディン)」の権能である「神域眼」による魂と肉体を同時に侵す呪いが四方に散っていた者達とテクトに相対していた者達が同時に消滅する。

 

 結界の発動を未然に防げたことでほっと息を吐き、直後に頭を抱えた。

 

「しまった……ここにいた連中ぐらいは生かしておくべきだった……明らかな隠密による敵対行動だし、黒幕が「配下を殺された」とか言って名乗り出ることもないだろうしなぁ」

 

 結果として何の情報も得ることなく、ただ未知の襲撃者を消し飛ばしただけになったテクトは、周囲に他の間諜の類がいないことを確認すると戦場へと戻る。

 

 深い溜め息が何の気配も残らぬ森の中でこだました。

 

 

 

 ヒナタの通信が妨害された後、結界の発動の前兆を感じたが、形になる前に消え失せ、それを訝しみながらも森の中の戦闘の気配に急行する。

 

 そこでは既に戦端が開かれており、教会の戦士の半数以上が行動不能となっていた。

 

 戦士の指揮を取る、置いてきたはずのレナードとギャレドがいることもそうだが、もはや交渉だけでは済まない状況にヒナタはおもわず舌打ちする。

 

 その視線の先にはリムルと四人の魔人。

 

 そのうちの二人の獣人は魔素量と魔国連邦の元魔王カリオンとの関係性から三獣士と推測できる。

 

 人間の間でも伝わる有名な魔人だ。

 

 だが、その二人に並ぶ角が生えた魔人は更に強い。

 

 妖鬼(オニ)―神通力を操る、土地神級の魔物とされ、神として祀る者もいるという特A級の危険度を持つ魔物である。

 

 その考えも低く見積もっていると感じる程の力を感じるため、ヒナタは三獣士を放っておいて自身以外の全員を妖鬼の対応に当てたいところだったが、人数を合わせられているためそれも難しいとわかる。

 

 そして、魔王リムル。

 

 以前相対した時とは比べ物にならない存在感を放っている。

 

 相棒たる白い蜘蛛がいないことから一騎討ちは本気なのだと理解し、謝罪を受け入れてもらうためにも辛勝などではなく圧倒的に勝利することで、苦し紛れの言い訳ではなく自身が本気で謝意があることを示そうと覚悟する。

 

 戦場の観察を続ける内に、ヒナタとリムルの視線が交錯した。

 

 

 

 僅かに見つめ合い、先に口を開いたのはリムルだった。

 

「やってくれたな、ヒナタ。ここは俺達の領土だ、無断で軍事行動を取った時点でお前達に害意ありと判断出来る。先制攻撃を許すほど、俺達は甘くないんだよ」

 

「それが当然でしょうね。私だって、何故レナードが命令違反をしたのかわからないのよ」

 

 リムルの言葉にヒナタは平然と返す。

 

 誤魔化す理由もなく、実際にそうだから仕方ないのだが、何も知らなければ白々しくとぼけていると感じるものだった。

 

 リムルが思い出すのはテクトの考え。

 

 ヒナタに対するメッセージの改竄と黒幕の介入の可能性によってこうして相対することは読めていた。

 

 黒幕をあぶり出すためにもこうして一芝居打っているだけなのだが、こうして戦う事になり、実に不安になっていた。

 

「俺の伝言は受け取ってくれたんだろ?」

 

「ええ、確かに受け取ったわよ」

 

「その答えがこれか?」

 

「ええ、そうね……少し違うけど、それを言っても信じてはくれないでしょう?」

 

「信じてもいい。だがその前に、あの集団を止めて国に戻すのが条件だ」

 

 そう言ってリムルはシオン達の方を指す。

 

 ヒナタもそちらを確認したが、小さく首を横に振った。

 

「もう無理ね。止めに入る前に、決着しそうだもの」

 

 既にシオンは十大聖人二人を含めた集団と戦闘を開始しており、それ以外の聖騎士はほぼ無力化されていた。

 

 シオンは声をかけた程度で止まりそうな様子はなく、ヒナタの言葉も事実だった。

 

 軍を引かせろというリムルの要求にアルノーが激昂し、食って掛かる。

 

 それをベニマルがいなし、僅かな口論の後、二人して離れていく。それに合わせて三組に分かれて移動していき、その場にリムルとヒナタが残された。

 

 ヒナタは僅かな時間を開け、手に持った大剣を投げ捨てる。

 

 これから戦おうというのに獲物を捨てるヒナタに訝しむリムルだったが、その眼の前でヒナタが光に包まれた。そして、輝く鎧衣と捨てた剣とは比べ物にならない力を持つ剣を持って現れる。

 

 その様子にリムルは打刀を妖気で保護し、刀身を「黒炎雷」で包んだ。

 

 そして、お互いに構え、激突する。

 

 それは超速の剣戟。その場にいるほとんどが視認できない速度での剣戟はお互いに掠らせることもなく、隙を伺う戦いが始まったのだ。

 

 長期戦はヒナタに不利。リムルには呼吸の必要もなく、体力は無尽蔵。対するヒナタは完全な精神生命体の域には達しておらず、戦えば戦う程に消耗していくのである。

 

 格上の力を奪う事ができるユニークスキル「簒奪者(コエルモノ)」は《妨害》されて役に立たない。

 

 高速の思考と演算を行うもう一つのユニークスキル「数学者(カワラヌモノ)」は既に最大限稼働させており、幾度となく脳の毛細血管を破裂させている。回復魔法を多用することで平気な顔をしているが、かなりギリギリの状態だった。

 

 それでもリムルにはどことなく余裕があるかのように対応されている。

 

 故に、ヒナタは戦い方を変える。

 

 以前の戦いから身体能力は上昇しているが技量が追いついていない事を見て取り、自身との差を利用してフェイントを多用した老練な技量で持ってリムルを翻弄し始めた。

 

 リムルの体にかすり傷が増えていく。服を切られ、頬をかすめ、微細な切り傷が量産される。

 

 形勢がヒナタへと傾いていくかと思われたが、唐突にリムルの動きが変わった。

 

 まるでヒナタの剣の軌道がわかっているかのように迷いなく対処し、フェイントは正確に無視して切り込んでいく。

 

 ヒナタが瞠目し、膠着した状況からどちらからともなく距離を取り、互いに動けなくなる。

 

 暫くそうして見合っていると、ヒナタが口を開いた。

 

「リムル、提案があるのだけど」

 

「なんだ?」

 

「次の一撃で決着をつけましょう。私は奥義を、全力で仕掛けるわ。それに耐えたら君の勝ち。耐えられなかったら」

 

「俺の負けってか?」

 

「ええ、そうね、ただし、先に言っておくわ。この技はとても危険なのよ。それでも私の提案を受けるかしら?」

 

「いいだろう。その勝負、受けてやる」

 

「フフッ、君ならそう言ってくれると思っていたよ」

 

 ヒナタの提案にリムルが了承する。

 

 予測通り提案を受けたことでヒナタは自然な笑みを浮かべ、それは年齢よりも幼く見えた。

 

「ただし、これで恨みっこなしだ! お前が負けたら潔く、この国に手出しをしないって誓えよ?」

 

「……? 分かった、約束するわ。君が臨むから一騎討ちに応じたまでで、私としても今後のことを話したいと思っていたし」

 

 リムルの言葉を受け、ヒナタは不思議そうに首を傾げた。

 

 ヒナタはすぐに迷いを振り切り頷いたが、それに対するリムルの表情は僅かに歪む。

 

「俺が臨むから一騎討ちに応じた、か……」

 

「そうだとも。伝言は確かに受け取ったよ」

 

 吹き込んだメッセージは話し合いを望むが、納得がいかないなら一騎討ちでの勝負に応じるといった内容だった。

 

 予測通りに悪意ある切り抜きをされていたことで、教会内部に黒幕がいることを察しつつ、周囲を探ると既にリムルとヒナタ以外は決着が着いていた。

 

 双方とも犠牲者はなく、次が最後の交錯。

 

 皆が見守る中、ヒナタはまるで手本を見せるかのように準備を始める。

 

「神に祈りを捧げ給う。我は望み、聖霊の御力を欲する。我が願い聞き届け給え」

 

 霊子崩壊(ディスインテグレーション)を発動し、それを左手へと収束させる。

 

 輝く粒子を振り撒く光球を手に持った剣へと纏わせ、構える。

 

 これこそがヒナタの編み出した魔法と剣技の融合技―超絶聖剣技(オーバーブレイド)崩魔霊子斬(メルトスラッシュ)

 

 絶大な威力ゆえ調整など出来ようもなく、殺す相手にしか使わないとヒナタ自身が決めた技。

 

 輝く剣を構え、最後の問いかけをする。

 

「さあ、覚悟はいいかな?」

 

「来い!」

 

「行くわ―崩魔霊子斬‼」

 

 剣だけでなく全身を光に包み、人の身を超越した速度でヒナタはリムルへと迫る。

 

《告。防御不能。回避不能ッ!!》

 

(マジかよ⁉)

 

《告。究極能力「暴食之王(ベルゼビュート)」を犠牲にして、相殺する策を進言します》

 

(背に腹は代えられないか……)

 

 あらゆる魔なるものを払う光の一閃と化したヒナタがリムルと交錯し、一瞬の間を置いて剣を失ったヒナタと五体満足のリムルが背中合わせのまま同時に構えを解く。

 

 そのままリムルは背中から倒れ、大きく息を吐いた。

 

(上手くいった……助かった)

 

 ヒナタも気が緩んだのか、おかしそうに笑い始める。

 

 ひとしきり笑うと笑顔のまま告げた。

 

「凄いね、君。あの状況で、ワザと受けたね?」

 

 その言葉を受け、リムルは一瞬何を言っているのかわからなくなったが、智慧之王(ラファエル)がだんまりを決め込もうとしている気配を感じ、眉を顰めていると、ヒナタは武装を解除した。

 

「今のに耐えられてしまった以上、私の負けね。どうせこれ以上は戦えないもの」

 

 倒れたままの自身に対し、凛と立ったままのヒナタにわずかに苦笑するとリムルは体を起こす。

 

「そうだな。俺の勝ちってことで」

 

 そこまでリムルが話したところで彼の視界の中で何かがキラリと光る。

 

 それはヒナタが最初に捨てた大剣であり、何やら異様な雰囲気を醸し出していた。

 

 ヒナタも異変に気づき、視線を向ける。

 

 その瞬間、大剣に亀裂が走り、エネルギーが溢れ出した。

 

「しまった! ここまでするのか、七曜ッ⁉」

 

 ヒナタは叫ぶとリムルをかばうように立つ。

 

 直後、爆発と閃光が走り、その場にいたのは、動けぬままのリムルとその横に倒れた血を被ったヒナタ、そして―

 

 胸に大穴を開け、全身に大剣の破片を浴びたテクトが崩れ落ちていった。

 

 

 

「何を!? ちょっと、しっかりしなさい!」

 

 崩れ落ちたテクトにヒナタが駆け寄る。

 

 抱え起こされたテクトの胸の穴からはおびただしく血が流れ、ヒナタの手を緋色に染めていく。

 

 主の一人が致命傷を負い、このまま死亡すれば、魔国連邦の魔物達が暴走する可能性が高い。

 

 蒼白となる教会側の面々に対し、魔国連邦の魔物達はさほど慌てていなかった。

 

 クレイマンでさえ胸に穴を開けられて再生できていた。

 

 クレイマンよりも強者であるテクトが同じような状況になったとてそれが致命傷となるとは思えず、慌てるような事態ではない―そう考えていた。

 

 だが、一向にテクトの再生は始まらない。

 

 血は流れ出続け、草地を紅く染めていく。

 

 疑問に思ったリムルが確認したことで状況が把握された。

 

《告。呼称名:テクトの「無限再生」が機能していません。何らかの影響―おそらく先程の爆発の影響によりスキルが妨害されていると推測されます。現在は「代償補完」にて生命が維持されています》

 

「何だと!?」

 

 リムルが目を見開き、緩慢ながらも急いで起き上がりテクトへと駆け寄る。

 

 そんなリムルの様子にのっぴきならない状況であると理解した魔物達が駆け寄ろうとした時、結界がそれを阻んだ。

 

 誰も状況の変化に追いつけぬ中、それでもまずはテクトの回復をとリムルが回復薬を取り出すも、テクトへと振りかける前に熱線によって瓶が砕かれ中身が蒸発する。

 

 回復薬の蒸発で生じた爆発にリムルの手が弾けた。

 

 リムルが熱線の放たれた元へと視線を向けると二人の白装束が浮かんでいた。

 

『ふむ、少々予定は狂ったが、これはこれで都合がいいか』

 

「七曜っ!」

 

 ヒナタの忌々しそうな声に眼の前の二人がアダルマンの話していた七曜の老師であると知り、突然現れた目的がわからぬこととその言動に混乱しつつも、明らかに敵意の乗ったセリフだったことでリムルを始めとした魔物たちの視線が厳しくなる。

 

「お前らが七曜の老師か。悪いがお前たちにかまっている暇はないんだ。俺達の支配領域で軍事行動を起こした件については後で我が国の法に照らし合わせて裁く。とにかく、今は俺の相棒の回復が先だ。暫く大人しくしておけ」

 

 リムルは厳しい視線を七曜に向けつつも興味がないかのように視線を外し、ヒナタへと視線を向ける。

 

 視線を受けたヒナタが魔法を発動しようとしたが、光の輪によってそれが阻まれた。

 

「何を⁉」

 

『我々は独断専行を行ったヒナタを捕らえにまいったのです』

 

『神ルミナスの意思を無視した愚か者には神罰を与えねばなりません』

 

『逃亡の可能性があるのに魔法の行使など許すわけには生きませんな』

 

 邪魔をされたヒナタが目を見開くが、七曜は飄々と嘯く。

 

 再び回復薬を取り出そうとしたが、さらなる結界で分断され、リムルが顔を歪めていると、ディアブロから「思念伝達」が届く。

 

 レイヒムがディアブロが動く前に襲撃され、その犯人は七曜であることが確定的だという。

 

 各国の報道陣を証人として利用できそうだという言葉にリムルがテクトが重傷だということと共に処理を命じると、殺気をたぎらせながらディアブロが「思念伝達」を打ち切った。

 

「ぬぅっ⁉」

 

 ファルムスは問題無しとして、この場をどう対処するかと思考を巡らせていると、ギャルドが声を上げて飛び上がり、他の七曜同様の白装束へと変わる。

 

 見れば糸がギャルドを襲い、それを辛くも回避したようだった。

 

 それを見ていたテクトは一度血を吐くと、上げていた手を落とす。

 

『ワハハハッ! 死に損ないが、その程度で我等を仕留めるなぞ夢を見すぎであろうよ!』

 

『聖人も魔王リムルも力を使い果たし、魔王テクトは死にかけ。この好機、利用せぬ手はないわ!!』

 

『ついでだ、真実を知ってしまった貴様達も、魔王ともども始末しておくとしよう!』

 

 そういうと七曜は哄笑をあげ、近接攻撃の届かぬ中へと退避する。そのまま等間隔に距離を開けると、三人を頂点とした大規模な魔方陣が構築された。

 

 事前に準備しなければ構築できそうもない魔方陣にもとより全員殺すことにしていたのだと気付き、聖騎士も含め、七曜へと攻撃を始める。

 

 聖属性以外を弾くという魔法陣と防御用の結界で阻まれ、攻撃は七曜に届かなかったが、シオンの「料理人」を用いた攻撃に魔法陣へとヒビが入る。

 

『マ、マズイ!』

 

『いかん、このままでは魔法陣が崩壊する⁉』

 

『かくなる上は、このまま放つぞ‼』

 

 テクト達と自身を隔てる結界を破り、リムルが今度はテクトをかばうように立つ。

 

 上空の大規模殲滅型魔法に対し、「多重結界」で防げるかと顔をしかめていると、智慧之王が回答する。

 

《告。問題ありません。魔法陣は既に解析済みです》

 

 智慧之王の冷静な声に、リムルは少し落ち着く。

 

『『『死に絶えるがいい! 聖三位霊崩陣(トリニティブレイク)‼』』』

 

 自信満々な七曜を僅かに憐れみつつ、対処を智慧之王へと委ねていると、信じられないような答えが飛び出した。

 

《告。究極能力「暴食之王」を再起動します》

 

「ん?」

 

 リムルの間の抜けた声の直後、雨のように降り注ぐ殺戮の光が「暴食之王」に呑み込まれて消えていく。

 

 先程、崩魔霊子斬を受けるのに犠牲にしたかと思われた「暴食之王」が使えたことでリムルが驚くが、能力の複製をしていたために行使可能なままだったという。

 

 そのことにリムルが驚いていると、上空で霊力反応が上昇し、更なる攻撃が始まる。

 

『『『滅べ、魔王よ! 三重霊子崩壊(トリニティディスインテグレーション)‼』』』

 

 放出ではなく範囲内に直接影響を及ぼす攻撃にリムルは慌てるが、智慧之王は冷静だった。

 

《告。究極能力「誓約之王(ウリエル)」の「絶対防御」を発動させますか?》

 

 リムルはその問に是と答えるが、ふと違和感を覚える。そんな思考を置き去りに、三重霊子崩壊が阻まれ無効化された。

 

 崩魔霊子斬を防ぐ際にも使えばよかったのではと考えるリムルだったが、智慧之王は霊子が「絶対防御」を貫通する可能性があったことと、仮に直撃してもリムルが死なずに済むという確証があったために、今後のために霊子に対する情報収集を優先したのだという。

 

 その甲斐あって三重霊子崩壊も防げたという事実に閉口しつつも、自身の望みを叶えようとする智慧之王に信頼を厚くしていた。

 

『馬鹿な、そんな、馬鹿な──⁉』

 

『ありえぬ。こんな馬鹿な話はありえぬのだ‼』

 

『この世に、霊子崩壊の直撃に耐え得る存在などあってはならぬ‼』

 

 完璧に発動した霊子崩壊を防がれた七曜は混乱の極みにあった。

 

 神聖系最強魔法を三重に発動する必殺の一撃を凌がれ、現実を認めたくない様子だったが、そこにベニマル達が詰め寄る。

 

 未だ瀕死の重体にあるテクトを見て、危機的状況で脇に置かれていた怒りが再燃したベニマル達によって七曜はあっという間に追い詰められた。

 

 ここまできても、恫喝と懐柔を混ぜながら上から目線で交渉しようとする七曜を始末しようとした時、空間を割いて巨大な門が姿を表した。

 

「魔王リムルよ、迷惑をかけたようじゃな」

 

 門から現れたのは魔王バレンタイン。

 

 なぜ彼女が現れたのか疑問に思うリムルだったが、七曜が跪くのを見て、ルミナス教の唯一神と魔王バレンタインが同一人物だと気付き、言葉を失ったのだった。

 


 

 次回「ファルムスでの調略」




感想・評価・お気に入りありがとうございます。

評価の投票者が50人に到達しました。

評価バーも赤色を保っていますし有り難い限りです。

紅蓮の絆編は書いた方がいいのか

  • 書くべき
  • 書かなくてもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。